著者
大谷 渡
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

昭和前期に日本の高等教育機関に学んだ台湾知識人の日本統治下における日本認識と、台湾社会での活躍や役割、さらにはその心情について、聞き取り調査によってその生の声を記録化し、当時の新聞、雑誌、公文書、手紙、手記などとの照合検討をとおして、これを社会・文化史的観点から多角的かつ具体的に解明した。その成果は『台湾と日本 激動の時代を生きた人びと』(大谷渡、東方出版、1頁-244頁、2008年)として出版した。
著者
早川 武彦
出版者
一橋大学
雑誌
研究年報
巻号頁・発行日
vol.1999, pp.66-72, 1999-09-01
著者
佐藤 潤一 澤田 恵介 松山 新吾 大西 直文
出版者
日本流体力学会
雑誌
日本流体力学会年会講演論文集 (ISSN:13428004)
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.114-115, 2003-07-28

Three-dimensional numerical simulations of an accretion disc in a close binary system were performed by solving the Euler equations with radiative transfer. We used the one-dimensional (tangent-slab) approximation to calculate the radiative transfer for the vertical directions of the disc. The cooling effect of the disc is considered by discharging energy in only this directions. The influence of radiative cooling has been accounted for by assuming a specific heat ratio γ which is smaller than that of a mono-atomic gas (=5/3). In the present study, the specific heat ratio was assumed to be constant while radiative cooling effect was included as the non-adiabatic process. Our numerical simulations with radiative transfer demonstrated that spiral shocks existed in three-dimensional disc. It was found that its feature approached in the case of a lower γ but its tendency was weaker than that of two-dimensional simulation.
著者
早崎 公威 岡崎 敦男
出版者
日本流体力学会
雑誌
日本流体力学会年会講演論文集 (ISSN:13428004)
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.112-113, 2003-07-28

We study the accretion onto the neutron star in Be/X-ray binaries, using the 3D SPH code and the data from the simulations by Okazaki et al. (2002) for a coplanar system with a short period (P_<orb>=24.3 days) and moderate eccentricity (e=0.34). We find that a non-steady accretion disk is formed around the neutron star. The disk shrinks after the periastron passage of the Be star and restores its radius afterwards. While the mass-capture rate by the neutron star has a regular, strong dependence on the orbital phase, the orbital modulation in the accretion rate slowly gradually decreases. Our simulations show that the truncated Be disk model for Be/X-ray binaries is consistent with the observed X-ray behavior.
著者
菊地 勝広
出版者
横須賀市自然・人文博物館
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究の結果、横須賀製鉄所では「木造と煉瓦の折衷構造」の建築構造形式を意識的に採択していたことなどが確認された。この構造形式は、良質な石材が少ないという日本の資源の状況に見合ったもので、耐震性は日本でも馴染のある木造が担い、煉瓦壁で耐火性を持たせた点が利点であると認識されていた。また、多くの近代的な建築材料を先駆的に使用すると共に、科学的な材料研究を進めていた様子も明らかとなった。
著者
長江 滝三 松田 卓也 藤原 秀和 蜂巣 泉 Boffin H. M. J.
出版者
日本流体力学会
雑誌
日本流体力学会年会講演論文集 (ISSN:13428004)
巻号頁・発行日
vol.2002, pp.124-125, 2002-07-23

Three-dimensional hydrodynamic calculations are performed in order to investigate mass transfer in a close binary system, in which one component undergoes mass loss through a wind. The mass ratio is assumed to be unity. The radius of the mass-losing star is taken to be about a quarter of the separation of the two stars. Calculations are performed for gases with a ratio of specific heatsγ=1.01 and 5/3. Mass loss is assumed to be thermally driven so that the other parameter is the sound speed of the gas on the mass-losing star. Here, we focus our attention to two features : flow patterns and mass accretion ratio, which we define as the ratio of the mass accretion rate onto the companion, M_<acc>, to the mass loss rate from the mass-losing primary star, M_<loss>. We characterize flows by the mean normal velocity of wind on the critical Roche surface of the mass-losing star, V_R. When V_R < 0.4AΩ, where A and Ω are the separation of two stars and the rotational frequency of the binary, respectively, we obtain Roche-lobe over-flow (RLOF), while for V_R > 0.7AΩ we observe wind accretion. We find very complex flow patterns in between these two extreme cases. We derive an empirical formula of the mass accretion ratio as 0.45×10^<-1.8V_R/AΩ> in the low velocity regime and 5.0×10^<-3> (V_R/AΩ)^<-4> in the high velocity regime.
著者
平林 久
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.308-315, 2001-05-05
被引用文献数
1

