著者
両角 達男 荻原 文弘
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究では,スパイラルを重視した数学的活動による学校代数の単元を開発するとともに,その単元における学習過程を質的に分析することから,代数学習の深化について考察した.開発した単元は,平方根,式と証明,数列,数列の極限,球の体積・表面積であり,学校代数の系統性と単元どうしのつながりをふまえている.これらの単元を通して,無理数に関する理解が深まるなど,代数学習の深化と学習方法の改善がみられた.
著者
上田 恵介 江口 和洋 西海 功 高木 昌興 高須 夫悟 濱尾 章二 濱尾 章二
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

オーストラリア・ダーウィンにおいてアカメテリカッコウとその2種の宿主の調査を実施した。その結果、寄生者のヒナを宿主のハシブトセンニョムシクイとマングローブセンニョムシクイが積極的に排除するという事実が世界ではじめて明らかになった。ヒナ排除の事実はこれまでの托卵鳥研究で報告されたことはない。アカメテリカッコウはもともとハシブトセンニョムシクイを主要宿主として、ヒナ擬態を進化させたものであろうが、近年、マングローブセンニョムシクイにも寄生をはじめたものと考えられる。
著者
亀井 譲 鳥山 和宏 八木 俊路朗 佐藤 秀吉 鳥居 修平
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

形成外科領域では、筋弁や筋皮弁による感染創の治療が多く行われている。われわれの臨床経験と以前の基礎実験から、大網のほうが筋弁・筋皮弁よりも抗感染作用が強いと考えている。しかし、大網の抗感染効果を実験的に詳細に報告した例はない。そこで、まずマウスで感染創モデルを作成後に大網および筋弁の感染創に対する反応の差異を観察した。次いでマウス大網からリンパ球、血管内皮細胞や間葉系幹細胞が豊富な分画を抽出して、感染創に局所注射し抗感染作用を検討した。感染創モデルでは、液体培地に寒天を追加し半流動状にして黄色ブドウ球菌を混和することで、寒天が局所に残存して安定した感染創が得られた。感染創に大網と筋弁を移植する実験では、筋弁が局所で反応が乏しいのに対して、大網は周囲組織と癒着して大量の炎症性細胞を供給して明かな抗感染採用を示した。マウス大網由来の細胞の感染創への移植実験では、移植した細胞は血管新生を伴い生着しその周囲に炎症性細胞の豊富な層ができた。以上より、感染創に対して大網は筋弁により抗感染採用が強いことが示唆され、また大網由来の細胞による感染創の治療の可能性が示された。
著者
石 瑾
出版者
神戸大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2003

