著者
赤木 右 片山 葉子 土器屋 由起子 五十嵐 康人
出版者
東京農工大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2004

富士山測候所を利用して、1990年代初めより大気化学観測を続けてきた。しかしながら、2004年9月の測候所無人化が急遽決定され、1992年以来連続観測を行ってきたオゾン濃度をはじめ、大気化学関係の装置の撤収が要求された。その様な状況の中、測候所の協力を得て、特別に割かれた2004年6月18-22日の期間を利用して、従来の体制の中で最後の集中観測を行った。さらに、2005年は太郎坊避難所を中心に集中観測を行い、山頂での測定は、BC、パーティクルカウンターなどに限定して行った。観測項目は以下の通りである。エアロゾルおよび雨水の主要化学成分,粒径分布,雨水の主要化学成分、エアロゾルの粒径分布、^7Be濃度,SO_2濃度,O_3濃度,CO濃度,^<222>Rn濃度、COSの鉛直分布、同位体、NOx、ブラックカーボン。今年度は、梅雨明け前後にあたり、前半は曇りがちで、後半は比較的安定した晴天となったため、降水試料は得られなかった。2002年から2005年までの4年間に行った観測結果を整理し、次の様な結論を得た。まず、山頂と太郎坊とで得られたデータを比較することにより、(1)一般に化学成分の濃度は山頂において低いが、より細かくみると、COS濃度は山頂の方が高い、オゾンは山頂からの変動が先んずる、などの結果を得た。各成分の発生過程、分解過程について制約することが可能である。さらに、(2)自由対流圏の連続観測プラットフォームとしての富士山頂は理想的な地点であり、航空機観測の補完を行い東アジアの大気化学の情報を与える。(3)山体を4000mの観測タワーとみなすことで、微量気体の鉛直分布などの研究が出来る。
著者
近泉 惣次郎
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.13-18, 2002-01-15
参考文献数
14
被引用文献数
2 1

'大谷'イヨの果皮障害の発生原因を明らかにすると共に, 防止対策についても二三の検討を加えた.'大谷'イヨの果皮障害は主に貯蔵中に発生するが, 樹上の果実にも認められた.'大谷'イヨの果皮障害には3種類あることが明らかになった.一つは, 果実が受ける高温並びに日射が主因となった障害である.この障害は樹上の果実に発生する.そこで, この障害に対して"日焼け症"と呼称した.二つめは収穫時には肉眼的には健全な果実でも, 貯蔵中に果実が樹上で受けた果面の陽光部に多数の小さな斑点が発生するものである.この障害に対しては"コハン症"と呼称した.他の一つは貯蔵中に発生するが, この原因は貯蔵中の低温が主因であり, -2℃の貯蔵によって発生した.この障害は果面が赤くただれた火膨れ症状を呈するため"ヤケ症"と呼称した."日焼け症"は高温や日射を軽減する袋かけにより防止できた.20℃の予措処理とポリエチレンフィルムによる個包装を組み合わせることにより, 貯蔵中に発生する"コハン症"や"ヤケ症"の発生を抑制することができた.しかし, 個包装を開封することによってこれらの障害が発生した.
著者
土川 忠浩 内田 勇人
出版者
姫路工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

