著者
津田 宏治
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.82, no.4, pp.592-599, 1999-04-25
被引用文献数
29

部分空間法は, 通常, 特徴量を基底とする多次元数空間(i.e. 特徴空間)に適用される. しかし, 部分空間は任意の線形空間で定義できるので, 数空間だけでなく, 関数空間にも, 部分空間法は適用可能である. 本論文では, 特徴空間の各点を, その点を中心とするガウスカーネル関数に対応づけることにより, 特徴空間を, ヒルベルト関数空間に写像し, そこで, 部分空間法を用いて識別を行うことを提案する. 平仮名認識実験を行った結果, 従来の部分空間法よりも, 高い認識率を得ることができた. この認識率の向上は, ヒルベルト関数空間において, 各クラスの部分空間同士の共通部分の次元数が0になることに起因すると考えられる.
著者
細長 喜久代 阿部 栄子 嶋田 勝彦
出版者
大阪成蹊短期大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

日常,私たちが履いている靴については,歩行時の靴による足への拘束力を平易に測定することはできなかった.そこで拘束力を荷重に置き換え,簡易にリアルタイムで計測できる方法を提案した.そして靴ズレ量を滑り摩擦量として捉え,問題となる足の部分について,滑り摩擦量の測定を可能とした.さらに履き心地の異なる靴について歩行実験を行い,履き心地に関わる荷重と靴ズレ量の実態を明らかにした.
著者
武藤 重明 宮田 幸雄 岩津 好隆 宮田 幸雄 岩津 好隆
出版者
自治医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

尿中へのK排泄に重要な役割を担っている皮質集合管細胞では血管側K濃度をわずかに増やすと、1)管腔内Na存在下では、管腔側膜のNaチャネルと基底側膜の起電性Naポンプの活性化を介したNa再吸収の増加と連動して基底側膜の起電性Naポンプと管腔側膜のKチャネルが活性化しK分泌が増加すること、2)管腔内Na非存在下では、基底側膜のNa/H交換輸送体を介した起電性Naポンプの活性化およびそれと連動した基底側膜と管腔側膜のKチャネルの活性化を介してK分泌が増加することが判明した。
著者
横地 隆 松田 英仁
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.17-34, 1999-01-20

