著者
八巻 知香子 山崎 喜比古
出版者
日本保健医療社会学会
雑誌
保健医療社会学論集 (ISSN:13430203)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.13-25, 2008-08-08 (Released:2016-11-16)

今日でも依然として障害者差別や障害者を劣位におく価値観があることは国内外で繰り返し指摘されているが、これらのテーマを扱う研究の多くが、受け手である障害者個人への負の影響という観点からのみの測定が大半を占め、価値観自体の議論や把握はなされてこなかった。本研究は、障害のある人が感じている「障害者への社会のまなざし」それ自体について把握する手法について提案し、是正が望まれている「社会のまなざし」の特徴を明らかにした。結果から、障害者が感じ取る「障害者への社会のまなざし」は、否定的な要素についても、肯定的な要素についても存在を感じている人は非常に多く、否定的な要素については是正を、肯定的な要素については広がりを望んでいた。「障害者への社会のまなざし」の肯定的評価傾向は、対人的な被差別経験および移動・情報入手の不便による日常の不快な経験の多寡と強く関連しており、日常生活の実感に基づくものと考えられた。
著者
齋藤 昭彦
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.1-6, 2007 (Released:2007-04-10)
参考文献数
7
被引用文献数
8 5

四肢が機能するためにはその土台となる体幹の動的安定性が求められる。体幹の動的安定性は他動組織,自動組織,神経系組織の統合的作用により維持されている。本稿では,体幹の動的安定性に極めて重要であるとされている体幹深部のローカル筋の機能に注目し,その評価方法およびトレーニング方法について述べる。
著者
勝木 桂子 相原 直彦 伊達 裕 武村 珠子 住田 善之 和田 光代 鎌倉 史郎 下村 克朗
出版者
Japanese Heart Rhythm Society
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.291-300, 1997-05-25 (Released:2010-09-09)
参考文献数
19
被引用文献数
1

心室内伝導障害例での持続型心室頻拍 (SVT) の発生予知に時間解析法による加算平均心電図 (SAEOG) が有用であるかを検討した.SAECGを施行した心室内伝導障害例70例を, 12誘導心電図から右脚ブロック型を示す36例 (RBBB群) と左脚ブロック型を示す34例 (LBBB群) に分類し, SVTの既往の有無 [SVT (+) 群, SVT (-) 群] でSAEOG各指標を検討した.RBBB群ではTQRSD, LAS40, RMS40の3指標とも, LBBB群ではRMS40のみでSVT (+) 群とSVT (-) 群との間に有意差が認められた.SVT (+) 群を分離するための診断基準は, RBBB群ではTQRSD≧160mseo, LAS40≧40mseo, RMS40≦14μVとなり, 川頁に感度77%, 85%, 77%, 特異性78%, 70%, 74%で, LBBB群ではRMS40≦14μVとなり, 感度82%, 特異性87%で良好な診断精度であった.以上より, SAEOG各指標はLPの診断基準を新たに設定することにより, 心室内伝導障害例においてもSVTの予知が可能であると結論される.
著者
佐藤 美由紀
出版者
一般社団法人 日本女性科学者の会
雑誌
日本女性科学者の会学術誌 (ISSN:13494449)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.9-13, 2013 (Released:2013-05-27)
参考文献数
14

卵子は受精によってすべての細胞に分化しうる胚へと変化する。モデル生物である線虫fertilizationを用いた解析から、この時期には発生と連動して分泌・エンドサイトーシス・オートファジーといった細胞内輸送系が制御され、細胞内外成分の再編成が起きることが明らかとなってきた。また受精卵において、オートファジーは精子から持ち込まれた父性ミトコンドリアとそのゲノムの分解を担うことを見出した。多くの動植物においてミトコンドリアゲノム(mtゲノム)が母系からのみ子孫に受け継がれる母性遺伝という現象が知られているが、そのメカニズムはよくわかっていなかった。われわれの結果から、オートファジーによる父性ミトコンドリア分解がmtゲノムの母性遺伝を成立させるために必須なメカニズムであることが明らかとなった。
著者
市ノ瀬 有佐 横山 茂樹 山本 乃利男 小野 恭裕 本田 透
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.12017, (Released:2021-08-24)
参考文献数
23