電波天文衛星「はるか」は,世界初のスペースVLBI観測計画の中核として先進的な観測を行っています.このVSOP計画(VLBI Space Observatory Programme)は,最新のテクニックにより新しい地平を切り拓き,現代天文学の大きな謎である活動銀河核の謎に迫っています.宇宙年齢の1割のころのクェーサー像,近傍の活動銀河核のジェットの付け根,ジェットを真っ正面に直視した映像,降着円盤の影など,銀河核に潜むと考えられる超巨大ブラックホール周辺でのすさまじい物理現象を見せてくれます.これは将来,ますます面白くなる宇宙の実験室です.
著者
池田 隆 RAOUF A. Ibrahim
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究では,自由液面を有する正方形断面の剛体容器が水平方向に正弦励振またはランダム励振を受ける場合,容器内に二つの振動モードが同時に発生する液面スロッシングの内部共振現象について,非線形性を考慮した数学的モデルを構築し,数値計算と実験によりスロッシング挙動を明らかにするとともに,スロッシング波高を精度良く予測できることを示した.また,液面スロッシングの内部共振現象を利用した正方形断面容器が構造物の制振装置として有効であることを示した.
著者
橋本 修 渡邊 慎也 松本 好太 KUMAR Pokharel Ramesh
出版者
青山学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

無線通信環境の問題点を解決する設置環境側の対策手法の一つとして電波吸収体の適用が注目され、これまでにレイトレーシング法による解析や実験用ブースなどを使った実験的研究が広く行われ、種々の吸収体が提案されてきた。しかし、このような吸収体の提案に対して、1.無線LANを想定した環境で実際に無線LAN対応の電波吸収体を設置し、その通信環境の改善効果を実験で検討した例は極めて少ない。2.オフィス内の中央などで使用されるパーティションにおいても、電波が乱反射して影響を及ぼすといった恐れがあるが、パーティションなど室内に設置されたものに電波吸収機能を付加し、無線LANに対応した電波吸収体を検討した例は少ない。そこで、無線LAN環境改善をメインとし、下記の検討をそれぞれ行った。1.一般的な建物への適用を想定し、取り扱いが容易な一般内装建材を組み合わせた無線LAN対応の三層型電波吸収体を、小規模オフィスを模擬した空間に設置し、無線LAN実機を用いた伝搬実験を行った。この結果、まず壁1面への一般建材を用いた三層型吸収体の設置により、通信速度は設置前後で全ての測定点で向上し(平均40%)、吸収体設置による無線LAN通信速度の改善を確認した。2.パーティションに電波吸収機能を付加することで、無線LANで使用される周波数帯域に対応したパーティションタイプ電波吸収体について検討した。この結果、無線LANの使用周波数帯域である2.45GHzおよび5.2GHzにおいて、垂直入射で20dB以上、TE・TM両偏波および円偏波において、入射角度が5度から20度まで、15dB以上の吸収量が得られることを確認した。以上のことから、無線LAN用のパーティションタイプ電波吸収体の実現性を理論的かつ実験的に確認することができた。
著者
石崎 三郎
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
家畜の管理 (ISSN:03888207)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.63-68, 1978-03-15

19の大学付属農場に飼われている乳牛について調査を行ない、飼養法と利用可能なふん尿、同汚水の生産量との関係を検討した。調査は農場の立地条件、乳牛飼養の構造、飲用水量および雑用水量、利用可能なふん尿量、ふん尿の処理工程などについてである。利用可能なふんの量は、乳牛が牛舎内にとどまる時間の長短に影響されることが多い。完全な屋外放牧の場合は、ゼロとなる。この調査における成牛の年平均のふんの量は5〜38kg/頭・日の範囲にあった。利用可能な尿の量は、成牛の年平均で0〜24l/頭・日の範囲に分布した。しかし、その測定には、雨水や雑用水の一部が混入した恐れがある。成牛の飲用水量は、飼料中の含水量の差違、気温の高低など産乳量の多少、こぼし水の多少などの原因で変化する。年平均の飲用水量は20〜86l/頭・日の範囲にあったが、おおむね25〜50lの範囲に分布すると見てよいと考えられる。乳牛飼料のための雑用水量については、大学付属農場によって大差があり、成牛の年平均で26〜127l/頭・日の範囲にあったが、大部分のものは35〜70l/頭・日の範囲に含まれると考えられた。その内訳について考察すれば、搾乳関係の雑用水量は13〜25l/頭・日程度であって、変動は比較的に少ないが、牛体洗浄、牛舎洗浄関係などの水量には大差のあることが認められた。
著者
野上 素一
出版者
イタリア学会
雑誌
イタリア学会誌 (ISSN:03872947)
巻号頁・発行日
no.13, pp.1-6, 1965-01-20

