著者
新井 正康
出版者
北里大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

今年度、表記の研究課題について以下のことを明らかにした。1.全国の麻酔指導病院を対象とした、術中心停止時のマニュアルに関するアンケートを配付し、マニュアルの有無、PCPSを使用した蘇生の経験の有無、臨床工学技師のレベル、院内の協力体制の有無、PCPSを扱えるかという問題、PCPSの適応に関する意見を調査した。2.PCPS開始決定時の循環器外科、内科、臨床工学部門への連絡経路を作成した。3.手術室内で行われる術式、体位で分類した、送血管、脱血管挿入部位の決定、手順を作成した。4.モニタリングの部位と内容として、パルスオキシメーター、呼気終末炭酸ガスモニタリング、観血的動脈圧モニタリング、中心静脈圧モニタリング、スワンガンツカテーテル挿入、経食道心エコーの施行、各種カテーテルの挿入部位をマニュアル化した。5.手術内容、部位、時期による抗凝固療法(ヘパリン)の量の決定、抗凝固のモニタリングの間隔(開頭手術、開胸手術、開腹手術、四肢体表手術)(手術開始前、中、止血後、終了後)(ACT200秒3時間毎)などをマニュアル化した。6.PCPS開始後の鎮静薬、筋弛緩薬の量(midazolam. Propofol, thiopental, vecuronium, pancuronium)をマニュアル化した。7.脳保護法とそれに関するモニタリング(midazolam. Propofol, thiopental,ステロイド、低体温、過換気)(脳圧モニタリング、内径静脈酸素飽和度モニタリング、脳波モニタリング)の方法をマニュアル化した。8.体温を決定した。(常温管理、軽度低体温管理、中等度低体温管理)9.手術室内にPCPS回路およびPCPS装置を常備できるかという問題、コスト的な検討を行なった。
著者
林 行雄 上林 卓彦 柴田 政彦 真下 節 駒村 和雄 畔 政和
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

(1)ラット脳死モデルの確立Pratschkeらの方法(Transplantation 67:343-8,1999)に基づいて、脳死導入時の循環動態の安定と脳死導入後に長期(ほぼ3-4時間)に循環動態が維持できるモデルを確立した。(2)脳死における揮発性麻酔薬の心筋感作作用現在臨床で広く用いられているイソフルレンおよびセボフルレンはハロセンに比べると心筋感作作用は弱かったが、麻酔薬を投与しない脳死ラットに比べて心筋感作作用を増強した。この事は脳死患者でのこれらの使用は不整脈の危険性が潜在的にある。(3)脳死後の心機能保護に関する研究脳死後、心臓を致死的な不整脈から守るため循環抑制が少なく、抗不整脈作用を有する薬剤のスクリーニングをハロセン-エピネフリン不整脈モデルを用いて行い、ミトコンドリアATP感受性Kチャンネル開口薬であるニコランジルがこの目的に一番かなう薬剤と考えられた。(4)周術期中枢神経による循環制御周術期不整脈のモデルであるハロセン-エピネフリン不整脈を用いて不整脈発生における中枢神経の役割を検討した。イミダゾリン受容体1が不整脈の発生を抑制することを見いだした。(5)心臓移植周術期における内因性体液調整因子の変化心臓移植手術および重症心不全に対する左心補助人工心臓植え込み術を対象にしてアドレノメデュリンに着目し、その周術期変化を調べ、人工心肺離脱後に著明な上昇を認め、心臓移植術の方がその上昇はより著明であった。人工心肺時間はほぼ同じであるが、心停止時間が心臓移植術でより長い点に着目し、本結果はアドレノメデュリンが心筋障害と関連が深い事を示唆するものであると考えている。(6)心臓移植術の麻酔管理のモニタリングの研究心臓移植術の麻酔管理では右心機能のモニターを有するスワンガンツCCO/CEDVサーモダイリューションカテーテル^<【○!R】>の有用性を示した。
著者
竹内 利行 石川 英一 小暮 公孝 堀内 龍也
出版者
群馬大学
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1989