はじめに塚田(1991)によれば,Euthalia agnisはマレー半島,ボルネオ,スマトラ,ジャワ各地から記録され,いずれの産地でもかなりの稀少種である.最近ボルネオ産亜種tinnaに類似した型(以下,tinna型とする)の♂個体が北部,西部スマトラから複数得られたが,これらは従来スマトラより知られる亜種modestaとは全く異なるものであった.また筆者の1人,横地は南タイ産のtinna型の♂個体と,ジャワ産agnisに類似する型(以下,agnis型とする)のマレーシア・キャメロンハイランド産♂個体を所蔵している.つまりスマトラ,マレー半島ではtinna型とagnis型が混棲していることになる.本編ではagnis型とtinna型を便宜的にagnis群(complex)と呼び,パリ国立自然史博物館(昆虫部門)(MNHN),ライデン博物館(RMNH),ロンドン大英博物館(自然史)(BMNH),シンガポール国立大学動物学教室(NUS)におけるタイプシリーズの調査に基づいて本群の分類を再検討した.Agnis群の分類の変遷現在までに記載された本群は次の6タクサである(T.L.:基産地).agniformis Fruhstorfer,1906(T.L.:Deli,Sumatra)agnis Snellen van Vollenhoven,1862(T.L.:Java)canens Tsukada,1991(T.L.:Mt Dempo,S.Sumatra)modesta Fruhstorfer,1906(T.L.:Battak Mts,Sumatra)paupera Fruhstorfer,1906(T.L.:the Malay peninsula)tinna Fruhstorfer,1906(T.L.:Kinabalu,N.Borneo)以下に本群がどのような分類学上の位置で扱われてきたかを年代順に示す(シノニムリストも参照).1.Snellen van Vollenhoven(1862)Adolias agnis Snellen van Vollenhoven,1862 Snellen van Vollenhoven(1862)は,本群のタクソンとして初めて西ジャワからagnisを記載した.原記載では♀が図示されているが,タイプシリーズの個体数は不明である.これ(ら)はRMNHに保管されており,筆者らは確認している.レクトタイプの指定は行われていない.2.Fruhstorfer(1906)Fruhstorfer(1906)はtinnaとその2亜種およびagnisの1亜種の4タクサを記載した.1)Euthalia tinna Fruhstorfer,1906北ボルネオのキナバル山を基産地として2♂1♀で記載された.原記載では♂♀が図示されている.タイプシリーズはMNHNに保管されており,このうち1♂をレクトタイプとして本編で指定した(図13-14).2)Euthalia tinna agniformis Fruhstorfer,1906北スマトラのデリを基産地として3♂1♀で記載された.原記載では♀が図示されている(tinna型).タイプシリーズのうち1♀のみがMNHNに保管されている.しかし,残り3♂の個体は所在不明である.レクトタイプを♀として,その指定を本編でおこなった(図21-22).3)Euthalia tinna paupera Fruhstorfer,1906マレー半島を基産地として1♂で記載されたが,原記載に図示はない.ホロタイプはシンガポール博物館保管と記されている(同館の標本は1957年に全てNUSへ移管された)が,発見できない.またBMNH,MNHNへの移管も考えられたが確認できない(追跡不能).4)Euthalia agnis modesta Fruhstorfer,1906 agniformisと同一基産地である北スマトラのバタック山脈から3♀で記載されたが,原記載に図示はない.タイプシリーズはMNHNに保管されており,agnis型である.1♀をレクトタイプとして,その指定を本編でおこなった(図7-8).3.Fruhstorfer(1913)Euthalia agnis(Snellen van Vollenhoven,1862)ssp.agnis(W.Java)ssp.modesta(N.Sumatra)Euthalia tinna Fruhstorfer,1906 ssp.tinna(N.Borneo)ssp.agniformis(N.Sumatra)ssp.paupera(the Malay peninsula)Fruhstorfer(1913)はザイツ第9巻でもこのように本群を2種として扱った.両種はスマトラで混棲しているとの見解である.またここで初めて1906年に記載したagniformisの♂個体を図示している(pl.129,row b).4.Corbet(1941)Euthalia agnis:Corbet,1941 Corbet(1941)はジャワ産agnisとボルネオ産tinnaにつき比較し,両者を同一種と考えた.5.Corbet(1945)Euthalia agnis modesta:Corbet,1945 Corbet(1945)はスマトラ産modestaをagnisの亜種として示した.標本の図示はないが♂ゲニタリアを示している.6.Fleming(1975,1983)Euthalia agnis paupera:Fleming,1975 Euthalia agnis paupera:Fleming,1983 Fleming(1975,1983)はマレー半島産pauperaをagnisの亜種として示した.♂♀が図示されているが,♂はtinna型,♀はagnis型である.7.D'Abrera(1985)Euthalia agnis paupera:D'Abrera,1985 Euthalia agnis tinna:D'Abrera,1985 Euthalia agniformis:D'Abrera,1985 D'Abrera(1985)はpauperaとtinnaをagnisの亜種とした.またagniformisを独立種として記述したが,その扱いに確証を持っていない.tinnaはagnis(あるいはEuthalia merta)と同一種ではないかと考えたためである.8.大塚(1988)Euthalia agnis modesta:Ostuka,1988大塚(1988)はボルネオ産をagnisとし,亜種名にmodestaを充てた.しかしmodestaは北スマトラを基産地としており,tinnaをmodestaのシノニムとする記述もないことから,本来はtinnaとすべきである.♂♀の個体が図示されている(tinna型).9.塚田(1991)Euthalia agnis(Snellen van Vollenhoven,1862)ssp.agnis(Java)ssp.modesta(N.Sumatra)ssp.canens(S.Sumatra)ssp.paupga(W.Malaysia)ssp. tinna(Borneo)Euthan aconthea(Cramer,1777)ssp.purana(Sumatra)=agniformis塚田(1991)は,tinnaをagnisのボルネオ亜種とし,agniformisをEuthalia acontheaのスマトラ亜種puranaのシノニムとして扱った.Fruhstorfer(1913)によるSeitz,vol.9,pl.129,row bに図示されたagniformis♂がEuthalia acontheaと考えられるためである.塚田(1991)におけるpl.110,fig.1の♂はtinna型で,figs 2,3の♀はagnis型である.