著者
小泉 龍人
出版者
国士舘大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究により、人々の暮らしに欠かせぬ「火の利用」の一端に迫ることができた。復原構築した窯による焼成実験の結果、彩文土器の焼成には800℃以上の温度を約1時間維持する必要があり、900℃以上の高温を1時間以上持続させることで西アジア都市形成期の彩文土器に近い硬質な仕上がりとなることを確認した。また、黒色顔料(二酸化マンガン)よりも赤褐色顔料(酸化第二鉄)の吸着に高度な技術が必要であったことも確かめた。
著者
林研
雑誌
日コレ誌
巻号頁・発行日
vol.36, pp.16-20, 1994
被引用文献数
1
著者
佐竹 彰治
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

光機能性分子であるポルフィリン誘導体を基盤とした複数の超分子システムの開発に成功した。トリスポルフィリン誘導体を自己組織化させると超分子ポルフィリンナノリングが定量的に生成する。この内部にエネルギー受容体をゲスト分子として導入することに成功した。また、6個の安息香酸を有するポルフィリンナノリングを垂直に連結した超分子ポルフィリン組織体の構築にも成功した。これらは人工光合成系への応用が期待される。
著者
桐山 伸也
出版者
静岡大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、子どもの発話行動の観察から、円滑な対人関係の形成に関する音声コミュニケーションスキルの発達分析を行った。1~4歳の2, 400発話からなる感情意図ラベル付きの発話行動データベースを構築し、感情意図ラベルの時間変化パターンを手掛かりに特徴的な行動事例を抽出できるマルチモーダル発話行動分析システムを構築した。子どもの行動発達理解に役立つ映像事例を保育者向けの子育て支援知識映像コンテンツに仕立て、子育て支援Webサイトで公開した。
著者
桐山 孝司 冨山 哲男 吉川 弘之
出版者
社団法人人工知能学会
雑誌
人工知能学会誌 (ISSN:09128085)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.426-434, 1991-05-01
被引用文献数
26

Integration of design object models is one of the expected roles of intelligent CAD systems. This paper deals with maintenance of relationships among models. We examine the nature of models and show that knowledge about relationships among background theories is crucial for the integration. Based on this discussion, we propose the metamodel mechanism, a new framework for integrated design object modeling. The idea of the metamodel mechanism is to utilize a qualitative model in order to represent dependency among concepts of which the models consist. The metamodel is refined through the design process by four operations, viz. instantiation, unification, specialization, and delegation. We also show an implementation of the metamodel mechanism.
著者
辻本 浩子 王 寧 肴倉 宏史 大迫 政浩
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会論文誌 (ISSN:18835856)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.86-93, 2010 (Released:2010-04-15)
参考文献数
10
被引用文献数
2 1

溶融飛灰中の重金属の溶出を抑制させる方法として,液体キレート剤を用いた薬剤処理法が主流であるが,処理飛灰中の金属キレート化合物の長期安定性が懸念されている。本研究では,溶融飛灰のみ埋立処分を行い埋立開始から8年経過した最終処分場を対象に,表層から深さ5mまでの飛灰試料を採取し,金属キレート化合物の存在量の変化および重金属の溶出特性について調査した。その結果,埋立後の試料では金属キレート化合物の存在量の減少はPbで著しく,処理直後の10%以下となった試料も確認され,埋立後に金属キレート化合物が分解した可能性が高いことが示された。しかし,溶出試験でのPbの溶出濃度および処分場浸出水の実測値はすべて0.031mg/L以下と極めて低かった。pH依存性試験を実施したところ,pH14の条件でも鉛の溶出率は全含有量の10%以下であり,キレート化合物から分解したPbは強アルカリ性でも溶出しにくい化学形態であると推測された。
著者
辰巳 直也
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