既存研究が示唆したように、小売の国際化プロセスにおいては、進出先が市場環境の類似性が高い市場である場合、集権-標準型ビジネスシステムをもつ企業が短期的志向になり、分権-適応型ビジネスシステムをもつ企業が長期的志向になる。しかし、進出先を類似性の高い市場から異質性の高い新興市場に切り替えられるとき、既存研究の想定したビジネスシステムと成果スパンの対応関係が依然として成立するのか、それとも反転するのか、本研究はそれを問題意識とする。そこで、本研究は、まず小売の国際展開に関する先行研究のレビューを行った。そして、新興市場の代表として中国を取り上げ、新興市場の異質性をまとめた。さらに、本研究の分析視点と分析枠組みを提示し、それに基づいて理論的な分析を行い、新興市場では、集権-標準型ビジネスシステムをもつ企業が長期的志向になり、分権-適応型ビジネスシステムを持つ企業が短期的志向になるという仮説を導き出している。続いて、仮説検証を行うために、カルフール中国とウォルマート中国の事例を取り上げた。本研究は膨大な二次データと12回にわたる現地でのインタビュー調査によって収集した一次資料を用いて詳細な分析を行い、これまでほとんどブラックボックスとされてきた中国市場における両者のビジネスシステムの内実を明らかにした。さらに、本研究は両事例の比較分析を行い、理論的なインプリケーションをしている。最後に、従来の研究で示されているビジネスシステムと経営成果スパンとの対応関係が、新興市場において反転する論理をまとめた。さらに、集権-標準型ビジネスシステムと分権-適応型ビジネスシステムの識別、新興市場における小売外資と現地市場のさまざまな主体との相互作用といった問題に関するインプリケーションも示している。本研究の詳細を、2005年1月19日に経営学研究科に提出した博士論文「新興市場における小売外資のビジネスシステム-カルフール中国とウォルマート中国の事例-」に参照されたい。
著者
赤穂 まなぶ
出版者
首都大学東京
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本年度は錘型の孤立特異点を持つ特殊ラグランジュ部分多様体のフレアー理論について詳しく調べ、正則曲線の分類についていくつかの結果を得た。カラビ・ヤウ多様体における特殊ラグランジュ部分多様体は、ミラー対称性との関わりで、現在非常に注目を浴びている。この特殊ラグランジュ部分多様体のモジュライ空間をコンパクト化したとき、そのコンパクト化の境界の点に対応するものは、基本的には、特異点を許容する特殊ラグランジュ部分多様体であると考えられる。しかし一般には、その特異点の様子はあまりにも複雑で、まだ現在の技術では到底理解が出来たという段階には至っていない。そこで最も簡単な場合である、錘型の孤立特異点について調べた。まず、ハーベイとローソンによる3次元複素ユークリッド空間の中の特殊ラグランジュ錘と、それを滑らかな特殊ラグランジュ部分多様体に変形したもの(漸近的特殊ラグランジュ錘)を用意する。この変形は1次元分のパラメーターを持っており、そのパラメーターが0のときに原点に錘型の孤立特異点が現れる。そして2次元円盤から複素ユークリッド空間への正則写像で境界がハーベイ・ローソンの漸近的特殊ラグランジュ錘に含まれるようなものを考える。このとき、そのような正則円盤は基本的に標準正則円盤しかないと言うことが証明できた。また先のパラメーターが0になったとき、この標準正則円盤は消滅する。さらに、標準正則円盤は横断正則性を満たしており、これにより標準正則円盤のモジュライ空間は一点からなることが分かった。次の段階として、現在、境界にいくつかの特異点を持つ正則円盤の分類も試みている。これはコンパクトな特異特殊ラグランジュ部分多様体とその滑らかな変形を調べる上で局所モデルとなる、非常に重要な研究材料であり、その解明が期待される。
著者
根本 君也 小松 光一 池見 宅司
出版者
日本大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1994

コンポジットレジン重合時の収縮応力を小さくするために,モノマー重合時の収縮量を小さくすることは困難である.そこで収縮応力がフィラー量や重合開始剤量と比例することに着目し,組成を変えた材料を組み合わせて用いることによって収縮応力を減少できないかと考えた.応力発生の機構を調べるために,アコースティック・エミッション(AE)を同時測定したところ,応力が発生すると微視破壊によるAEも発生することがわかった.光重合型材料はフォトクリアフィルを,化学重合型材料はクリアフィルFIIを用いて直径6mm,深さ4mmの黄銅製窩洞に充填し,硬化時に発生する応力とAEのカウント数を測定した.光重合の場合は照射を開始すると4〜5MPaの応力を発生するが,同時にAEのカウント数も10〜30発生し,その後,応力の増加に比例してAEのカウント数も増加し,100分後の7〜8MPaに達したとき約100を数え,応力が安定してもAEの発生量は増加を示した.化学重合の場合は練和開始3〜4分後から応力を発生するが,AEのカウント数は10位であり,応力の増加率が減少する40〜50分後の14〜15MPaに達したとき200〜1000位の極めて多量のAEがカウントされ,硬化反応の持続による影響が示唆された.次に芳香族と脂肪族を骨格としたジメタクリレート75:25のモノマーにカンファーキノン0.2,ジメチルアミノエチルメタクリレート0.4%を添加し,フィラー40%の低粘性試作レジンを用いて積層充填を行った.2mmの厚さに低粘性レジンを填入し,60秒間光照射を行った後に,フォトクリアファイルを充填し,60秒間光照射を行った場合は,収縮応力が4MPaと約1/2に減少することができた.
著者
馬淵 一誠 酒井 彦一 (1985) 祖父江 憲治 渡辺 良雄 黒川 正則 佐藤 英美 平本 幸男
出版者
東京大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1985