また南スマトラ産に新亜種名canensを与えた.10.Eliot(1992)Euthalia agnis paupera:Eliot,1992 Eliot(1992)はマレー産をpauperaとして記し,1♂1♀を図示した.このうち1♀はagnis型であるが,1♂は(やや写真の鮮明さに欠けるものの)tinna型と思われる.考案以上の変遷をみると,Fruhstorfer(1906,1913)はagnis群を種tinnaと種agnisの2種としたが,その後Corbet(1941)がagnisの1種として以来,この分類が一般的となっている.しかし今回までに筆者らが入手した標本,資料に基づき検討を加えたところ,本群はFruhstorfer(1906,1913)の分類に準じて2種に分けるのが以下のような理由から適当と考えられる.1)北部,西部スマトラよりtinna型♂の再発見従来より得られていたスマトラ産の個体はagniformisのタイプ標本を除いて全てagnis型(亜種modestaとされる)であった.この例外のagniformisの♀タイプ標本はtinna型(♂タイプ標本は不明)であり,Fruhstorferが1906年にスマトラより記載したものである.しかしその後agniformisの分類学的位置は曖昧のままとされてきた.今回筆者らはタイプの調査を行うとともに,agniformisに相当するtinna型の♂個体を初記録として北部,西部スマトラより入手できたため,同島に両型が分布することを確認できた,つまりmodestaは種agnisの亜種,agniformisは種tinnaの亜種として整理される.2)南タイ・ラノンよりtinna型♂の発見Fruhstorfer(1906)はマレー産pauperaをtinnaの亜種としているが,筆者らはマレー半島産のtinna型の標本をこれまで実見していなかった.ただし,Fleming(1975,1983),塚田(1991),Eliot(1992)での図示標本は♂は全てtinna型,♀はagnis型と考えられる.また宮下哲夫氏(東京)の私信では,彼のコレクションのマレー産1♂はtinna型であるとのことである.ところが筆者のひとり,横地の所有する1♂はagnis型であり,♀も現在までagnis型しか見ていない.前述のようにpauperaのタイプ標本は所在不明で,原記載には図示もなく,これが果たしてtinna型かagnis型かは不明である.しかし,後にFruhstorfer(1913)が本タクサをtinnaに分類していることから,pauperaがtinna型であることは間違いないと思われる.今回筆者らははじめてtinna型の♂を南タイから入手したことで,tinna型の♀は未知ではあるものの,マレー半島にも両型が分布することを確認できた.つまり真のpauperaは種tinnaの亜種,マレー半島産のagnis型は種agnisの新亜種(hiyamai ssp.nov.,図9-12)として整理するのが自然であろう(厳密に言えば,今回発見の♂個体はpauperaの基産地とは離れた産地に由来することも考えられ,亜種レベルで同一視できない可能性も残されているが,ここではpauperaに含めて扱うこととする).原記載以後agniformisに触れたのは,Fruhstorfer(1913)以外にはD'Abrera(1985)と塚田(1991)のみであり,それは独立種とされたりEuthalia aconthea puranaのシノニムとされたりしてきた.タイプシリーズ3♂1♀のうち,3♂は所在不明で実見できないが,Seitz vol.9に図示があり,この♂は種acontheaとみるべきと考える.実際,塚田(1991)も同様の扱いをしている.1♀はMNHNに保管されておりtinna型である.この1♀をレクトタイプに指定することで,agniformisの分類学的位置が明確になる.塚田(1991)はスマトラ亜種を北スマトラのmodestaと南スマトラのcanensに分けているが,両者を区別するのは困難であるため,ここではcanensをmodestaのシノニムとした.さらにボルネオ,西カリマンタンより種tinnaの♀が記録された.新亜種の可能性があるが,1♀のみの記録であるため,図示(図17-18)に留めておく.Euthalia (Euthalia)agnis(Snellen van Vollenhoven,1862)ssp.agnis(Snellen van Vollenhoven,1862)(図1-4)分布.W.Java,C.Java.ssp.modesta Fruhstorfer,1906(図5-8)=canens Tsukada,1991,syn.nov.分布.Sumatra.ssp.hiyamai Yokochi&Matsuda,ssp.nov.(図9-12)分布.W.Malaysia.Euthalia(Euthalia)tinna Fruhstorfer,1906,sp.rev.ssp.tinna Fruhstorfer,1906(図13-18)分布.Borneo.ssp.agniformis Fruhstorfer,1906,stat.rev.(図19-22)分布.N.Sumatra,W.Sumatra.ssp.paupera Fruhstorfer,1906,stat.rev.(図23-24)分布.W.Malaysia,S.Thailand.種agnisと種tinnaの形態学的差異1.翅斑♂(1)翅形はagnisの場合tinnaに比べ,前翅肛角の張り出しが強いのに対し,tinnaは後翅前角の張り出しが強い.(2)両種とも翅表の色調は黒茶色だが,agnisではやや紫がかり,濃淡のめりはりがはっきりしている.(3)両種とも前翅表の白斑列は一直線に並ぶが,図25で示す角度αがagnis<tinnaとなる.また,白斑個々の形はagnisでは個々の白斑の大きさがほぼ同一で類円形もしくは楔形となるのに対して,tinnaの場合横に細長くなり,第5室のものが最も大きくなる.(4)agnisは後翅表第7室を中心に藤紫色を呈するが,tinnaでは認めないか,もしくは非常にうすい.(5)翅裏は地色がagnisでは灰白色であるが,tinnaでは茶色である.♀(1)翅形はagnisの場合tinnaに比べ,前知外翅中央の凹みが強い.(2)翅表の地色はagnisでは黒茶色がとくに強く,濃淡の差があるが,tinnaの場合ほぼ均一の茶色.(3)翅裏の地色は両種とも茶色であるが,色調はagnisのほうが明るい.(4)前翅の白斑列はagnisでは消失するか薄くなるが,tinnaでは第1b室に明瞭である.(5)後翅はagnisでは第7室にわずかの白色部分を有するのみであるが,tinnaの場合大きく明瞭な白帯を有する2.パルピ両種とも同一形で,先端部に針状突起はない.3.アンテナ両種とも同一で,先端部の表面は黒色,裏面は褐色を呈する.4.♂ゲニタリア図26(E.agnis modesta,S.Sumatra),図27(E.tinna agniformis,N.Sumatra)に示すように,valvaの形状にやや差があるものの,両種に基本的な相違は見られない.まとめ筆者らが得た標本,各博物館の所蔵標本および文献に検討を加え,いわゆるEuthalia(Euthalia)agnis(Snellen van Vollenhoven,1862)(Rhopalocera,Nymphalidae)は種agnisと種tinnaの2種に分けるのが適当であるとした.
著者
荒川 歩
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

