著者
田沢 純一 長谷川 怜思 長谷川 美行
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.114, no.6, pp.269-285, 2008-06-15
参考文献数
116
被引用文献数
5

水越層は九州中央部の水越地域に分布し,黒色頁岩と薄衣式礫岩で特徴づけられる上部ペルム系(Lopingian)で,全層厚は1,690mに及ぶ.南部北上帯の登米層,飛騨外縁帯の森部層上部,黒瀬川帯の球磨層と層相が似ている.水越層のフズリナ類フォーナはLepidolinaを含み,NeoschwagerinaとYabeinaを欠くことで,南部北上帯・飛騨外縁帯のものに類似するが,黒瀬川帯のものとは異なる.腕足類フォーナはボレアル型-テチス型混合フォーナであり,飛騨外縁帯,南部北上帯,プリモリエ南部の中〜後期ペルム紀腕足類フォーナに種属構成が似ている.以上のことから,水越層は飛騨外縁帯のペルム系の南西延長部に相当し,南部北上テレーンの構成要素であると考えられる.また,ペルム紀中〜後期に水越地域はより北方の飛騨外縁帯と南方の南部北上帯にはさまれてその中間に位置し,これら全体は北中国東縁に存在したと考えられる.
著者
畑 雅恭 田 学軍 山田 義和 馬場 清英 内匠 逸 矢橋 清二
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EMCJ, 環境電磁工学
巻号頁・発行日
vol.98, no.493, pp.13-18, 1998-12-18

地震の電磁波前兆のメカニズムを解明するためには, 放射域を標定し, 放射電磁波レベルの距離特性を解明することが重要である.多観測点からの方位標定の結果, 大規模な放射域が予想を超えて海溝周辺の海洋面であること, このほか地域的, 局地的な放射の3つに大別されることもわかってきた[1][2].また, 放射域の標定により, 距離放射特性も明らかになった.さらに, 放射電磁波のみならず全く別のメカニズムによって発生する前兆を相互確認することが出来れば, 地震前兆現象の解明と予知の信頼度は著しく向上する.今回群発地震の多発する伊東市において, ガイガーミューラ計数管を用いて高エネルギー粒子の計測を昨年5月より開始し, 本年4月21日より発生した群発地震に先行する1個月半の間に, 予想を超える放射レベルの上昇と, 特有な発生様態の高エネルギー粒子の出現を観測した.また, これらの高エネルギー粒子の出現は地下の脱ガスによると推定される垂直磁界の放射レベルの上昇とも対応している.これら全く異なる2つの種類の前兆現象の出現は, 地震に関連した前駆的な地殻活動が, 従来の範囲を超えた広いメカニズムに関連していることを示す.超高圧・高密度下における量子電磁力学的な現象の存在をも, 地球化学, 電気化学, 機械電気変換に加えて考慮する必要がありそうである.
著者
アルボレダ ピア
出版者
大阪外国語大学
雑誌
大阪外国語大学論集 (ISSN:09166637)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.27-43, 2006-02-16

本論文はビノ・レアルヨの『傘の国』を女性学におけるガラトリ・スピバック(Gayatri Spivak)の理論を用いつつ分析したものである。その中核となる命題は,エストレラ(Estrella)と彼女の息子たちが影響力を持たない立場を占める一方,エストレラの夫である男性が権力のある立場にいるということに向けられる。『傘の国』は少年・グリンゴ(Gringo)の目を通して,マーシャル・ロー時代のフィリピンのスラム街での一家の生活について述べられている。グリンゴは母親のエストレラと父親のダディー・グルービー(Daddy Groovie),そして兄のピポ(Pipo)と暮らしている。ダディー・グルービーはニューヨーク(Nuyork)に行くことを夢みている。結果的に彼はその夢を叶え,息子たちと共にニューヨークで暮らす方法を見つける。小説のラストシーンでグリンゴは飛行機に乗るが,エストレラはフィリピンに残ることを決意する。この評論(Critique)は悲劇的な経験を持つ女性と談話する取り組みとして,エストレラに宛てた一通の手紙の形式で論をすすめる。そうすることで,自分自身がエストレラと似通った立場にいることを自覚する全ての女性たちに語ろうというのである。
著者
卯木 次郎 井上 洋 山崎 弘道 村田 稔 木村 良一 川淵 純一
出版者
社団法人 日本脳神経外科学会
雑誌
Neurologia medico-chirurgica (ISSN:04708105)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.343-354, 1979-04-15

