著者
白尾 一定 秦 洋一 立野 太郎 出先 亮介
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.937-940, 2012 (Released:2012-06-15)
参考文献数
5

当院における術前経口補水療法と術後早期経口摂取への試みについて報告する。術前経口補水療法は2009年12月から2011年1月までの52例に適応し、手術前2時間前まで経口補水液 (OS-1) を摂取した。OS-1は平均815mL飲料され、胃内溶液は平均21mLであった。80歳以上の高齢者においても平均871mLの服用が可能であった。アンケート調査の結果では、82%が飲みやすいと回答した。2010年3月から2011年1月まで胃切除6例、胃全摘9例、結腸切除5例に早期補水療法を行なった。早期補水、食事開始に伴う合併症は認められなかった。胃全摘について従来法と比較した。輸液終了日は、早期補水群で有意に短かった。術前OS-1による経口補水療法は、口渇感や移動、着替えなどの日常生活などの制限もなく、高齢者にも安全に服用できた。小規模なsample数で疾患を限定した消化器疾患に対する早期補水、経口摂取は施行可能であった。
著者
松田 一彦
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第43回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.W3-2, 2016 (Released:2016-08-08)

イミダクロプリドと、それに続いて開発された類縁殺虫剤は、従来の殺虫剤に抵抗性を示す害虫に対しても優れた防除効果を発揮し、さらに植物に対する浸透移行性に優れていたことなどから、殺虫剤市場の主要な一角を占めるようになった。しかし、これらの「ネオニコチノイド」と総称される殺虫剤について、ミツバチの数の減少との関連性や神経作用性の危うさが指摘され、使用の是非が問われている。このようなネオニコチノイドの隆盛と論争を見ながら、演者は、中立の立場でネオニコチノイドとは何かということを研究してきた。ネオニコチノイドが標的とするニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)は5つのタンパク質が梅花のように集合した構造を持ち、神経伝達物質アセチルコリンを受容するとカチオンを選択的に通す自身のチャネルを開くことで、神経細胞の興奮を誘起する。天然物ニコチンがヒトのnAChRと昆虫のnAChRのどちらも活性化しイオンチャネルを開く活性(アゴニスト活性)を示すのとは対照的に、ネオニコチノイドは昆虫のnAChRを選択的に活性化する。つまりネオニコチノイドは何らかの理由で昆虫のnAChRの中のアセチルコリン結合部位に強く結合し、活性を発揮するのである。これは、昆虫のnAChRがネオニコチノイドとの相互作用に有利に作用する構造を有するためである。演者はその構造の解明に取り組んだ結果、昆虫のnAChRはネオニコチノイドに特有のマイナスの電荷を帯びた構造との相互作用に有利にはたらくプラスの電荷を帯びた構造をもち、哺乳動物のnAChRにはこうした構造がなく、むしろネオニコチノイドを遠ざけるマイナスの電荷を帯びた構造を有することを突き止めた。本講演では、このような成果のみならず、ネオニコチノイドはどれもが同じようにnAChRと相互作用しないことをも紹介する。
著者
篠田 左多江
出版者
日本英学史学会
雑誌
英学史研究 (ISSN:03869490)
巻号頁・発行日
vol.1995, no.27, pp.151-164, 1994 (Released:2009-10-07)
参考文献数
30
被引用文献数
1

Joaquin Miller, a well-known poet as the “Byron of Oregon”, lived his final years on the hills above Oakland, California. Many literary figures and artists gathered there, which seemed to be “a mecca for the lovers of art.” Among them was Yone Noguchi, who wrote some volumes of poetry and was praised in the U. S. and England. He returned to Japan as a world-famous poet.At the turn of the century some Japanese young men follwed Noguchi to stay at Miller's heights, since Miller was born to a Quaker family and was not a racist. Some of them hoped to be poets and others, painters.Isen Kanno, who was born in Sanuma, Miyagi Prefecture, and studied theology in Doshisha, came to Oakland in 1903 and became one of Miller's students. While he learned the art of composing poetry, he fell in love with a sculptress, Gertrude F. Boyle, who stayed there to make a bust of Miller's mother. Though the Japanese were then prohibited from marrying the white American women by law, he was married to Gertrude to prove what love could do.He wrote articles for the Japanese immigrants' newspapers and composed poetry. One of his works was Creation Dawn privately published in 1913, which was staged at the Forest Theater in Carmel-by-the-Sea with Mr. and Mrs. Kanno playing parts of hero and heroin. They got a great reputation from both Japanese and Americans by this performance. Isen Kanno must have been happy to be successful, but Fortune didn't keep smiling on him. His happy life was suddenly broken by his wife's love affair with a young art student, Eitaro Ishigaki. This scandal created such a great sensation among the San Franciscans that Gertrude and Ishigaki could stay there no longer and moved to New York. Isen suffered from the betrayal by the two he had believed in. After a month he left Miller's heights and went to Aileton to be a farmer.This is an essay on Isen Kanno's life from his birth to the days he lived in Oakland and San Francisco. The rest of his life will be made clear in the next essay.

