著者
石塚 伸一
出版者
龍谷大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

この3年にわたる調査研究、とりわけ、薬物依存に関する治療共同体や米国のドラッグ・コートの調査を通じて、われわれは、日本においても大胆なダイバージョン・プログラムを導入し、依存症回復のためのプログラムを開発する必要があるとの結論に到達した。そのためには、(1)依存症者自身が回復の主体であること、(2)その支援は非政府組織や地域社会を中心に行われるべきこと、そして、(3)再使用は回復のためのステップであることについて、司法、医療および福祉の関係者が前提理解を共有することが必要であること、なども明らかになった。その成果は、『日本版ドラッグ・コート〜処罰から治療へ〜』(日本評論社、2007年)の刊行や国際シンポジウムや学会報告を通じて公表した。この間、刑事施設の運営および社会内処遇の改善のための立法作業が進められていることもあり、われわれの「日本版ドラッグ・コート」構想にも関心が寄せられ、多くの理解者を得ることができた。しかし、この構想を実現するためには、(1)法的諸問題の精緻化、(2)社会的コストの算出、(3)効果的な回復モデルの開発、(4)関係機関・団体のネットワークの構築など、新たな課題も発見された。今後もその実現のための実践的な調査研究活動を継続していく予定である。
著者
水谷 規男
出版者
愛知学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

本研究では、フランス未決拘禁法の改革動向を、1970年から2000年までの期間においてフォローし、フランス法が、特に1990年代以降、国際人権法(特にヨーロッパ人権規約)との整合性を意識して改正され続けてきたこと、しかしそれでもなお、フランス法には、警察段階での捜査のための拘禁制度の利用、人員、期間ともに過剰な未決拘禁制度の利用があり、なお国際人権基準に照らして問題点を含んでいること、そしてフランス法の持つ問題点がほぼ同様に日本の未決拘禁法(逮捕・勾留および保釈)にも当てはまることを明らかにし、日本の未決拘禁法が国際人権基準に照らして改正ないしは運用の改善が必要であることを明らかにした。なお、本研究の課題との関係で、フランスにおいて大規模な法改正が予定されていることが研究期間中に判明したので、論文執筆および成果報告の提出は、法改正を待って行ったことを付言する。
著者
澤登 俊雄 村井 敏邦 前野 育三 福田 雅章 荒木 伸怡 斉藤 豊治 新倉 修
出版者
国学院大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1994

本研究は、主として、アメリカ、イギリス カナダ、ドイツ、フランス、北欧各国の少年司法制度、児童福祉制度における「こどもの権利保障」の内容につき、体系的に整理された詳細な「共同調査項目表」を作成し、それに基づいて調査・分析を行った。この「共同調査項目表」は、少年手続を審判前、審判段階、処分決定と処遇の3段階に分け、それぞれ少年の権利保障、適正手続の観点から有意義と思われる全25項目(さらに細項目は約225項目に分かれる)について調査する質問票であり、各質問番号を各国横断的に比較することで、明確に各国権利保障の状況の比較分析ができるよう工夫されている。これについて、最新の法令、判例、運用等を紹介したことはもちろん、これらでは十分に解明しえない諸点については、外国人研究者への直接質問等により正確を期した。これらの比較の上に立って、各段階、各国毎に、適正手続、国親思想、保護主義、刑罰主義、職権主義、当事者主義等の基本概念を縦軸に、「少年司法運営に関する国連最低基準規則」、「子ともの権利条約」等、子どもの権利保障を重視した諸々の国際準則が各国においてどのような影響を与えているかを横軸に、総括的なまとめを行った。その際、これらの知見が、日本法、とりわけいま問題となっている少年手続の基本構造をめぐる議論にどのような示唆を与えるものかを常に念頭に置いて分析したことはいうまでもない。詳細は今年中に発行を予定されている書物(「少年司法と適正手続」)に譲ることとするが、国際準則の影響下、全般的には子どもの権利保障が進みつつあるものの、各国固有の歴史的、政治的、社会的背景を反映し、各国における問題関心、権利保障の具体的な現れ方には、看過できない大きな相違があることが感じられた。
著者
渡辺 覬修
出版者
神戸学院大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

