著者
古本 淳一
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

気温を高い時間分解能で観測できるレーダーリモートセンシング技術であるRASS(Radio Acoustic Sounding System)の性能を向上させ従来観測できなかったより微細な気温観測を可能とした。複数のレーダー周波数観測により鉛直分解能を向上させる周波数領域干渉計映像法をRASS観測に応用する新アルゴリズムを開発しMUレーダーを用いて従来150mに留まっていた鉛直分解能を60mまで向上させることに成功した。また、沖縄におけるRASSの自動連続観測の実現や、従来観測が難しかった接地境界層領域への展開を進めた。
著者
和田 崇
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.69-87, 2010-06-30
被引用文献数
1

本研究は,ウェブログ・ポータルの例として広島ブログをとりあげ,利用者間の地理的近接性に着目して,そこで形成される社会的ネットワークの構造を明らかにするとともに,そのネットワークが地域の経済活動や市民活動に及ぼす影響について検討した.その結果,広島ブログに投稿されるコメントは,リアルスペースにおける作者と読者の居住地とは無関係に,お互いのつながりを確認することを目的としたり,興味や関心にもとづいて投稿されるものと,作者と読者の居住地間の地理的近接性に応じて投稿されるものがあることがわかった.また,コメントや友達リストを通じて,利用者が集中する広島市をハブとする地域間ネットワークとともに,キーパーソンが居住する市町での地域内ネットワーク,居住地に関わりなく情報を交換する情報縁ネットワークが形成される.パーソナル・レベルでは,広島県内で相互作用を活発に展開し,ローカルなネットワークを形成する作者と,広島県外に居住する読者や居住地を非公開としている読者との情報交換を主眼とし,ノンローカルなネットワークを形成する作者がみられた.このうち,ローカルなネットワークを形成する作者の一部は,経済活動や市民活動の実効化に向け,広島ブログを情報の発信および収集,社会関係資本形成の場として活用している.
著者
川合 將義 渡辺 精一 粉川 博之 川崎 亮 長谷川 晃 栗下 裕明 菊地 賢司 義家 敏正 神山 崇 原 信義 山村 力 二川 正敏 深堀 智生 斎藤 滋 前川 克廣 伊藤 高啓 後藤 琢也 佐藤 紘一 橋本 敏 寺澤 倫孝 渡辺 幸信 徐 超男 石野 栞 柴山 環樹 坂口 紀史 島川 聡司 直江 崇 岩瀬 宏 兼子 佳久 岸田 逸平 竹中 信幸 仲井 清眞
出版者
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2007

高エネルギー高強度陽子ビーム場の材料は、強烈な熱衝撃や放射線によって損傷を受ける。衝撃損傷過程と影響を実験的に調べ、その緩和法を導いた。また放射線損傷を理論的に評価するコードを開発した。さらに、損傷に強い材料として従来の材料に比べて強度の4倍高く室温で延性を持つタングステン材と耐食性が4倍高いステンレス鋼を開発した。衝撃実験における応力発光材を用いた定量的な方法を考案し、実用化の目処を得た。
著者
吉本 貴宣
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究により1)アルドステロン(Aldo)負荷高血圧ラット(Aldoラット)での高血圧、血管炎症の発症機序の一部にはミネラロコルチコイド受容体(MR)活性化によりアンジオテンシン変換酵素(ACE)の発現増加が生じ、心血管局所でのAng II産生と作用の増加が関与する。この、“局所レニン・アンジオテンシン系"の活性化が血管壁での各種向炎症性遺伝子群mRNAの発現増加および酸化ストレス増加を介してAldoによる心血管障害に関与することが明らかとなった。2)ラット大動脈由来初代培養血管内皮細胞を用いた検討で、AldoはMRを介した低分子量蛋白Raclの活性化によりNAD (P) H oxidaseを介してO_2^-産生を誘導することが明らかとなった。3)内皮保護作用を示す抗血小板薬のシロスタゾール投与がAldoラットでの血中酸化ストレスマーカーの低下、尿中NO排泄量の増加、および血管壁でのNADPHオキシダーゼや向炎症性因子の遺伝発現減少を伴った"Aldo誘導性血管炎"の改善効果を示すことを明らかにした4) Aldoによる糸球体障害機序としてメサンジウム細胞でのMRを介したSGK-1とNFkB活性化経路が関与することを明らかとした。以上の研究成果によりAldoが心血管および腎組織に直接作用して臓器障害に至る分子機構の一端が解明された。
著者
村上 かおり 鈴木 明子 一色 玲子 藤井 志保 林原 慎
出版者
広島大学学部・附属学校共同研究機構
雑誌
学部・附属学校共同研究紀要 (ISSN:13465104)
巻号頁・発行日
no.39, pp.225-230, 2010

