著者
森 京子
出版者
三重県立看護大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は、終末期がん患者が在宅緩和ケアへ移行する際のアドボケイトとしての看護実践とは何かを明らかにすることである。本研究は、病院看護師への参加観察および半構成的面接による質的記述的研究である。結果、従来の抽象的な議論を超えて、在宅緩和ケアへ移行する終末期がん患者に対するアドボケイトとしての看護実践のテーマとして、【選択できるように支える】、【患者が望む過ごし方を具現化する】、【スムーズな療養場所への移行を図る】が生成された。
著者
石川 烈 吉江 弘正 村上 伸也 栗原 英見 和泉 雄一 西原 達次 岡野 光夫
出版者
東京女子医科大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

現在行われている歯周治療では歯周炎の進行を阻止することにとどまり、歯周炎により破壊された組織を健常な状態に戻す再生治療には至っていない。歯周組織の再生研究は3段階の過程として示すことができる。第1段階は組織再生誘導法と呼ばれる処置で、破壊された歯周組織への上皮の侵入を阻止し、周囲の組織からのその部位への細胞増殖を待ち、定着させる方法である。これに対して第2段階の進歩は単に待つのみではなく、成長因子等を加えることにより積極的に再生を導き出そうとするものである。本研究班では川浪らはBMP-2を、和泉らはGDF-5を、村上らはβ-FGFを用いて研究を進め、それぞれの成果を示しているが、いずれも期待させる成果を得ている。第3段階の進歩は再生を導く歯周組織細胞を欠損部に直接用い、更に確実に再生を導こうとする研究である。即ち自己細胞移植を軸とした組織工学を応用した新しい歯周組織再生治療法を世界に発信することである。栗原らは骨髄からの間葉系細胞を用いて、吉江らは骨膜間葉細胞を用い、五味らは歯髄細胞を用い、大石らはヘルトビッヒ上皮鞘細胞を用い、太田らは自己増殖細胞歯根膜組織を用いてその再生機構を追求した。石川らは岡野の開発した温度応答性培養皿を用い、ヒト歯根膜細胞のシートを用いた歯周組織の再生を試みた。この結果、自己歯根膜シートを歯周組織欠損部に移植することにより、ほぼ完全なセメント質とシャーピー線維を伴う歯周組織の再生が得られることを見出した。渡辺はその臨床応用を可能にするCPCを構築した。基礎研究として小方らは石灰化機構に重要な役割を果す骨シアロタンパク質の転写促進機構を明らかにし、西原らはムコ多糖類のコンドロイチン硫酸の破骨細胞分化抑制機構を明らかにした。これらの研究は2回にわたって研究成果報告会として発表され、公開された場で充分な討議を行い、真の再生治療への可能性が高まった。
著者
川島 滋和
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本年度は国内水産物の価格形成メカニズムに着目し、(1)産地価格と水揚量の市場間連動に関する研究と(2)国際価格が日本の水産物市場の価格形成に与える影響について分析を行った。前者は東北地方の主要サンマ漁港である女川と気仙沼の価格・水揚量データを用いて分析を行い、後者は輸入比率の高い7品目(サケ・マス類、マグロ類、エビ、イカ,タコ,カツオ,カニ)を対象に輸入価格と国内価格の長期均衡関係と誤差修正過程を明らかにした。分析結果は以下にまとめられる。第一に,気仙沼と女川のサンマ産地価格の長期弾力性は約1.0と推計され,東北地方におけるサンマの産地市場の価格形成は効率的であり,価格情報はすでに統合されていると結論づけられた。第二に,産地市場の長期代替性は1.3と推計された。個々の産地市場は代替関係にあり,漁業者の水揚行動は産地の価格情報に速やかに反応していることが明らかになった。第三に、国内水産物の短期的な価格形成に着目すれば,水産物価格は主としてそのときの水揚量によって決定されており、国内での需給バランスが短期の価格形成において重要な役割を果たしていることが分かった。第四に,輸入比率の高い国内水産物の長期的な価格形成には輸入価格の影響が強く反映されていた。水産業におけるグローバル化が進展するにつれて、日本の水産業は、国内価格の維持と国際競争という2つの課題に直面している。今後は、国際競争力を維持していくためにも、水産物の輸出振興と資源管理や品質管理を考慮した水産物の差別化が必要となるであろう。
著者
木下 百合子
出版者
大阪教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究の理論的成果として、次のことが挙げられる。1.教授におけるコミュニケーション研究を異文化間コミュニケーションに拡大し、特に社会的コンペテンツについて深化させた。2.日本が文化多様性社会に移行していることを承認し、教育学的コンセプトを「国際理解教育」から「異文化間教育」に早急に転換すべきであることを論証した。3.協同学習活動とメディア教育に関する研究成果を本研究に適応可能なかたちに仕上げた。以上の、理論的研究成果をふまえ、本研究対象を、異文化間教育コンセプトとメディア教育コンセプトと協同学習活動コンセプトの接点に位置づけ、2年間の研究をとおして次のことを実証した。1.英語使用のEメイル交換による異文化間コミュニケーションは、中学生段階で十分に可能である。2.異文化と出会うことによって自己の文化が意識化され、アイデンティティ形成に貢献する。3.コンピュータ使用の方法と技術ならびに情報倫理は実践をとおしてこそ確実に形成される。4.グローバルな解決課題である環境問題について認識が深まるとともに、環境問題について日本とドイツでは取り組みの観点が違うことを発見した。5.異文化間コミュニケーションと協同学習のスタイルになれ、異文化理解には忍耐と寛容が必要であること、理解と葛藤の間を揺れ動くプロセスが重要であり、関係を継続することが重要であることを経験しえた。以上のことを研究課題にそくして実証たが、さらに、コンピュータ室の管理や教科教授と総合的学習の横断的組織化などの条件整備が緊急に必要であることも同時に検証しえた。
著者
杉田 収 関谷 伸一 水戸 美津子 西脇 洋子 山際 和子 小林 恵子 安田 かづ子 斎藤 智子 佐々木 美佐子 室岡 耕次
出版者
新潟県立看護大学
雑誌
新潟県立看護短期大学紀要 (ISSN:13428454)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.29-36, 1998