関西所在の裁判所で、甲山事件はじめ大小の事件の裁判傍聴を行い、手続の様々な段階における被告人の手続からの疎外状況を把握した。その中で、逮捕勾留中の取調べが病理を生む大きな原因であることを、実例を通じて確認する作業を続けた。また、これを克服する弁護活動の実情調査等について、理論面の検討を含めて、まとめた。各地で継続する聴覚障害者被告事件を積極的に傍聴するとともに、担当の弁護士、手話通訳者と研究交流会を各傍聴の毎にもつように務めた。裁判所サイドが考えている公正な手続・公正な通訳保護のあり方と、聴覚障害者の側なり手話通訳の側からみたそれとの食い違いがあるか・ないか、実務がどのあたりで落ち着こうとしているのか、検討結果を論文にまとめた。外国人事件の傍聴と、事件関係者、弁護士などとの面接・調査などもすすめた。とくに、外国人事件と量刑のありかたを巡り、刑罰の意味を含めた検討作業を実例を通じて進めた。全体として、被疑者・被告人の権利の主体性を法解釈面から支えるまとめの作業を行った。
著者
川出 敏裕
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

医療事故に対する刑事処分の現状を,民事上の損害賠償及び行政処分と比較しつつ,事例研究を通じて実証的に明らかにするとともに,それをふまえて,医療事故に対する刑事責任のあり方について検討を加えた。そのうえで,(1)刑事処分は故意又はそれに準ずる悪質な場合に限定すること,(2)刑事処分の後追いではなく,医療事故の原因となった医師について,事故から学び復帰を援助する行政処分のシステムを新たに構築するという提言を行った。
著者
木本 強
出版者
早稲田大学法学会
雑誌
早稲田法学会誌 (ISSN:05111951)
巻号頁・発行日
no.23, pp.65-101, 1973-02
著者
黒川 洸 尾島 俊雄 高橋 信之 増田 幸宏 小澤 一郎
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

首都直下地震対策が緊急の課題である現在、世界に多大な影響力を持つ東京の企業の業務中枢機能を維持することが重要である。ミュンヘン再保険会社が発表した都市のリスク指数では、東京の危険度は710と他の都市の高くても100前後という値に比べて非常に高く、国際的に東京の危険性が危惧され、今後東京での国際的企業の経済活動が阻害される恐れがある。現在国際的に行政のみならず民間企業も地震リスクに対策を行うことが必要とされている。特に中央防災会議首都直下地震専門対策委員会においても、企業が災害時に重要業務を継続するためのBCP(事業継続計画)の策定を行うことが必要と報告されている。しかし日本の企業の地震リスク対策は不十分であり、ここ30年以内に起こる可能性の高い首都直下地震による多大な被害も懸念される。そこで企業が具体的にこれらの地震リスクを低減し事業継続を行なうための防災投資の提案を行う必要がある。都市の防災基盤整備としての安全街区構築のためのスキーム検討として、新たな保険制度の提案を目指して下記項目について検討を進めた。BCPのISO化や、企業統治の一環として企業の一層の危機管理が求められる中で、都市のライフラインや建築の設備系統を強固に整備して、特別に信頼性を高めた地域を、日本独自の「安全街区」として提案する。こうした「安全街区」が実現した場合の、安全街区内の高い仕様の建物について、地震利益保険や再保険市場での査定、あるいは不動産投資市場における評価への影響について調査を行った。また海外への研究発表に重点をおいて研究活動を進めた。また、環境と防災両面に資する「都市環境インフラ」の構築に向けての包括的な概念検討を継続して進めており、関連の実測調査や現地調査、文献調査を組み合わせ、今後の研究展開に資する基盤的な要素について幅広く検討を行い成果を得た。研究は、1.人工系都市基盤・都市インフラに関連する研究、2.都市内自然資本に関連する研究、3.各都市の基礎調査、4.安全・安心確保のための関連事例等の基礎調査に分類される。関連する社会的な要求を背景に、意義ある研究を行うことができた。研究助成に御礼申し上げる次第である。
著者
村井 隆文 内藤 久資 千代延 大造 小沢 哲也 舟木 直久 青本 和彦
出版者
名古屋大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