Tutti conoscono in Virgilio la guida di Dante nella "Divina Commedia", ma l'A.desidera chiarire il sentimento intimo di Dante verso Virgilio durante il viaggio nell'oltremondo in particolare riguardo agli appellativi di Virgilio che sono stati adoperati in quest' opera. L'A., prima di tutto esaminando tutti gli appellativi di Virgilio nella "D.C.", scopre che ne sono due tipi. Il primo e l' appellativo piu comune come "il poeta"(Inf.I.130 ecc.), "il poeta che mi guidi"(Inf.II.10 ecc, )"il savio mio"(Inf.XIII.47 ecc.) ; invece il secondo tipo, cioe l' appellativo con il suo proprio nome, e piu raro e speciale, e si trova solo ventisette volte. L'A.ammette che questo secondo appellativo e stato usato qualche volta soltanto allo scopo di rompere la monotonia dello stile(Inf.XIX.61.Inf.XXIX.4 ecc.)e nello stesso tempo ammette che tal volta era necessario, anzi indispensabile per evitare equivoci.per es.nel Purg.II・61., Dante chiama la sua guida Virgilio perche un nuovo gruppo di gente arriva all'Antipurg.e fra essi potrebbe esserci anche poeti e i savi, come pure nel purg.dove incontrano parecchi poeti e savi insieme con Dante come Sordello, N.Visconti, e Currado. Ma l'A.e convinto che il caso vero e proprio, in cui era necessario chiamare questo poeta latino con il suo proprio nome, era quando l'autore della D.C.voleva mostrare una forte emozione verso Virgilio in qualche speciale tratto di questo viaggio come nell'Inf.I.79 dove il cuore di Dante e gonfio di gratitndine verso Virgilio per il suo proprio soccorso quando egli era minacciato da tre fieri e come nel Purg XXX.46-51.dove Dante e colpito da grande tristezza a causa d'improvvisa scomparsa di Virgilio e la sua emozione e talmente forte che grida tre volte ripetutamente il nome di Virgilio e neppure l'apparizione di Beatrice riesce a consolarlo anzi la figura di questa donna beata sembra ora antipatica a Dante,
著者
中川 敦子 鋤柄 増根 水野 里恵 古賀 一男
出版者
名古屋市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

自分の順番が来るまで待つというような自己を制御する力は、3歳以降おもに認められるが、本研究では、それ以前の子どもの注意力や、内気・臆病・引っ込み思案といった傾向、環境(育児文化)などが影響を及ぼすと考え、月齢12ヶ月から36ヶ月にかけて縦断研究を行った。その結果、月齢36ヶ月時の自己制御行動には月齢18ヶ月時の内気・臆病といった傾向が関連すること、発達初期の注意機能は負の情動と関わることが示唆された。
著者
中西 啓子
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究では、宗密の現存する全著述にわたって彼の三教論に関する記述を調査し、『円覚経大疏』『円覚経大疏釈義鈔』から「原人論」へと集約されるその議論を報告書にとりまとめた。目次は次のようである。序-「原人論」における三教論。1、「一心」と「一気」。2、儒道二教批判(其の一)-『円覚経』普眼章法空門疏鈔。3、儒道二教批判(其の二)-『円覚経』弥勒章業報門疏鈔。4、一気(元気)批判とその周辺。結びにかえて-「原人論・会通本末篇」の検討。これによって、おおよそ以下のようなことを指摘した。宗密は仏教主体の三教一致論を提示し、仏教の宗本たる「一心」に対して、儒道二教の本源を「一気」にまとめ、一心のうちに一気を包摂しようとする。その場合まず、儒道二教の万物生成論(虚無大道・天地・自然・元気)をとりあげ、仏教の因縁にもとづいて、法空や業報を理解せず矛盾を生じていると批判する。ついで、気についてはこれを物質的な元素として意味を限定したうえで、一気から形身と天地世界が生成される過程を、一心における三細六麁の展開過程に組みいれている。これは、澄観によって示唆されていた論点をふまえながら、宗密自身の教学にもとづいてまとめたものである。いうまでもなく、このような議論においては理論的な不整合はまぬがれがたい。しかし、宗密は、六朝以来の神不滅論を継承しながら、それを一心の立場から再構築し、心識(神)と形身の関係、迷いの心識(神)から絶対的な霊性(一心)への展開過程などを明らかにしているのである。神不滅論における「神」と「形」を、「一心」と「一気」に変換し、後世の三教論にたいして新たな枠組みを提供していると言えよう。
著者
花田 充治 野口 俊弘 村山 隆夫
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.122, no.2, pp.141-150, 2003-08-01
被引用文献数
1 14