がん細胞で高発現し抗アポトーシス機能を果たしているWT1遺伝子が,抗癌剤ドキソルビシン処理によるアポトーシス誘導時に、その濃度依存的に発現抑制をうけることを見出した。次に、抗癌剤誘導性アポトーシス時に発現が亢進し、WT1の発現を抑制することによりアポトーシス経路を活性化しうるmicroRNA(miRNA)の同定を試みた。低分子RNAクローニング法により、抗癌剤処理により発現誘導をうける低分子RNAを22種同定し、それらのなかからmiR-A(仮称)がWT1を標的としアポトーシスを制御しうることを明らかにした。さらにmiR-Aは肺癌患者の予後マーカーになりうることを明らかにした。
著者
世阿弥[作詞]
出版者
コロムビア(戦前)
巻号頁・発行日
1933-12
著者
木下 孝司
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究の概要は以下の通りである。1.理論的考察:幼児期における「心の理論」と時間的に拡がりをもつ自己の発達的関連について,時間的視点という観点から概観し,「いま・ここ」にない"不在のもの"に対する態度を測定する方法として遅延自己映像認知課題を提案した。また,過去と現在の時間的関係を理解し,時間的視点から自他理解を深める上で,過去をめぐる対話が重要な役割を果たしていることを,聴覚障害児の「心の理論」に関する研究から示した。2.実験1:3〜5歳の聴覚障害幼児と母親を対象に,絵日記を手がかりにして,過去の出来事を共同想起してもらった。その結果,(1)絵日記を用いることで,過去をめぐる対話がより持続すること,(2)子どもから母親を注視する頻度と,母親が過去の出来事に言及する頻度に相関があることが明らかになった。3.実験2:11組の健聴児(2,3歳)とその母親,5組の聴覚障害児(2,3歳)と母親が,写真を見ながら,過去の出来事について対話をするプロセスを分析した。その結果,次のようなことが明らかになった。(1)聴覚障害児が過去の出来事や心的状態に言及する頻度には個人差が大きく,子どもの言語スキルと母親の発話スタイルからの影響が大きい.(2)母親が聴覚障害者であるペアにおいては,手話を有効に用いて,過去や心的状態に関する話題が多かった.(3)母親の発話スタイルは子どもの言語発達に応じて,「新情報聴取型」,「情報共有(提供)型」,「相互構成型」に分類できた。4.結論:「いま・ここ」にない"不在のもの"である過去の出来事に関する対話には,2,3歳児が他者との視点の相違に気づく契機が多数含まれており,相互の心の理解を進めていく上で重要である。音声言語ならびに手話はそうした対話を成立させるものであり,心の理解や自己発達において不可欠な役割を果たしていると考えられる。
著者
栃原 裕 LEE Joo-Young LEE Joo-young
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

鳥インフルエンザなどの感染症対策、アスベストの除去作業等で、防護服の着用の機会が増え、多くの新しい防護服が開発されている。一方では、その防護性能の高さから、作業者は防護服着用時に大きな暑熱ストレスを受けることになる。そこで本研究では、比較的容易で判定精度の高い防護服着用時の暑熱負担評価テスト法を開発し、有効で簡便な生理・心理測定手技を提案することを目的とした。本年度は、安静または運動の2条件、防護服3条件、気温2条件(25、32℃)の組み合わせによる12条件の実験を行い、直腸温、赤外線式鼓膜温、皮膚温、発汗量、心拍数、主観的皮膚濡れ率、温冷感等を測定した。本研究から得られた知見を以下に示す。1)暑熱環境における非蒸散防護服着用時の運動条件では、赤外線式鼓膜温が直腸温の変化によく一致し、心拍数や発汗量などの生理指標との相関も高く、深部体温の測定方法としての妥当性が示された。しかしながら、中立気温条件や軽装条件、安静時および回復時には直腸温の変化に追従せず、測定方法の限界が示された。2)主観申告に基づく主観的皮膚濡れ率は、体温変化および心拍数や発汗量とよく一致し、熱理論式により求めた皮膚濡れ率との相関も高かった。この結果から、主観的皮膚濡れ率の妥当性が示され、フィールドテストにおける利便性、測定、計算の簡便性が示唆された。3)平均皮膚温を算出する際の体幹部皮膚温として、安静時には胸部、腹部、背部による差はなかった。しかし、運動時には体幹部皮膚温の分布が一様でなく、腹部では過小評価、背部では過大評価することが示され、3点の平均値、または1点で代表させる場合には胸部を用いることが推奨された。本研究の成果は、新しい防護服の開発や改良の際の標準評価法として利用でき、近い将来、防護服着用時の暑熱負担評価テスト法に関するISO/JIS規格の原案となりうるもので、その社会的意義は大きい。
著者
山田 哲也
出版者
東京農工大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では,RNAi法による花弁老化関連遺伝子(InVPE,InPSR26,InPSR29,InPSR42)の不活性化がアサガオの花弁老化に及ぼす影響を評価し,2種類の遺伝子(InPSR26,InPSR29)が花弁老化を抑制する機能を果たしていることを明らかにした.他の2種類の遺伝子(InVPE,InPSR42)の機能は解明できなかったが,相同性検索により,これらの遺伝子が花弁のプログラム細胞死に深く関与することが示唆された.
著者
平松 力 長谷川 健吾
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学會論文集. C編 (ISSN:03875024)
巻号頁・発行日
vol.46, no.404, pp.392-400, 1980-04-25