2 0 0 0 OA 自我のゆくえ

著者
船津 衛
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.407-418, 1998-03-31 (Released:2010-04-23)
参考文献数
45

人間の自我は他の人間とのかかわりにおいて社会的に形成される。自我は, こんにち, 社会の分化・多様化, 変化・変動の進行などによって複雑なものとなっている。そして, 自我は自立的な「個体的自我」から, 依存的な「関係的自我」に変わっている。現代人の自我はいくつもの小さなアイデンティティからなる自我となる。いわゆる「自我の危機」といわれるものは合理的, 自立的, 統一的である「近代的自我」のイメージの消滅であり, 関係的, 多面的・多元的, 感情的, 断片的, 流動的な自我の出現であるといえる。他方, 現代社会に特徴的な「役割コンフリクト」に対して, 人々は「役割選択」, 「役割中和」ないし「役割調整」, 「役割コンパートメント化」によって乗り越えようとし, また, 「役割脱出」を試み, また「印象操作」や「役割距離」行動を行なって対処している。けれども, 「役割コンフリクト」の解決には, 他者の期待に働きかけ, それを修正し, 再構成する「役割形成」が必要とされる。人間は社会構造の現実を認識し, それに意味を付与し, それにもとついて自己をリフレクションする。そして, 「内的コミュニケーション」を活性化して, 「解釈」過程を展開することによって, 主体的な行為を形成し, 社会の変容を行なうことができるようになる。
著者
藤井 まゆみ
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.125-130, 2019-09-20 (Released:2020-09-20)
参考文献数
12

背景 : ブナ科花粉症の研究は少ない。天城山のブナ林に近い伊東市内でブナ科花粉の豊凶を調べた。さらに天城山での調査とアレルゲン抗体検査も実施した。患者を発見し予防を促したい。方法 : 2001 年から伊東市内でダーラムサンプラーを用い空中樹木花粉を計測した。2018 年 5 月に天城山中にワセリン塗布のスライドグラスを吊るし、空中樹木花粉を計測した。スギ・ヒノキ属花粉症で症状が長引く患者にアレルゲン抗体検査を実施した。結果 : 天城山のブナ属花粉は伊東市に届いていない。伊東市の空中ブナ科花粉はほとんどがコナラ属とクリ・シイ属であった。スギ・ヒノキ属の花粉症で症状が長引く患者の約半数がブナ・コナラ属共に陽性であった。結論 : 伊東市のブナ科花粉症の主な原因はコナラ属の花粉であった。コナラ属、クリ・シイ属の花粉飛散期の予防を促し、ブナ林を散策する季節は注意させたい。また、ブナ目樹木の花粉はバラ科の果実と交差反応があるので、口腔アレルギー症候群に気をつけるよう指導したい。
著者
李 尚珍
出版者
山梨英和学院 山梨英和大学
雑誌
山梨英和大学紀要 (ISSN:1348575X)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.51-64, 2009 (Released:2020-07-20)