成長ホルモンやプロラクチンは、粗面小胞体でシグナルペプチド部分が切断されるだけで生理活性ペプチドとなるが、インスリンなど多くの生理活性ペプチドは前駆体として産生され、分泌顆粒に入る過程で、そのペプチドに隣接する塩基性アミノ酸対が限定分解をうけ、生理活性ペプチドとなる。この限定分解は内分泌細胞に特異的で、線維芽細胞、上皮細胞、リンパ球のような非内分泌細胞では、インスリン遺伝子を組み込んでもインスリンは前駆体として産生され、生理活性型には変換されない。ところで血液凝固因子や成長因子のあるものは、非内分泌細胞中で前駆体として産生され、生理活性蛋白に変換されるが、最近この変換はーArg^<ー4>ーXーLys/Arg^<ー2>ーArg^<ー1>配列がFurinという蛋白分解酵素で分解されることが分った。更にインスリン受容体や補体第3因子、第5因子の前駆体はサブユニット間に4つの塩基性アミノ酸配列を持ち、線維芽細胞やリンパ球で限定分解をうけて複数のサブユニットから成る成熟型蛋白となることが知られている。そこで我々はラットプロインスリン前駆体cDNAをB鎖ーArgーArgーLysーArgーCペプチドーArgーArgーLysーArgーA鎖となるようにした変異インスリンcDNAを作製しアフリカ緑毛猿腎上皮細胞由来COSー7に導入し、発現させたところ、培養液中の免疫活性は約60%がインスリン分画に移行してい。更にFurin遺伝子を同時発現させると、成熟型インスリンへの変換はほぼ100%となった。又インスリン分画の生物活性はヒトインスリン製剤とほぼ同等であった。以上の実験からCOSー7のような非内分泌細胞でもプロセシング部位が4つの塩基性アミノ酸配列になるように変異を加えたcDNAを発現させると、変異プロインスリンは生理活性型インスリンへ変換することが分かった。このことは非内分泌細胞でインスリンを発現させることによって、代用インスリン産生細胞として用いることができる可能性を示している。
著者
根立 研介
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究は、康慶、運慶、快慶等によって新しい彫刻様式が打ち立てられた鎌倉時代前期の彫刻史を再評価するための試みである。従来の彫刻史研究では、摂関期に和様彫刻が大成され、その大成者の名を取った定朝様の彫刻様式が平安末期を通じて支配的であったが、平安末期頃に奈良地方から萌芽した新たな新時代の様式が慶派仏師の台頭と共に新しい時代様式となったとし、鎌倉時代の彫刻史、あるいはより正確に言えば鎌倉前期の彫刻史は慶派の彫刻史として語られてきた観がある。そして、彼等の代表的な遺品が奈良に偏在していることともあって、その語りを素直に受け取れば、造仏の中心がまるで奈良にあったかのようにさえ思えてくるのである。今回の研究では、こうした従来の見解を検証するために、この時代の彫刻遺品の調査と、鎌倉時代に入る直前の時期である後白河院政期と、鎌倉時代前期に当たる後鳥羽院院政期の美術史に関わる史料収集を行った。遺品調査に関する成果は、鳥取長楽寺諸尊像のように、従来平安末期頃の京都仏師の作とみられていたものの中には、鎌倉前期に制作されたものがかなり混じり込んでいることが分かってきた。また、文献史料の分析からは、京都仏師、特に院派仏師の活動が盛んであった事も明らかに出来た。したがって、鎌倉時代前期においては、京都を中心に伝統的な仏所に属する仏師達の活動も盛んであり、従来の彫刻史研究はあまりに慶派仏師を中心に論じられており、これを見直す必要性があることを明らかにできたと自負している。
著者
横河 民輔
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
建築雑誌 (ISSN:00038555)
巻号頁・発行日
vol.23, no.271, pp.326-328, 1909-07-25
被引用文献数
1
著者
後藤 純信 飛松 省三 坂本 泰二
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究では、網膜変性による網膜機能障害を網膜全般の現象と捉え、網膜変性疾思の病態を明らかにするために、網膜色素変性症(RP)モデルのrdcラットやrdsマウス、錐体一杵体ジストロフィ症(CRD)モデルのCMYCマウスを用いて、1)杵体・錐体系細胞や網膜内層の経時的機能変化を網膜電図(ERG)で定量解析、2)光受容体細胞や網膜内層の経時的組織変化を細胞のアポトーシスを指標に解析、3)遮光や遺伝子導入による網膜残存機能の温存効果をERGと組織学的変化で検討した。本研究結果として、1)CMYCマウスの錐体細胞系ON型、OFF型双極細胞の機能が1ヶ月まで正常に近いが、6ヶ月では反応が消失、2)網膜内層の機能変化が早期より起こる、3)3ヶ月間の暗所飼育により網膜機能が通常飼育より保たれる、4)rcsラット網膜に、ウィルスベクターでFGFやその他の神経成長因子の遺伝子を導入したところ、長期間の機能温存を認める(Ikeda et al.,2003;Miyazaki et al.,2003)、5)暗所飼育CMYCマウスではベクター導入効果は明らかでなかった。以上より、杵体細胞や錐体細胞の機能変化は、網膜の外層と内層で多少の時間的ずれがあるものの、組織学的変性に準じて起こった。また、CMYCマウスやrcsラットの暗所飼育による網膜細胞変性の遅延(抑制)効果は明らかであったが、ベクターによる遺伝子導入効果は、種間で差があった。遺伝子導入は、現在眼科と共同研究を行なっており、手技等の改善により新しい治療法として近い将来確立できると思われる。本研究を通して、今までその詳しい病態や治療法のなかった網膜変性症に対し、初期からのサングラス等による光からの防御や遺伝子治療の可能性を提言できたことは、将来の網膜変性症治療への応用に向けて有意義な結果であったと考える。
著者
神谷 厚範 杉町 勝 上村 和紀 杉町 勝
出版者
独立行政法人国立循環器病研究センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