Prealbumin (PA) and its subfractions were analyzed to find their significance in the central nervous system from ontological and oncological points of view, using 7.5% polyacrylamide gel disc electrophoresis according to Ornstein & Davis. Tissues of 11 cases of normal human cerebrum, ranging from 5 or 6 months gestation to 64 years old, and 26 cases of brain tumor which included 12 gliomas, 8 meningiomas and 6 neurinomas were analyzed. Body fluids of 11 cases of brain tumor cysts, 12 ventricular cerebrospinal fluid with various neurological diseases, and 20 sera from the normal and the diseased were analyzed. 1. Tissue PA was subfractionated into five major peaks in the normal human brain, which we labeled PI through PV from the anodal side to the cathodal. In most of the brain tumors more than five peaks were subfractionated. 2. Concentration of PA subfractions changed in the developmental course in human brain. Among them, PIII and PIV changed remarkably in the fetal brain, namely, higher PIII and lower PIV levels were noted when compared to those of the adult brain. PI and PII showed no change during life. 3. Brain tumor had the same tendency as fetal brain regarding concentration of PIII and PIV subfractions. 4. PA III/IV ratios were compared as an index for showing some similarity in fetal brain and brain tumor tissues, and some tendency between them were observed. 5. PA fraction has been named as "neuronin" by Bowen et al. and as "SPR protein" by Kawakita, and some of its subfractions have been identified, for instance, PI as S 100, PIV as 14-3-2 or antigen α, PV as a sensitive index for hypoxia or neurotubulin protein. PIII as well as PII still have not been identified. Further analysis of these proteins, immunochemically as well as electrophoretically, might answer the question of whether or not therc are oncofetal proteins in the central nervous system.
著者
滿田 郁夫 竹内 栄美子 大塚 博 丸山 珪一 林 淑美 木村 幸雄 杉野 要吉 古江 研也 島村 輝
出版者
明治学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

中野重治は、その文学的出発にあたって「微小なるものへの関心」ということを言った文学者である。と同時に、石川啄木について論じて国家権力に敵対することを己に課した詩人である。以来、自分固有の世界、固有の視点を保ちながら、同時に「大きな物語」への鋭い関心を持ち続けた作家である。その人がその晩年に「戦後転換期」に際会して、世の変動に己の感性を全開して書き切ったのが長篇『甲乙丙丁』であるが、そこに至るまでに何を見、その心に何が生じ、同時代の政治・思想・文学とどう斬り結んだか、それを、残された日記・書簡などによって知ろうとした。平成九、十年度で日記の第一次読み合せと、粗ら打ち込みは終了し、十一年度は第二次読み合せと註付けに入った、しかし平成十二年度にはそれを一旦中断して、一九六三年日記と六四年日記との精密な読みと註付けの作業に入った、研究年度が終った平成十三年度にもその作業は続き、しかもなお、我々がここに提出するのは未完成の「テスト版」に過ぎない。一九六三、四年と言えば東京オリムピックを目掛けて、日本の社会が音を立てて変わって行った年々である。世界的には中ソ論争が起き、部分核停条約の評価を回って国内でも議論が始まり、新日本文学会第十一回大会は大いに揺れた。原水禁世界大会も分裂した。そうした事態に、全力を挙げて非妥協的に戦いつづけた中野重治は、自らが中央委員であった日本共産党を除名される。そしてその年末から『甲乙丙丁』が書き始められる。そうした重要な時期を扱って、我々の研究がどれだけ核心に迫りえたか。忸怩たるものがある。これは我々の到達点ではなく、出発点である、そんな風に思っている。
著者
一ノ瀬 友博 森田 年則
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.501-506, 2002-03-30
被引用文献数
10 14

淡路島北淡町の農村地域のため池24ヶ所において, 2000年の6月から9月の間,トンボ類の分布を調査した。出現したトンボ類の種数とため池の水域面積の間には明らかな関係が見られなかった。TWINSPANによって,24ヶ所のため池は5つのタイプに分類された。ため池の環境についての変数を説明変数として,分類・回帰樹木を用いて分析を行った結果,ため池の区分には,ため池の位置する標高,隣接する樹林の存在,水域面積,水質が影響を及ぼしていることがわかった。特に,ため池の周囲の約半分以上で樹林と接していれば,林縁や暗い環境を好む種が出現することが明らかになった。
著者
澁谷 誠二 若山 吉弘
出版者
昭和大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

