著者
石田 良作 青田 精一 田村 良文 渡辺 好昭
出版者
北陸作物・育種学会
雑誌
北陸作物学会報
巻号頁・発行日
vol.20, pp.9-10, 1985

新潟県下約20ケ所について, 59年豪雪による大小麦の被害を調査した。本年は10月播種時の天候不良, 早い根雪, 遅い融雪が重なって雪害が助長され, とくに播き遅れ圃場, 排水不良圃場で被害が著しかった。しかし, 適期播種, 排水対策を行なった圃場では130日を越える根雪でも, 300kg以上の収量が見込まれた(ミノリムギ)など, 改めて基本技術の重要性を再認識する結果となった。
著者
千葉 則茂 原美 オサマ
出版者
岩手大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

1. 自然物体・現象を可視化媒体としたレーザプロジェクション技術の開発降雪への投射や積雪への投射効果について実験を行い, 積雪はスクリーンとして, 降雪はビームの可視化媒体として十分に活用できることが分かった. また, 樹木(大木)への投射実験も行い, 投射側から観察するスクリーンとして活用可能であることも分かった. 防風林や街路樹の活用が期待できる.2. 天空でのグラフィックス技術の開発スクリーンを用いない投射では, 観察者側への反射が弱く認識が難しかった. また, 平行ビームの消失点により認識を容易にできることを期待し, 投射を試みたが, やはり良好な結果は得られなかった. ただし, レーザ強度にも依存すると思われるので, 結論を出すためには, さらなる検討が必要である. (購入したプロジェクタの強度300mWでは, 降雪や靄など可視化媒体密度が高くないと可視化されなかった.)3. 効率的で自由度の高いビーム投射技術の開発(1) タイミングを自動的に取るチューニング法レーザプロジェクタは電子的な要素と機械的な要素からなるため連続する描画コマンド間に適当な待ち時間をとらないと, ビームのon, offのタイミングや, 角の描画において, 描画データとの間に不一致が発生する. この待ち時間を自動的に取る手法を開発した.(2) ベクトルデータから効率的な一筆描きを構成する方法レーザプロジェクタでの描画は, 与えられたベクトルデータにビームをoffにして走査するブランクベクトルを加えて一筆描きをすることである. 最小数のブランクベクトルデータと描画に適する一筆描き順を求めるアルゴリズムを開発した.(3)並列投射を可能とするためのキャリブレーション法一般的な平面スクリーンではなく, 任意の可視化媒体(曲面スクリーン)を仮定し, 描画の歪みを補正し, 複数台のプロジェクタにより, 複雑度の高い描画を可能とする方法を開発した.
著者
安斎 ひとみ
出版者
目白大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

訪問看護に関する研究は多く報告されているものの、積雪寒冷地に居住する利用者宅に訪問する訪問看護の冬の問題と課題に焦点をあてた研究は報告が少ない。平成17年度および平成18年度の研究成果をもとに、平成19年度は積雪寒冷地における訪問看護ステーションの冬期の在宅支援方法と訪問のあり方を明らかにすることを目的とした。2008年2月に、東北地方の訪問看護ステーションを291か所の所長を対象に、自記式郵送法によるアンケート調査を行った。その結果、68名の回答があった。訪問看護ステーションが訪問している利用者は、冬に積雪などにより外出する機会が少なくなることがあり、筋力低下を予防するために室内体操やリハビリテーションを中心とした計画に切り替えているという事例があった。山間地で夜間凍結の危険がある地域の利用者を対象とするテレケアやパソコンを利用した遠隔地ケアシステムの導入は、予算的な問題があり難しいと答えた事業所が多かった。平成18年度研究結果を、学会で報告した。
著者
石井 彰三 福田 昌宏 堀田 栄喜
出版者
東京工業大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