意図(特に殺意)および「合理的疑い」に関する、裁判員のしろうと理論について検討した。その結果、殺意の認定については、裁判員に独特の判断傾向があること、評議において、裁判官側が裁判員役の役割を提示せずに、裁判員側の主張を先に聞いた場合も、裁判官側が先に、定義等をしない場合も裁判員が納得する程度には違いがないことが示唆された。このことは、裁判員評議の運営において示唆を与えるとともに、学術的にも、市民の判断の特徴を考える上で有用であると考えられる。
著者
関根 孝道
出版者
関西学院大学
雑誌
総合政策研究 (ISSN:1341996X)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.117-156, 2005-09-20

The Amami lawsuit for "the rights of nature" was filed in 1995 at Kagoshima District Court. Since Amami's black rabbit population and other 3 birds' species were named as co-plaintiffs together with humanbeings, the case was so well-publicized that the notion of rights of nature has come to attract a wide range of public attention. In societies where the proposition that nature should have its own rights is often seriously advocated, co-existence between humanbeings and nature is more vigorously sought for the sake of nature. Although the part of complaint in which the animals' species are designated as co-plaintiffs was ordered to delete and the case itself was dismissed for the lack of standing, the court decision implied the defect of the modern civil law's dichotomy that only humanbeings were allowed to enjoy the status of right-holders. Also the court shared the view that such a legal system as enabled those who were acquainted with the nature and motivated for its protection to file a lawsuit for the environment need to be contemplated given the seriousness of environmental destruction in this century. This article points out the court decision's significance together with its limitations as well. First, the case's factual settings are introduced and analyzed. Secondly, the plaintiff's assertions are examined according to the decision's summary of assertions in contrast with the complaint and other legal briefs submitted. Then the court' judgement are explained and commented with the emphasis on environmental standing issues. Finally, this article raises the queries with regard to the right of nature and pinpoints the unsolved legal issues that the decision left for us as a homework.
著者
川平 成雄 Kabira Nario
出版者
琉球大学法文学部
雑誌
琉球大学経済研究 (ISSN:0557580X)
巻号頁・発行日
no.74, pp.1-21, 2007-09
著者
中根 允文 本田 純久 高田 浩一 三根 真理子 朝長 万左男
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