我が国の高齢社会は住環境問題に直面している。これは日本の重要な社会問題の1つである。特に上越地域の住環境は重要な問題を抱えている。上越地域には高い床の住宅(私たちは高床式住宅と呼ぶ)が多い。それは冬季には2メートルほども雪が降るからである。高床式住宅がこのまま放置されると,今後大きな不都合を来たす恐れがある。私たちは「トライハウス」の基本構想を提案する。この「トライ」は「誰もが住んでみて試すことができる」ことを意味する。その人に適合した居住空間は「トライハウス」の中で,試行錯誤によって造られる。またその「トライハウス」の運営機構によって,地域の人々の自立を援助する。福祉社会の基盤は住宅である。
著者
久光 久 真鍋 厚史 山田 嘉重 木下 潤一朗
出版者
昭和大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

茶褐色の鶏卵面に過酸化尿素を主成分とした漂白剤(ナイトホワイトエクセル)および、過酸化水素を主成分とした漂白剤(ピレーネ)を用いて漂白を行った。漂白に対して実験1ではハロゲン光(PENCURE)とKTPレーザーをそれぞれ別々に使用し、実験2では併用使用をおこなった。実験条件は、3Wの出力KTPレーザーをそれぞれの漂白剤塗後に1分30秒、3分、5分、10分間照射した。ハロゲン光でも同様に、1分30秒、3分、5分、10分間照射し、37℃で半日保存した後、測色をおこなった。結果として、単独使用の実験1ではKTPレーザー照射クループで、ナイトエクセル漂白剤使用の場合に3分以上の照射において漂白効果が確認された。一方ピレーネを使用した場合、5分以上のKTPレーザー照射にて漂白効果が認められた。ハロゲン光照射においては、ナイトエクセル、ピレーネのどちらを使用した場合においても1分30秒照射から漂白効果が確認された。一方実験2の結果では、ナイトホワイトエクセル、ピレーネ共に1分30秒で全ての試料に漂白効果が認められた。この効果はハロゲン光とKTPレーザーの照射順序の違いには影響せず、ハロゲン光とレーザーのどちらを先に照射しても明確な違いは認められなかった。
著者
芦田 和男 湯城 豊勝 岡部 健士 藤田 裕一郎 澤井 健二 江頭 進治
出版者
京都大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1990