コンパクトリ-マン多様体上の調和写像に関連して現れる非線型楕円型方程式及び古典力学的ハミルトン系流体現象から現れる同種の非線型方程式を解析し、その幾何学的構造、確率論的解釈及び方程式自身の吟味を試みることが目標である.特に、これらの方程式の泡沫現象、爆発現象、安定性、境界条件の吟味等に焦点を合わせて研究を行っている.これらの幾何学的構造を明らかにし、確率論的意味付けを与えることは純粋数学としての重要性のみならず、応用の立場からも不可欠である.自然現象と照らし合わせながら問題設定、結果の吟味を行う必要がある研究代表者は、方程式の基本構造はその再生的構造が本質的であると考え、この立場から文献1、2(報告書欄11、上から順)をまとめた.楕円型方程式の基本構造は、対応する境界特異積分方程式と境界値問題に帰着する.この立場から、境界上のヒルベルト変換を導入しその構造と境界値条件の関連を調べた.青本氏は方程式の代数化を試みgー解析的立場から文献3,4,5を発表した.舟木氏は確率論的観点から流体力学的方程式(特に、ランダウ型方程式)の吟味とその考察を行い文献6をまとめた.小沢氏は幾何学的立場から、軌跡や安定性についての問題を量子的に定式化した.さらに多様体の埋蔵についての議論も行った.千代延氏は確率論的立場から、ラプラス型方程式の漸近挙動を解析した.内藤氏は微分幾何学的立場から、多様体上の熱力学的調和写象の安定性を議論した.
著者
安藤 裕明
出版者
金城学院大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

オープンソースの教育支援システムMoodleに,携帯電話からの利用を想定したMoodle for Mobileを導入し,携帯情報端末(PDA)と携帯電話を組み合わせて利用可能な,薬学部用の授業支援システムを構築した。また,一般教室での利用を想定し,PDAから無線LAN経由で同時に接続できる台数や,携帯電話からの接続に関する検証を行い,授業における応用の可能性について検討した。具体的には,パソコンでの利用を前提としたMoodleに,携帯電話に対応するためのMoodle for Mobileをアドオンしたサーバを準備し,また,薬理学分野の問題をデータベース化して登録し,ミニテスト機能に応用できるようにした。このサーバに対し,PDAおよび携帯電話からの接続性,ミニテスト問題等の視認性,使いやすさ等を,主に学生アンケートを元に分析した。携帯電話からMoodleを使用する場合は,一般的にパケット通信を行うために費用が発生する。そこで,学生の所有する携帯電話について,パケット通信費用に関する調査も実施した。実験の結果,携帯電話からMoodle for Mobileへの接続は,URLを直接入力する方法ではミスが頻発した。しかし,QRコマドやURLを明記したメールを準備する事で,トラブルを回避することができた。携帯電話からのアクセスでは,利用できる機能や表示できる文字数に制限があり,○×問題以外は実用的ではなかった。PDAからは,Moodleの全機能を利用できた。しかし,画面の解像度が低いために,複雑な投票や問題は回答し難い事が明らかとなった。PDA単独の利用を想定した場合は、PDAの故障等,様々なトラブルを考慮する必要があるが,携帯電話は,これを補完するツールとして有用である。ただし,利用する際には,機種毎に大きく異なる画面サイズや,パケット通信に伴う費用の発生等の問題を考慮しておく必要がある。
著者
浜田 信 武本 充治 横畑 夕貴 中村 俊郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NS, ネットワークシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.524, pp.119-122, 2008-02-28

