著者
坂巻 正美
出版者
北海道教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

この創作研究は、北方先住民文化の研究調査をもとに進めた。その研究方法及び成果は、今も狩猟採集の知識を継承して生きる人々を訪ね、地域の歴史や取材先で出会う出来事を造形材料とし、自身の内的経験と重ね、インスタレーションとして表現する作品である。彫刻作品「けはいをきくこと・・・北方圏における森の思想」シリーズの創作研究を通じ、彫刻概念のひとつの拡張として現代社会に先住民の叡智を活用する方法をさぐることができた。
著者
寺田 護 竹添 裕高 石井 明 記野 秀人 大野 民生 MOHAMED Abdu CHAN Boon T. NORHAYATI Mo NOOV HayatiM
出版者
浜松医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

3年間の研究期間において、不法移民についてはネゲリ・センビラン州レンゲンにある抑留キャンプ、合法移民についてはセランガ州にあるカレー島のヤシ油プランテーションで、それぞれ3回、計6回の調査を実施した。被験者数は総計で741名であり、その内訳は不法移民308名、合法移民221名、マレーシア人労働者212名であった。不法移民についてはインドネシアが157名と過半数を占め、以下3名のアフリカ人の他はすべてアジア諸国からの移民であった。合法移民はほとんどがインドネシア人であった。また、マレーシア人はマレー系、先住民、インド系に区別できた。全体として不法移民が他の群に比べ寄生虫感染率が高かったが、中でも病原性原虫および外部寄生虫の感染率が高く、主に衛生状態の悪さを反映する結果と思われた。合法移民については不顕性マラリアが多く見られたことが特徴であったが、追跡調査で調べられた4名の被験者はいずれも陰性であった。これは母国への一時帰国に伴って感染した典型的な輸入寄生虫症と考えられた。対照群ではそれぞれの民族性に由来する生活習慣の違いが寄生虫感染にも反映していると考えられた。不法移民では出身国や職業の違いが感染状況にも反映され、移民の寄生虫相を考える上では重要な指標であることが示唆された。全体を通してマレーシアには見られない輸入寄生虫症は見つからなかったが、移民の持ち込む寄生虫はマレーシアの寄生虫感染を一定のレベルに維持するような働きを持つことが考えられた。また、合法移民は自由に国内を行き来できることから、感染を広める上で大きな役割を果たす可能性が示唆された。入国時あるいは定期的な健康診断がこうした輸入寄生虫症の対策として重要であると考えられた。
著者
原 千恵子
出版者
東京福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