本総合研究は微小管をはじめとする細胞骨格による多様な細胞機能の制御機構を明らかにする目的で行われた。主に6つの研究計画を軸として行ったので、個々の成果を以下に記す。1.有糸分裂と微小管-ダイニン系の機能。顕微操作により、染色体運動の原動力は染色体近くの半紡錘体部に局在していることが分かった。T-1によるタル型紡錘体の形成は微小管形成果粒が分散する結果であると考えられた。微小管結合蛋白質MAP1は【G_o】期に細胞骨格微小管、【G_1】期に核に結合していることが知られた。2.細胞骨格蛋白繊維と細胞運動系。微小管は試験管内で自発的に重合・脱重合を繰り返していることが分かった。テトラヒメナの中間径繊維が接合後の減数分裂、核交換の過程に関っていることを示した。またテトラヒメナアクチンのアミノ酸配列を遺伝子レベルで解明した。リンホーマ細胞に発現する重合能の低いβ-チューブリンのアミノ酸配列を遺伝子レベルで解明した。3.軸索内における微小管の動態。ニューロフィラメントの分子量200K成分はリン酸化され、通常のニューロフィラメントの数倍の速さで輸送されることを見い出した。イカ巨大軸索中でアクソラニンが微小管と共に分布していることを確かめた。またアクチンが膜の内側に結合していることを初めて観察した。4.細胞骨格調節蛋白質の分子機能。卵細胞より分子量100Kのアクチン繊維切断蛋白質を発見した。受精後、卵表層においてアクチンの重合がおこること、α-アクチニンの濃縮がおこることを観察した。5.神経興奮と微小管の役割。カルモジュリン阻害剤がNa電流を抑制することを発見した。6.細胞機能と細胞骨格。筋細胞において筋原繊維が付く形質膜域の裏打ち構造を明らかにした。また星状膠細胞における中間径繊維の細胞膜付着域の構造をも明らかにした。以上のように2年間で多くの成果があげられ、班員同士の共同研究も活発になり、今後の発展の基礎が築れた。
著者
戸倉 清一 田村 裕 浦上 忠 宮田 隆志 木船 紘爾 前田 睦浩
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

これまでLi DMAc、蟻酸、これらより穏和な溶媒系(塩化カルシウム二水和物飽和メタノール)を見つけた。さらに、この溶媒系がキチンの脱アセチル化誘導体キトサン酢酸塩紡糸に際して凝固液になることも見つけたので溶解の機構についてカルシウム以外の他のイオンについても検討した。キチンの溶解挙動をさらに詳細に検討したところ、カルシウム、メタノール、水の組成がキチン溶解に大きく影響していることが判った。キチン溶液が延糸性を示すことから、メタノールとアセトンの混合溶液でを凝固浴としてキチン繊維の紡糸を行った。α-キチンの場合、0.1mm径の30穴ノズルを用い、新たに考案したV字型凝固浴に押し出し回転ローラーで巻き取った。繊維にはカルシウムが残存しているので、メタノール中で充分洗浄して脱カルシウム操作を行った後、風乾して直径約40μmのα-キチン繊維を得た。β-キチンの塩化カルシウム2水和物飽和メタノール溶液はα-キチン溶液よりも遙かに粘度が高いため、シングルノズルを用いさらにエアギャップを設けることで繊維化が可能であった。塩化カルシウム2水和物飽和メタノール溶液に溶解させたキチン溶液に水を加えた際に析出した物質は含水率が約96%と高度に膨潤したヒドロゲル状であった。また、キチン溶液にメタノールを加えることでもゲル状物質が得られた。しかしこの場合、ゲルを得るには水の場合よりも多くのメタノールを必要とし、さらに透析によるカルシウム除去に長期間かかることより、メタノール媒体中でキチンの溶解状態が異なることが示唆された。さらにキチンヒドロゲルからは容易にフィルムを調製することができた。これはバインダーを含まないキチン100%から成るフィルムであり、生体適合性、生体消化性に優れていることからバイオマテリアルとして有望であると考えられる。
著者
松田 史生
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2001