本稿では、「白樺派」として西洋芸術に心酔していた柳宗悦が朝鮮・東洋芸術への美的関心を転換していく過程について、浅川兄弟との繋がりを中心に考察し、柳と朝鮮伝統芸術との関係をより明確にする。柳は、朝鮮在住の浅川兄弟と出会ったことによって、朝鮮伝統芸術の美に目覚め、工芸品の蒐集活動ならびに窯跡現地調査を通して、現場を見据えた研究方法を見出した。そして、柳と浅川兄弟は、自然と人間にはおのずからそれらにふさわしい場所、すなわち「適地」というものが存在するという<思想>を具体的に実現するために、「朝鮮民族美術館」の設立運動に取り組んだ。さらに、その運動を通して、柳は、木喰仏像の<もの>とその作者・木喰上人の<ひと>に出会い、ここに日本における民芸運動の出発点とその発展可能性を確信した。そこには柳の朝鮮伝統芸術の研究活動において育まれた<偶然と直覚>が民芸運動の要素となり、西洋と東洋を超越する普遍的な美的感覚を織り成していた。最近相次いで韓国の歴史教科書に柳と浅川巧が取り上げられたり、当時「朝鮮民族美術館」の設立運動に好意的な立場であった東亜日報社主催で、韓国初の柳展「文化的記憶-柳宗悦が発見した朝鮮と日本」が開かれたりして、韓国人の強い関心を集めた。このことは朝鮮伝統芸術の研究活動において、柳が東西の区別を越えた普遍的な美観を提供したように、今日の韓国人に昔今の区別を越えた普遍的な美観を形成するきっかけを与えるだろう、と筆者は考える。

2 0 0 0 OA 味噌の味

著者
伊藤 寛
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.11, pp.881-884, 1980-11-15 (Released:2011-11-04)
参考文献数
24
著者
篠崎 真
出版者
日本森林学会
雑誌
森林科学 (ISSN:09171908)
巻号頁・発行日
vol.86, pp.43-48, 2019-06-01 (Released:2019-07-09)
参考文献数
7
著者
小泉 諒 杉山 和明 荒又 美陽 山口 晋
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.232-261, 2021 (Released:2021-08-03)
参考文献数
58
被引用文献数
3

本稿は,2018年の平昌冬季五輪で浮き彫りとなった五輪招致と南北関係,セキュリティ,環境問題,そして跡地や競技施設の利用にかかわる論点を,ボイコフの「祝賀資本主義」の議論を踏まえ検討した.平昌の五輪招致活動は3度にわたったが,会場計画を含めて,その時々の国内および国際的な政治状況に大きく左右されてきた.国家的なセキュリタイゼーションは平昌でも見られ,東京五輪の関係者による視察が行われたことから,レガシーとして引き継がれる点も多いと考えられる.また平昌冬季五輪開催において国際的な批判の対象となった環境問題は自然林の伐採であり,46年前の札幌冬季五輪と比較しても環境負荷には改善が見られない.長野では大会後の利用困難が見通されていたにもかかわらず競技施設の建設が進められ,平昌もまた同様の事態となった.
著者
Tomio Petrosky 野場 賢一
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.121-126, 2017-02-05 (Released:2018-02-05)
参考文献数
10