本研究は河床が低下する傾向にある河川の堤防・護岸の安全性を水理学的観点から明らかにすることを目的として行ったものである。以下、本研究によって得られた知見を要約する。1.河床低下の傾向にある交互砂州河道には、一般に抵水路が形成され、低水路の屈曲部には深掘れが生じる。これは流れの集中によるものであるが、低水路を満杯で流れる条件において、洗掘深は最大になる。2.護岸の被災過程には法勾配及び水潤している法長に応じて明確な差異がある。同一護岸高であれば、1割以上の急な護岸は主に土質力学的過程によって前方に押し出されるように起立して被災し、2割の護岸は目地等の間隙に働く流体力によって浮き上がるようにして被災する。3.低水路の屈曲部の深掘れを軽減するための方法の一つに不透過水制を設置する事が考えられる。この種の水制によって深掘れは著しく緩和されることが判明した。4.低水路を有する河川の弱点を捜し、その安定性を高めるための工法をより一般的に評価することを目的として、工作物の影響や2次流の影響を取り入れた平面2次元流れと河床変動に関するシミュレ-ション法を開発した。
著者
阿知波 紀郎 塩野 正明
出版者
九州大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1992

アダマンタン誘導体のプラスチック結晶相転移および配向グラスに関する研究は、静的及び動的分子配向相関に関する興味からである。我々は、'だるま' 分子であるアダマンタン誘導体のうち、'あたま'が比較的大きな1-ブロモアダマンタン 及び、'くび'が長い1シアノアダマンタンを分子配向の典型物質として 選びx線及び中性子散乱実験により分子配向相関に関する研究をおこなった。この科学研究費をもちいて、主として、プラスチック相および配向グラス相での分子配向相関の研究のため、温度変化のできる単結晶用x線散漫散乱測定装置を開発し実験を行った。さらに、分子配向の動的挙動については 主として中性子飛行時間差法による中性子非干渉性非弾性散乱実験を行った。各年度に取り組んだ具体的な研究テーマは以下のとおりである。1)1-ブロモアダマンタンの分子配向の段階的秩序化による構造相転移の研究。単結晶X線結晶構造解析によるプラスチック相、セミオーダー相、オーダー相の構造比較。2)1-シアノアダマンタンのプラスチック相と配向グラス相の分子配向相関およびダイナミックスの単結晶X線散漫散乱による研究。3)1-シアノアダマンタンのプラスチック相から低温に単結晶のままクエンチして得られた配向グラス結晶を、グラス転移温度直下で保ち、時間的に進行する局所分子回転配向秩序をX線ブラッグ反射および、散漫散乱により追求し、新散漫散乱を(2h,1±δ 0)に見いだした。中性子非干渉性非弾性散乱実験により各相のダイナミックッスを調べた。
著者
眞鍋 勝司 佐藤 雅彦
出版者
横浜市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