ピンチ形式のプラズマ発生法において、大強度軟X線源、軟X線レーザーへの応用のうえで優れた特徴のある炭素薄膜ライナー圧縮方式を提案し、その原理を実証した。まず、雪かきモデルに類似したシミュレーション法により薄膜の圧縮過程を定量的に検討し、理論的にも本方式は問題が無いことを明らかにした。次に、成膜法の最適化について高周波放電、交流あるいは直流アーク、グロー放電、パルス放電等の各種形式について試み、細い炭素棒をジュール加熱して行う真空蒸着を用いれば、一様でかつ電気抵抗の低い薄膜ができることを示した。しかし現段階では炭素薄膜の場合、成膜に時間がかかり過ぎること、プラズマの圧縮過程が一様でないことなど問題点も多く存在する。そこで炭素にこだわることなく、導電性物質を薄膜とする概念に拡張して研究を発展させた。電気抵抗を低くするには金属薄膜が優れていることから、膜形成が容易なアルミニウムに着目し、その薄膜ライナーと圧縮を検討した。成膜はタングステン・ヒータを用いたアルミ真空蒸着法が確実であり、しかも一様にできること、および蒸着源の部分を工夫すれば真空を破らずに連続運転も可能であることを示した。内径7cmのアクリル製放電容器の内壁へ電極間に幅4cmでつけた膜の厚さは、10〜数10オングストロームであった。これを容量4.4μFのコンデンサ電源で放電電流70KAで駆動した実験により、原理通りの圧縮を実現し、本研究の提案が正しいことを示した。プラズマの振る舞いは、軟X線計測、高速度カメラによる観測だけでなく、これまでライナー圧縮実験では行われたことのない磁気プローブによる磁界測定を実施した。実験で得た軟X線出力を検討するため、平均イオンモデルならびに混成原子モデルによりアルミニウムプラズマからの軟X線放射スペクトルを理論計算から求め、現段階では、内殻電子からの放射強度が強くないことを示した。
著者
深尾 正之 斉藤 愿治 小村 浩夫 神藤 正士
出版者
静岡大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

この研究は、通常の雪かきモデルの成立するピンチプラズマと異なり、高速電子成分を含む非平衡プラズマを生成することが目的である。その方法として、放電電圧印加後にガスを導入して点孤させる爆燃放電を採用した。通常のガスパフZピンチプラズマ型の構造を持つ放電電極を用い、電極間に並列に接続したインダクタンスに電流を流して、予め電極に電圧を印加した後に、ガスを導入することにより、爆燃モ-ドとした。これにより、通常のガスパフZピンチ放電との比較を行なうことができた。電源には、3.75μFの低インダクタンス高速キャパシタ-及びギャップスイッチを用い、20kVまで印加した。非平衡プラズマでは、数keVの電子を多数生成する必要があり、印加電圧を低く抑えた。X線発生量の時間依存計測は、表面障壁型ダイオ-ド(SBD)とアルミニウム・フィルタ-を組み合わせて行った。X線放出量が多く、SBD出力が飽和するのを避けるために、直径1mmのピンホ-ルで絞り、かつプラズマから80cmの距離をおいて測定した。これまで、X線収量の放電電圧依存性を測定してきた。従来型Zピンチプラズマでは、電圧の上昇とともに、X線量が急上昇するのに対し、爆燃放電では、X線発生量が充電電圧に余り依存しないという特徴のある依存性が明らかになったが、X線収量の絶対値は、同程度ないし、後者の方が少ないという結果しか得られていない。X線放出の空間分布は、ポラロイドフィルムを用いたピンホ-ルカメラで測定した。放電条件により、プラズマ及び電極から放出されることが判った。並行して、X線スペクトルの測定を目的とする、プロポ-ショナルガスカウンタを試作してきた。これまでに、^<55>Feからの5keV X線にたいしてFWHM15%程度の性能を得ているが、信頼度・再現性の改善がなお必要である。
著者
金森 悟 金森 暢子 渡辺 興亜 西川 雅高 神山 孝吉 本山 秀明
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.291-309, 1997-03
被引用文献数
1