高齢者のための心理療法の開発とその実際的展開-包括的セラピーを中心として-本研究以前に4年間にわたり、高齢者施設で認知症・高齢者を対象にして包括的セラピーを実施してきた。包括セラピーは、心身にはたらきかけ、体験したものの再生や得意なことを取り入れることにより達成感、やる気をひきだし、自己効力感を得られるもので構成され、セラピストの受容的、支持的な対応の中で実施された。研究期間内にさらにセラピーの充実にむけ、実践を続けた。実施内容自体は既存の心理療法を使ったが、方法において認知症・高齢者に受け入れやすく、情緒安定、認知能力の維持、向上に貢献できるものとした。動作法、自律訓練法、芸術療法が中心であるが、対象者にあわせ工夫がなされた。動作法は、車椅子に座っていてもできるように動作を工夫し、6動作とした。自律訓練法は第2公式までとし、長期間実施した。芸術療法では、たとえばコラージュでは、会話を多く交えながら、ナラティヴメソッドによるものとした。箱庭療法では、箱庭の大きさを個別にし、ミニチュアは種類別に分類し、スタッフが運んだ。音楽療法では、高齢者にクラシック音楽鑑賞を行い、感動を色で表現してもらった。認知訓練では、百人一首を用いて「読み、書き、描く、ゲームをする」などにより脳の機能訓練を行った。結果、これまで話さなかった人が自分の思いを述べて明るくなったり、昔の思い出を箱庭に表現したり、「読み、書き、描く」に進歩が見られたなどの効果を得た。介護予防として「ケアを学び予防に生かす-元気をつらぬく」のテーマでシンポジュームを開催した。他者を援助することにより、自らの心身の健康を維持、増進することができる、という結論にいたり、6ヶ月間にわたり「傾聴ボランティア育成」を実施した。この結果については後日、まとめる予定である。
著者
王 暁葵
出版者
愛知県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、中国における日本関連の遺跡及び記念物の調査を通して、中国の日本に対する記憶とイメージの形成において、記憶の表象物としての役割を明らかにするものである。具体的には、南京・広東・広西などを調査対象地域にして、文献調査・フィールドワークなどの手法を取り、南京大虐殺記念館・広西桂林の月嶺村などの日本関連の遺跡や記念物の現状及び変遷について包括的に調査を行った。これによって、現在の中国人の日本に対する記憶の特徴を明らかにした。
著者
重田 勝介 中澤 明子 田口 真奈 松河 秀哉
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、高等教育初任者のキャリア形成を促し不安感を緩和するハイブリッド型対話支援システムを開発し評価するものである。そのために、オンラインで教員が普段の研究・教育活動を共有し語り合う教員用ソーシャル・ポートフォリオシステムを開発した。さらに、大学院生がプレFDの一環として反転授業を実施する知識や技能を身につけ、将来教員となるにあたってのスキル育成や不安感の低減を狙う研修プログラムを開発し実施した。評価の結果、参加者は教材内容に関する知識や実習における評価方法のほか、教材と授業双方に渡って学習目標の一貫性を保つことの重要性と難しさについて学んだことが明らかとなった。
著者
永井 典子 綾野 誠紀 岡田 圭子 中西 貴行
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

大学入学前教育における英語読解教育の在り方を入学前教育の特徴、対象学生の英語能力レベル、及びヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR)の「情報及び議論の為の読解能力記述文」を基に検討し、教材を開発した。教材は、自律的学習を支援するためのポートフォリオと、語彙・文法レベルはCEFRのA2(初級上)に限定しながらも大学教育で必要となるB1(中級下)の読解法力が育成できる読解テキストを一体化したものとした。
著者
金井 壽宏 三品 和広 上林 憲雄 原 拓志 平野 光俊 高橋 潔
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

長らく停滞した後、再復興期に入った日本の産業社会の活力の向上のため、企業の持続する競争優位性の元となる組織能力を再構築する必要がある。従来この議論は、たとえばリソースベースの経営戦略論として論じられてきたが、本研究では、組織能力構築に真に貢献できる、企業のコア人材、とりわけ経営人材と高度専門職人材に焦点を合わせて、人材の体系的な育成に関する理論的・実証的研究をおこなった。国家レベルの競争力を高めるうえで人材育成が果たす役割について米国を主たる比較研究も実施した。その結果、第1に、戦略の成功の問題は、人材育成の問題と切り離しては考えられないことが確認された。戦略的人的資源管理という名のもとに、戦略とリンクしてひとの問題を扱う重要性が示唆されてきたが、その育成内容は、次期経営幹部候補の体系的な育成、またその育成プロセスの加速化に焦点をあわせる研究が有望であることが判明した。また、どのように経営人材になるかという問題だけでなく、より早く最高経営責任者になり、より長く采配を振るう機会を与えることの重要性も確認された。第2に、経営人材、高度専門職人材を問わず、コア人材の育成は、フォーマルな座学の育成とのかかわりをけっして軽視することはできないが、産業のなかで、また個別の企業のなかで、いったいどのような仕事をどのような時期にだれのもとで経験するかという点がいっそう重要である。したがって、リーダーシップ開発の問題も、高度専門職の育成の問題も、なんらかの「経験の理論」にも裏付けられる必要があることがわかった。第3に、大きな展望としては、経営学におけるシステムに目を向ける視点と、ひとの問題を照射する視点とが今後は、意味ある形で統合されると、真に国家レベルの復興に経営学も貢献しうることが示唆された。経営学における人材育成を天下国家レベルの国の活力に結びつける研究への橋頭堡となった。
著者
徳光 永輔
出版者
北陸先端科学技術大学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の目的は、大きな電荷密度を誘起できる強誘電体または高誘電率材料を用いて、面積を可変できる酸化物伝導体の電極構造を提案し、これを利用して集積化可能な小型・高性能の可変容量キャパシタを実現することである。本研究では、まず提案する素子を実現するための強誘電体(Bi,La)4Ti3O12(BLT)膜形成条件の最適化と溶液プロセスによる高誘電率材料の探索を実施した。次にITOまたはIn2O3をチャネルに用いた薄膜トランジスタ型の素子を試作して動作検証を行い、約1500%のゲート電圧による容量変化を実現した。さらに素子のスイッチング特性の改善およびナノインプリントを用いた素子の微細化を実施した。
著者
高津 光洋 福永 龍繁 中園 一郎 吉岡 尚文 西 克治 前田 均 三澤 章吾
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