1.在宅高齢者の生活・居住環境に対する不満度を、面接アンケートに調査した。調査対象地区は、兵庫県にある山間部集落と市街地の在宅高齢者とした。居住環境に対する不満は、地域に関係なく冬季の室内の寒さに対する不満が顕著であった。2.山間部集落および市街地集合住宅に居住する高齢者住宅の居間の温湿度を夏季と冬季に、それぞれ1ヶ月間程度測定した。冬季において独居世帯および夫婦世帯の気温が、同居世帯よりも顕著に低かった。3.高齢者と大学生、男女の間で嗜好する手摺の太さ及び材質に差がみられるかどうかについて検討した結果、高齢者・大学生とも35mmの手摺を一番高く評価し、25mmの手摺を低く評価した。高齢者においては、木材、プラスチック、金属の評価の間に有意な差はみられなかったが、大学生においては木材が最も高く評価された。4.70歳以上の高齢女性を対象として、またぎ動作時の認知とQOL、ADL、体力との関係について検討した。ステップワイズ法を用いて多重ロジスティック回帰分析を行った結果、握力が有意な変数として選択された。本研究において、バーをまたぐ際の自己認識と実際の動作能力との間の不一致とも有意な関連がみられた。その一方で、下肢の運動機能と認識の不一致との間には有意な関連がみられなかった。握力を良好な状態に保つことの重要性が確認された。5.インターネット入力装置の使いやすさと年齢の高低、健康状態の良悪、携帯電話・インターネットの必要性の有無との関連について検討した結果、高年齢者群(オッズ比=3.86,95%信頼区間0.83-18.98)、健康状態の悪い群(オッズ比=5.00,95%信頼区間1.05-25.41)、今後の携帯電話・インターネットの必要性を認めない群(オッズ比=7・22,95%信頼区間1.34-43.88)が選んだ最も使いやすい入力装置は、タッチスクリーン入力方式であった。6.在宅高齢者(要介護者を含む)とその家族(介護者)を対象にアンケート調査及び簡単な体力測定を行い、住宅の各種性能に対する不満の所在、バリアフリー化(住宅改修)の効果、QOL(モラール)・ADLと居住環境との関係、介護者に対する介護負担の軽減効果等について検討を行った。バリアフリー化によって、住宅内の段差等に対する不満は軽減されていた。しかし、一方で住宅内の温熱環境に対する不満が比較的多く、住宅に対する総合的不満につながっている傾向が示された。6.山村集落の自立高齢者に対する転倒予防教室において、体力測定とアンケート(転倒リスクアセスメント等)調査を行った。自宅住宅内での転倒経験は少ないものの、「つまづき」への恐怖心が生活動作に対する自信を失わせている傾向が示された。
著者
鎌田 直人 江崎 功二郎 矢田 豊 和田 敬四郎
出版者
金沢大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1999

個体群生態学的な研究により、カシノナガキクイムシはイニシアルアタックの際に、衰弱木や感受性の個体を選択的に攻撃するのではなく、無差別に攻撃していた。穿孔数やカシナガの繁殖成功度は、樹木の生死ではなく過去の穿孔の有無によって強く影響されていた。過去にカシナガの穿入を受けていない7本のミズナラを測定対象とし、樹幹北側の地際部と地上高150cmの位置で、各2点ずつの温度測定を行った。その結果、1)150cm部位と地際部の温度差(以下、温度差)は、特に6〜8月の高温時(日最高気温約25℃以上)に大きくなった。2)秋までに被害を受け葉が褐変または萎凋した個体(以下、被害個体)は、1個体を除き、カシナガ穿入前(6月上・中旬)に高温時の温度差が大きかった。3)上記例外の1個体は150cm部位と地際部の温度の平均値(以下、平均温度)については他の個体よりも高めで、最も早くカシナガの穿入を受け、枯死した。樹幹2ヶ所の温度差と平均温度によって、樹体の健全性を評価し、カシノナガキクイムシの穿孔に伴う枯死や萎凋を予測できる可能性がある。
著者
藤田 正範 島田 昌之
出版者
広島大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2001