将来のユビキタス環境におけるサービスの提供を柔軟に行うことを目指してユビキタスSOAの研究開発を行っている.ユビキタスSOAでは,様々なデバイス・機能と言ったサービスの実体を抽象化した部品を,同じく抽象化されたシナリオにしたがって,組み合わせることで,目的となるサービスを実現することを目指している.その特性を生かしたサービスとして,我々は,スマートフォンにSNSサイトに蓄積された情報を,コンテキストに応じて,配信するシステムを試作し,そのフィージビリティの確認のため実証実験を行った.本稿では,本システムに関してユーザ履歴に着目したシステム動作の概要および検証について示す.
著者
今村 俊幸 村松 一弘 北端 秀行 金子 勇 山岸 信寛 長谷川 幸弘 武宮 博 平山 俊雄
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.22, pp.49-54, 2001-03-08

世界各国の計算機資源のみならず様々なネットワーク上の装置を有機的に結合し,一つの仮想計算機システムを構築する試みとしてメタコンピューティングが提案されている.日本原子力研究所では,これまで所内LANでの仮想計算機上を構築し数値アプリケーションの実験を行ってきたが,さる2000年11月アメリカ,ダラスにて開催された国際会議SC2000期間中に日独米英4ヶ国のスパコンを結合して世界規模での実験の試みに成功した.本実験では,放射線情報推定システムを題材として世界5機関の並列計算機を利用し最大計510CPUの仮想計算機の構築並びに,仮想計算機上での計算を行った.また,計算と同時に仮想計算機から大気中に放出された放射性物質の拡散過程を可視化することも実施した.本報告では,世界規模での実アプリケーションの実験の概要とその結果についてまとめる.Metacomputing, which enables us to construct a virtual computer system with some computer resources or experimental devices via internet connection, was proposed. Japan Atomic Energy Research Institute, JAERI, also continued to carry out several numerical simulations on a virtual computer system even though it was restricted in the JAERI's LAN. At SC2000, we had an opportunity to construct a worldwide virtual supercomputer with help of several supercomputer centers at Germany, US, UK and Japan, and we succeeded to execute a "Quick responsible source estimation system" with 510 processor units on 5 sites. Furthermore we demonstrated a real-time visualization for the dispersion process of radioactive particles released into atmosphere. In this report, we summarized the result of worldwide metacomputing experiment.
著者
マーク ケヴィンL. 中嶋 正夫 三宅 和子
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

学習者コーパス構築への従来のアプローチは、有用であると考えられてはいたが、教育の過程からは切り離されているものであった。この研究プロジェクトの主な成果は、パラレル学習者コーパスを構築する過程が、教育といかに結合されていくかというモデルを見せることが出来たことである。言い換えれば、この研究におけるコーパス構築技術は、同様に教育技術であると呼ぶことができるのである。この研究は、その他のプロジェクト、特に生徒の積極的な参加や創造性を生かすようなプロジェクトに、この研究モデルが適用できることを示した。学習者コーパス研究と実践的教育の系統だった結合は、CALL(Computer Assisted Language Learning)の分野の新しい活用を含め、広範囲のカリキュラム開発(教育体系開発)をもたらすことになる。加えて、学習者コーパスの構築に平行し、CALL教材が携帯電話の使用に合わせて開発された。
著者
池田 剛 井上 豊 山本 潔 幸島 明男 山下 倫央 車谷浩一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告モバイルコンピューティングとユビキタス通信(MBL) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.18, pp.187-193, 2008-02-27