わが国では,乳幼児の突然死に対し安易に乳幼児突然死症候群(SIDS)と診断され,特に剖検せず,あるいは剖検所見を無視したSIDS診断も多い.このような状況から脱却するために,本研究班は文科省科研費の補助のもとに,平成11年3月「SIDS診断の法医病理学的原則に関する提言」を報告した.今回の目的はこの提言による乳幼児死亡例の死因診断を検証し,提言内容を再検討することにある.前回各大学から収集した乳幼児突然死剖検例307例中122例がSIDS群と診断されていたが,提言に従ってretrospectiveに再検討した結果,SIDSと診断せざるを得なかったのは14例であった.これは全対象例307例の5%,SIDS群の11.5%にすぎなかった.提言前後の乳幼児死亡の推移を厚労省人口動態統計で検討したところ,SIDSはほぼ半減していた.乳児死亡自体が減少しているものの,安易なSIDS診断に対して提言が警鐘となったと思われる.次に乳幼児剖検例における死因診断において,客観的根拠となり得る診断指標について,剖検所見のみならず中毒学的,病態生理・生化学的,微生物学的検査を含め検討し,窒息死と肺感染症の死因診断根拠を提示した.更に,臓器重量,溢血点の有無等の剖検所見について死因別に検討し,死因診断と死亡過程の病態分析のための客観的指標として病理形態的所見の定量分析が有用であることを示唆した.更に,実際の裁判例において提言内容を積極的に鑑定や意見書等で主張してきた.又,乳幼児急死例における虐待,揺さぶり症候群,ライ症候群など死因判定の難しい疾患についても注意を喚起した.わが国では乳幼児死亡例の剖検例が少なく,本研究年度を越えて提言の更なる検証と死因診断の客観的根拠に関する研究の必要性を認識している.
著者
ASKEW David
出版者
立命館アジア太平洋大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

該当年度に実施した研究は(1)「初期H・G・ウェルズの進化論的社会主義」、(2)「ジョナサン・スウィフトにおけるユートピア主義思想の拒絶」、そして(3)「ユートピア主義思想史研究序説」の三つである。(1)「初期H・G・ウェルズの進化論的社会主義」についていえば、"One Part Prescient,Five Parts Puerile : The Life and Works of HG Wells"という書評論文をアイランドの権威ある雑誌であるDublin Review of Books に発表した。また「初期H・G・ウェルズの進化論的社会主義--『タイム・マシン』から『宇宙戦争』までのディストピア小説における政治思想」(『立命館経済学』)という論文には多大な時間を費やした。これは既に原稿用紙で数百枚を超える大作となっており、第1部から第4部が活字となって、2011年に第5、第6(完)で終了する予定である。これは終わり次第単著としてまとめて出版する予定である。(2)「ジョナサン・スウィフトにおけるユートピア主義思想の拒絶」についていえば、書評が一つ完成しており、アメリカの雑誌に投稿している。他に、"Not Pulling Punches : Jonathan Swift's Savage Indignation"(Dublin Review of Books)という書評論文を公にした。(3)「ユートピア主義思想史研究序説」を表題とする長い学術論文(やはり原稿用紙百枚くらい)は、2011年に、査読のため『社会システム研究』という学術誌に出す予定である。なお、ユートピア(ディストピア)思想あるいは実践については、他に、邦語では『蝿の王』で有名な英国の作家、ゴールディングについて論じた「神秘の人、ウィリアム・ゴールディング」(『立命館文学』第617号)などを手掛けた。このテーマで今後も更に分析を進め、今後早い時期の論文執筆、投稿へとつなげていきたいと考えている。
著者
下川 哲矢
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