2012年から全面実施される中学校新学習指導要領技術・家庭, 家庭分野では, 浴衣など和服について調べたり着用するなどして, 衣生活文化に関心をもたせたり, 和服の基本的な着装を扱うことが有効な手だてとなり得ることが述べられている。そこで本研究では, 衣生活題材における製作教材をカジュアルベストから甚平に代えて, 衣生活文化に着目した題材を提案した。本題材は広島大学附属三原中学校にて平成22年度中学3年生を対象として行った。指導にあたっては, 幅広く衣生活に関心を持ち, 学んだことを生かせるように, 個性に応じた着装の工夫という視点に加え, 甚平をなぜ作るか, どのように作るか, どう活用するかの道筋を示し, 課題を解決しながら学ばせた。また和服についての調べ学習を行わせ, 身近な衣服や技術が我が国の伝統や文化の中で受け継がれていることに気付かせることをねらった。その結果, 甚平製作を通して, 生徒は和服の特徴や衣生活文化について多くの気付きを示した。このことから, 甚平製作が衣生活文化の題材として有意義であることが示唆された。しかし実習時間の不足という課題も改めて認識できた。
著者
坂本 真士
出版者
大妻女子大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
2000

本年度は昨年度の成果をもとに、抑うつ的な自己注目のあり方と適応的な自己注目のあり方をモデル化した(この成果については、本年度の日本心理臨床学会および日本心理学会にて発表した)。そして、適応的な自己注目のあり方の指導を取り入れた、抑うつ予防のためのプログラムを作成し、女子大学生(1年生、社会心理学専攻)21名を対象に実施した。実施期間は平成13年4月から7月であった。本研究で1年生前期において実施としたのは、大学における適応・不適応を考える上で、入学直後から1年次前半が特に重要な時期だからである。この時期、生活リズムの変化、新しい人間関係づくり、勉学の問題など様々な変化に新入生はさらされている。自分について振り返る時間が増えた分、不適応的な自己注目のために抑うつなどの問題を発生させる可能性も高いと考えられる。申請者らは、本年度前期に週1回の割合で心理教育予防プログラムを実施した。実施は授業の単位とは全く関係のない「自主ゼミ」という形で行い、ボランティアで参加者を募った。前半では、参加者同士知り合うためのグループワークを積極的に取り入れた。また、自分を知るために様々な心理テストを実施した。実施した心理テストについては実施の翌週に申請者が解説した。これによって客観的に自己をとらえるようにした。また、ホームワークを課して、事態に対する認知の仕方を明確にした。後半では、認知療法的なパースペクティブから、自己に関するネガティブに歪んだ認知の修正、自己のポジティブな側面に対する注目などについて指導した。10月に実施した事後アンケートから、この予防プログラムは一定の成果を収めていることがわかった。
著者
山岸 久雄
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.1-67, 2006-03