長崎市にて生活している原子爆弾被爆者(原爆被爆者手帳の保有者)はおおよそ5万人いるが、彼らについて科学的方法論に則って詳細な疫学研究は未だ行われてこなかった。われわれは、原爆投下から50年を経過してこの被爆者における精神的な負担の程度を知り、且つ精神障害の有病率を明らかにすることによって、現在彼らが如何なる精神保健支援を必要としているかを探ろうとした。対象は調査期間内に被爆者健康診断を受診してくる被爆者のうち、本研究に参加の同意が表明された者で、彼らに全般健康調査12項目版(GHQ-12)でスクリーニングを施行し、二次調査としてCIDI面接、および三次調査として精神科医による臨床面接が実施された。協力の得られた事例は7,670名(男性3,216名、女性4,454名)である。一次調査の結果として、GHQ-12における高得点者の頻度は9.3%であり、性別・年齢階層別に全く同一の頻度ではないものの有意な差を見るほどではなかった。これを被ばく距離別に見たとき、近距離被爆者(〜2km)が他の被爆距離群の者より高い平均得点を示し、また高得点者も多いことが確認された。次にこの一次調査のスコアをもとに二次調査(参加協力者は225名)・三次調査対象(同212名)が抽出されたが、彼らに見られた精神障害のうち最も頻繁に見られた診断はF4「神経症性、ストレス関連性、および身体表現性の障害」であり、中でも身体表現性障害・他の不安障害の亜型が目立った。次に多かったのはF3「気分(感情)障害」で、特にうつ病圏患者が目立って多かった。今回の多数の協力をもとに、被爆者における精神疾患の有病率を推算してみると、最低の11.59〜19.59%までの幅があった。日本においては、こうしたデータの報告が全くと言っていいほどに見られないので、同値が低率なのか高率なのかを判断できない。われわれは、一般内科外来を受診した患者について全く同じ方法論でもって調査研究を行い、20%を越える有病率であったことを報告している。それに比すと、やや高率であることが窺われる。ただ、今後も詳細な疫学研究を継続することによって、適切な解釈が可能となるであろう。更に、こうした頻度に影響する要因の解明も必要であり、今後は心理社会的背景を綿密に調査していく予定にしている。
著者
大塚 寛治 岩崎 博 小菅 克也 貫井 孝 水本 尚吾 今岡 紀夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. CPM, 電子部品・材料
巻号頁・発行日
vol.96, no.413, pp.47-51, 1996-12-12

近年,電子機器の軽薄短小化は特に加速されている.この世界は標準化より先に進展しているため,各社独自の技術的アプローチがなされている.日本全体の将来を見たとき,効率的でない面が出るはずであるる.お互いの密なコミュニケーションが暗黙のうちにも技術の共通性がでる根源になると考え,企画した.軽薄短小の究極はシステムオンチップであろう.しかし機能の増大に対しシステムオンチップは常に取り残されている.複数のLSIと受動・センサー部品を取り込んだ高密度実装がいつの世にも必要であろう.この中に高速信号処理も組み込まなければならず,実装系から見て川上と川下によりものを申すべき時代に来たと思う.ICDでこの企画をすることはその意味で有意義であると見る.
著者
広岡 公夫 時枝 克安 前川 要 宇野 隆夫 酒井 英男
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