南極昭和基地の大気エーロゾルを1988,1989,1990年の3年間にわたり連続観測した。エーロゾル粒子に含まれる化学成分の内, exSO_4^<2->, MSA, NH_4^+等の成分が夏に高く冬に低い季節変化をする事を明らかにした。またガス状のHCl, SO_2,HNO_2,HNO_3の季節変化を明らかにし, 非常に高濃度のHClガスが夏期に出現し, 他の成分もエーロゾルに近い濃度になる事を示した。みずほ高原内陸および海上の大気エーロゾルの粒径分布を明らかにした。exSO_4^<2->とMSAは共に0.35μmに極大粒径を持ち, ガス体から生じた2次粒子であると思われる。ほとんどの大気エーロゾルは海塩に比較して負のexCl^-を示し, Cl^-がNa^+に対して欠損していることが認められた。みずほ高原内の5点における積雪ピットの観測から, 化学成分の季節変化は内陸の観測点でδ^<18>O, Cl^-およびNa^+につき見いだされた。飛雪では, Cl^-, Na^+, exSO_4^<2->, NO_3^-, MSA等の成分が海側で高く, 内陸に向かって減少し, 更に内陸で反転上昇し, 内陸に別の供給源があることを示唆した。ほとんどの雪は正のexCl^-を示した。みずほ高原の大気エーロゾルと対応する雪の間には, 化学成分濃度の比例関係がほぼ認められ, 積雪は大気エーロゾル中の濃度を大まかに反映している。しかしexCl^-, Ca^<2+>, K^+などはこの関係を満足しない場合が多いので, 地表の大気エーロゾル以外に高層大気からの寄与も考慮する必要がある。
著者
中牧 弘允 CARLE Ronald Denis
出版者
国立民族学博物館
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2003

調査研究活動-岐阜県大野郡白川村 平成15年12月18日より24日まで-白川村役場:訪問と集材-白川村荻町区「合掌造り集落」での一般参与観察-野外博物館「合掌造り民家園」で来客との聞き取り調査-大雪の日:旧近所の雪かき手伝い運動と近況聞き取り調査-岐阜県大野郡白川村 平成15年12月27日より平成16年1月元日まで-白川郷荻町八幡神社の年末行事の参与観察-白川村荻町区「合掌造り集落」での一般参与観察-野外博物館「合掌造り民家園」で来客との聞き取り調査-大雪の日:旧近所の雪かき手伝い運動と近況聞き取り調査-沖縄県八重山郡竹富町竹富島 平成16年1月元日より16日まで-竹富島における町並み保存の一般調査:町並み保存の実践に関する聞き取り調査観光業の経営に関する聞き取り調査来客に聞き取り調査-沖縄県八重山郡竹富町竹富島 平成16年3月8日-28日まで-竹富島における町並み保存の調査:町並み保存の実践に関する聞き取り調査と参与観察(保存会委員会、海岸美化運動など)観光業の経営に関する聞き取り調査観光業の行事観察(海開き祭りなど)来客に聞き取り調査学会活動-Anthropologists of Japan in Japan (AJJ) Autumn 2003 WorkshopSofia University, TokyoNovember 1-2, 2003聴講
著者
石田 良作 青田 精一 渡辺 好昭
出版者
北陸作物・育種学会
雑誌
北陸作物学会報 (ISSN:03888061)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.29-31, 1986

1) 積雪地帯に適すると考えられる小麦13品種・系統を用いて, 耐雪性, 収量性, 早晩性等の諸特性を比較した。2) 供試した小麦品種・系統は, いずれも適期播種を行った場合, 80日の根雪では雪害も小さく, 枯死株を生じなかった。しかし, 根雪が100日を越えると, 東山系統は若干の枯死株を生じ, 132日では13〜45%の株が枯死した。しかし, 現在奨励品種に採用されているものや東北系統は132日の根雪でも5〜10%の枯死株率にとどまった。3) 供試系統小麦の成熟期は6月14日〜7月6日で, 積雪及び消雪日により著しく変動した。この中でナンブコムギと東山系統との熟期の差は, 成熟期が早い場合は2日程度あったが, 遅い場合は0〜1日の差となった。4) 子実収量は根雪が80日の場合, 東山13, 16, 17, 18号が最も高かった。しかし, 根雪が100日を越えると収量低下が目立ち, 132日では80日の46〜60%の収量となった。これに対して, ナンブコムギやユキチャボは132日でも80日の81〜90%の収量水準を維持した。5) 上麦千粒重は, ナンブコムギ, ユキチャボや東北系統のものは比較的高かったが, 東山系統は10号を除いてはやや小さかった。6) 昭和59年収穫小麦のうち1品種4系統について, 製粉研究所に小麦粉の品質, 麺の評価の分析を依頼した。比較対照品種としたナンブコムギと供試4系統はよく似た粉の性質であったが, 東山16号のアミロ値が低かった。麺の評点はいずれの系統もナンブコムギよりやや劣った。7) これらの結果, 少雪地では東山17号, 多雪地ではナンブコムギ, ユキチャボ, 東北167号が適するものと考えられた。
著者
八幡 勝也 吉田 勝美 渡邊 清明 吉田 勝美 渡邊 清明 富永 真琴
出版者
産業医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