【目的】高齢者大腿骨近位部骨折患者において術後3 日間のCumulated Ambulation Score(以下,3-day CAS)と術後2 週時の歩行能力との関連性を明らかにすることを目的とした。【方法】大腿骨近位部骨折患者187 名を術後2 週時の歩行能力で,平行棒以下群99 名と歩行器以上群88 名に群分けした。3-day CAS と患者情報をもとに多重ロジスティック回帰分析を行い,カットオフ値を算出した。【結果】術後2 週時歩行能力の関連因子として,受傷前Barthel Index(以下,BI),骨折型,3-day CAS が抽出された。術後2 週時の歩行器歩行の可否判別におけるカットオフ値は,受傷前BI : 92.5 点,3-day CAS : 3.5 点であった。【結論】術後2 週時の歩行器歩行の可否判別には,受傷前BI,骨折型に加え,3-day CAS が有用である可能性が示唆された。
著者
福井 健太 安川 邦美 田端 克俊 森下 啓太郎 植野 孝志 庄司 祐樹 長屋 有祐 下田 哲也
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.115-120, 2011-12-31 (Released:2012-12-18)
参考文献数
22

2005年11月~2010年7月までに,縦隔型リンパ腫と診断した猫10例に,犬のUniversity of Wisconsin-Madison chemotherapy protocol(UW25)に準じたプロトコールを行い,完全寛解率,生存期間ならびに抗癌剤の副作用について調査した。完全寛解率は90%と非常に高く,生存期間は1年未満が6例(現在生存中1例含む),1年以上2年未満が1例(現在生存中),2年以上3年未満が1例(現在生存中),3年以上が2例(現在生存中1例含む)と長期の生存期間が得られた。副作用の程度は軽度であり対症療法により回復した。このプロトコールでは25週の治療期間中に再発がみられなかった場合,過去のCOP療法の報告と比べ非常に長期の生存期間が得られることが証明された。
著者
Bezawork A. BOGALE 青山 真人 杉田 昭栄
出版者
Japanese Soceity for Animal Behaviour and Management
雑誌
日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌 (ISSN:18802133)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.75-83, 2018-06-25 (Released:2018-07-26)
参考文献数
22

ヒトの顔写真を用いた弁別試験を行なうことによって、ハシブトガラスがヒトの表情を識別することが可能であるか否かを検討した。まず、予備試験として、供試したカラスには、一方は「笑顔」、もう一方は「真顔」(無表情)である異なる人物の写真を見せて、「笑顔」を選択させる弁別学習を課した。予備試験をクリアした6羽のカラスについて、予備試験とは異なる人物の「笑顔」と「真顔」の弁別試験を行なった。その結果、6羽中で4羽のカラスについては、「笑顔」である新規な人物を統計学的に有意に高い頻度で選択した。次に、予備試験で見せた人物の写真を用い、同じ表情をした異なる人物の組み合わせを識別する弁別試験を課した。その結果、カラスは、表情にかかわらず、予備試験において報酬を得られた人物を有意に高い頻度で選択した。一方、予備試験で使用した人物について、同一人物の「笑顔」と「真顔」を識別させる試験を行なったところ、いずれのカラスも「笑顔」を有意に高く識別することはできなかった。これらの結果から、ハシブトガラスは異なる人物については「笑顔」を「真顔」と区別でき、新規な人物については「笑顔」を一般化することが可能であることが示唆された。一方、人物の識別能力はその表情によって左右されることはないが、同じ人物において、その表情を識別する能力には乏しいと考えられた。
著者
中村 浩規 横山 晴子 矢口 武廣 鈴木 優司 徳岡 健太郎 渡邊 昌之 北川 泰久 山田 安彦
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.131, no.3, pp.445-452, 2011-03-01 (Released:2011-03-01)
参考文献数
15
被引用文献数
4 4

In this study, we investigated the effect of histamin H2 receptor antagonist (H2RA) or proton pump inhibitor (PPI) for the prevention of upper gastrointestinal lesions associated with low-dose aspirin. We carried out a retrospective study of 2811 patients who had been prescribed low-dose aspirin (Bayaspirin® 100 mg) for more than 30 days at Tokai University Hachioji Hospital from 2006 to 2008. We classified them into three groups: aspirin alone group (n=1103), aspirin with H2RA group (n=844) and aspirin with PPI group (n=864). Patients who developed upper gastrointestinal lesions were diagnosed with gastric ulcer, duodenal ulcer, gastritis or duodenitis by gastroscopy. We then compared the incidence of upper gastrointestinal lesions among the groups. The incidence in aspirin alone group, aspirin with H2RA group and aspirin with PPI group was 2.54%, 1.54% and 1.04%, respectively; that of aspirin with PPI group being significantly lower (p<0.05). Additively, the odds ratio (OR) of aspirin with H2RA group and aspirin with PPI group was 0.60 (95% confidence interval [95%CI]: 0.31-1.17) and 0.40 (95% CI: 0.19-0.86) as compared with aspirin alone group, respectively. The upper gastrointestinal lesions were developed within two years in all groups. Our results suggest that the combined administration of low-dose aspirin and PPI is effective for the prevention of upper gastrointestinal lesions associated with low-dose aspirin. Also, the pharmacists should be especially careful for upper gastrointestinal lesions development within two years after administration of low-dose aspirin, regardless of combined whether H2RA or PPI.
著者
堀尾 福子 池田 徳典 石黒 貴子 瀬尾 量 内田 友二
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.2021-041, 2022 (Released:2022-03-02)
参考文献数
18