我々の太陽は数十万個以上の小惑星群によって帯状に囲まれている.火星と木星の間に数多く存在している小惑星の長半径方向の空間分布は縞構造をしており,バンド構造を持っている.また,その分布上の縞構造のギャップの位置が小惑星の振動数と木星の振動数が単純な整数比になるところに存在している事実から,このギャップが現れる定性的な根拠は木星の運動と小惑星の運動の間の共鳴効果によるものであることがわかる.しかし,古典力学では共鳴効果が系の運動の恒量を破壊してしまうために非可積分となり,軌跡を扱う力学の常套手段である正準変換によって系の定量的な振る舞いを解析的に論じることが原理的に不可能になっている.本稿では,その定量的な分析をするために,少数系の古典力学で伝統的に使われてきた軌跡力学とは全く別で,それとは相補的なリウビル力学の立場から,どのようにこのギャップの大きさが評価されるかを紹介する.筆者の一人(TP)は非平衡統計力学を長年研究テーマとしてきて,古典力学でも量子力学のハイゼンベルグ表示に対応する物理量の時間変化を記述する方法と,シュレディンガー表示に対応する状態関数の時間変化を記述する方法があることに深い関心を持っていた.古典力学ではハイゼンベルグ表示に対応する記述法の基本方程式はハミルトンの運動方程式であり,シュレディンガー表示に対応する記述法の基本方程式はリウビル方程式である.非平衡統計力学では自由度の数があまりにも多く,その系に対応するハミルトン方程式を全部書き下すことができない.そのことから,この分野では状態関数というたった一つの関数の時間変化を記述するリウビル方程式を追うことにして,リウビリアンやそれに類似したボルツマン方程式の発展の生成演算子である衝突演算子の固有値問題の解から,系の力学的性質を分析する.そして,これらの古典力学的演算子にも,量子力学のハミルトニアンと同じように連続スペクトルを持つ場合もあれば,典型的なガス系のように不連続スペクトルを持つ場合もあることはよく知られている.それなら,リウビリアンにも結晶中の電子のハミルトニアンのようにバンド構造を持つ場合があるのでないか.もしそうなら,リウビリアンの物理的次元が振動数であることから,Keplerの第3法則によって振動数スペクトルのバンド構造はそのまま小惑星の空間分布の長半径方向のギャップを与えるのではないか,という考えを筆者の一人(TP)は大分以前から暖めていた.最近になって,日本の物性物理学者の何人かの友人と議論することによって,摂動の影響で共鳴点上でのハミルトニアンの固有値の縮退が解け,準位反発によって電子のエネルギーギャップが起こるのと同様な数学的メカニズムで,小惑星の振動数スペクトルにも木星の摂動で準位反発が起こり,ギャップが現れることを見出した.この取り扱いでは,たとえ古典力学の非可積分系であっても,縮退のある場合のよく知られた摂動論を使って,そのギャップを定量的に論じられる可能性を与えてくれる.
著者
王 財源 遠藤 宏 豊田 住江 河内 明 北出 利勝 兵頭 正義
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.319-322, 1992-12-01 (Released:2011-05-30)
参考文献数
5

中国の鍼灸補瀉手技のひとつに「透天涼」と呼ぶ鍼技法がある。古くから伝えられて来た刺入方法で, 涼しいような, 冷たい, あるいは寒いといった寒冷感覚が局所に引き起こされる。今回, 腰痛患者5例を対象として, 局所と遠位の皮膚温度および深部温度を測定した結果, 局所より遠位部において, 温度が下降していくような現象が認められた。また, 患者自身の自覚症状においても「冷たくなるような」,「足が冷えて急にトイレへ行きたくなった」などの感覚が引き起こされた。特に炎症症状のある急性期の腰痛患者では,「大変に気持ちが良い」とのことであった。統計学的にも有意な差が認められた。
著者
尾形 良彦
出版者
公益社団法人 日本地震学会
雑誌
地震 第2輯 (ISSN:00371114)
巻号頁・発行日
vol.50, no.appendix, pp.115-127, 1998-03-31 (Released:2010-11-17)
参考文献数
64

The anomaly in focus is relative quiescence which is defined as a significant decrease of earthquake activity compared with the predicted occurrence rate by the estimated statistical model for the standard seismicity of the region: we use a point-process model called Epidemic Type Aftershock-Sequences (ETAS) model. Regardless of the seismicity level, the relative quiescence can take place. Size of such quiescence is seen in cumulative and M-T diagrams of transformed occurrence times by using the estimated ETAS model. By this method, we recognized significant, relatively quiet stages in shallow seismicity over M 5 class in a very wide area preceding all studied great earthquakes of M 8 class in and around Japan and also those of M 9 class in the world. However, we saw no relative quiescence for about 20 years up to 1990 in the wide areas which include the Tokai and Boso gaps [OGATA (1992)]. On the other hand, a few authors recently showed a very significant quiescence for the last 20 years since early or mid 1970's in the seismicity of certain areas in or around Tokai region. However, it turns out that these quiescence are seeming ones owing to magnitude shifts which took place during 1975?76. The magnitudes below MJ5.0 are substantially underestimated after the period. This shift is found and estimated by a statistical comparison of magnitudes between the JMA and USGS catalogs. Nevertheless, the recent seismicity with level of MJ≥5.5 in a very wide region including central and western Japan shows a significant relative quiescence since 1992, which may be related to the 1995 Kobe Earthquake of MJ7.2 but seems to be further extended to late 1996 when many M 6 class events successively occurred about the boundaries of the quiet region within a half year span.
著者
朝長 啓造
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.209-218, 2012-12-25 (Released:2013-10-22)
参考文献数
77
被引用文献数
1