糖尿病を含む生活習慣病においては、個人の健診データと生活指導が中心で進められているが、日常生活や社会的要因が大きく影響する。今回、地方の糖尿病調査および企業従業員の経年変化を調査し比較した結果、通勤・移動、食生活の食材、生活習慣、地方と都市、経済状態など直接個人の健康状態に結びつかないように見える要因の影響が無視できないことがわかった。また、このような社会的要因を個人情報と連携させるためには、従来の医療を中心とした枠組みではなく、個人と社会や環境などの要因を含めた総合的な枠組みを構築する必要があり、その概要モデルを検討した。
著者
但野 茂 橋本 伸也 高橋 裕人 吉成 哲 吉成 智
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

車椅子の試作:従来の2輪駆動電動車椅子をベースに構造的、機構的検討のため、四輪駆動電動車椅子を試作した.そして雪路走行実験を行い、四輪駆動の優位性を確認した.また、室内では四輪駆動は不用のため、二輪駆動車椅子で使用できる収納型キャスター輪を考案した.これらの成果を新聞報道した.乗り心地性の客観指標の開発:市販電動車椅子および本開発の四輪駆動電動車椅子を使い、雪路、乾燥路走行時の身体負荷特性を計測した.三軸方向加速度、三軸周りの角速度、座圧分布変化量を用いることで、乗り心地性の客観的評価法が可能であることを確認した.通常路面に比べて、雪道走行では乗り心地性が悪くなった。しかし、本開発した四輪駆動車椅子の乗り心地性は、市販の車椅子に比べて、改善された。シーティング機構の開発:身体機能・状態に合わせた四輪駆動電動車椅子のためのシーティング設計法を考案した.座面角度と背もたれ角度を任意に設定可能な実験シートを作成し、それぞれの角度について走行時の座圧分布を測定した。これらのデータにより、雪道走行に最適な角度があることを示し、シーティング設計と重心位置の移動制御方法を検討した.雪路走行実験:あらゆる条件を想定した実験路面を作成した.そして、走行実験を行った.また、実際の雪路を利用した走行実験を繰返し、乗り心地性を評価した.ジョイスティックの機能デザイン:ジョイスティックの操作制御に学習効果を持たせ、使っているうちに、利用者の感覚と合ってくるものを開発した.試作車の改良と走行実験:試作した車椅子に上記の開発項目を盛り込み、改良を計った.
著者
笠原 敏史 福島 順子
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