考古地磁気学的研究は、主に遺跡に残されている焼土を伴う遺構から試料を得て、その熱残留磁化を測定して行われてきた。その結果、過去2,000年間の地球磁場の変動(考古地磁気永年変化)が相当な精度で明らかにされている。しかし、データが蓄積されてくるにしたがって、日本列島内でも、同一時代で地域的に地球磁場方位に無視できない差異が存在することが明らかになってきた。考古地磁気年代推定は、永年変化曲線を用いて行われるので、地域差が直接推定年代値に影響を与えることになる。これを避けるためには、地域差を補正した地域毎の永年変化曲線を作る必要がある。本計研究計画の年度中に、出来るだけ多くの地域でその地域の永年変化曲線をつくることを目指したが、最近データの増加が著しい北陸地方の中世(西暦500〜1550年)と、従来から古窯の考古地磁気データが多く、詳しい土器編年も行なわれている東海地方の中、近世(西暦900〜1700年)の補正永年変化曲線を得た。今まで測定例が殆どなかった、北海道の10・11世紀のデータや、青森県からも2例のみではあるが、須恵器窯のデータが得られたし、何よりも、相当数のデータが、韓国から得られたことは、東アジアの考古地磁気研究および、地磁気の地域差を考える上で大きな成果であった。また、考古地磁気年代推定法のよく焼けた焼土遺構であれば遺構の種類を問わないという特徴を有しており、その特徴を生かして、最近、鉄生産に深い関連を持つ炭焼窯が北陸地方で数多く発見され、調査されているが、それに考古地磁気測定を適用したところ、従来から予想されていた奈良・平安初期のもの、近世、近代のもの以外に、12〜13世紀の中世にも相当数の炭焼窯が存在することが明らかとなった。
著者
吉岡 直樹
出版者
慶応義塾大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1995

磁気特性を有する有機物質を設計することは新しい機能性物質の創世にもつながる重要な基礎課題である。本研究の目的は、安定ラジカル構造を規則的に導入した新規な共役高分子、水素結合連鎖を合成設計し、π電子系または水素結合を介したラジカルスピン間の磁気的な多重相互作用を目指した。本年度は剛直棒状なスピン連鎖の構築法の確立、連鎖の配列様式の解明を重点的に実施し以下の知見を見出した。(1)ラジカル中心として室温大気下で安定なアセチレン誘導体2,2-dip heny 1-3 haro-8-ethy nyl quinoline-1-oxylを合成し、Pd錯体触媒を用いてエチニル水素と環置換ハロゲンを温和な条件下でクロスカップリングし厳密に頭尾結合が規制されたポリラジカル高分子を合成したが、溶解性が低く高分子量体は得られなかった。(2)イミダゾールがプロトン供与性部位と受容性部位を具有することに着目して、2-位にラジカル中心として4,4,5,5-tetramethy limidazoline-3-oxide-1-oxylおよび4,4,5,5-tetramethy limidazoline-1-oxylを導入した誘導体、lm-NNとlm-INを合成した。(3)単結晶X線構造解析より、lm-NNはb軸方向に水素結合連鎖を形成していた。ラジカル部位とイミダゾール環は大きく捻れ(48 deg)連鎖間でNO結合が接近していた。lm-NNのモル磁化率は、110K付近で極大を示しスピン間には反強磁性的相互作用が存在した。(2J=_-123cm^<-1>)。この磁気的相互作用はNO結合間の直接的な軌道の重なりで説明され、水素結合連鎖を介してスピン伝達の効果は認められなかった。lm-NN中で不対電子密度がNN部位に局在分布しているためと考察された。(4)プロトン受容性にイミノ基を2つ有するlm-INは、lm-NNに比べ結晶化しにくく構造の詳細は不明であるが不対電子間の相互作用は反強磁性的であった。以上を総合して、水素結合を利用した有機ラジカルの自己組織体の構築法を確立した。
著者
野村 早恵子 石田 亨 船越 要 安岡 美佳 山下 直美
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.44, no.5, pp.503-511, 2003-05-15
被引用文献数
27