第45次南極地域観測隊越冬隊(45次越冬隊)は,隊員及び同行者42名が昭和基地で越冬し,第期5ヵ年計画の3年次にあたる定常観測,モニタリング研究観測を継続して行うと共に,宙空系,気水圏系,地学系,生物・医学系のプロジェクト研究観測を昭和基地とドームふじ観測拠点において実施した.また,設営関係では基地の運営を2004年2月1日から2005年1月31日まで担当し,電力, 上下水道,燃料,通信,食料,医療といった生活基盤の維持管理に加え,車両整備, 機械設備工事,航空機の運用ならびに滑走路のメンテナンス,LANの運用,野外観測支援など多くの作業を行った.またインテルサット衛星通信設備を建設し,本格的なデータ通信,インターネット,テレビ会議など多様な情報サービスの初年度の運用を行ったことは特記すべきである.昭和基地,及びオングル海峡の海氷が安定しなかったため,野外行動の本格的開始は極夜が明けた7月となった.8月以降,生物学,地球物理,大気観測に関する多くのリュツォ・ホルム湾沿岸調査旅行や航空機観測を実施した.45次越冬隊では朝日新聞記者2名が観測隊同行者として越冬し,南極の自然や隊の活動の報道を国内に送った.
著者
小倉 裕司 杉本 壽 鍬方 安行 松本 直也
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は、熱中症時にみられる血管内皮傷害に対する再生応答を評価し、熱中症モデルにおいて血管内細胞移植(骨髄間質細胞)の有効性を検討することである。熱中症にともない、肺を中心とする多臓器に血管内皮障害、臓器障害が認められた。骨髄間質細胞移植が抗炎症効果、血管内皮保護作用を発揮して生存率を有意に改善し、新たな治療戦略となりうるか検討を加えた。
著者
原 三紀子 小長谷 百絵 海老澤 睦 寺町 優子 水野 敏子
出版者
東京女子医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

【目的】神経難病患者の心のケアについて、看護師がどのように思い、取り組んでいるかの実態を明らかにし、より良いケアのあり方を検討していくこと。【方法】対象:神経難病患者への看護経験のある看護師20名。調査期間:2004年5月〜2005年3月。調査方法:半構成的面接によるインタビューを行い、質的帰納的に分析した。【結果・考察】対象者は女性19名、男性1名で、平均年齢29.5歳(SD6.03)、臨床平均年数7.5年(SD6.25)であった。大カテゴリー20、中カテゴリー65、小カテゴリー146が抽出された。大カテゴリーは「看護師が思う心のケア」「看護師の心を支えるもの」「心のケアの取り組みを阻むもの」の3つに分類された。「看護師が思う心のケア」は【病気をもちながらも本来の人生の意味を再確認できるような働きかけ】で、【患者がリフレッシュできるような働きかけ】【苦悩の軽減】【告知後の患者の心理状態のフォロー】などに努めることが重要と考えていた。また、【心と体は関連がある】と心身をトータルに捉えることや、【患者の気持ちを察知できるようアンテナを張る】感覚を持つことなどが重要と考えていた。「看護師の心を支えるもの」は【ケアの方法に患者固有の工夫を見つけ出すことが難病看護の醍醐味】と感じたり、【退院に向けて患者・家族と協働する】ことなどであった。また、【難病患者への思い込みが覆されたことによる驚き】によって神経難病患者へのステレオタイプ化した見方が除かれ、患者の理解を深めていた。「心のケアの取り組みを阻むもの」は【身の回りの世話に追われている】【独特なコミュニケーション方法が存在する】【難病看護は期待通りの成果が得られない】など看護体制や神経難病の病態の特性などが抽出された。また、【心のケアに対する苦手意識】【患者の気持ちに触れることが不安なので関わらない】【信頼関係は心のケアの基盤という思い込み】などの看護師自身の思いや、患者の話を【聴きだす技術の不足】が心のケアの取り組みを困難にしていると捉えていた。したがって、心のケアを行うためには神経難病の疾患特性の理解、看護体制の整備に加え、看護師が抱える問題の解決を考慮に入れた看護教育プログラムの開発の必要性が示唆された。
著者
志水 幸 志渡 晃一 村田 明子 日下 小百合 亀山 青海 小関 久恵 古川 奨 杉山 柳吉 倉橋 昌司 樋口 孝城 貞方 一也 岩本 隆茂
出版者
北海道医療大学
雑誌
北海道医療大学看護福祉学部紀要 (ISSN:13404709)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.67-71, 2004