(1)2頭のサルに対する訓練と手指機能パフォーマンステストの有用性について検討を行い,(2)サルの大脳皮質第一次運動野の上肢領域(主に手指領域)梗塞作成前の上肢動作をVTRにより,(3)第一次運動野の上肢領域を皮質内微小刺激によってマッピング、(4)さらに梗塞作成後の麻痺の状態ならびに機能回復過程について,上肢運動障害,代償動作を比較した.(1)アクリル板で深さの異なる5つの円柱状の穴(Kluver board)を作成した.訓練前のテスト結果では,2頭のサルとも深さが徐々に増加するにつれ所要時間は増加した.(2)サルの把握動作は,浅い穴では栂指とII指の間にリンゴを挟み,穴が深くなるとIIからIV指を穴の中に差込み,屈曲して掻き上げる方法であった.これは2匹のサルで同様であった.(3)GOFとネンブタール麻酔下で開頭し優位半球の第一次運動野(A12L18)に微小電極を用いて刺激し,マッピングを行った。その結果、中心溝の吻側に内側から外側にかけて,肩領域、肘〜前腕領域,手〜手指領域の順序で筋収縮が観察された.手指領域は,運動野の内側から外側にかけて第Vから第II指の屈曲、伸展が順に誘発された.これらの結果は,従来の運動野上肢領域の体部位局在に一致していた.(4)マッピング終了後,手指領域に梗塞を作成した.両サルとも術後翌日に対側上肢に麻痺を認めた.術後は麻痺側を使うも失敗が多く非麻痺側を用い,数日間は麻痺側を使わなかった.麻痺側を使う際,隣接する肘関節と肩関節に麻痺による運動障害を代償する動作が確認され,特に,肘や肩関節を用いて手先を前後に動かす,身体を傾けるまたは移動する行為が見られた.運動障害からの機能回復が見られると,所要時間の減少とともに代償動作の頻度も減少し,術後1ヶ月と術前でほぼ変わらない成績であった.
著者
佐藤 虎男
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要 (0xF9C1)人文科学 (ISSN:03893448)
巻号頁・発行日
no.23, pp.p1-28, 1975-01