モノネガウイルス目に属するボルナウイルス科ボルナウイルス属には,哺乳類に感染するボルナ病ウイルスと鳥類に感染する鳥ボルナウイルスが同定されている.ボルナウイルスは神経系組織に好んで感染することが知られており,自然感染した動物ではさまざまな神経疾患を発症することが明らかとなっている.ボルナ病ウイルスはウマやヒツジの伝染性脳脊髄炎(ボルナ病)の原因であり,中枢神経系への持続感染が特徴である.一方,鳥ボルナウイルスは腺胃拡張症と呼ばれる難治性の消耗性疾患を引き起こす.これまで,ボルナウイルスは遺伝的に良く保存されていると考えられていたが,鳥ボルナウイルスには少なくとも9つの遺伝子型が存在することが報告され,ボルナウイルス属の多様性が明らかになってきている.ボルナウイルスは,細胞核での持続感染や宿主ゲノムへの内在化など,他のRNAウイルスではみられない多くの特徴を有している.本稿では,ボルナウイルスによる疾患に加えて,これまでの研究で明らかとなったユニークなウイルス学的性状について紹介する.
著者
上田 京子 塚谷 忠之 村山 加奈子 倉田 有希江 竹田 絵理 大塚 崇文 高井 美佳 宮崎 義之 立花 宏文 山田 耕路
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.242-249, 2015-05-15 (Released:2015-06-30)
参考文献数
22
被引用文献数
2 2

本研究ではブロッコリー全草を6つの部位に分け,各部位の栄養成分および細胞機能への影響を明らかにすることを目的として,ビタミンC,S-メチルメチオニン,総ポリフェノール,乳がん細胞増殖抑制および免疫調節機能について,ブロッコリーの各部位の比較検討を行った.花蕾 : ビタミンC並びにS-メチルメチオニンを多く含有し,ヒスタミン放出抑制能が高かった.茎,主軸下部 : 可食部以外である茎,主軸下部は,ビタミンC,S-メチルメチオニン,ポリフェノールはほぼ同等量含まれていた.また,花蕾と比較すると抗体産生増強能を有していた.葉軸 : 茎,主軸下部と同等のビタミンC,S-メチルメチオニン,ポリフェノールを含んでいた.ヒスタミン放出抑制,IgA産生の増強,IgE産生低下の傾向を示した.葉 : ビタミンCは花蕾の18%,S-メチルメチオニンは花蕾の29%であったが,ポリフェノール量は花蕾の3.1倍含んでおり,ヒスタミン放出抑制,ロイコトリエン放出抑制,IgE産生抑制の傾向が見られ,花蕾と比較すると抗アレルギー素材としての特徴を有していた.根 : ビタミンCは花蕾の12%,S-メチルメチオニンは花蕾の25%,ポリフェノールは花蕾の83%含まれており,特にMCF-7のがん細胞増殖抑制能を有していた.以上のように,ブロッコリーの部位別に栄養,機能が分布していることを明らかにした.その他の部位は可食部である花蕾と栄養·機能の特徴が異なっており,これまでに利用されてきた部位には存在しない生理活性物質が未利用部位に存在する可能性がある.
著者
河原 秀夫 斉藤 靖弘
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.343-351, 1993-04-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
32

昨今の地球環境問題から,エネルギー効率との関連で光を制御する窓ガラスが重要視されはじめた.中でも,次世代ガラスとも称される“調光ガラス”へは多くの分野から熱い期待が寄せられ,研究も一段と活発になってきた.現状では,実用性を考えエレクトロクロミズム,分散型液晶の応用を中心に研究が進み,異方性微粒子の分極配向を利用した複合ガラスなど新しい試みも現れはじめた.ここでは調光技術の中でも,特に人為的に光制御が可能な技術を取り上げ,調光の原理,特徴および実現までの技術的課題などについて述べる.
著者
店村 眞知子 江川 直人 永田 勝太郎 大城 昌平 一之瀬 大資 犬塚 博
出版者
公益財団法人 国際全人医療研究所
雑誌
全人的医療 (ISSN:13417150)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.5-14, 2014-12-25 (Released:2019-04-09)
参考文献数
10