ある代謝経路の活性の変化とは、その経路を流れる化合物量、すなわち代謝フラックスの増減を意味している。ジャガイモ塊茎組織に傷害を与えると、フェニルプロパノイド経路の活性化がおこり、chlorogenic acid (CGA)が顕著に蓄積する。一方、同じくフェニルプロパノイド代謝産物の一つであるN-p-coumaroyloctopamine(p-CO)の含量は生合成酵素が活性化しているにも関わらず微量しか増加しない。本代謝制御の詳細を明らかにすることを目的として、これらの化合物の生合成フラックスの実測を試みた。ジャガイモ塊茎からディスクを作成し、24時間後に10mM L-phenyl-d_5-alanine水溶液を処理した。経時的にディスクを回収し、抽出液中のCGAおよびp-COとその重水素ラベル体の含量をLC-MSで測定した。重水素ラベル体比の経時変化を表す式を、実測値に非線形回帰法で近似させ、CGAとp-COの生合成フラックスをそれぞれ4.2および1.1nmol/gFW/hと求めることができた。以上より、生成したCGAはほとんどが蓄積するのに対し、同じオーダーのフラックスで生成しているp-COは速やかに代謝され、蓄積しないものと考えられた。また、バレイショ塊茎中にはフェノール性アミド化合物の他にもグリコアルカロイド類のα-ソラニンが存在している。α-ソラニンはほ乳類のみならず菌類などにも毒性を持ち、植物への病害抵抗反応への関与が示唆されているが、α-ソラニンの組織中含量を定量することが難しく、その詳細は不明である。そこで、高速液体クロマトグラフィー/タンデムマススペクトロメトリー(LC/MS)を用いたα-ソラニンの簡便な定量法を開発した。この方法は抽出操作が非常に簡便であり、検出限界も10pmolとバレイショ塊茎中のα-ソラニンの定量には十分であった。
著者
空閑 重則 和田 昌久 磯貝 明
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

中性塩の中でセルロースに対する膨潤・溶解作用の最も強いものの一つであるチオシアン酸カルシウムの作用を、この溶液中でセルロースが作るゲルの熱的挙動、および固体セルロースの溶解時の熱現象から調べた。その結果塩-セルロースゲルの融解。ゲル化挙動は水-アガロースゲルと類似した熱可逆性を示すことが分かった。ラミー繊維を用いたX線回析による検討から、チオシアン酸カルシウム-セルロース系では溶解に先立ち準結晶性の錯体が形成されることが分かり、その生成の最適条件(90℃、5〜15分)を決定した。そして錯体の回析パターンから、その構造はアルカリセルロースに類似した疎水面の結合によるシート形成に基づくものであることが示唆された。アルカリセルロースの構造とその中でのセルロース分子鎖の状態を検討し、このときにはセルロースは比較的不動化された状態にあること、したがってセルロースI→セルロースIIの変態は水洗・再生の過程に起こることが強く示唆された。またこのとき逆平行鎖のセルロースIIが選択される理由がセルロース分子鎖の幾何学的構造にあると考えられた。チオシアン酸カルシウム溶液による溶解・再生処理の応用を検討し、TEMPO酸化によるセロウロン酸の調製の検討から、この処理がセルロースの化学修飾のための非晶化前処理として有効であることが分かった。これは他の誘導体調製にも応用できると思われる。次にチオシアン酸カルシウム溶液にセルロース以外の多糖も溶解することを利用してセルロース-アミロースの複合物を調製した。この混合溶液もゲル化するが、熱測定からその挙動にアミロースは分子レベルでは関与しないことがわかった。しかしこのゲルにはアミロースが固定化されており、ビーズ化してクロマトグラフィー用充填剤を作ることができることを見出した。
著者
西井 良典
出版者
信州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