私は、いま、「現象」(かたち)への強い興味をおぼえている。興味では足りない。現象至上の思いといったものをである。かたちこそが、内実の脈動を真正直に伝えてくれるすべてだからである。語はなんらかの音節連続体である。「アタマ」は3音節から成るが、そもそもこの3音節を結合して語とする作用はなにか。それは、意義とアクセント(この場合,語アクセント)である。語アクセントは、意義を意義たらしめるべく(意義を定着せしめるべく)音節を使って語を形成する作用である。この作用は、通常、組織的な傾向を示す。いわゆるアクセントは、この作用の外形ないしは作用上の強い傾向,型をさすことが多い。アクセントを,形態の名とする以前に、まずは作用と解することが有益なのではなかろうか。語の形の決定にあたって、語アクセントがこのように働くのと同様、文の形の決定にあたっては、文アクセントが働く。文アクセントは、文の形を最後的に定着せしめる作用であり、傾向である。この、文アクセントと語アクセントとは,いちおう別段の秩序のもとにありながら、もちろん不可分の密な交渉関係にある。すなわち、文アクセントは語アクセントを駆使し統御する。その統御のしかたには、またそれなりの一定傾向,類型がみとめられる。個人差を越えた、社会的習慣としての傾向がである。方言生活における表現の具体的単位が文である以上、アクセント観察に、文アクセントを先んずべきこと,逸すべきでないことは、自明のことのように思うのである。前稿(「伊勢大淀方言の特殊な文アクセント」大阪教育大学紀要、第22巻、第1部門、55頁)で私は、大淀の方言のナチュラルな文の抑揚を観察し、そこにみとめられる文アクセント諸傾向について述べた。どこの方言についても、なんらかの文アクセント傾向が帰納できると思われるが、大淀の方言の文アクセント傾向のうちのあるものは、当地に比較的近い土地の方言のそれに比して、いちじるしく異態を示している。とくに、話部中の一音節が卓立する傾向が強く、その卓立が,近在方言文アクセントには見られないような位置に現われるのである。その結果、〓に代表されるような特異なアクセント波が把握された。これが、文中のどの話部かに現われると、(文中くりかえし現われればなおのこと)その文アクセントは、特異波に色どられることとなる。ところで、大淀方言の文アクセントが、このように特色の明らかなものでありながら、別に調査した当地の語アクセント状況は、おおむね近畿一般の語アクセント状況に近く、言うところの特異な文アクセントに対応するような語アクセントは、わずかにみとめられるにすぎなかったのである。なぜこうなのであろうか。本稿はそれを承けて、当方言の語アクセントおよびその文アクセントとの関係について考察しようとするものである。具体的な文において、文アクセントは、語アクセントとどのようにかかわっているであろうか。また、語アクセント観察は、文アクセント観察とどのように関連づけられるのであろうか。山野に降り積もった雪の起状は、雪面下の地表の起伏に支えられている。それが淡雪であれば、ほとんど地表の凸凹そのままに雪面をつくるけれども、雪国の深雪は、地表の起伏を蔽いつくして大きくうねる。雪面と地表の相関にお国ぶりがあろう。文アクセント下の語アクセントを見て、よく文アクセントの形象の「自然」を理解することができると思われる。起伏に富んだ雪面の美と真を見るのと、雪面下の状況を認識するのとは、両立させるべきものであろう。従来のアクセント研究界では、結果として語アクセントあるいは文節アクセントに主眼が置かれてきて、文の抑揚、文アクセントについてこれを真正面からとりあげることは、盛んでなかった。少なかった。寺川喜四男博士が「アクセントの基底としての『話調』の研究」(『国語アクセント論叢』昭和26年)に、諸説のいきとどいた紹介整理をしておられるが、そこに見られるような、諸先学のすぐれた指摘、方向づけにもかかわらず、その後今日まで、どれだけ具体的な記述的研究を展開させてきたか、不明にして私は多くを知らない。その中で藤原与一博士と、山口幸洋氏のお二人の、それぞれ独自の、一貫した研究には、教わる所が多い。藤原博士のもっとも近いご発表、,『昭和日本語方言の記述』(三弥井書店,昭和48年)であるが、そこで博士は、櫛生方言の文アクセント傾向と語アクセント傾向とを対比考察していられる。これをさきの比喩をもって言えば、ある地域の雪の起伏に一定の傾向がみとめられるならば、地表の凸凹にも、なんらかの(ほぼ相即対応する)傾向がみとめられるはずである。この、傾向と傾向との対比的把握が、具体文アクセントの基本的理解を可能ならしめるということであろうと思う。大淀方言文アクセントを、このような対比の方法でみた場合には、前稿に述べたように、特色ある文アクセント傾向を説明しうる語アクセントの傾向は、明確にはみとめられなかったのである。もしいま、この事態をこのまま受けとめて解釈しようとすれば、文アクセント上のあの特色ある波立ちは、一種のあだ波のようなもので、傾向というにあたいせぬ微弱なもの、アクセントの基質をなすほどのものでない、ということになるのであろうか。つまり、当地の汎近畿的語アクセントは、当地の汎近畿的文アクセントの優勢に由来するものであって、問題の特異な文アクセントは、いわば偶発的をものにすぎないとすべきものなのであろうか。私の調査によれば、前稿に報告したような文アクセント傾向が、当方言の文アクセントの一特質傾向たりえているのは、明らかな事実と言わざるをえないのである。その後の調査によって知りえたところをここに補えば、大淀のと同似の文アクセント傾向は、南隣の村松(伊勢市村松町)にも見られ、いまのところ、ほぼこの二集落が、問題の文アクセントを特立させているようなのである。志摩は答志島の、鳥羽市桃取の文アクセントもまた、一種独得の文アクセントであることを、ここに思いあわせるならば、大淀方言における特異な文アクセントを、一特質傾向と認めてその存立事情を追求することは、意味あることとされようか。意外に根の深いものかもしれないのである。村松と桃取の文アクセントについては、いくつかの文アクセント例を本稿末尾に(補注)として掲げるにとどめ、くわしくは別の機会にゆする。In the last number, I reported some peculiar intonation patterns in Ise-Oizu dialect. Then, in this paper, I describe the definite patterns of pitch-accent are found in the same dialect.
著者
金田 清志 白土 修 但野 茂 伊福部 達
出版者
北海道大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1992