本稿では、本学新入学生の健全なライフスタイルの確立に資するべく、日常の健康生活習慣の実践度、心身の自覚症状、自覚的健康感などについて検討した。その結果、以下の諸点が明らかとなった。1)健康生活習慣実践指標(HPI: Health Practice Index)で良い生活習慣が守られていた項目は、男女ともに「適正飲酒」(男性96.6%、女性98.1%)であった。他方、もっとも実践率が低かった項目は、男性では「朝食摂取」(57.7%)、女性では「拘束時間が10時間以下」(69.6%)であった。2)HPI得点は、男女とも6点がもっとも多く、男性28.4%、女性34.3%であった。また、7点以上の良い生活習慣を実践している割合に、男女間での差はみられなかった(男性23.5%、女性23.7%)。3)自覚症状で、女性と比較して男性で有訴率が有意に高い項目は確認されず、男性と比較して女性で有訴率が有意に高い項目は、「なんとなくゆううつな気分がする」、「誰かに打ち明けたいほど悩む」、「理由もなく不安になる」、「自分が他人より劣っていると思えて仕方がない」、「足がだるい」、「肩が凝る」、「胃・腸の調子が悪い」、「便秘をする」の8項目であった。4)HPIを実践している群と比較して、実践していない群で自覚症状得点が高い傾向、また、自覚的健康感が低くなる傾向が認められた。以上の結果から、HPIの実践は、自覚症状有訴率の低下、および自覚的健康感の向上のための、有効な規定要因の1つであることが示唆された。ただし、自覚症状有訴内容や、HPIの実践と自覚的健康感の関連などに性差がみられることから、健康教育対策を講ずる際には性別に対する十分な配慮が必要であると考えられた。
著者
宮下 晃一
出版者
鳴門教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

中学校の技術科において生徒が機械的な動く仕組みを製作して動かす実習を通して様々な機構に触れて学ぶことができる,組立て式の機構学習キットの開発を行った。キットは回転軸と無給油ブッシュ,プーリー,歯車,スライダー,リンク等数サイズから構成されている。機構学習キットの教育的効果を評価するために研究授業を行った。研究授業は、講義と実例紹介による従来型の授業と、機構学習キットを用いた授業を行い,それぞれの授業後に生徒たちを対象としてアンケート調査を実施した。その結果,機構学習に本キットを用いることによって,生徒は高い関心を持って授業を受けることができ,身近な機械の仕組みをよく理解することができたことが分かった。
著者
大森 康正 斉藤 奬 松井 繁巳
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.191-193, 1960

本年(1960)6月中旬頃, 新潟市山ノ下地区に黒い小さなハエが非常に多く発生しているという情報が同市東保健所に入つた.その後, 本種は一時下火になつたかのように見えたが, 梅雨の明けた7月中旬頃から山ノ下地区から約1kmはなれた市内沼垂の貯木場付近一帯に再び大発生し, 近くの民家に侵入して住民を悩し始めた.本種は同定の結果, Drosophila virilisクロショウジョウバエと判明した.新潟市内のショウジョウバエについては筆者らの一人斉藤が1957年に調査しているが, 今回の発生は当時の採集量に比べて問題にならぬくらいの大発生である.筆者らは今回の異常発生について発生源その他を調査し, 併せて殺虫剤散布も試みたので, その成績を紹介したい.