1.ジクロロシクロプロパンの2つのC-Cl結合の連続的高立体選択的変換反応の開発a)ジクロロシクロプロパンの高立体選択的ラジカル的アシル化反応b)1-クロロシクロプロパンカルボン酸エステルのReformatsky型C-C結合形成反応ジブロモシクロプロパンのC-Br結合のC-C結合への変換は数多く報告されているが,C-Brよりも強固なジクロロシクロプロパンの2つのC-CI結合のC-C結合への変換は報告されていない。昨年度,a)ジクロロシクロプロパンの高立体選択的ラジカル的アシル化反応を見出した(Org.Lett.2007,9,563.)。1段階目のC-Cl結合のアシル化反応である。さらなる展開として,この反応の生成物を用いて,2段階目のC-Cl結合の変換反応としてSml_2を用いる高立体選択的なReformatsky型C-C結合形成反応を見出した(投稿準備中)。これらの反応により,初めてジクロロシクロプロパンの2つのC-Cl結合のC-C結合への変換することができるようになった。2.光学活性ジクロロシクロプロパンカルボン酸の不斉アミンを用いる光学分割法および光学活性アルコールとのエステルとしジアステオマ-をカラムで単離し,光学活性ジクロロシクロプロパンカルボン酸に変換する分割法を見出した(Org.Biomol.Chem.2008,6,540-547.)。3.ジクロロシクロプロピルケトンの環拡大反応を用いる非対称多置換チオフエン類の合成と応用:昨年度,見出したシクロプロパン環開裂および脱HClを伴う非対称多置換チオフェン環形成反応を応用し,β-アミロイド捕捉類縁体とされる非対称多置換2,5-ジアリールチオフエン類の合成を達成した。特に3,4位に置換基を有する10種類の2,5-ジアリールチオフェン誘導体を合成した(投稿準備中)。
著者
早乙女 雅博 谷 豊信 藤井 恵介
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

本研究の目的は、東京大学建築学専攻所蔵の戦前に蒐集された朝鮮考古資料の全体像を明らかにし、それを集成しデジタル化して活用することと、資料がもつ画像そのものの保存をめざすことである。達成された成果は、次の3点であり、これにより研究者のみではなく多くの人に考古資料を公開することができ、研究に活用することもできるようになった。1,ガラス乾板を箱ごとに集成し、総数728箱、乾板は11,286枚、フィルムは2,550枚、紙焼きは276枚、総数14,112枚であり、その内容は日本、朝鮮、中国、東南アジア、中央アジア、西欧にわたることをあきらかにした。このうち朝鮮関係の2,500枚の乾板から四切紙焼きを2部ずつ作成し、撮影者、画像内容や参考文献などを調査しデータベースを作成した。2,紙焼きの1部は永久保存とするため、1枚ずつ中性紙保存封筒に入れ、さらにそれを30封筒ごとに中性紙保存箱に収納した。封筒と箱は、ISOの規格にもつづく現在考えられる最高の基準をもちいた。閲覧用の1部は有害な可塑剤を含まないポリプロピレンファイルに入れ、ファイルとして綴じた。3,拓本・図面・模写は、総数1,144件あるが、そのうち朝鮮関係は340件である。これについては、『朝鮮建築・考古資料基礎集成』と題して、画像を含めたデータベースをCD-ROMで作成した。
著者
丸山 昇
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1989

本年度は研究のまとめの年であったので、前年度に引き続き、つぎの二項がまず目標とされた。1.鹿地亘資料自体の整理の完了。2.鹿地亘資料目録の完成。前年度までに、資料を保存と利用に堪える形にすること、すなわちマイクロ・フィルム化と、個々の資料を、一つずつクリアファイルに収める仕事を終え、内容の検討を進めていたが、個々の資料の検討が進むにつれて、前年度までの資料の整理(個々の資料の作られた年代の確定、性格の分析、それに基づく分類等)に不正確な部分が残っており、一応作られていた目録にも誤りや不適切な個所が多いことが明かとなった。そのため、個々の資料の根本的再検討と、それに基づく資料目録の抜本的作り直しを行った。その結果、1.2.については、一部になお解決すべき疑問を残すとはいえ、ほぼ目標を達成し、本資料の保存・活用のための基礎的条件を整えることができたが、上記二項に予想外のエネルギ-を費やさざるを得ず、本研究着手前にはむしろ中心問題と考えていた、文学関係資料の検討・位置づけの完成は、今後の課題として残さざるを得なかったことは、遺憾であった。また、資料を検討するうちに、当初から目的の一部でもあった3.当時を中心にした鹿地亘の正確な年譜の作成。4.鹿地亘の回想録類の誤り・矛循の検討。5.当時の状況、特に鹿地についての中国側の資料との比較・対照。等が、資料の年代の確定、その性格の検討等のためにも不可欠であることが明らかになり、この点についても作業を進め、ほぼ見通しを得た。より完全なものにするためまでには、もう一歩の努力と時間が必要とするが、遠からず発表できる予定である。
著者
千葉 芳明 本田 亮 神田 展行 永田 英治
出版者
宮城教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