大型扇風機において,羽根表面にごみなどが付着し,アンバランス力による過大振動や騒音を生じることがある.この系は,がたを含む非対称復原力の方程式となり,回転数の高調共振を起こすことがある.この問題について解析し,時系列言語を用いて数値解析し,ガード共振の計算結果と測定値とのよい一致を得た.それよりがたを含む非対称復原力の振動系では,回転の二次高調波に対し固有振動数を15%以上離すべきことを明らかにした.
著者
野見山 敬一 増満 州市郎 竹原 誠 深江 義忠
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
家畜の管理 (ISSN:03888207)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.37-42, 1981-10-01
被引用文献数
4

福岡県下1184農家を対照に防暑法の実態を調査した。調査はアンケート用紙を配布回収した。回収率は58.0%(686農家)で次の結果を得た。1)農家の平均飼養頭数は26.9頭, 畜舎面積は平均255m^2(1頭当たり9.5m^2)であった。2)農家が実施している防暑対策は扇風機55.0%が最も多く, 夜間運動又は繋牧21.9%, 壁換気扇(ウインドファン)11.8%が続きこの3種で88.7%を占めた。ダクト冷気送風, 牛舎冷房(エァコン)は3.6%(25農家)であった。3)暑熱時の飼料給与について, 農家が特に留意している点は良質飼料の給与, ミネラル食塩の給与, サイレージ給与等栄養面を配慮した農家が多く(83.4%), 飼料調理, 給与方法, 給与時間帯の配慮には関心が低かった。4)防暑対策を行なって, 特に効果があったものとして, 乳量減少の防止, 分娩事故, 疾病の防止をあげた農家が多かった。5)今後の防暑法に, とり入れたいものとして, 庇陰樹の植栽をあげた農家が約21.6%(148農家)で1番多かった。
著者
石川 忠晴 田中 昌宏
出版者
東京工業大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1988

まず始めに、昭和63年度の現地観測結果に基づき、日成層と吹送流の相互作用について検討した。その結果、(1)日成層の混合過程が吹送流のせん断不安定により生成される乱れによっている、(2)吹送流の速度分布が混合層内のエネルギ-バランスによって支配されている、と推論された。次に、上記の推論に基づいて、日成層と吹送流の相互作用を表わす数理モデルを検討した。まず日成層の混合過程が、いわゆるDIM(Dynamic Instability Model)と基本的に同じものであると考え、既存のDIMの問題点を明確にした後に、より完全な定式化を行った。今回構築されたモデルの特色は、日成層と吹送流の相互作用を力学的に厳密に取り扱っていくために、モデルパラメ-タの物理的意味が明確であるとともに、その値が演繹的に決定されている点にある。次に、上記モデルに、湖の岸のもたらす効果や日成層下部の密度勾配の影響を加えて、実際現象を十分シミュレ-トできる数値計算モデルを作成している。その結果を現地観測結果と比較したところ、非常に良い一致を見た。最後に、上記モデルを用いて、霞ヶ浦などの浅い富栄養湖の水質が急変する条件について検討した。日成層がその日のうちに消滅しないと底層水が数日間嫌気状態になって底泥から栄養塩の溶出することが昨年の現地観測で明らかにされている。そこで、日成層がその日のうちに消滅しなくなる気象条件、具体的には1日の総日射量と風速の関係について明らかにした。
著者
荒生 公雄 長岡 信治 高橋 和雄 中根 重勝 藤吉 康志
出版者
長崎大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1993

雲仙・普賢岳の火山活動は弱まりながらも、地下からの溶岩供給は続き、溶岩ドームは1995年1月には1,500mを越えるまでに成長した。また、山体周辺の火砕流および土石流による堆積物は確実に増加しており、今後においても土石流の脅威からは開放されない危険な状態にあることをしっかり認識したい。本研究で得られた成果の概要は以下の通りである。(1)1993年の大規模土石流発生時の降雨はすべて名古屋大学RHIレーダーによって観測され、貴重なデータセットとなった。それらの解析の結果から、普賢岳を襲う強雨は西南西の方角から時速約60〜70kmで来襲したことが明らかになった。このことは、降雨の現況監視や防災対策の整備について重要な規範を与えるものであり、本研究によって得られた貴重な成果の一つである。(2)3年間の度重なる大規模土石流にもかかわらず、犠牲者(死者)は出さなかったのは、(1)気象台から島原地方に出される警報が緻密になった、(2)島原市、深江町の行政・防災機関が非難誘導に尽力した、(3)住民が呼びかけに応じて早めに避難した、ことなどが理由として挙げられる。しかし、警報慣れと緊張感の弛緩もみられることから、今後一層の努力と実践的な研究が必要である。(3)雲仙岳北麓(北側斜面)の地形と火山性堆積物を解析した結果、過去において数千年〜数万年の間隔で、大規模な火砕流と土石流が発生していたことが明らかになった。それらは火山活動と並行して発生しており、今回と同じような火砕流・土石流現象が、雲仙岳周辺で過去に何度も繰り返されていたことが確認できた。