アムルビシンは住友製薬により全合成された新しいアントラサイクリン系の抗癌薬であり,2002年4月に非小細胞肺癌と小細胞肺癌を適応症として製造承認を得た.ドキソルビシンなど現在市販されているアントラサイクリン系薬剤は全て発酵品あるいは発酵品からの半合成品であるのに対し,アムルビシンは化学的に全合成された化合物である.9位に水酸基の代わりにアミノ基を有し,アミノ糖の代わりにより簡単な糖部分を有するという,発酵品あるいは発酵品からの半合成品にはない化学構造上の特徴を有している.非臨床試験では,アムルビシンはヌードマウス皮下に移植したヒト腫瘍細胞株に対しドキソルビシンより強い抗腫瘍効果を示した.このマウスモデルにて薬剤組織分布を調べたところ,in vitroにてアムルビシンの約5~200倍の細胞増殖抑制活性を示す活性代謝物アムルビシノール(13位ケトン還元体)が正常組織に比べ腫瘍組織に多く分布していた.アムルビシンは組織分布の上でドキソルビシンに比べより腫瘍選択性の高い薬剤であると考えられ,また,既存のアントラサイクリン系薬剤と異なり,その抗腫瘍効果の発現に活性代謝物アムルビシノールが重要な役割を果たすと考えられた.アムルビシンはトポイソメラーゼIIを介したクリーバブルコンプレックスの安定化により抗腫瘍効果を示し,強いインターカレーション作用により抗腫瘍効果を示すドキソルビシンとは作用機序が異なると推察された.臨床試験では,未治療の進展型小細胞肺癌に対し高い奏効率(76%)を示した.未治療の非小細胞肺癌に対する奏効率は23%であった.主な副作用は骨髄機能抑制で,特にグレード3以上の好中球減少の発現率は77%であった.現在,悪性リンパ腫に対する後期第II相試験と未治療の進展型小細胞肺癌に対するシスプラチンとの併用による第II相試験が進行中である.<br>
著者
成行 泰裕 梅田 隆行 齊藤 慎司 鈴木 建 羽田 亨 成田 康人
出版者
富山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、太陽風中の非平衡な速度分布が磁気流体波によって生成される過程について、数値計算・理論解析を用いた議論を行った。その結果、(1)磁気流体波が存在する場合に現れる「見かけの」非平衡速度分布が磁気流体系の平衡状態に対応していること、(2)太陽コロナから伝搬する磁気流体波が伝搬過程で生じる急峻化の過程で非平衡な速度分布が生成されること、(3)非平衡な速度分布によって励起される短波長の波動によって低周波の磁気流体波の減衰が促進されること、などが明らかになった
著者
上野 正雄
出版者
明治大学法律研究所
雑誌
法律論叢 (ISSN:03895947)
巻号頁・発行日
vol.81, no.4, pp.35-60, 2009-03

罰金刑は刑罰の王である。もちろん我が国における裁判中の数量的割合においてであるが、後記のとおりそれがほぼ九割に達している以上、こう言っても間違いはないであろう。とすれば、そのあり様は刑事政策的観点から見て非常に重要なものであると言わざるを得ないはずである。では、現実はどうか。近時の社会の関心は死刑や絶対的無期刑といったより重大な刑罰に専ら向いているようである。全国紙においてさえ、労役場留置される罰金刑受刑者が近時増えている事態を、こともあろうに「モラル崩壊顕著に」という見出しで報道しているような状態である。本稿では、このような罰金刑について、その制度の仕組みと現状を概観したうえで、問題点とその改善策を労役場留置と日数罰金制を中心に検討することによって、刑事政策的により有意義な罰金刑のあり様を模索したい。
著者
緒方 美佐子
出版者
東京女子医科大学学会
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.33, no.8, pp.433-433, 1963-09-25

第29回東京女子医科大学学会総会 昭和38年10月6日(日曜日) 東京女子医科大学本部講堂
著者
山田 望
出版者
南山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

ペラギウス派の思想史的起源は、アクイレイアのルフィーヌスによるオリゲネス、バシレイオス、エヴァグリオスらのラテン語訳、さらにペラギウス派のキーワードである「キリストの模範と模倣」の概念においては、ルフィーヌスの前任者であったアクイレイアのクロマティウスによる著作からの影響のあることが判明した。これらアクイレイア司教たちの手による翻訳や著作に、オリゲネス主義者として知られるエヴァグリオスやオリゲネスの影響を決定的に受けていたバシレイオスの著作も含まれることから、オリゲネス主義が思想史的起源ではないかとの当初の仮説が証明されたと結論づけることができる。