われわれ身の回りには光に関する現象が数多くある。しかし、初等、中等教育の現場でその理論的背景を説明するには工夫が必要である。本研究では、偏光現象を用いた着色現象に注目して光と物質の相互作用に関する教材を創案し、光や色についての本質を学ぶプログラムを提案した。主な研究内容を記す。1.偏光現象から始める光と物質の相互作用教材の研究偏光板の間に高分子のシートを挟むと色が現れる。つぎに、偏光子、または偏光子を回転すると色が変わる。、2枚の偏光板の偏光軸が平行の場合の透過光の色と、垂直な場合に現れる色は互いに補色の関係である。なぜ、このような現象が現れるか、容易に説明できる実験教材を開発研究を行った。具体的には、偏光によって、互いに補色の関係にある2つの色が現れることに着目し、偏光の状態によって光が吸収されることを追究する学習教材の検討を行った。この関係をわかりやすく説明するために実験教材と学習方法について研究した。2.偏光による着色現象の本質を理解するためには、物質中で光の位相速度が変わる(屈折の法則)の理解を深める必要がある。その屈折の法則を演示す教材を創案した。本装置を用いると、入射角を変えたとき、屈折角がどのように変わるか、視覚的に理解できる。さらに、屈折の法則で保存される量は何かを考察することができる。3.光と磁気の相互作用を理解する学習教材の開発大学におけるファラデー効果の実験教材を開発した。試料となるガラス素材には、市販されいるガラス素材のなかで、ベルデ定数がもっとも大きいTb高濃度ガラスを用いた。ガラス素材の長さを大きく(8cm)とすることで大きな回転角が得られ、磁場によって、光の偏光面が回転する様子を確認できた。次に、ファラデー回転の回転角度の大きさが、光の振動数に依存することに着目する。光源に白色光源を用いると透過光のスペクトルを変えることができる。磁場によって物質の色が変わるので、磁場と光の相互作用のデモ実験として有効である。4.電磁波教材に発展させるためのに、磁石とリニアーモーターを理解させるための学習プログラムのついての研究をおこなった。
著者
小松 武志 山本 欣郎 坪田 敏男 阿閉 泰郎 鈴木 義孝
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.329-335, 1996-04-25
被引用文献数
7

野生個体1頭と飼育個体3頭から採取した精巣組織材料を用いて, ニホンツキノワグマ(Selenarctos thibetanus japonicus)における精子形成サイクルについて, 光学顕微鏡および電子顕微鏡による観察を行った. 光顕による観察から, 精子細胞の核およびアクロソームの形態学的変化に基づいて, 精子細胞を11ステップに分類した. さらに, この精子細胞の形態学的変化, 減数分裂像および精子細胞の管腔への遊離時期を指標にして, 精上皮サイクルを8ステージに区分した. 一つの精細管横断面は, 大抵単一のステージによって占められていた. ステップ1-2の精子細胞は, よく発達したゴルジ装置を持ち, ステップ3-5では核膜表面を被うアクロソームに沿って, 三日月状に観察された. ステップ6の精子細胞は先端を基底膜方向に向け, 精子細胞の細胞膜とアクロソーム外膜とが接着した. ステップ9においては, アクロソームがセルトリ細胞の細胞質ヘ突出している像が観察され, ステップ11になると, 精子細胞の細胞質のほとんどがセルトリ細胞に取り込まれ, 精子細胞そのものは精子として管腔へ遊離した.
著者
島村 直己
出版者
人文科教育学会
雑誌
人文科教育研究 (ISSN:09131434)
巻号頁・発行日
no.37, pp.1-6, 2010-08
著者
石田 哲也 前川 宏一 半井 健一郎
出版者
東京大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