1 0 0 0 頼杏坪の詩

著者
直井 文子
出版者
東京成徳大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:13403702)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.188-179, 2010
著者
入江 一浩 増田 裕一 村上 一馬 上村 諭子 大東 肇 原 英之 大橋 竜太郎 中西 梓 竹腰 清乃理
出版者
天然有機化合物討論会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集
巻号頁・発行日
no.49, pp.61-66, 2007-08-24

Aggregation of the 42-mer amyloid β (Aβ42) plays a central role in the pathogenesis of Alzheimer's disease. Our recent research on the systematic replacement of Aβ42 with proline suggested that the formation of a turn structure at Glu-22 and Asp-23 could be essential to the potent aggregative ability and neurotoxicity of Aβ42. We verified the existence of this turn structure in the minor conformer of wild-type Aβ42 and E22K-Aβ42 (Italian mutation), by solid-state NMR using dipolar assisted rotational resonance (DARR). In E22K-Aβ42, the ionic interaction between Lys-22 and Asp-23 might promote the turn formation at this site. In order to identify the toxic conformation of Aβ42, we synthesized Aβ42-lactam(22K-23E) as a conformationally restricted analogue of the minor conformer, whose side chains of Lys-22 and Glu-23 are linked with an amide bond. Aβ42-lactam(22K-23E) showed much stronger aggregative ability and neurotoxicity than E22K-Aβ42. This implies that the minor conformer with a turn at Glu-22 and Asp-23 of Aβ42 should be considered as a toxic form. Neurotoxicity of Aβ42 is closely related to the radicalization at both Tyr-10 and Met-35. Our previous study reminds us that the S-oxidized radical cation at position 35, the ultimate toxic radical species, would be produced effectively through oxidation by the phenoxy radical at position 10 in the toxic conformer. Electron spin resonance (ESR) spectrometry using spin-labeling with MTSSL revealed that these residues are close to each other in Aβ42. This finding clearly accounts for the reason why the toxic conformer is more pathogenic than the physiological one.
著者
浅井 冨雄 松野 太郎 光田 寧 元田 雄四郎 武田 喬男 菊地 勝弘
出版者
東京大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1988

(1)1988年度は観測期間を2週間とし、1988年7月6日〜7月19日まで初年度とほぼ同じラジオゾンデ観測網を展開した。本年度は目標(2)にも重点を置いて、レーダー観測網の展開をはかった。即ち、名大・水圏研は福江、北大・理は西彼杵半島北大・低温研は熊本、九大・農は福岡でそれぞれレーダー観測を実施した。2週間の観測期間を通常観測(12時間毎の高層観測と定時レーダー観測)と強化観測(6時間〜3時間毎の高層観測と連続レーダー観測)に分け、研究者代表者の指示によりそれぞれ実施した。観測中前半は梅雨明けの状況となったが、後半には、特に16〜19日にはかなりの豪雨が観測され、目標(2)の研究が可能な観測資料が得られた。現在、各分担者がそれぞれの資料を整理し、解析しつつある。(2)1987年7月の特別強化観測期間中は降水現象は殆ど観測されなかったが、その前後にはかなりの降水が見られるので、7月の1カ月間について総観的解析をその期間の中間規模擾乱に焦点を合わせて行いつつある。7月上旬の降水の特徴と中旬のそれとの間には顕著な差異が見出された。前者は比較的広域に一様な降水、後者は狭い範囲へはの集中豪雨的な特徴を示した。後者については中間規模低気圧とそれに伴うクラウドクラスターと降水系の南側に下層ジェットが見出され、その生成機構が水蒸気凝結潜熱の解放による中間規模低気圧の発達に伴うものであることが示された。(3)数値モデルの研究では(a)特別観測を含む梅雨期間中について微細格子モデルを用いて中間規模低気の予報実験を行い、モデルの改良を試みつつある。(b)現在開発中の積乱雲数値モデルに地形効果を導入して本年度の観測資料等と対比しながら、豪雨生成に関与する対流雲の組織化、移動、停滞などの機構を調べるためにモデルを改良しつつある。
著者
堺 正紘
出版者
九州大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