7日目の黄化エンドウ芽生えから抽出し、ほぼ純粋になるまで精製したフィトクロムA分子を原子間力顕微鏡によって観察した。生の溶液試料をマイカ板に載せ窒素パージによって軽い乾燥状態にしたフィトクロムを観察した結果、像が時間的に変化するので余りはっきりした像は得られなかった。これはAFMのプローブの位置検出に用いている赤色レーザーが試料のフィトクロムの光変換をもたらす結果と考え、軽く固定した分子を観察することにした。Pfr状態で0.1%グルタルアルデヒドにより固定した試料は碁石のような円盤が2個つながった全体として上から見れば雪だるま、あるいは殻つきピーナッツのような像を与えた。像の大きさプローブの大きさが10nmと仮定して計算すると約250kDaになり、フィトクロム・ダイマーの分子量と一致するし、水力学的に測定した値とも矛盾しない。一方Prの状態で固定した試料は碁石状の円盤が2つ重なった、全体として1つの厚い球に近い楕円体の像を与えた。PfrにフィトクロムのN末端から354番目からのDAVLという配列に結合することが分かっている抗エンドウフィトクロムA単クローン性抗体Mep-1をつけてAFM観察した。雪だるま像に1個の抗体が付いた像は観察されたが2個同時に付いたものは観察されなかった。これは抗原に1個の抗体が付いた状態ではもう1個は立体的に結合できなくなっているものと推定される。IgGでなくMep-1のFab'断片を用いた場合も同様に1個しか付かなかった。以上より、フィトクロムAはPrでは薄いほぼ円盤型のものが2個重なった形を形成し、Pfrになるとその円盤が開き、雪だるま型になる。雪だるまを構成する個々の円盤はフィトクロムの単量体に対応するのではなく、2つの円の付け根付近にエピトープ部分が2つ存在する可能性が大きいと解釈している。
著者
坂上 岩太
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会総合大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.1997, no.1, pp.563-564, 1997-03-06

図1は基板厚が一定のまま使用周波数が上がった状態で, いわば雪だるま的回路構造である。これに対して, 図2は極めて細い伝送路によるラットレース回路である。使用基板厚がmmオーダーからμmオーダーに変化した結果と言える。これは1990年以降の目立った特徴であり, 本稿では特に最近のリング状回路素子に関して回路構成の立場から検証する。
著者
遠藤 正浩 高田 佳木 高月 清宣 吉村 雅裕 坪田 紀明 指方 輝正
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.191-195, 1999-04-20
被引用文献数
1

極めてまれな縦隔原発の平滑筋肉腫を経験したので,画像所見を中心に報告する.症例は69歳の女性で,労作時呼吸困難と胸部異常陰影を主訴に来院した.胸部X線写真で縦隔影の拡大と右胸水が指摘された.CTとMRIでは,中から後縦隔に中央部がくびれた雪だるま状の圧排性進展の腫瘍を認め,腫瘍内部は不規則に造影され,間葉系の悪性腫瘍,特に悪性神経鞘腫や平滑筋肉腫などを疑った.画像上圧排性発育が主体で,全摘除の可能性が高いこと,さらに呼吸困難が急速に進行しているなどの理由から手術を施行した.腫瘍はほぼ完全に摘出でき,術後は患者の呼吸器症状は完全に消失した.病理学的には,免疫組織化学や電顕的観察の結果より平滑筋肉腫と診断した.
著者
本間 弘達 媚山 政良 岸浪 絋機 野田 恒 伊東 宏城 伊藤 親臣
出版者
Japan Society for Snow Engineering
雑誌
日本雪工学会誌 : journal of snow engineering (ISSN:09133526)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.23-33, 2007-01-01
被引用文献数
1 2

Recently, a large number of air-conditioning system that uses the snow as cold energy source (snow cooling system) has been increasing due to the environmental emerging that is represented by the global warming. While the reducing of the operational cost of this system is advanced, there is a demand for a simple cooling system that can be used in the necessary places where the snow mound is available to supply the cold energy source. Therefore, we have been starting the research and development of a movable package type of snow air-conditioning system since 2001.<br>Based on how to gain the cold energy from snow, the snow cooling system can be divided into two types: Air circulation type and Cold-water circulation type. In this paper, we report an experimental research and development of a cold-water circulation shower type of the snow cooling system.
著者
三浦 豐子
出版者
日本幼稚園協會
雑誌
幼兒の教育
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.56-57, 1938-02
著者
岩堀 健治
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、詳細なナノ粒子作製条件の検討を行い、直径12nm内部空洞7nmの球殻状バイオテンプレートであるアポフェリチン内部に、ナノ電子デバイス作製に有用である3種類の新規化合物半導体ナノ粒子(CdS, CuS, ZnS)の作製に成功した。特に、溶液中のアンモニア濃度を調整することにより、異なる粒子径を持ち、異なる蛍光を発するCdSナノ粒子の作製が可能となった。同時に遺伝子変異フェリチンを作製し、フェリチン内部におけるナノ粒子形成メカニズムを明らかにした。さらにフェリチンタンパク質と直径9nmのLisDpsタンパク質をQCM基板上で結合させ雪だるま型バイオナノパーツの試作を行った。
著者
堀田 隆一
出版者
中央大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