【目的】乳牛では乾乳の初期に古い乳腺細胞が脱離し、新しい細胞に更新される。しかし、暑熱の影響によりこの更新が進まないときには秋季における乳生産が抑制されることが知られている。本研究では、乳生産に及ぼす暑熱の影響を理解する研究の一環として、乳腺細胞の機能性に及ぼす暑熱の影響を解析することを目的とした。このために,夏季乾乳・夏季泌乳牛と秋季乾乳・秋季泌乳牛の生乳中乳腺細胞のプロラクチン負荷に対する乳腺細胞プロテインキナーゼ活性などの比較調査を行った。【方法】ホルスタイン種夏季泌乳牛8頭(試験期間内日平均気温;23。3℃)、秋季泌乳牛8頭(試験期間内日平均気温;10。9℃)を用いた。分娩1日と10日の14時に乳房静脈から採血し、分娩10日の8時に生乳を採取した。血漿中エストラジオール17-β濃度を高速液体クロマトグラフィーUV検出法で、血漿中プロラクチン濃度をEIA法で測定した。プロラクチン負荷に対する乳腺細胞のプロテインキナーゼ発現量の測定では、生乳から乳腺細胞を分離し、10^3個前後の乳腺細胞に100、500および1000ng/ml濃度のプロラクチンを添加培養後にプロテインキナーゼ活性を酵素法で測定した。【結果】夏季泌乳牛のTDN摂取量と泌乳量は、秋季泌乳牛よりも低い傾向にあった。分娩1日における血漿中エストラジオール17-β濃度は夏季泌乳牛で低い傾向にあり、分娩10日における血漿中プロラクチン濃度は夏季泌乳牛で低い傾向にあった。乳腺細胞のプロテインキナーゼ発現量は3段階のプロラクチン添加のいずれにおいても夏季泌乳牛で有意に高い値であった。以上の結果、プロラクチンの血中放出は暑熱により抑制される傾向にあるものの、乳腺細胞内のプロテインキナーゼ活性などの代謝機能性が亢進することにより、泌乳牛は暑さに対応して乳生産の機能性を維持するものと考えられた。
著者
加藤 内藏進 松本 淳
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

1.GAME特別観測年であり長江流域の大洪水の起きた1998年6月下旬には,前線帯南方の亜熱帯高気圧自体はゆっくりと遷移しながらもそこでの東西の気圧傾度は維持され,水蒸気輸送を担う下層南風も持続した。この時期は,冬までの顕著なエルニーニョからラニーニャに転じた直後であったが,モンスーン西風の熱帯西太平洋域への侵入やそこでの対流活動は抑制された。2回の長江流域での大雨期は,そのような状況下での熱帯西太平洋域での対流活動の季節内変動の一連のサイクルに伴ったものである点が明らかになった。2.大陸上の前線帯でのメソα低気圧は,1991年,1998年の事例で示されるように,中国乾燥地域の影響を受けた総観規模低圧部に伴う北向き流れと亜熱帯高気圧に伴うそれ(より北へ水蒸気を輸送)とが合体して活発化した梅雨降水帯の中で,降水系がメソαスケールへ組織化されることによって形成されるという過程の重要性を明らかにした。つまり,かなり異なるスケール間の現象の受け渡しで,全体として梅雨前線帯スケールの水循環が維持されるという側面があることになる。3.年によっては春の時期から日本付近の前線帯へ向かって比較的大きな北向き水蒸気輸送が見られるが,東南アジアモンスーンが開始する前の時期(例えば3〜4月)には,中緯度の傾圧帯の中での現象であり,亜熱帯高気圧域内の現象である梅雨最盛期の水輸送システムとはかなり質的に異なる点が分かった。4.冷夏の1993年7月後半〜8月中旬にかけて,西日本を中心に,台風の北上と梅雨前線双方の影響を受けて降水量が大変多くなった。これは,15N付近を145Eから120Eへ向けてまとまりながら西進する対流活動域(〜130Eで最も強まる)が,台風の発達・北上,及び,その後の梅雨前線への水蒸気輸送,という一連のサイクルを引き起こしたこと,それに対して,春からの弱いエルニーニョの影響が季節進行の中での履歴を通して重要な役割を果たしていたことを明らかにした。5.秋雨前線帯での雲活動は,梅雨前線帯以上に東西方向の偏り方の年々の違いが大きい。これは,熱帯西太平洋域の海面水温の特に高い領域は,気候学的には9月頃に最も東方まで広がっているため,夏の熱帯の対流活動のアノマリーの履歴によって,9月の対流活動域の東西の偏りが大変大きくなりやすく,前線帯の南側の亜熱帯高気圧による下層南風強風域の東西方向の年々の偏りが大きいためであることが分かった。6.地球規模の大気環境の変動に対する東アジア前線帯の応答過程の理解を深めるために,1997/98年エルニーニョ時の顕著な暖冬への移行過程を調べた。その結果,地球規模でのアノマリーへの応答が通常11月頃に起こる急激な冬への進行を阻害することでエルニーニョが大きく影響したことを明らかにした。
著者
太田 斎 秋谷 裕幸 木津 祐子 岩田 礼
出版者
神戸市外国語大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