平成16年度・17年度進行状況と本年度(平成18年度)成果平成16年度はMDXマウスへのゲンタマイシン薬物治療単独で、平成17年度はMDXマウスへの正常マウス臍帯血移植とG-CSF投与正常末梢血輸血を施行した。これらでは、治療群MDXマウスにおいて、一般筋病理組織像の変化はみられず、また、免疫染色標本による骨格筋ジストロフィン発現の解析においても、対照マウスと比較して明らかな変化はみいだせなかった。平成18年度は、ゲンタマイシン薬物治療と正常マウス臍帯血移植の併用療法を中心に、特に、マウス骨格筋のジストロフィン陽性線維の割合を治療群マウスと未治療群マウスにおいて統計的に比較検討した。生後1ヶ月および2ヶ月のmdxマウス各々6匹ずつにゲンタマイシンを投与し、投与終了4週後に免疫抑制剤(サンデユミン)で前処理した後、正常マウス臍帯血を尾静脈に静注し、静注後4週後の筋組織を解析した。その結果、治療群のmdxマウスでは未治療群のmdxマウスと比較して、その一般筋病理組織像に変化はみられなかった。一方、ジストロフィン免疫染色による解析において、未治療群のマウスでは1%以下のrevertant線維(ジストロフィン発現が明瞭な線維)が認められ、治療群のmdxマウスでの発現増加を期待したが未治療群のmdxマウスと違いは見られなかった(p>0.1、T検定)。ジストロフィン発現が明瞭な線維以外の筋線維のジストロフィン発現状態も観察したが、平成16年度と平成17年度の結果とどうように、ジストロフィンがごくわずかに発現していると思われる筋線維は治療群のmdxマウスで多いように思われたが、明らかな違いはみられなかった。
著者
脇谷 直子
出版者
広島修道大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、電子自治体構築のためのSOAを検討し、個別に開発が必要となる情報システムを限定させ、個々の自治体が情報システムの開発に投入すべき投資を限定できるような提案を行うことが目的であった。本年度は、海外における電子自治体の現状について、各地で取り上げられている課題や、その解決策の考え方と実際の取り組みを、現地調査を含む調査を実施することによって、明らかにすることに重点を置いた。主として、欧州の一例としての英国での電子自治体に関する会議における議論、米国での電子自治体に関する会議における議論および具体的事例報告の調査を行った。調査の結果、明らかとなったことは次のとおりである。米国においては、地方政府が調達に関する基本ポリシーを定めており、SOAのアーキテクチャが調達仕様として定められている例がある。英国で開催された会議では、電子自治体にとって住民の満足度を上げるサービスが重要である点が共通の認識であった。これらの調査結果から、次の点が成果として挙げられる。電子自治体がどのようなサービスをどのくらいの品質で提供すべきであるのか、利用者の視点にたって検討し、目標を設定すべきである。それに基づいて、アーキテクチャを含む実現方法を検討し、標準技術等に対する考え方が明確となるような仕様を、基本ポリシーの一部として公差すべきである。またそのポリシーを、基本調達仕様とすることが重要である。この調査結果および成果は、平成20年度内に論文執筆する予定である。今後の研究課題として、本成果を踏まえ、日本における電子自治体の実現に関する技術や標準への対応を検討し、より現実的で具体的な提案を行うことが重要となる。
著者
加来 俊彦 栗田 多喜夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.101, no.423, pp.33-38, 2001-11-08
参考文献数
8

一般写真からの顔抽出では画像中の大部分を占める顔以外の領域での誤抽出を削減する必要がある。テンプレートマッチング等のように顔の各点において均等な重みで識別器を構成すると、頬やおでこなどの面積の広い部分は影響が大きく、目や鼻などの小領域の影響は小さくなり、誤抽出が起こる。そこで本論文では、顔の各点で"顔らしさ"を求め、顔の抽出に有効な特徴点を選択し、それらを統合して誤抽出を抑制する方法を提案する。切り出した画像の各点での"顔らしさ"は、各点の周辺領域の輝度値から線形判別分析により構成した特徴量に基づいて定義した。
著者
明和 政子
出版者
滋賀県立大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2004

