著者
北 徹 中谷 矩章 松沢 佑次 KOREAKI NAKAYA
出版者
京都大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1987

我国においても食生活の欧米化に伴い、狭心症、心筋梗塞等の虚血性心疾患の発生頻度が年々上昇している、我々の研究成果を基に上記症の根底をなす動脈硬化発症につき、ことに血清コレステロール代謝に注目し、まず食餌因子の血清コレステロールに与える影響について検討を試みることにした。従来より食餌性の諸因子が血清コレステロール、ことにLDLコレステロールに影響を与えることが知られている。我々は動物性食物の摂取がほとんど無い禅宗修行僧に注目し、彼等の血清脂質と食餌成分とを比較検討し、合わせて外国人および日本人修行僧の比較を試みた。<結果>京都市内の禅寺修行僧を対象に検討とたところ(平均年令29.7才)血清総コレステロール値135,1mg/dlでLDL値は73mg/dlであった。一方コントロールの成人男子は血清コレステロール値が188.9mg/dlでLDLが108.6mg/dlであり、明らかに修行僧の血清コレステロール値ことにLDLコレステロール値は低値を示した。次に外国人、日本人の同居する禅寺において検討したところ、外国人の総コレステロール値は149mg/dl、LDL値は77mg/dl、日本人のそれは150mg/dl、82mg/dlであった。一方コントロールのそれは187mg/dl、112mg/dlであり、人種差が影響していないことが判明した。また禅寺に入山前後で食餌成分の影響を検討したところ、入山前総コレステロール、LDL値は166mg/dl、92mg/dlで6ケ月後に136、77mg/dlに低下している事が判明した。食餌分析の結果、総摂取カロリーには変化が少ないが、禅僧はコレステロールの摂取がほとんど無くしかも動物性食物の摂取が無いためと思われるが、不飽和脂肪酸の摂取が多く、それに比して飽和脂肪酸の摂取が少ない事が明らかとなった。現在動物を用いて飽和脂肪酸を多く含んだ食事、逆に不飽和脂肪酸を多く含んだ食事により、血清コレステロール値の変動を検討する予備実験を進めている。
著者
北 徹 濱口 洋 若月 芳雄 久米 典昭 横出 正之 土井 俊夫 吉岡 秀幸
出版者
京都大学
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1993

まず、本研究の目的である血管内皮細胞への接着及びその阻害効果を判定する方法として、ヒト臍帯静脈から採取した内皮細胞を培養し、あらかじめ常法にて採取した単球の接着を行う。24時間培養を行い、dishを洗浄した後、ギムザ染色にて、その後着量を判定する。この際、あらかじめマロチラート(Diisoprophyl-1、3-dithiol-2-ylidenemalonate)、あるいは抗単球接着分子抗体を添加した群との間で比較検討を行う。マロチラート(diisoprophyl-1、3-dithiol-2-ylidenemalonate)の単球接着阻害効果については繰り返し実験を行ったが、際立った効果をあげるに至らなかった。単球接着分子については、invivoの判定を考慮に入れると、ウサギの系が最も扱いやすく、その場合にはVCAM-1が最もよい接着分子と考えられた。。VCAM-1と単球接着の関係を観察する目的で、まず、遺伝的に動脈硬化を引き起こすWHHLウサギを用いて、それぞれに動態を検討したところ、1ヶ月令ですでに動脈硬化の起こりやすい場合にVCAM-1の発現を抗VCAM-1抗体を用いて確認することができた。この際、第1肋間動脈では、その入口のみに接着分子の発現が観察されたが、2ヶ月令では、その付近の動脈では全周にわたって観察されることが明らかにされた。1ヶ月令ではすでに単球-マイクロファージの存在も確認された。約3ヶ月令ではTリンパ球の存在も同部位に確認された。この事実は始めての結果であり、学会発表予定であり、論文も準備中である。この間、接着分子のノックアウトマウスの研究が米国において行われ、単独の単球の接着が単球接着分子のみにて起こる現象ではないことが判明し、今回の研究テーマも方向転換せざるをえなくなった。
著者
若月 芳雄 HO Bow FOCK KWong M 千葉 勉 FOCK Kwong M BLASER Marti STROBER Warr
出版者
京都大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1997