1)平成5年度にひきつづき、寒冷暴露下での脊髄損傷者の自律神経系に及ぼす影響を調査するため、人工気象室を利用し、常温(気温24℃、湿度50%)の前室から低温(気温5℃、湿度50%)の環境下に被験者を移動させ寒冷に暴露し、血圧、麻痺のある下肢の血流・皮膚温の変化を測定し解析した。健常者では寒冷暴露と同時に下肢血流量は急激に減少、下肢の体表温度も低下した。血圧の上昇も認められた。再度常温に暴露すると徐々に血流・体表温度とも回復する経過を示した。しかし、脊損者においては寒冷暴露によっても下肢血流量は減少せず、外部環境の影響を受け体表温度は低下した。血圧の変化もなかった。麻痺のレベルが下位胸髄以下では、健常人と類似した変化が認められたが、その変化はわずかであった。従って、脊損者では放射・伝導・対流により体表面からの熱放散が容易に生じることが判明した。冬期間用車椅子試作者と,従来型電動車椅子の走行試験とデータ解析を行った。過酷なアイスバーン状態を想定し、室内に仮設した斜度1/10のスロープに氷板を張って走行試験を実施した。登坂性能および発進性能は、試作車に明らかな優位性が確認された。走行時の加速度を測定し駆動輪スリップ度を評価した。ここでスリップ度Kは、進行方向の加速度を積分して得られる実走速度(La)とモータパルスカウントから得られる理論速度(Lp)の比率(La/Lp)で表わした。K=0で駆動輪がスリップしていない状態、K>0で駆動輪の空転度合、K<0で慣性力によるすべり度合がわかる。雪路の低速モード(3.0Km/h)走行では、市販タイプは、発進時からスリップしているが、試作車はスリップなく安定した走行をしている。高速モード(6.0Km/h)走行では、各車一定のスリップ度を示しながら走行している。しかし、制動時には,試作者はほとんどスリップなく停止した.
著者
川本 義海
出版者
福井大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

まず道路管理者、交通管理者および道路利用者から指摘された問題点に対するハード面(道路構造面)における対策はそれほど進んでいなく抜本的な改善は困難な状況を把握し、とくにソフト面での対応の重要性を確認した。次にソフト面において対策の要点と考えられる雪道の情報提供による交通マネジメントの方法を提案するために、運転者に有効とされる情報内容、情報入手媒体、情報入手タイミングを検討した。その結果、移動中のタイムリーかつ正確な交通情報の必要性が明らかとなり、とくに道路上で提供されている道路交通情報板が重要であることが確認された。そこで現在提供されている情報の諸問題のうち、これまであまり指摘されることのなかった提供される情報のあいまいさおよび運転者の認識不足に着目し、情報提供側の改善点はもちろん、運転者側の改善点も明らかにすべく、運転者に対して情報の正確な認識と判断の観点から、運転者に対するアンケート調査を通じて提供されている情報に対する運転者からみた評価のランク付けをおこなった。あわせて従来体系的に整理されることのなかった情報の内容をそのレベルに応じて規制、警戒、指示、案内の4つに分類した。これら情報の分類と評価ランクという概念を用いて道路交通情報板で提供されている内容の標示方法の是非、内容の是非についても検討できる基準を提示したとともに、標示の組み合わせによる効果的な情報提供の具体例についても提案した。これにより、情報提供者側の意図と運転者の理解の差を少なくすることが可能となり、より分かりやすく有効な情報提供と享受による冬期の道路交通マネジメントに資することにつながることを示した。
著者
横井 秀一 山口 清
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.82, no.1, pp.15-19, 2000-02-16
被引用文献数
5

積雪地帯では, スギ不成績造林地の発生による経済的な損失と林地の公益的機能の低下が問題となっている。そこで, 既存のスギ人工林の成林状況(成林度)に影響する立地環境を解析し, 造林限界の再検討を行った。調査は岐阜県飛騨地方の最深積雪1.0〜3.0mの地域で行い, 成林度と立地要因の関係は数量化I類を用いて解析した。成林度に最も強く影響した要因は最深積雪で, 積雪深が大きいほど成林度は低くなった。成林度の出現頻度分布を最深積雪深ごとに検討した結果, スギの造林は最深積雪1.5m未満で可能, 2.5m以上では困難であると考えられた。最深積雪1.5〜2.5mの地帯では, 最深積雪とともに斜面の傾斜と縦断面の形状が成林度に影響し, 急傾斜や凹地形の斜面で成林度が低かった。したがって, この地帯でのスギ造林では, このような地形を避ける必要があると考えられた。
著者
橋本 眞明
出版者
旭川医科大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