英語の名詞複数形の-sが現代英語にみられるように圧倒的に優勢となる傾向が現れたのは,初期中英語期(1100~1300年)である.本研究では,電子コーパスや語彙拡散理論を援用しながら,なぜ(WHY)どのようにして(HOW)この時期に-sの拡大が進行したかを明らかにしようとした.結論として,初期中英語期における名詞複数形態の発展は,種々の言語内的・外的要因により,およそ語彙拡散理論が予想する型に従って進行したことが判明した.
著者
吉沢 豊予子 跡上 富美
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

性差における女性特有のケアの検証-女性とリンパ浮腫との関係から-における3年間の研究により,以下の内容を明らかにすることができた.1. 健康な成人女性の生理学的指標を用いた,浮腫に関連するデータの蓄積である。今まで浮腫に関連する健康な成人女性のデータがなかったため、今回のデータが浮腫に影響を及ぼす関連因子を明らかにすることができ,浮腫の予防等の指導に意義あるものと思われる.成人女性5名を対象に最低3日間の朝・夕の下肢周囲測定,下肢のポンプ機能測定,むくみの自覚,BMI,筋肉率,体脂肪率を測定しその関連を統計的に分析した.その結果,下肢の周囲測定においては朝夕で有意差は認められなかった.下肢のポンプ機能はVRT(Venous Refilling Time)を使用し測定した。その結果朝夕では、VRT値は夕方低下するものの有意差は認められなかった。また、VRT値と年齢、体脂肪率,筋肉率,BMIとの関連を調査した結果年齢,体脂肪率,BMIで負の相関が認められ,筋肉率と正の相関が認められた(p<.001)。2. がん患者のリンパ浮腫に対する知識およびセルフケア能力およびリンパ浮腫と関連因子を明らかにするため,がん患者会参加者35名の協力を得て,調査を実施した.今回の協力者は子宮頸がん,体がん,卵巣がんの患者で有り、80%リンパ廓清を行っていた.リンパ浮腫に対する医師からの説明は約40%のみが術前に聞いており,その後は雑誌あるいは患者仲間からそれぞれ3割の方々が情報を得ていた.今までリンパ嚢腫を含めリンパ浮腫にり患した経験のある者が、45.7%と多く,この方々はとらえず手術をした病院へ出かけるか、自己セアで対処していた.その後自己流の予防ケアをされている方々が、8割おり、この方々は自己効力感も高めの傾向にあった。正しい知識を与え、セルフケアにつなげる必要がある。
著者
田中 望 斎藤 里美 岡崎 敏雄 山田 泉 林 さとこ 上野 田鶴子 大橋 敦夫 大谷 晋也 古川 ちかし
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

今回の3年間の研究の結果として概略つぎのようなことが判明した.1. アジアからの外国人女性たちに対する日本語教育は,多くの場合,抑圧的な構造をもち,彼女たちを日本人につごうのよい「疑似日本人」にしたてるために機能する,同化的なものであること.2. それに対して,日本人による支援活動のなかに,アジアからの外国人女性たちにコミュニティでの声をもたせることに成功している少数の例があること.3. 地域社会では,抑圧的な日本語教育と声をもたせるための支援活動のあいだで,どちらをとるかの議論がおこっており,外国人に日本語を教えるというパラダイムに変更を迫る動きがあること.なお,3年間の調査を通じて,もつとも重要な成果といえるのは,調査研究そのものに対する見直しを被調査者から突きつけられたことである.このことは,エスノグラフィ的調査といえども,調査のもつ搾取的構造から逃れられないことを意味しており,調査のあり方に根本的な反省を加えなければならないことになった.今後は,調査研究という枠組みをはなれて,研究者といえどもたんなる「異者のかかわり」として地域社会と関係をもつというあり方を追求する必要があると思われる.