H.pylori感染患者は全世界で約20億人、日本では約7000万人にのぼり、単一感染症としてはその感染患者数は史上最大であり、上部消化管の様々な良悪性疾患の原因となり関連疾患に要する医療費は莫大である。感染患者の病型を決定する因子については、欧米と日本の報告に解離がありその大略は未だに不明である。 国立シンガポール大学のHo Bow,Chang Gi病院のFock Kwong Ming等との共同研究によりシンガポールでは、中国系・インド系の人種グループには80〜90%の高いH.pylori感染者が存在するのに対して、マレー系のグループには40%の低い感染率であることが判明した。一方H.pylori感染症によりおこる慢性萎縮性胃炎と胃癌との関係は確立しているが、中国系、マレー系にはH.pyloriの感染罹患度に応じた胃癌累積発生を観るのに対して、インド系ではその高度な感染率に比較して胃癌発生頻度が極めて低いことが判明した。そこで今年度はマレーシアのKebangsaan Malaysia大学医学部細菌・免疫学教室のRamelha Mohamed助教授と協力して、同国の中国系・インド系・マレー系マレーシア人の感染患者より、H.pyloriの臨床分離株を収集しその遺伝子型と、臨床病型の解析に着手した。一方日本人患者からの臨床分離株のゲノム遺伝子ライブラリーより患者血清と家兎抗体を用いて、幾つかの抗原遺伝子をクローニングしそのうち、約19Kdの二量体型の膜蛋白(HP-MP1)はH.pyloriに特異的な新規抗原遺伝子であること、その組み替え体は単球を活性化するものであることを発見した。これらの所見は、この感染症の病態解明のみならず宿主の免疫応答を利用した新しい治療法の開発につながるものと考えられる。
著者
谷川 道雄
出版者
史学研究会
雑誌
史林 (ISSN:03869369)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.p966-979, 1985-11
著者
久万 善広 梅比良 正弘
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. RCS, 無線通信システム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.518, pp.239-244, 2008-02-27
被引用文献数
4

周波数領域等化を用いるシングルキャリア伝送(SC-FDE)方式はOFDMに比べてPAPRが小さく、周波数選択性フェージング下においてOFDMと同等の特性が得られるが、サイクリックプレフィックス(CP)の挿入が必要であり、周波数利用効率が低下するという問題がある。本文では、オーバーラップFDEを用いたゼロCPシングルキャリア方式(ZCP-SCFDE)を提案し、計算機シミュレーションにより特性評価を行ったので報告する。
著者
坂本 育生 樋口 晶彦 日高 正康
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

2010年、坂本は国連機関、国際海事機構(International Maritime Office)」を訪問し、海事英語の貴重な資料を収集した。その後エジンバラ大学での夏季研修を受講し、ESPの最新英語教育教授法研修を受けた。2013年3月までに3本の学術論文を発表し現在4本目の論文を作成中である。大学生へのmotivation促進効果は、海事英語授業と国際英検(G-TELP)によりその効果が実証された。現在坂本は、新英語教材をほぼ完成させ、英語教材大手出版社「南雲堂」と出版契約を結び最終原稿推敲過程にある。
著者
森 昌之 加納 正雄 首藤 晃一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. OFS, オフィスシステム
巻号頁・発行日
vol.98, no.546, pp.1-6, 1999-01-22

地域のホームユーザ, 中小ビジネスユーザにコンピュータ通信サービスを経済的に提供する地域情報ネットワークシステムは, センタ側装置である多重化ブルータ(MBR)とグループ管理サーバ(GMS), そしてユーザ宅に設置されるローエンドカード(LECard)により構成される.LECardは, ユーザ宅にイーサネットインタフェースを提供するとともに, グループ通信サービスに必要なPC末端MACアドレスの検出・通知機能を有している.本稿では, LECardのマルチプロセッサ対応を目的とした装置構成ならびに制御ソフト(CW)遠隔ダウンロード方式について述べる.さらに, LECardの低コスト・小型化に向け, CAM機能を内蔵したMPUを適用する装置構成法について提案する.
著者
肥塚 隆 淺湫 毅 橋本 康子 深見 純生 小野 邦彦 上野 邦一 榎本 文雄 渡辺 佳成 丸井 雅子
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