[目的]測定者側が音楽の理論(リズム,音組織,調性,旋律の意味するもの等)を予め把握しておいて,対象者に音楽を聴取させたとき,精神生理学的にどう反応するのか,(自律神経系と脳血流)の測定を行い,結果を検討した.[対象]聖隷クリストファー大学学生10名(女性,平均年齢20歳)である.[方法]楽曲には,ベートーベンの“エリーゼのために”(4分)を用いた.楽曲の構成は3部形式(ロンド形式:A-B-A-C-A)である.この曲は,Aという主題がB(展開部)とC(展開部)を取り込みつつ循環する形式である.1回目の主題を提示部とし,2回目の主題を再現部,3回目の主題を終結部とした.楽曲聴取の前後に1分の安静期を設定した.演奏には,デジタルピアノを用いた.測定方法:演奏聴取時の脳活動の計測を行うため,近赤外分光法(near-infrared spectroscopy:NIRS)を用いた.心電図(Mem-Calc/Tarawa)を被験者に装着し,心拍変動を記録し,そのスペクトル解析をおこないHFamp,LF/HFratioを検討し,これらの生理学的反応と音楽構成要素の相関を調べた.[結果]結果には個人差があった.しかし,概して以下の傾向が認められた.主題においては最後の終結部において交感神経系が治まり,副交感神経系が優位になった.リラックスが起きていると言えた.BとCの展開部においては副交感神経系が亢進し交感神経系の活動が治まった.展開部は心地よい状態と言えよう.主題が有する音楽的成分は安堵感や調和の世界を感じさせるものと分析でき,展開部の転調が情動に与える音楽的効果は爽快感や期待感と分析できた.脳血流においてはその反応は自律神経系の変動を観た後に起こり,終結部の主題のところで脳血流の活発な活動が観られた.それは安静期に入っても活発に活動した.これは脳活動がいろいろな情報を認識し整理しながら活動するためと考えられた.[考察]音楽を聴取したときの生理的反応と楽曲を構成する要素の有する意味との相関を検討出来た.今回の測定により,楽曲の諸要素の生理的変化に与える影響は,その個人差が強かったことから被験者の楽曲に対する嗜好度や音楽の経験度が大きく影響することが窺えた.特に音楽の嗜好度の高い被験者の場合は,楽曲の構成要素と生理的な反応との間に緻密な相関が見られたが,そうでない場合は反応が曖昧であり,一定の傾向を認めることはできなかった.しかし,嗜好度の高い聴取者では,自律神経系の反応は明確であり脳梗塞血流も増加した.これは,音楽をrelaxation with alertnessを目的とした治療法として考えるとき,合目的的であると考えられた.
著者
Motohiro Shingu Naoto Ishimaru Jun Ohnishi Shimpei Mizuki Yohei Kanzawa Kei Kawano Takahiro Nakajima Nobuya Sano Saori Kinami
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
Internal Medicine (ISSN:09182918)
巻号頁・発行日
pp.6186-20, (Released:2021-05-22)
参考文献数
21
被引用文献数
4

Hemolytic anemia is a rarely occurring manifestation of native valve infective endocarditis. We herein report an afebrile patient with hemolytic anemia caused by Cardiobacterium hominis endocarditis. A 60-year-old Japanese man had a history of aortic root replacement and the gradual onset of general fatigue. He had hemolytic anemia. Blood cultures detected C. hominis. A transthoracic echocardiogram showed aortic valve vegetation and periannular abscess with perforation of the non-coronary cusp. Intravascular hemolysis recovered after antimicrobial therapy, surgical removal of the vegetation and abscess, and aortic valve replacement. Subacute endocarditis should be considered if patients develop hemolytic anemia with signs of chronic inflammation without a fever.
著者
三井 一希 佐藤 和紀 渡邉 光浩 中野 生子 小出 泰久 堀田 龍也
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.78-83, 2021-06-01 (Released:2021-12-01)

本研究では,1人1台の情報端末を活用した児童の発表場面に,モバイルディスプレイを導入することの効果を検討した。その結果,モバイルディスプレイの導入前は,情報端末の画面サイズや画面の提示方法に困り感を持つ児童が一定数いたが,モバイルディスプレイの導入によってこれらの困り感が軽減され,グループ発表の場面にモバイルディスプレイが有効に作用する可能性が示唆された。また,モバイルディスプレイの活用を経験すると,多くの児童が必要感を持つことが示された。