著者
宮里 心一
出版者
金沢工業大学
雑誌
KIT progress : 工学教育研究 (ISSN:13421662)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.51-60, 2011-03-15

産学共同研究の一部が、工学設計IIIの研究プロジェクトになる場合がある。すなわち、学生は教員ならびに共同研究先の企業人とチームを組み、プロジェクトが推進される。したがって、その結果として研究成果が挙がるとともに、学生にとっては教員のみならず企業人からも教育的指導を受けることによる能力向上が期待できる。本論文では後者に注目し、産学共同研究プロジェクトに参画した5人の4年生に関する教育効果を整理した。すなわち、教員のみならず企業人も、学生のエンジニアリングデザイン能力(2点)と人間力(3点)の計5つの観点に関して3度に亘り評価し、その後に学生も自己評価する教育システムを試行した結果を分析した。その結果、共同研究プロジェクトを通じた産学連携による教育は、学生の能力向上に大いに役立つことが明らかになった。
著者
鯉沼 葉子
出版者
研究・イノベーション学会
雑誌
研究技術計画 (ISSN:09147020)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.369-382, 2010-12-17

日本では,理工系分野の女性研究者が少ないことに注目が集まり,大学進学の際に理工系を選択する女子が少ない原因の究明や,増やすための政策的取り組みなどが始まっている。しかし,では理工系を選択した女性が大学でどのような環境に置かれているか,研究者の道に進む意欲を高めるような環境にあるか,といった検討はまだあまりなされていない。工学系に焦点を絞った検討となると,さらに少ない。A工業大学は,女性研究者登用推進を目指す第一歩として,女子の学部生・院生と過去10年間の卒業生・修了生を対象に意識調査を実施し,結果を公表した。そこで,この公表された結果を分析して,同校の女子学生の多くはなぜ大学院前期・後期へ進学しないのか,その原因を明らかにし,同校における女子学生を取り巻く環境が彼らのその後の進路選択にどのような影響を与えているかを考察した。その結果,A工業大学の女子学生,とりわけ学部学生では,女性は進学すると就職が難しくなるとの風説の影響を受け,将来像を描くための十分な材料も時間もないまま就職へと流れていく者が多いこと,博士前期の女性では,研究室とそこで行われている研究活動に魅力を感じず大学を出ていく者が少なくないことなどが明らかになった。この調査に見る限り,同校における女子学生を取り巻く環境は,女性工学修士・博士の誕生を奨励する方向にあるとは言いがたい。
著者
Akira Nishimura Nobuo Koizumi
出版者
ACOUSTICAL SOCIETY OF JAPAN
雑誌
Acoustical Science and Technology (ISSN:13463969)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.172-180, 2010-03-01 (Released:2010-03-01)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

A method of sampling jitter measurement based on time-domain analytic signals is proposed. Computer simulations and actual measurements were performed to compare the proposed method with the conventional method, in which jitter is evaluated from the amplitudes of sideband spectra for observed signals in the frequency domain. The results show that the proposed method is effective in that it 1) provides high temporal resolution as a result of the direct derivation of the jitter waveform, 2) achieves higher accuracy in the measurement of jitter amplitude, and 3) can separate phase modulation that originate in sampling jitter from amplitude modulation that originate in digital-to-analog and analog-to-digital conversion processes. Suitable measurement conditions and measurements to separate the effects of jitter in a digital-to-analog converter and an analog-to-digital converter are described.
著者
出口 康夫
出版者
京都大学
雑誌
京都大學文學部研究紀要 (ISSN:04529774)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.A41-A84, 2005-03-31

この論文は国立情報学研究所の学術雑誌公開支援事業により電子化されました。
著者
只木 良也 沖野 外輝夫 青木 淳一 斎藤 隆史 萩原 秋男
出版者
名古屋大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1993