クメール王国の刻文に頻出する devaraja の語は、 「神のような王」を意味し、王の没後にその墓廟として寺院が造営され、神仏と一体化した王像が安置されたと考えられてきた。また東部ジャワでも、同様な信仰があったとされてきた。しかしインドではこの語は「神々の王」の意味で用いられるのが一般的で、王を神格化する信仰が盛行した形跡はない。南インドでは王像が神像と並べて寺院に安置されることは珍しくないが、むしろ王権の神聖さの明示にあったと考えられる。

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著者
鶴見俊輔 [ほか] 編
出版者
筑摩書房
巻号頁・発行日
2011
著者
古澤 明 青木 隆朗
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究では、高レベルスクイーズド光の生成とそれによる高レベル量子エンタングルメントの生成、測定およびフィードフォワードを用いたユニバーサルスクイーザー、量子非破壊測定(量子非破壊相互作用)の実現を目的としている。具体的な研究成果は以下のようなものである。(1)周期分極反転KTiOPO_4(PPKTP)疑似位相整合結晶を非線形媒体とした光パラメトリック発振器(OPO)を作製し、高レベルスクイーズド光の生成に成功した。まず、波長946nmにてその可能性を明らかにした。その結果に基づき、高いポンプパワーを期待できる波長860nmで実験を行い、14年ぶりに世界記録を塗り替え7dBのスクイーズを達成した。さらに、測定系の位相揺らぎを抑えることにより、9dBのスクイーズを達成した。これらの成果により、生成できる量子エンタングルメントのレベルは格段に高まった。(2)測定およびフィードフォワードの手法の代表例は、量子テレポーテーションと呼ばれる波動関数の伝送であり、そのフィデリティはこの手法の成功の度合いを示す(フィデリティ1=100%成功)。したがって、本研究で生成に成功した高レベルスクイーズド光を用い、量子テレポーテーションのフィデリティを測定してみた。その結果0.83という高い値が得られ、この高レベルスクイーズド光を用いれば、測定およびフィードフォワードの手法を高い確率で成功させられることが明らかとなった。(3)高レベルスクイーズド光を用いて生成した高レベル量子エンタングルメントと併せて、測定およびフィードフォワードの手法を用いることにより、ユニバーサルスクイーザーを作製することに成功した。(4)ユニバーサルスクイーザー2台を作製し、これらをさらに可変ビームスプリッターを用いて結合することにより、量子非破壊相互作用装置を作製した。これを用いて、2つの共役な変数(直交位相振幅成分)に於いて量子非破壊測定を行った。これらは、いずれの場合に於いても成功した。また、この結果から、この量子非破壊相互作用装置の2つの出力はエンタングルしていることが明らかになり、量子ビットの制御NOTゲートと同様に、エンタングリングゲートとしての働きがあることがわかった。
著者
梁 〓模 金子 哲也 北澤 章平 景山 一郎 松浦 譲
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
年次大会講演論文集 : JSME annual meeting
巻号頁・発行日
vol.2009, no.7, pp.197-198, 2009-09-12