感染症によるパンデミックを収束または制御する手段として期待されるワクチン及びその接種では,ワクチン接種希望者へ安定的かつ速やかに供給と接種を提供できる体制を構築することが重要である.その課題の一つとして接種の打ち手の確保がある.欧米では薬剤師もワクチン接種の打ち手となっているように,今後日本でも薬剤師が貢献できる可能性が期待される.このような背景により,学部4年生を対象とした上腕筋肉注射シミュレータを用いた実習を実施し,その効果を検証した.実習前と比較し実習後では,筋肉注射の知識・技術のどちらも向上しており,かつ高い満足度が得られた.さらに,学生の自信獲得にも繋がっており,自己効力感が育まれたと考えられた.また,「今後役に立つ」「学んでおくべき」と考える学生が実習後では増加し,学生の意識にも変化をもたらした.これらの結果より,学部教育における筋肉注射実習は有用な実習であると考えられる.
著者
山田 学
出版者
獣医疫学会
雑誌
獣医疫学雑誌 (ISSN:13432583)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.68-70, 2019-07-20 (Released:2020-01-10)
著者
浦 康一 橋場 功
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.4, pp.253-260, 1991-04-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
22

選択性除草剤として,フェノキシプロピオン酸エステルあるいはピリジルオキシプロピオン酸エステルが知られている。著者らはフェノキシあるいはピリジルオキシに代わって縮合ヘテロ環を幅広く検討する中,キノキザリン類の中に細葉雑草の除草に卓効のある,有望な化合物群を見いだした。その中で,キザロホップェチル(コード No. NC-302 )は特に強い効力を持ち,茎葉処理型除草剤として企業化された。その工業化に際し,キノキザリン環部の合成は大きな課題の一つであったが,汎用な原料から合成できる簡単な方法を見いだした。また,キザロホヅプェチルは不斉炭素を持ち,光学異性体が存在するが,その有効成分は(R)-(+)体であり,ラセミ体にくらべて2倍の効果を持つ。(0)0(+)体の製造は,分割法ではなく,光学活性な原料を使いラセミ化させない方法で行っている。また,(R)-(+)体は,ラセミ体とは異なり結晶型が二つ存在する。この分測晶析法が発見され,(R)一(+)体の工業化が可能となった。本論文では,特に光学活性キザロホップエチルと,その重要な中間体である2-(4ヒドロキシフェノキシ)プロピオン酸エチルの製造法について,詳しく述べる。
著者
山中 咲耶 吉田 俊和
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.141-149, 2014 (Released:2014-03-18)
参考文献数
19
被引用文献数
2

本研究では,他者の面前におけるパフォーマンスの抑制メカニズムについて認知的,感情的側面に着目して検討した。本研究で想定したメカニズムは,課題遂行中に目標とする水準を達成できていないと認知することによって,感情体験が上昇する結果,さらなるパフォーマンスの悪化が生じる,というものである。実験の結果,課題遂行時に自己の成績が目標よりも劣っていると認知した遂行者は,認知後の成績が低下し,自己報告による感情得点が高くなった。一方,自己の成績が目標よりも優れていると認知したものは,成績の変化は見られず,感情得点は低下した。以上の結果より,本研究で想定したパフォーマンスの抑制メカニズムは概ね支持された。なお,行動指標と主観的に報告された感情指標の変化傾向が概ね一致した一方で,生理指標は時間推移に沿った変化しか示されなかった。生理指標の変化傾向が,失敗数,感情指標と一致しなかったことより,生理的覚醒が直接的にパフォーマンスを抑制するわけでなく,状況へのネガティブな認知と感情体験の上昇がパフォーマンスに影響する可能性が示唆された。

2 0 0 0 OA うるしと鉄

著者
蜷川 彰
出版者
The Surface Finishing Society of Japan
雑誌
表面技術 (ISSN:09151869)
巻号頁・発行日
vol.51, no.10, pp.983-987, 2000-10-01 (Released:2009-10-30)
参考文献数
13
著者
稲橋 正明 武藤 貴史
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.103, no.11, pp.824-835, 2008-11-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
4