インターネットを介したアジアワイドな協調作業を支援するため,異文化コラボレーション実験(ICE2002)を実施した.日中韓馬の5大学からの40名の教員・学生が,日中韓馬英の5カ国語の機械翻訳を組み込んだ多言語ツール,TransBBSとTransWebを介して母国語でオープンソースソフトウェア開発を行った.今後,国際プロジェクトの現場で実用に耐える異文化コラボレーション環境の開発を目指す予定である.
著者
岡田 壮一 角田 潤 浅見 俊宏 渡辺 理
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.52, pp.281-282, 1996-03-06

パソコンがオフィスに導入され、文書作成に代表されるデスクワークは、生産性が向上した。さらに、LAN導入のシナジー効果も伴い、電子メールを用いた情報交換、データベースやノウハウなどの情報共有が可能となり、デスクワークへの電子化の恩恵は大きい。それとは対照的に、オフイスワークの30~70%を占めるといわれる対面型会議では、依然として紙の資料とホワイトボードの使用が中心であり、電子的支援が遅れているのが現状である。また、従来の会議における参加者間のコミュニケーションは、音声での議論が中心である。このような会議では、音声情報の曖昧性から、聞き手によって認識が異なることがあるため、合意されたと思った議事が実は合意されていなかったり、あるいは、合意されていても、認識にずれがあったりして、結局、何が議決されたのかすらわからないことがしばしばある。このような生産性の低さという問題は、経験上、否めない事実である。我々は、上記の問題意識の元、会議においていかに効率良く質の高いアウトプットを出すか、すなわち会議における知的生産性の向上を実現するために、対面型電子化合議システムの開発を行っている。我々は、ワープロの高い生産性に着目し、企業で頻繁に行っている、電子化に向いた収束型会議を対象とした。また、参加者が6人程度までの小規模な会議を考えた。収束型会議とは、参加者のリアルタイムのインタラクションを通じて、合意形成しながら最終的な文書を作り上げていく型の会議である。本稿では、サービスの検討と、サービスを実現するシステムについて記す。
著者
山崎 勝男
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

近年,情動-動機づけ処理の観点から,前部帯状回(anterior cingulated cortex: ACC)機能への関心が高まっている.本研究では,悪い結果を伝えたときに惹起されるACC由来の前頭内側陰性電位(medial frontal negativity: MFN)について,結果に対する期待の強さとの関連を検討した.最近の理論では,自分の期待に反して結果が悪い場合には,ドーパミン作動系の活動低下によってACCに脱抑制が生じ,MFNを惹起させるという.もしそうならば,フィードバック信号提示前の期待の強さに伴ってMFN振幅は増大することになる,そこで,フィードバック信号に対する期待の強さを反映する刺激前陰性電位(stimulus-preceding negativity: SPN)を側定し,MFNと期待との関連を調べた.実験には単純なギャンブル課題を用いた.画面上に提示される10円と50円の組み合わせから成る選択肢のいずれか一方を選択し,2.5秒後に選択側の視覚刺激が緑色になれば当該金額を受け取れるが,赤色になればその分減額されるという課題だった.実験の結果,50円獲得直後の試行では10円を選択するものの,50円損失後では50円を再び選択するというリスク選択行動が明らかになった.しかしながら,MFNとSPNはリスク選択行動とは合致せず,いずれも50円獲得直後に増大する結果となった.行動と脳活動との乖離は,リスクを選択させる動機づけ過程と,当該試行の結果に対する期待は異なっていたことを示唆している.一方,本研究の予想通り,MFNとSPNは同様の振る舞いを示し,フィードバック信号に関与する情動一動機づけ処理とACCとの関連性を明確にすることができた.
著者
赤池 伸一
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.49, no.11, pp.550-556, 1999-11-01

政府の研究開発全般の評価については,平成8年7月に閣議決定された科学技術基本計画において,研究開発に関し厳正な評価を実施することにより我が国の研究開発の抜本的な活性化を図るとの方針が示され,「国の研究開発全般に共通する評価の実施方法の在り方についての大綱的指針」が平成9年8月に内閣総理大臣決定された。この後、関係15省庁において評価実施要領等が策定され研究開発課題及び研究開発機関の評価が実施されているところである。また,科学技術会議政策委員会の調査によれば,現在,概ね大綱的指針に沿って評価が行われているが,本格的取組は開始されたばかりであり,評価の定着が今後の課題となっている状況である。