1.名古屋市内やその周辺の二次林について、リターフォールの季節変化、構成樹種の葉緑素の充実と成長、フェノロジー、現存量などの調査。その生産力が、貧立地にもかかわらず予想外に大きいことを確認した。名古屋市近郊里山の具体的な保全利用計画立案に参画した。(只木)2.都市樹林地で、その活動による土壌気相中のCO_2濃度の垂直分布を調べ、樹林地の環境保全効果の実態を解明した。また、外気のCO_2濃度に応じた樹木のガス交換能力、すなわち光合成、呼吸、体内蓄積(成長)などの挙動を実験的に検討し、樹木や森林の存在と空中水分の関係についても実測した。(萩原)3.都市域と里山で、鳥類の種構成、個体数の相対出現頻度および両地区の類似度を比較した。都市域の鳥類相の大部分は、里山の鳥類相に起源を持ち、都市鳥類化は、里山→農村域→都市域の順に生じたと考えられる。これを確認するためには、さらに農村域の鳥類相を調査する必要がある。(斎藤)4.都市域およびその周辺域の緑地において、豊かな自然を維持するために土壌表層の管理が重要であるが、千葉・神奈川・東京の3都県下の緑地における65地点において「自然の豊かさ」の評価を行った。その結果、評価点は自然樹林地で高く、次いで人工林や竹林、草地では評価点は低かった。(青木)5.ヨシ原実験圃場での生物群集の変遷と水質の変化について追跡調査。植物相のみならず、実験圃場に飛来する昆虫類の季節的変化も観測した。諏訪湖湖畔の再自然化計画の立案にも参画。ヨシ原実験圃場その他の研究成果を生かして、湖内に生育する水生生物の視点からの造成計画を進めた。(沖野)6.過去3年間の研究成果を踏まえて、人工集中域の自然や緑地の望ましい姿を討議し、各人の研究成果とともに研究成果報告書(「人間地球系重点領域研究B008-EK23-18」)を刊行した。(全員)
著者
関 喜一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. WIT, 福祉情報工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.58, pp.87-90, 2011-05-13

電子情報技術を活用した視覚障害者のための歩行支援技術の変遷を概説する.1960年代より,電子技術を活用した歩行補助装置なるものの開発が始まった.この時代の歩行補助装置は主に超音波センサを用いた障害物探知機であった.これらの機器は視覚障害リハビリテーションへの導入が試みられたが,やがて下火になった.その後,障害物探知機ではなく,視覚障害者のナビゲーションシステムがさかんに開発された.やがて,互換性のないナビゲーション技術が乱立する状態になった.現在,これらの技術の標準化が進められている.
著者
Fujimoto Hisataka Hasegawa Taku Watanabe Dai
出版者
The Society for Neuroscience
雑誌
The Journal of neuroscience : the official journal of the Society for Neuroscience (ISSN:02706474)
巻号頁・発行日
vol.31, no.27, pp.10023-10033, 2011-07-06
被引用文献数
94

鳥類の音声における文法規則の神経コーディングの解明. 京都大学プレスリリース. 2011-7-15.
著者
川上 一貴 岡部 晋典 鈴木 誠一郎
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.245-250, 2010-05-28 (Released:2011-06-25)
被引用文献数
1 3

本報では地域情報をWeb上にアーカイブし公開する「地域映像アーカイブ」を対象に,2008年にアンケート調査を行い,加えて,2011年にアンケート対象アーカイブの存続度合いを調査した.結果,アクセス解析の有無には自アーカイブに対する更新の姿勢が異なることが関係すること,2004年の先行研究で行われた自アーカイブへの問題点の指摘は2008年の時点では別の問題として変質したこと,自治体が設置母体のデジタルアーカイブは推進団体によるそれよりむしろ消滅しやすいこと等の知見を得た.
著者
西村 清和 尼ヶ崎 彬 長野 順子 相澤 照明 山田 忠彰 中川 真 渡辺 裕 津上 英輔 青木 孝夫 外山 紀久子 大石 昌史 小田部 胤久 安西 信一 椎原 伸博 上村 博 木村 建哉 上石 学 喜屋武 盛也 東口 豊 太田 峰夫
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