木材の流通・利用をめぐる状況の変化の中で、すなわち(1)住宅供給形態の変化(企業の進出やプレカットシステムの増加)、(2)冷暖房の普及や遮音・断熱性に対する要求の向上、(3)大型木造建築物の増加、(4)伐出産生の機械化や原木市売市場の発達等による木材の生産・流通構造の変化、などに伴って木材の乾燥問題がクロ-ズアップされるようになった。しかし、1987年の乾燥木材の生産量は945m^3で、製材工場の製材品出荷量の3.1%を占めるに過ぎない。しかも大半が造作材、フロ-リングや集成材の原板、家具用材、梱包用材等であり、柱角のような建築用構造用材は29%に過ぎない。本研究では、建築用木材の分野での乾燥木材の生産・流通の最適シストムを明らかにすることを目的に、製材工場(1989年度)とプレカット工場(1990年度)の木材乾燥に対するアンケ-ト調査並びに原木乾燥に関する産地調査(1991年度)を実施した。木材乾燥は原木の天然乾燥と製材品の天然及び人工乾燥との効果的な組合せが課題であるが、スギ材産地の製材工場では、製品の天然乾燥(1ヶ月以上)は39%、人工乾燥は22%、原木天然乾燥(1ヶ月以上)でも48%が行っている過ぎない。これは乾燥木材と生材との価格差が小さく乾燥コストが償えないからであるが、木材乾燥による材質や商品管理上のメリットについては多くの製材工場が認めている。プレカットは在来木造建築の分野では顕著な伸びが続いているが、プレカット工場の木材品質に対する要求は一般工務店よりも厳格である。部材の含水率管理の現状はまだ甘いが、それは乾燥木材供給量の絶対的な不足によるところが大きい。葉枯らし等による乾燥原木の生産量は688千m^3、国有林230千m_3、民有林458千m^3であり、民有林では奈良県を中心とする近畿地区に36%が集中する等地域性が大きい。またマニュアルの見直しを求める声も強い。
著者
山口 幸代
出版者
熊本大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究課題は、企業の社会的責任、という近年その重要性が注目されている問題について、会社法制という視点からのアプローチを試みるというものであった。企業をとりまく利害関係者の中で、企業が社会的責任を果たすべき対象として今回焦点を当てたのは企業の労働力を担う従業員である。具体的なアプローチの手法としては、会社との関係で従業員にもたらされた損害に対しては会社だけでなく役員にも責任を負わせることで、健全な企業運営を担うことに対する経営者の責任意識を高めることにつながることが期待できると考えられる。
著者
平井 啓久
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

(1)ヒト第2染色体形成メカニズムを再検討する目的で、ヒト第2染色体ペイントDNAおよびα-サテライトDNAをプローブとして、ヒト、チンパンジー、およびゴリラの染色体に蛍光in situsハイブリダイゼーション(FISH)を行った。その結果、ペイントDNAは、従来の見解(ヒト第2染色体はチンパンジー第12・13染色体の末端融合によって形成された)を、確認した。α-サテライトDNAは、厳しい条件下で、ヒト第2染色体、チンパンジー第12染色体および小型メタセントリック(未同定)、およびゴリラ第11染色体のセントロメアに対してポジティブな反応を示した。今回のデータからでは、ヒト第2染色体の形成メカニズムに新しい知見を加える事はできなかったが、チンパンジーに、共通セントロメアを有する2対の染色体が存在する事は、その2対の染色体が共通の染色体から派生した可能性を示唆している。そこで、現在、染色体顕微切断法を用いて、チンパンジー第13染色体のセントロメアのDNA採取およびそれを用いてのFISHを行っている。また、チンパンジーの染色体分化の解明のための新戦略を検討中である。(2)シロテテナガザル、アジルテナガザル、ミューラーテナガザル、クロッステナガザル、およびワウワウテナガザルの染色体をC-バンド染色で観察したところ、従来発表されているパターンと異なるデータが得られた。腕内介在バンド、末端バンド、短腕全ヘテロクロマティン等を有する染色体が多く観察された。また、G-バンド染色で従来観察されていた第8染色体の逆位多型も、以前とは異なる状況で観察された。現在、染色体44本型テナガザル類の染色体分化のメカニズムを、今回観察した事実を基に、従来とは異なる方向から検討している。さらに、そのデータを基に、染色体変異ネットワークおよび核グラフ法を用いて数量的に解析中である。