This paper proposes a steering control strategy for new transport system equipped with an all-wheel steering system to achieve zero off-tracking running. In this system, the center of each axle passes through the same locus, which is similar to the operation of trains. The control system is composed of two parts-the feedforward and feedback controllers. A sliding mode controller as a nonlinear robust control is applied and imparts sufficient robustness by correcting the steeringangle. This control system was validated by means of numerical simulations using a multi degree of freedom vehicle dynamics model.
著者
是澤 博昭 湯川 嘉津美 広田 照幸
出版者
聖徳大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究では、近代日本の地域社会における幼稚園教育の社会的機能について、茨城県土浦幼稚園を事例として検討を行った。土浦幼稚園は1885(明治18)年に設立され、今日まで120年余り地域の幼稚園として命脈を保ってきた公立幼稚園であり、同園には文書資料はもとより、幼稚園の教材・教具類などの実物資料が数多く残されている。そこで、まず資料(計429点)の整理と目録作成を行い、つぎに入園綴や退園届、保育証授与簿などをもとに「土浦幼稚園園児データベース」作成して、利用層についての数量的分析を行い、明治期から大正期にかけての土浦幼稚園の実態と同園が地域社会において果たした社会的機能を総合的に検証した。研究成果は以下の通りである。1)近代日本における幼稚園導入・普及の社会的文脈について、1892年の幼稚園調査を用いて全国的動向の把握を行った。そして、当時の幼稚園が「教育の質」と「社会的開放性」と「財政上の要因」をめぐって複雑なトリレンマ(三すくみ)の状態にあったこと、そのなかで、土浦幼稚園は公費支出と保育料の低額化によって財政上の要因と社会的開放性の問題を解決して、そのトリレンマを処理していたことを明らかにした。2)土浦幼稚園の設立とその後の展開過程について検討し、土浦幼稚園がおもに商業者の支持を得て設立・維持され、小学校との関係を持ちながら、就学準備教育機関として機能していたことを明らかにした。3)「土浦幼稚園園児データベース」をもとに、利用層の数量的分析を行い、女子の就園率の高さ、通園圏の狭さ、在園期間等から、土浦町では幼稚園が小学校就学前の教育機関として男女によらず必要であるという認識が一定程度広まっていたこと、そして、そこでは学歴獲得や社会的地位達成とは別の文脈で、幼稚園の就園そのものに意味を見出す利用がなされていたことなど、土浦幼稚園の実際を利用者の側から明らかにした。
著者
根岸 毅宏
出版者
東京大学社会科学研究所
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.67-99, 2009

アメリカの福祉再編は, 福祉受給者を就労させることで福祉から脱却させる1990年代の政策から, 経済的な自立のためにフルタイム雇用とキャリア向上を促す2000年代の政策へと, 就労を重視する方向にさらに一歩進むことになった. 本稿は, こうしたアメリカの福祉再編を州政府の側に重点を置いて検討することにより, 次の3点を明確にする. 第1に, 1990年代の福祉再編が, グローバリゼーションのもとで, 労働技能を高める方向での労働編成の再編を大枠とする政策体系の一環として行われたことである. 第2に, 1996年連邦福祉改革は, それ以前に州政府がウェイバー条項を活用して導入した施策への, 連邦政府の側の対応であったことである. 第3に, 2006年の連邦福祉改革法の再承認で, 就労を重視する方向にさらに一歩進んだ背景としては, フロリダ州のように, 福祉受給者や低所得者のキャリアの向上に成果を上げつつあるプログラムもあったことである.The priority of U.S. welfare policy in the 1990's was for recipients to leave welfare through employment. The priority of the current decade is for welfare leavers and recipients to achieve independence by getting a full-time job and climbing the career ladder. Consequently, U.S. welfare policy has advanced further in the direction of putting an emphasis on work. This paper discusses U.S. welfare policy from the viewpoint of state governments. In this paper I focus on the followlng three points. First, state governments implemented welfare reform as part of a policy framework based on a high productivity work model to fit with the global economy. Second, the 1996 Federal welfare reform responded in a favorable and complementary fashion to State welfare policies introduced around 1990. Third, state-based job trainlng programs that encouraged welfare recipients to climb the career ladder had an impact on the 2006 Federal welfare reform reauthorization.
著者
竹 あかね 斉藤 三行 岡辺 明子
出版者
Japanese Society of Agricultural Informatics
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.42-49, 2008
被引用文献数
4

農林水産関連情報の検索効率化に資する言語資源を開発したので,その概要を報告する.筑波事務所は,国際連合食糧農業機関(FAO)が欧州共同体委員会と共同開発した多言語シソーラス(AGROVOC)の収録用語(約27,300語)を2002年に日本語へ翻訳した.AGROVOCの収録分野は農林水産業,食品およびその関連分野であり,日本語翻訳した用語は,英語・フランス語・スペイン語・中国語・アラビア語,チェコ語・ポルトガル語・日本語・タイ語・スロバキア語・ドイツ語の11言語で利用できる.AGROVOCには日本固有の農林水産関連用語が不足していたため,2004年にAGROVOCに用語を追加した農林水産技術用語集の作成を行った.用語集は,約35,000用語を収録し,各用語は日本語・英語で表記される.追加した用語は,用語間の関連性を新たに構築し,階層関係・等価関係の情報を収録した.また,この用語集をもとに農林水産関連文献からの索引語抽出に利用できる形態素解析辞書を作成した.この辞書には,日本語で表記された用語,および表記揺れ情報を収録した.<br>