きょうかい酵母を使用して, ふと疑問に思ったこと, これでいいのかな?と抱かれた数々の疑問が協会によせられる。そのような問い合わせの中から多くの方々にとって参考になりそうな事例をまとめていただいた。きょうかい18m号酵母に対するQ &Aが中心になってはいるが, 他の酵母や一般のもろみ管理に関しても示唆を与えてくれる一文である。
著者
大塚 愛 森高 初恵 福場 博保 木村 修一 石原 三妃
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.10, pp.759-767, 2001-10-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
7
被引用文献数
1 2

コーンフラワーを原料としたトルティーヤ調製において,炭酸カルシウムを添加すると,デンプン粒子の膨潤・崩壊,分子の膨潤・水和が促進されたが,変化の程度は小さかった,炭酸カルシウム添加では,加熱により空洞が組織中に観察され,吸水率が増加した.このため,炭酸カルシウム添加トルティーヤでは水分の多い具材を巻いて食べる際には,水分を良く吸収し食べ易さが向上すると考えられた.一方,水酸化カルシウムを添加した場合には,デンプン粒子の膨潤・崩壊,分子の膨潤・水和は炭酸カルシムを添加した場合よりも促進され,組織は緻密となった.従って,水酸化カルシウム添加では,調理操作上あるいは具材を包んで食べる際には破れにくくなり,これらの点で利便性は向上すると考えられたが,添加により強いアルカリ味が生じ,赤味の強い色調になるために,利用に際しては添加量に注意を払う必要があると考えられた.
著者
山口 正貴
出版者
一般社団法人 日本東洋医学系物理療法学会
雑誌
日本東洋医学系物理療法学会誌 (ISSN:21875316)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.45-52, 2018 (Released:2020-05-20)
参考文献数
26

国民生活基礎調査によると、腰痛は有訴者率1 位という状況が10 年以上も続いており、腰痛保 有者は約2800 万人とも言われている。この原因の一つには、約85%は原因不明で特異的な身体所 見に乏しく、画像所見と必ずしも一致しない非特異的腰痛であることが考えられる。しかし、そ の疼痛源は、椎間板や椎体、椎間関節、靭帯、筋・筋膜など複数の脊椎構成要素に存在すると考 えられている。近年では心理社会的要因の関与も示唆されており、より複雑化している。このよ うに非特異的腰痛患者は要因が多様なため、有効な治療法の確立が難しく慢性化している患者が 少なくない。そこで、筆者らは理学療法士の視点から有効な治療法の確立を目指し研究を進めて いる。本稿では、筆者らが行っている研究の一部を紹介する。 6 か月以上持続している慢性の非特異的腰痛患者に対する4 種のストレッチングの介入効果を、 初回評価におけるdirectional preference(DP)の有無で比較した。 初回評価でDP を認めた症例41 名、DP を認めなかった症例32 名に分類し、週1 回の介入と4 週間のセルフエクササイズを指導した。介入前後でVAS、ROM、SF-36、JOABPEQ、ODI を評価した。 その結果、いずれの項目も群間には有意差を認めず、2 群とも介入前後で疼痛・身体機能・精神 機能すべての項目で有意な改善を認めた。 以上のことから、本ストレッチングはDP の有無に関わらず、慢性の非特異的腰痛患者全般に有 効である可能性が示唆された。
著者
田頭 秀悟
出版者
認知症治療研究会
雑誌
認知症治療研究会会誌 (ISSN:21892806)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.38-42, 2022 (Released:2022-03-05)
参考文献数
5

外来診療,入院診療,訪問診療に続く第4 の診療形式として情報通信機器を用いて行うオン ライン診療が,新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあいまって,近年急速に注目を集めてきてい る.一方で,従来の対面診療と比べてオンライン診療という診療形式は未だ医療の中で補助的な役割 にとどまっており,十分な価値を提供しきれていない実情がある.他方でコーチングの要素を盛り込 むことで,全ての慢性疾患患者に対してオンライン診療は有効活用できる可能性を秘めている.とい うのも直接的な医療行為を行えない条件には,患者自らの主体性を促し,自らの生活行動の改善によっ て病気を克服させる潜在性があるからである.逆に言えば,「認知症」のような患者の主体性が期待し にくい状況においては,コーチング的オンライン診療による価値を提供することは難しい.また主体 性が強固に制限された「神経難病」患者においても同様の問題に直面する.本稿ではオンライン診療 専門で対応してきた当院が認知症や神経難病に対して行っている工夫や経験,教訓について紹介する.