集中治療医学における循環管理は、患者生命予後を決する重要な高度医療であるが、最近の医師不足を背景に、医師の身体的負担は大きく、また過労が人為的ミスや医療過誤を招き、社会問題となっている。本研究は、テクノロジーを利用した自動医療システムによって、この状況の打開を目指す取り組みとして、循環動態を自動診断し、多薬剤同時投与によって自動治療するシステムの開発を、特に、その開胸下限定仕様から閉胸下適用仕様への発展に力点をおいて行い、循環不全動物(イヌ等)の循環動態を実際に正常化した。
著者
伊藤 漸 小浜 一弘 近藤 洋一 竹内 利行
出版者
群馬大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1990

モチリンは消化管粘膜から分泌されるペプチドホルモンで消化・吸収の終了した空腹時に約100分間隔で血流中に放出され、先ず胃・上部十二指腸に一連の強収縮をひきおこし、これが順次下部消化管に伝播して、空腸・回腸に溜った胃液・腸液を大腸の方に押しやる働きをする。モチリンによる消化管平滑筋収縮作用は、動物種によって大きく異なる。例えば、ブタやイヌから抽出したモチリンは、ラット,モルモットの消化管には全く作用しない。イヌに投与すると空腹時強収縮をひきおこし、この作用はアトロピンによって抑制されるので、モチリンの作用はアセチルコリンを介していることが予想される。ところがin vivoのウサギの実験ではこの強収縮は観察できない。しかしウサギ腸管平滑筋条片をマグヌス管につるして筋の収縮を調べるとモチリンによる筋収縮を確認でき、しかもアトロピンでは抑制されず、モチリンの平滑筋への直接作用が考えられる。但し単離筋細胞を用いた培養実験では、アセチルコリンは筋収縮をひきおこすが、モチリンでは筋収縮を確認できていない。我々は、ウサギ平滑筋膜上にモチリン受容体の存在を想定して、膜分画への ^<125>Iーモチリンの結合実験を行った。 ^<125>Iーモチリンは膜の粗分画を用いると結合を認めたが、精製した膜分画を用いると結合が認められなかった。そこで我々は、モチリンが直接平滑筋に働くのではなく、神経に作用しアセチルコリン以外の伝達物質を介して筋に働いている可能性を考慮しているが、同時に、1) ^<125>Iーモチリンの比放射能活性を高める 2)13位のMetをLeuに置換して酸化をうけにくくさせる 3)第7位のTyrを除き、カルボキシル端にTyrを付加したモチリンを合成する,等の工夫により、生物活性がヨ-ド化によっても十分保持できるモチリンの作成を行なった。現在これらの修飾モチリンを用いて平滑筋膜分画との結合実験を継続している。
著者
中西 浩三 野田 祐司 白日 高歩 宮崎 一博 廣田 暢雄
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.943-949, 1991-10-20