近年、限定合理性をモデル化しようとする研究が進展している。本研究では、このような研究成果をさらに発展させ、意思決定モデルと市場価格形成との関係を明らかにする。具体的には、金融資産収益に関してよく知られたいくつかの事実と我々の意思決定モデルを組み込んだ均衡モデルとの整合性を多角的に検証した。これは、限定合理的な意思決定を扱う「学習理論」と市場価格の性質を扱う「ファイナンス統計学」を結びつける貢献であるとともに、リスク下の意思決定モデルをさらに精緻化する試みである。
著者
ハーティング アクセル 吉満 たか子 岩崎 克己
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的は,ドイツ語と日本語の依頼のEメールの構造を比較することである。本研究のために,ドイツ人と日本人の学習者によって書かれた200のEメールを実験デザインによって収集した。そして形式的,構造的,言語的特性に基づきEメールを分析した。本研究の質的な結果に基づいて,ドイツ語学習者が目標言語においてより適切に依頼を書く手助けとなる教材を作成した。
著者
江口 真透 栗木 哲 藤澤 洋徳 逸見 昌之 松浦 正明 間野 修平 小森 理 竹之内 高志 川喜田 雅則
出版者
統計数理研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

ゲノム・オミクスデータから導かれる科学的成果を得るための統計的方法の開発を行った。特に表現形(病型、治療奏功性、予後)の予測に適切な情報を抽出するために統計学と機械学習の方法の融合的な活用を実用化に向けて推進してきた。表現形の予測のためにROCカーブの下側面積の最大化によるブースト法を開発した。乳がんサブタイプを決める有効な遺伝子選択のためのLASSOクラスタリングを提案し、良好な成果が得られつつある。
著者
竹内 伸直 大久保 寛 高山 正和
出版者
秋田県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

地震発生に関連すると予想される大気電気変動信号は非常に微弱であるため,大型静電アンテナを製作してこの微弱な変動信号を観測することを計画し,大型静電アンテナ建設など具体的な観測システムの整備を行った。静電アンテナの近傍には,観測信号を記録するデータ処理システムを収納するための観測小屋を設置し,空調機の導入により無人で長期間の観測を可能としている。観測点として(1)秋田県本荘市の秋田県立大学本荘キャンパス,(2)秋田県協和町の秋田県立大学セミナーハウス,(3)秋田県仙南村の農村広場の3カ所を選定し,大型静電アンテナ他の観測設備の設置を完了した。平成12年8月から大型静電アンテナの豪雪地での耐気候テスト,観測システム全体の調整および試験的なデータ収集を継続し,本研究の2年目となる平成13年度から本格的な観測を継続して行ってきた。観測期間中の平成13年12月2日の22時2分ころ,岩手県内陸南部の地下深く発生した地震は,秋田県内全域で震度3以上の揺れとなり,本研究で準備した3箇所の観測点で,地震波に伴う各種の変動信号を観測することに成功した。主な結果は,以下の通りである。(1)3観測点で地震波伝搬時に地電位差変動,大気電気変動信号が観測できる。(2)観測点により変動信号の振幅が大きく異なる。(3)地電位差変動信号の発生と大気電気変動信号の発生には密接な関係が認められる。(4)観測点の地層状態が変動信号の発生に大きな影響を与えていると推測できる。本研究で得られた観測結果およびこれまでに得られた研究結果をもとにして,地震波伝搬時の地電位差変動の発生モデルをより明確にすることが出来た。すなわち,地下水面の位置と埋設電極の配置の違いにより,発生する地電位差変動信号の大きさが異なる。したがって,地下水面からの地下水の流動による電位の発生が地電位差変動の原因とすることが出来る。
著者
西堀 すき江 並木 和子
出版者
東海学園大学短期大学部
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