本研究は従来自然美論、風景論、環境美学、都市美学という評語のもとで考えられてきたさまざまな具体的、個別的諸問題領域を、日常生活の場において企てられたさまざまな美的実践としてとらえなおし、あらたな理論化を目指すものである。具体的には風景、都市景観、森林、公園、庭園、人工地盤、観光、映画ロケ地、遊芸、雨(天候)、清掃アートなど多様な現象をとりあげて分析し、その成果を『日常性の環境美学』(勁草書房、2012)として刊行した。
著者
Minli WANG Megumi HADA Janice HUFF Janice M. PLUTH Jennifer ANDERSON Peter O'NEILL Francis A. CUCINOTTA
出版者
Journal of Radiation Research Editorial Committee
雑誌
Journal of Radiation Research (ISSN:04493060)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.51-57, 2012 (Released:2012-02-02)
参考文献数
27
被引用文献数
13

TGFβ is a key modulator of the Epithelial–Mesenchymal Transition (EMT), a process important in cancer progression and metastasis, which leads to the suppression of epithelial genes and expression of mesenchymal proteins. Ionizing radiation was found to specifically induce expression of the TGF-β1 isoform, which can modulate late post-radiation changes and increase the risk of tumor development and metastasis. Interactions between TGFβ induced EMT and DNA damage responses have not been fully elucidated, particularly at low doses and following different radiation quality exposures. Further characterization of the relationship between radiation quality, EMT and cancer development is warranted. We investigated whether space radiation induced TGFβ dependent EMT, using hTERT immortalized human esophageal epithelial cells (EPC2-hTERT) and non-transformed mink lung epithelial cells (Mv1Lu). We have observed morphologic and molecular alterations in EPC2 and Mv1Lu cells consistent with EMT after pre-treatment with TGFβ1. This effect could be efficiently inhibited in both cell lines by the use of a TGFβRI inhibitor. High-energy silicon or iron nuclei were each able to cause a mild induction of EMT, with the inclusion of TGFβ1 inducing a greatly enhanced EMT phenotype even when cells were irradiated with doses as low as 0.1 Gy. A further enhancement of EMT was achieved at a higher dose of 2 Gy. TGFβRI inhibitor was able to reverse the EMT induced by the combination of TGFβ1 and radiation. These studies indicate that heavy ions, even at a low dose, may trigger the process of TGFβ1–induced EMT, and suggest further studies are needed to determine whether the chronic exposures received in space may potentiate this process in astronauts, leading to an increased risk of cancer.
著者
池田 直美 新藤 浩之 飯出 芳弥 浅井 弘彰 久保山 智司 松田 純夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.88, no.1, pp.108-116, 2005-01-01
被引用文献数
7

民生部品・コンポーネント実証衛星「つばさ」に搭載された民生半導体部品実験装置(Commercial Semiconductor Devices: CSD)は民生用半導体デバイスの宇宙空間における放射線耐性を計測するものであり,将来民生用のデバイスを宇宙で積極的に使っていくための評価手法を確立することを目的としている.約1年半にわたる「つばさ」の軌道上運用期間中,搭載した民生用半導体デバイスについて放射線影響に関する世界的にも貴重なデータを取得し,地上における試験と併せて評価を行った.その結果,シングルイベント効果については,地上試験から得られた予測値と観測結果との間にばらつきが見られた.これは,近年の飛躍的な技術の進歩(デバイスの小型化・大容量化等)に予測モデルが対応しきれなくなりつつある現状を示唆していると考えられる.また,トータルドーズ効果については,ほとんどのデバイスで予測結果と観測結果が比較的よい一致を示したものの,DRAMについては予測よりも放射線耐性が低いという結果が得られた.これは,新たな放射線耐性劣化現象の可能性を示唆している.