SIADHを合併した肺燕麦小細胞癌の患者で, 心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)が高値を示した症例を経験した.咳噺, 発熱のため入院.検査所見では血清Na値が114mEq/lと低く, 血漿浸透圧も233mOsm/lに低下していた.同時に測定されたANPは157pg/ml(正常値<10pg/ml)と高値を示した.脱水症状はなくて腎機能も正常であり, 肺小細胞癌によるSIADHと診断した.高張食塩水負荷試験に心臓カテーテルを併用した検査を行った結果, ANPが腫瘍からではなく心筋から放出されている可能性が示唆された.実学的治療が行われ, 腫瘍量の減少にともなって低Na血症は改善した.切除された腫瘍の抽出液からは高濃度のADHと微量のANPが検出された.SIADHにおける低Na血症は, ADH異所性産生, 循環血液量増加, 心房内圧上昇, ANP放出, Na利尿という機序で起こるものと考えられた.
著者
竹内 利行 菅野 健太郎
出版者
群馬大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1989

多くのペプチドホルモンは前駆体として産生され、まず生理活性ペプチドに隣接する塩基性アミノ酸対部分が限定分解を受け、更に生理活性ペプチドのカルボキシル(C)端のGlyがアミド化酵素によってC端アミドに変換される。限定分解やアミド化は内分泌細胞で特徴的におこり、上皮細胞や線維芽細胞のような非内分泌細胞ではおこらない。我々は限定分解能とC末端アミド化能が内分泌細胞の一般的特徴であることを知るために、アミド化ペプチド産生が知られていない下垂体前葉細胞も含め、種々の内分泌細胞と非内分泌細胞で限定分解能とアミド化能を検討した。そのプロ-ブとしてC端アミドの構造をもつガストリン及び、膵ポリペプチド(PP)のcDNAを、内分泌細胞(GH3,AtT20,RIN5F,PC12)及び非内分泌細胞(NIH3T3,BHK21,Hepalー6)に導入し、生産されたペプチドをそれぞれのC末端特異的抗体で検討した。内分泌細胞は全て前駆体からアミド化ペプチドを産生する能力を有していたが、非内分泌細胞ではガストリン,PP共にアミド化を受けない前駆体が産生された。ガストリンの場合は、予想通り大分子の前駆体として産生されていた。ところがPP前駆体はアミド化はうけていないものの限定分解をうけていた。非内分泌細胞で前駆体が限定分解されるには塩基性アミノ酸対の前ー4位またはー5位に、もう一つ塩基性アミノ酸が必要である。PPはーArgーTyrーGlyーLysーArgーのアミノ酸配列をもつので非内分非細胞で限分解をうけたものと考えられる。結論)アミド化ペプチド産生が知られていない内分泌細胞でも、アミド化され得るペプチドのcDNAを導入すると、アミド化ペプチドが産生されるが、非内分泌細胞では発現ペプチドのアミノ化はおこらない。しかし塩基性アミノ酸対の前方にもう一つの塩基性アミノ酸がある場合には前駆体は限定分解をうける。
著者
廣野 喜幸 石井 則久 市野川 容孝 金森 修 森 修一 山邉 昭則 渡邊 日日 関谷 翔 高野 弘之 花岡 龍毅
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

国際比較の観点から、公衆衛生・医学研究に関する日本の医療政策の形成過程の特徴を明らかにするため、医学専門雑誌、審議会の議事録や裁判記録等の資料分析を中心に調査し、その成果を論文・口頭で発表した。また各年度、医学・医療行政の専門家に対してインタビュー形式の調査を実施した。調査を通じて積極的な意見交換を行いながら、日本の医療行政の仕組みやワクチン・インフルエンザ等の政策の歴史の把握、最新情報の収集に努めた。
著者
徳岡 涼
出版者
熊本大学
雑誌
国語国文学研究 (ISSN:03898601)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.19-32, 2003-03-25