中国における方言研究は長らく字音を対象とした記述研究と比較音韻史研究が中心であった。方言地理学は決して新しい方法論ではないが、中国では従来ほとんど行われることがなかったため、中国方言学の分野では大きな収穫が期待された。これまで日本で志を同じくする研究者が、方言地理学を核として新たな方法を模索しながら共同研究を継続して、漢語方言地図集を第3集まで発表してきた。今回の我々の共同研究はそれを受け継ぐものであった。我々は方言地理学に利用可能な文献データを集積する一方で、文献のみでは埋められない地理的空白をフィールドワークを行うことで埋めることを計画した。また歴史文献に現れる方言データ及び社会言語学的事例についても分析を進め、歴史的考察に利用することにした。初年度には文献データの整理を一段落させ、『地方志所録方言志目録 附方言専志目録』を完成、また初年度のフィールドワークのデータを整理し、次年度初頭に『呉語蘭渓東陽方言調査報告』を作成した。これらの作業と平行して、パソコンによる方言地図作成ソフトSEAL (System of Exhibition and Analysis of Linguistic Data)利用のための環境整備を進め、この年度でほぼ作業を完成させた。そして最終年度に試行錯誤を繰り返して方言地図を作成し、討論を重ねてその修正作業を行った。またこれまでは個々の音韻、語彙、文法項目の地図を作成して中国語における様々な特殊な変化の類例を集積して、一般化を模索してきた訳だが、今回は同源語彙間に現れる特殊な変化を容易に観察できるような語彙集も編纂し、「類推」、「民間語言」、「同音衝突」といったような体系的変化以外の変化の事例の集積を図った。これにより従来の方言地図で行われた分析も類似の事例が複数見出せることになり、我々の方言地理学的考察により強い説得力が付与されることになった。その最終報告書が『漢語方言地図集(稿)第4集』である。
著者
杜氏 嘉造
出版者
東洋史研究会
雑誌
東洋史研究 (ISSN:03869059)
巻号頁・発行日
vol.7, no.5, pp.351-351, 1942-10-31
著者
鈴木 幹雄 堀 典子 長谷川 哲哉
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本科学研究費補助金研究では、事例カッセル・ドクメンタを手掛りに、芸術学校バウハウス第二世代が第二次世界大戦後ドイツにおける文化的・芸術的な文化創出システム《ドクメンタ》にどのような貢献を行ったかについて研究した。その為に、まず第一に、バウハウスを改革史的な文脈に生まれた学校と位置付け、戦後ドイツの教育界、芸術学校の世界の中でバウハウス第二世代がどのように活躍したかを明らかにした(対象:ハンブルク芸術大学、ベルリン芸術大学、デュッセルドルフ芸術大学)。当該研究の研究経過は次の通りであった。課題設定・分析・調査(平成14-15年度):(1)カッセル・ドクメンタの展開とA・ボーデの構想、(2)戦後ドイツにおけるバウハウス第二世代の教育思想と造形芸術観の形成過程・展開過程について(モティーフ:ハンブルク芸術大学長ハッセンプフルークの教育理念、同芸術大学「自由芸術」コース招待講師講義(1953-55年))、(3)デュッセルドルフ芸術大学の戦後改革とその学長代行E・マタレの芸術学校改革について、(4)ベルリン芸術大学の戦後改革について(モティーフ:同芸術大学教授G・フィーツの教育実践)。当該研究の成果(平成14-16年度):ドクメンタ参加芸術家と戦後の芸術運動団体Zen 49グループの活動を糸口に、ハンブルク芸術大学、カッセル芸術大学、デュッセルドルフ芸術大学、ベルリン芸術大学へ在職していた「バウハウス第二世代」教授達が、カッセル《ドクメンタ》の発展に重要な貢献を行ったことを解明した。
著者
佐瀬 祥平
出版者
東京工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