本研究の主たる成果は,以下の点に集約される.1.無機複合材料の硬化から劣化過程を時空間上で予測する熱力学連成解析システム「DuCOM」をベースに、微生物による有機物分解反応を逐一シミュレーション可能な「BioDuCOM」システムの構築に成功した.熱エネルギー,水分移動,および酸素移動と好気性微生物反応モデルを連成させることで,任意の形状,寸法,温度・湿度・通気に対する環境条件のもと,反応過程をシミュレーションするシステムである.限定された範囲ではあるが,温度,含水量,ならびに酸素を変化させた実験結果に基づきパラメータを設定することに成功した.モデルの一般化および高度化のためには更なる実験検証が必要であるものの,任意の廃棄物組成,温度,含水量,ならびに酸素供給量における反応を予測する数理モデルのプロトタイプを開発することに成功したのである.2.新しい原理に基づく有機系廃棄物のコンポスト化技術を提案した。最先端のコンクリート練混ぜ技術「MY-BOX」を改良・発展させ、コンポスト材料を対象とした重力駆動式かくはん・切返し装置「BioMY-BOX」を開発した。材料かくはん実験結果から,かくはん後の材料の均等性は手動かくはんと比べてほとんど差が認められなかった。ここで,かくはん工程に要する時間はわずか数秒であった。さらに,重力駆動型かくはん・切返し装置と発酵槽を鉛直直列に連結した自己切返し反応システム(STRシステム)を提案した。タイ王国における検証試験を通じて,STRシステムが妥当なかくはん・切返し性能を有すると共に,適切な発酵状態を実現することが明らかになった.
著者
北岡 良雄 三宅 和正 木村 剛 木須 孝幸 伊豫 彰 秋光 純 大隅 寛幸 常盤 和靖 大貫 惇睦 八島 光晴 椋田 秀和
出版者
大阪大学
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
2008

(1)多層型銅酸化物高温超伝導物質の系統的な研究から,高温超伝導現象の起源は反強磁性磁気秩序を生み出す超交換相互作用に起因することを明らかにし,発見以来25年経過してもなお混沌としていた銅酸化物高温超伝導現象を解明(2)Feニクタイド系新高温超伝導体が超伝導状態は等方的なギャップを有するマルチギャップ符号反転S±波モデルによって説明できることを示した(3)六方晶フェライトSr_3Co_2Fe_24O_41において電気磁気効果の室温弱磁場動作を世界で初めて実現(4)価数転移の量子臨界点が磁場により誘起されることを理論的に示した.以上の多彩な系において「新しい量子物質相の発見や現象を解明.
著者
片岡 美華
出版者
全国障害者問題研究会
雑誌
障害者問題研究 (ISSN:03884155)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.294-302, 2008-02

OECDの調査結果によると、23ヵ国中、ほとんどの国で読み書き障害を一つの障害カテゴリーととらえて支援の対象としていた。支援を提供している場は各国によってばらつきがあり、ベルギーやフランスでは特別学校を中心に、カナダやスペインでは通常学級を中心に支援が行われていた。読み書き障害に関する用語の使われ方と定義は国により異なる。イギリスではディスレキシアが、アメリカでは学習障害が、オーストラリアでは学習困難が日常的に用いられている。スカンジナビア半島では読み障害など厳密に区分された語が用いられている。教育制度においては、イギリスでは特別なニーズ教育のもと支援が提供され、ディスレキシアフレンドリースクールが提唱されている。アメリカではIDEAに基づき、無償の適切な教育が提供され個別教育計画に従って支援が行われている。オーストラリアでは「3つの波」モデルによって、予防的観点、早期介入、そして継続的支援が提供されている。