焙焼したココア,コーヒー,ピーナッツ,ポップコーン,ローストビーフ,チキン等を加熱すると,それらの食品中の糖とアミノ酸が反応し、褐変と同時に芳ばしい香気が発生する.この中にはきわめて多種多様の揮発性物質が存在するが,これらはNH3・H2S・CH3SCH3・CH3SHのような常温でガス状のもの,ストレッカー分解により生成するアルデヒド類,N・Sを含むヘテロ環化合物に大別することができる.ピラジンはN・Sを含むヘテロ環化合物の一種で,焙焼によって生成するフレーバーの主なものはピラジン誘導体である.焙焼した食品からは70種以上のピラジンが同定されている.これはストレッカー分解の結果生成したエナミノール,またはアミノケトン誘導体の縮合により生成するもので,アルキル置換基C1〜C3が普通であるが,アセチル基,シクロペンタン環,フラン環を有するものも存在する.12年度はピラジン標品の生理活性と構造相関に関して検討した.今年度は実際の食品であるコーヒーと胡麻について検討した.胡麻は水蒸気蒸留の変法でLickens-Nickerson型の改良でSimultaneous distillation extraction(SDE)法と称される連続水蒸気蒸留法により抽出した.抽出溶媒により,血小板凝集阻害率が異なり,エーテル抽出の方が抗血栓効果が高くなった.コーヒーの焙煎における抗血栓効果は焙煎度の高いイタリアンローストがノーマルローストより高いことが分かった.また,抽出液を酸性,中性,塩基性の3種類に分類し検討すると,塩基性区分の抽出液が最も高い抗血栓効果を示すことが分かった.ピラジンは塩基性の物質であるため,コーヒーの揮発性抽出物の中でピラジンが抗血栓効果に関与することが示唆された.ガスクロマトグラフィーによるピラジンの生成量に関するピークの検出で,イタリアンローストがノーマルローストより多くのピークが認められたことは,コーヒーの抗血栓効果におよぼすピラジンの寄与が考えられた.
著者
若松 正志 加茂 正典
出版者
京都産業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究は、江戸時代に「神祇管領長上」として全国の神社・神職を支配した吉田神社において、その実務を担当し、また大嘗祭・新嘗祭など朝廷祭祀にも直接関与した、鈴鹿家について、現在ご当主のもとに伝来している資料(以下、鈴鹿家文書とする。文書以外に、絵図・モノもある)の整理・目録化を行い、内容を分析・検討することにより、鈴鹿家文書の史料的位置、吉田神社・鈴鹿家が果たした役割を明らかにすることを目的とした。研究代表者の若松は、数名の研究協力者と、鈴鹿家文書のうち、鈴鹿家の「江戸下り」(毎年2〜3月頃江戸に行き将軍に拝謁)関係史料約2000点と、幕末〜明治期の資料約450点について、整理と調査を行った。中性紙封筒への袋詰めは完了したが、目録化は約1000点にとどまり、残りの作業は今後の課題となった。また、鈴鹿家文書の伝来などについて各地に出張調査を行い、およその状況を把握することができた。研究分担者の加茂は、研究協力者の岡田芳幸と共に、鈴鹿家の宮廷祭祀関係資料について、月1回のペースで所蔵者宅を訪れ、一点毎の資料調書作成とデジタルカメラによる撮影、中性紙封筒への整理・保管という基礎作業を行い、全554点の資料調査を終了させ、「鈴鹿家所蔵大嘗祭・新嘗祭資料目録(第一次)」(平成17年8月。A4判126頁)をまとめた。これにより、かつて鳥越憲三郎・有坂隆道・島田竜雄編『大嘗祭史料 鈴鹿家文書』(柏書房、平成2年)において紹介された96点を大きく超える数の学界初見資料の伝襲が確認され、鈴鹿家宮廷祭祀関係資料(大嘗祭・新嘗祭・神嘗祭など)の全貌が初めて明らかになったのである。また、資料調査にもとづく論考も数編発表した。なお、上記の目録作成後、所蔵者の鈴鹿長雄氏から、加茂の本務校である皇學館大学神道博物館へ同家所蔵資料の寄託申し入れをいただき、平成17年12月、鈴鹿家文書が皇學館大学に寄託された。