旭川市旭山動物園内屋外非展示エリアにおけるエゾタヌキのテレメトリーでは、冬季2〜3ケ月の絶食中でも体温の最大低下は2℃を超えず、巣篭もりも1日を超えるもが無かった。3月の再給餌までに体重はほぼ半減し、血中脂肪、総タンパク質量、尿素窒素など栄養状態の指標物質に減少が認められた以外には、現状では顕著な変化が捉えられていない。2007年8月末より同園第2子ども牧場建物内にて研究の展示をしている。内容は、冬眠とエゾタヌキの研究を概説したパネルと、テレメトリー送信機を腹腔内に留置したシリアン・ハムスターを冬眠に導入し、低温飼育装置内で冬眠を維持しつつ。その様子と共に体温、心電図のリアルタイム記録をコンピューターディスプレイにより展示した。展示を見た来園者にアンケートを依頼し、これまでに127名からの回答が得られている。主な質問項目の概要は1)内容は興味深かったか、2)生体の内部機構に興味がわいたか。3)展示を持続すべきか、とし、5段階評価(5が最大の同意を表す)を依頼した。来園者数に対し回答者数が少ないのは、同建物内の展示時間が1日1時間であることや、そもそも当施設に立ち寄る来園者が少なく、さらにアンケート回答にまで至る来園者が少ないためと思われる。内訳は小学生21、中学生6、高校生9、大学・専門学校生2、社会人38、学齢前5名(親の代筆)、年齢不詳46であった。年代別では10才未満13、10代35、20代20、30代16、40代5、50代4、60代0、70才以上1、年代不詳33であった。回答数が不十分な年代もあるため、全平均で見ると、それぞれの評点は質問1)4.3、2)4.0、3)4.5。概ね興味深い展示と受け取られ、体内の生理機構に対する興味も触発され、展示を発展的に継続してほしいとの結果であった。展示の表現法には工夫が必要との意見も多く、今後の課題も明らかになった。
著者
ANDREW・C Whitake
出版者
新潟大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、日本とアメリカ、カナダ、の試験流域の科学者と共同研究した。融雪流出の特質を理解するために、融雪モデルを開発して、日本海側とアメリカ西部とカナダ西部の四つ((1)〜(4))の試験流域を比較した。(1)日本海沿岸部に位置する滝矢川試験流域(A=19.45km^2)(2)アメリカ合衆国コロラド州East St.LouisCreek試験流域(A=8.03km^2)(3)アメリカ合衆国アイダホ州Reynolds Creek試験流域(A=239km^2)(4)カナダRedfish Creek試験流域(25.8km^2)。現在の結果について:1.アメリカ合衆国コロラド州の科学者と共同で、新しい冬季降水量計を開発して、滝矢川試験流域の2箇所に(標高:70m、140m)設置をした(2005年10月)。冬季の降水量を見事に量っている(2006/11/29-2007/3/15:それぞれ1076mm及び1142mm。近くのアメダスデータ(標高:50m)は、1113mmであった。2.滝矢川試験流域で、水文学の観測を続けている。2006/2007年の冬は暖冬であった(3月上旬に、標高140mで114mmのSWE、2005/2006年のは、651mm)。3.様々な試験流域からのデータのアセンブリは完了して、融雪モデルの適用は現在進行たである。4.IUGGの学会で(ペルージア、イタリア、2007/07/9-13)ポスター提示をする予定:(a)"Dynamics and mass balance of a seasonal snow pack in the winter monsoon climate of Niigata, Japan" by Whitaker and Sugiyama (b) "The role of snow cover conditions in the hydrological regime of a mountain area" by Sueivama. Whitaker. and Havakawa.5.2007年4月、国際ジャーナルに論文が掲載される予定(改訂中):"Effect of snow cover conditionsl on the hydrological regime : case study of an experimental watershed located in the winter monsoon zone, Japan" by Sugiyama, Whitaker and Hayakawa. Journal of the American Water Resources Association.