メタフェニレンデンドリマー骨格を活用したボウル型カルベン配位子を有する様々な遷移金属錯体を合成した。ニッケル・パラジウムを有する錯体は、それぞれアルキンの三量化や鈴木-宮浦クロスカップリングの触媒として機能した。銀錯体は、カルベン供与体として機能し、種々の遷移金属錯体の良好な前駆体となることが明らかとなった。
著者
菅野 了次 PITTELOUD Cedric Alexandre
出版者
東京工業大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2003

電解二酸化マンガンは熱処理にようて構造が変化し、リチウムイオンの可逆的なインターカレート量が増加する。一般に熱処理によって(1×2)のトンネルを持つRamsdellite構造から(1×1)のトンネルを持つPyrolusite構造へ変化することが知られているが結晶性が低いため通常の回折法では構造の詳細な情報は得られず、リチウムイオンのインターカレーション機構の結晶学的な観点からの考察はほとんど行われていない。本研究では電解二酸化マンガンの構造や形態の特徴を捉えるために、X線および中性子回折法を用いて、積層欠陥考慮に入れた構造解析を行った。中性子回折測定は高エネルギー加速器研究機構のVEGA回折計により行った。様々な温度で熱処理を行った電解に酸化マンガンの構造を求めるために、Ramsdelllite構造、Pyrolusite構造、およびその双晶が一定の割合で存在している仮定し、回折図形を計算した。その結果、熱処理の温度の上昇と共に進行するRamsdenite構造からPyrolusite構造への変化は、Ramsdellite構造、Pyrolusite構造、およびその双晶の割合の変化に伴う複雑な構造変化であることが明らかになった。これらの相が積み重ねられることにより、Ramsdenite構造、Pyrolusite構造よりも大きなサイズのトンネルが存在し、処理温度180℃でトンネルサイズが最大になることがわかった。
著者
陰山 洋 上田 寛 益田 隆嗣 加倉井 和久 川島 直輝
出版者
京都大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2007

フラストレート2次元系(CuX)A_<n-1>B_nO_<3n+1>では、反強磁性強磁性の競合があり、その比に応じて強磁性Shastry-Sutherlandスピン一重項状態((CuCl)LaNb2O7))や磁化プラトー((CuBr)Sr_2Nb_3O_<10>)などの新奇相や量子相分離現象を明らかにした。フラストレート1次元系LiCuVO_4では、同様の競合により,ネマティック状態関連の新奇秩序状態の発見、また、フラストレート3次元系K_2Cr_8O_<16>では強磁性金属-強磁性絶縁体転移がパイエルス機構で起こることやSr(Fe,Mn)O_2における新奇磁気秩序状態を示した。このように、量子フラストレーションではあまり注目されていなかった強磁性相互作用(と反強磁性相互作用の競合)により、次元によらず多彩な新しい現象が現れることが明らかになった。
著者
棟方 充 本間 行彦
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

卵白アルブミン(Ovalbumin,OA)皮下注および吸入感作ラットにOAを連続吸入させることにより、気道のリモデリングが形成されるか否かを検討し、以下の成績を得た.1.抗原濃度を0.1,1.0,5.0%とした1ヵ月間の慢性抗原暴露では、1.0,5.0%の群においてのみ、気道上皮及び気道壁の肥厚が形成された.2.今回のモデルで形成される気道のリモデリングは気道上皮および気道壁の肥厚に限られており、気道平滑筋の肥厚はいずれの群でも観察されなかった.3.気道上皮の肥厚は主に杯細胞の増生により生じていることが明かになった.4.In vivoでのメサコリン気道過敏症は気道上皮での杯細胞数と有意な相関を示し、気道過敏性形成における気道上皮リモデリングの重要性が明かになった.5.浸等圧ポンプによるβ2-刺激薬・副腎皮質ステロイド薬の投与では、β2-刺激薬連続投与により気道過敏性の更なる亢進が認められたが、気道形態にはいずれも有意な変化を及ぼさなかった.以上の結果から、気道のリモデリングは吸入抗原濃度が高いほど形成されやすいこと、気道上皮のリモデリングは平滑筋のリモデリングに先行する可能性があること、杯細胞増生を主体とする気道上皮のリモデリングは気道過敏性形成に重要であること、などが明かになった.