著者
荒木 寿友
出版者
同志社女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は、学校コミュニティの形成を図る一つの方法としてL.コールバーグ(Lawrence Kohlberg: 1927-87)のジャスト・コミュニティアプローチ(Just Community Approach)を用いることによって、様々な学校教育階梯におけるコミュニティ形成のためのカリキュラムをデザインすることにあった。ここでいうカリキュラム・デザインとは、教育課程編成を意味するだけではなく、隠れたカリキュラム、及びコミュニティの空間等のデザインも含まれる包括的な用語である。総括にあたる本年度は、とりわけこどもの「学び」が現実の生活の中で実感できるためのカリキュラムデザインについて研究を行った。本年度は、昨年度に引き続き、ワークショップを行った(2007年7月1日実施)。本ワークショップでは、大学近隣のこども(3歳から12歳まで)35名を大学へ招き、ダンボールを媒介として、こどもの遊びを中心とした活動を行った。具体的には、ダンボールでフロアに巨大迷路を造り、それぞれポイントとなる場所に子どもたち自身に「秘密基地」をつくってもらうという活動である。本ワークショップを通じて、人と人、人とモノの関わり合いの中から、こどもにとっての「学び」を捉えることができた。つまり、「学び」とは決して自分自身がモノと向き合うだけで成立するものではなく、そこには他者との関わりが必要であるし、またそれによって過去の自分がイメージしていたことをより具体的に表現することなのである。
著者
岡部 卓 小林 理 西村 貴之
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究の目的は、生活保護受給有子世帯を対象とし貧困の再生産(世代間継承)解消の観点から学習・進学支援に関する研究を行うことであった。以上の研究目的を踏まえて、本研究事業では以下3つの研究が実施された。第1に、生活保護受給世帯の養育者に対する調査(アンケート調査・インタビュー調査)ならびに支援者調査(ソーシャルワーカー、関係機関)を実施し、その結果を分析している。分析結果からは、養育者や子どもの直面する課題などが析出された。第2に、受給有子世帯に対する支援プログラムを、神奈川県と共同で開発した。第3に、プログラムの効果を測る評価指標を開発し実際に効果測定を行っている。
著者
杉内 友理子
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

これまで明らかにされていなかった、輻輳性眼球運動に関与する神経機構を解析した。従来、急速眼球運動の生成に関与することが知られている上丘の頭側部に、輻輳性眼球運動に関与すると考えられるニューロンが存在することが示唆された。その出力は、動眼神経核背側部の中脳灰白質から中脳網様体にかけての領域に存在する介在ニューロンを介して、内直筋および外直筋の運動ニューロンに伝えられると考えられた。
著者
山内 恭 森本 真司 青木 周司 菅原 敏
出版者
国立極地研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

南極域成層圏における温室効果気体の分布と変動を明らかにするため、 様々な改良を加えた小型成層圏大気サンプラーを南極・昭和基地から小型気球を用いて飛揚し、 14-29km の4 高度においてそれぞれ10.7 から7.0L(標準状態)の大気試料を採取することに成 功した。大気試料の精密分析によって、CO2、CH4、N2O、SF6 濃度、及びO2/N2 比、Ar/N2 比の鉛直 分布と経年変化が明らかになった。