ヒトは、生後1年半から2年ごろに、鏡に映る自分の姿を「自分である」と認識するようになる。この結果は、ヒトが、自己を他者と区別して認識する能力が獲得された有力な証拠として位置づけられている。しかし、通常の鏡映像を理解できるはずの3歳児でも、2秒の遅延をはさんだ自己映像を見せると、それを自分であると認識することは困難となる(宮崎,2003)。つまり、自己映像を理解には、時間的随伴性という要因が大きく影響すると考えられる。鏡映像を理解できるのは、ヒトだけではない。チンパンジーをはじめとするヒト以外の大型類人猿も鏡に映った自分の像を、「自分である」と認識することができる。しかし、その他の霊長類については、そうした証拠は得られていない。本研究では、チンパンジー(Pan troglodytes)、フサオマキザル(Cebus apella)、ヒト乳児(Homo sapiens)を対象として、自己像を理解する能力の進化史的・発達的起源を探ること、その際、この能力の獲得を時間要因との関連において調べることを目的とした。実験条件として、(1)0.5、(2)1.0、(3)2.0秒遅延させた自己映像を、それぞれの個体に2分間、呈示した。各条件での像呈示の前後には、ベースラインとして通常の像をそれぞれ2分間呈示した。その結果、1)チンパンジーの成体は、身体の動きと自己映像が時間的に随伴しない状況でも、経験を積めば自己像であると認知する、2)フサオマキザルの成体は、モニターから遠ざかる、威嚇など激しい攻撃を加える、身体を頻繁にかきむしるなど、通常の鏡映像の場合よりも強い社会的反応を示す、3)ヒト乳児も通常の鏡映像と遅延する自己像を区別できており、遅延する自己像に微笑む、声をあげるなどより強い興味を示すこと、が明らかとなった。以上より、自己と他者の弁別能力の発達と進化においては、自己受容感覚-視覚間の時間的な同期性(随伴性)の認知が重要な要因であることが示唆された。
著者
帆足 養右 平林 祐子 船橋 晴俊 寺田 良一 池田 寛二 高田 昭彦 鳥越 皓之 海野 道郎 関 礼子 藤川 賢
出版者
富士常葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本プロジェクトでは、1)環境問題史および環境問題の社会調査史の整理、2)アジア・太平洋地域諸国における環境問題の歴史的展開と環境社会学的調査および研究動向の把握、3)わが国における環境社会学の形成・発展の過程の総合的検討、の3つの作業を行い、下記の成果をまとめた。(1)故飯島伸子・富士常葉大学教授が遺された、公害・環境問題の社会調査資料約6,000点の整理分類とデータベース作成作業を行い、それらを収めたCD(Ver.2)と文庫の概要を示すパンフレットを作成した。「飯島伸子文庫」は、環境社会学と社会調査についてのアーカイブとして完成し、一般に利用可能となった。(2)研究分担者らがそれぞれのテーマで、環境社会学の理論的、実証的研究を行い、26本の論文からなる報告書(全423頁)にまとめた。論文のテーマは、飯島伸子文庫と環境年表、日本の公害・労災問題、環境問題と環境運動、環境社会学理論と環境教育、地球とアジア・太平洋地位の環境、の5つに大別される。(3)飯島教授の代表的著作『公害・労災・職業病年表』(公害対策技術同友会,1977年)の索引付新版を出版し(すいれん社より2007年6月刊行)、さらにその「続編」に相当する(仮称)『環境総合年表(1976-2005)』のための準備資料として、『環境総合年表(1976-2005)準備資料1・統合年表』(全317頁)と、『環境総合年表(1976-2005)準備資料2・トピック別年表』(全166頁)を、本プロジェクトのメンバーらで分担・協力して作成した。これらは、主要な公害/環境問題について、分担者らがトピック別に重要事項を挙げた年表を作成する方式で編集され、全部で65のトピックを扱っている。今後更なるデータの吟味・追加が必要ではあるが、飯島教授の仕事を引き継ぎながら、環境問題および環境社会学と調査史について総合的に辿ることのできる資料となっている。
著者
浜田 弘明 金子 淳 犬塚 康博 横山 恵美 森本 いずみ 平松 左枝子 清水 周 橋場 万里子
出版者
桜美林大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

「鶴田文庫」は、博物館学者・故鶴田総一郎旧蔵の博物館及び博物館学に関する蔵書・資料群で、その総量は段ボール箱約250箱に及び、桜美林大学図書館が所蔵している。本研究では、最も公開が望まれている国内外の書籍に重点を置き、約13,000点に及ぶ資料の目録化を実現した。合わせて、鶴田の業績を明らかにしつつ、日本における戦後博物館学の発展・展開過程を検討した。目録化された資料は、桜美林大学「桜美林資料展示室」の「鶴田文庫コーナー」で公開している。