環境内に設置されたセンサーノードを用いて人や環境の物理的状態を見守るシステムにおいて,無線センサーネットワークの構成手法,すなわち通信方法・通信プロトコルの設計,ハードウェアとソフトウェアの役割分担,省エネルギー設計などは重要な問題である.しかしながら,多くの既存ノードデバイスは汎用的機能を重視しているために,必ずしも実環境に適応した設計がなされていないこともある.そこで本研究では,ComPassと呼ばれる無線センサーネットワークシステムを提案する.ComPassノードデバイスはシンプルな構成の微弱無線通信モジュールであり,たとえば屋内空間での位置推定などのアプリケーションを想定し,実環境において実用に供することを目標に設計されている.すなわち,乾電池駆動も可能な低消費電力であり,かつ,シンプルな構成によって低コスト化も図っている.一般に低コストのハードウェアでは信号ビットレートの自動認識やデータ補正などは困難であるが,ComPassノードではこれらの処理の一部をソフトウェアにて実装することによりハードウェアの単純化とコストの削減を実現した.本稿ではまず無線センサーネットワークと関連研究について述べた後,ComPassノードのハードウェア概要について述べる.そして,次にComPassノード間の通信プロトコル,プロトコルスタック,無線送受信処理などの組み込みソフトウェアのアーキテクチャーを示す.最後にComPass無線センサーネットワークシステムを適用した,スマートフォン上での屋内自律型測位システムについて述べる.In development of the system that watches over humans and physical statuses using numerous wireless sensors, it is important how to design the sensor nodes and how to construct networks of the nodes. Although many studies of wireless sensor networks have been proposed before, most of the studies focus on designs of general-purpose sensor networks. Thus, facilities of the nodes are redundant and not always suitable for an environment where it requires low cost and low power consumption networks. Rethinking practical use of the sensor networks, we propose an extremely low power wireless sensor network system called ComPass. It is designed for practical application services in everyday environments, such as indoor position estimating services. A ComPass node device realizes automatic bit rate detection and data complementation by software so as to achieve simplification and cost reduction of the device. In this paper, first, we describe overview of the wireless sensor network and related works. Second, we descr be ComPass, hardware of the node and software architecture: communication protocol, protocol stack and wireless transmission processing. Last, we describe a practical indoor position estimating system as an application of the ComPass system.
著者
奥松 俊博 岡林 隆敏 永田 正美
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、高精度振動特性推定法による橋梁構造物の健全度診断とリアルタイムモニタリングの確立を目指したものである。移動体通信による可搬型動態観測・データ転送システムを用いて、実現場対応型のシステムへと発展させた。橋梁動特性や温度などの各種データの統合、高機能携帯端末による遠隔モニタリングにより、橋梁維持管理のためのユビキタス環境の構築を行なった。一方で、本研究で開発したシステムを実橋梁長期モニタリングに適用し、橋梁健全度診断を行うための基礎データの蓄積、すなわち気温等の環境変動に伴う、橋梁振動特性の年間変化を明らかにした。以下に研究実績を示す。(1)構造同定理論を用いた高精度振動特性推定法およびプログラム開発:健全度診断のための構造同定理論を用いた高精度振動特性推定法を適用し、実構造物の挙動から固有振動数の推定を行った。(2)リアルタイム計測システムの開発:小型センサを導入し、多点計測の有効性を確認した。その一方で橋梁構造物の健全度診断を行なうためには、長期モニタリングが必要となるため、現状では電源供給等に問題があることを認識した。よって本研究期間内の実橋長期モニタリングを行なう上では、従来の加速度計を適用した。(3)データ抽出等に関する検討:多機能携帯端末を利用したデータブラウジング、および実時間モニタリングシステムについて、必要情報の効率的抽出について検討および処理ソフトの開発を行なった。さらに遠隔地の管理事務所において統合化した情報を効率的に閲覧するためのモニタリングシステムを構築した。(5)実橋梁長期モニタリングの実施:実橋梁の長期遠隔振動モニタリング実験を行なった。固有振動数は季節的な温度変化により変化することを確認した。
著者
北島 信哉 原 隆浩 寺田 努 義久 智樹 西尾 章治郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告データベースシステム(DBS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.88, pp.103-108, 2008-09-14

近年,サーバが PDA やスマートフォンなどのモバイル端末にデータベースの内容を周期的に放送する放送型データベースシステムが注目されている.放送型データベースシステムにおける問合せ処理手法としては,オンデマンド型方式,クライアント型方式,協調型方式の 3 方式が考えられる.これらの方式は電力消費に差があり,また,モバイル端末では利用できる電力に限りがある.そこで本稿では,モバイル端末を用いた実機評価により消費電力の特性を明らかにする.さらに,モバイル端末の電力残量を考慮し, 3 方式の中から動的に処理方式を選択する手法を提案する.In recent years, there has been an increasing interest in a broadcast database system where the server periodically broadcasts contents of a database to mobile clients such as PDAs and smartphones. There are three query processing methods in the broadcast database system. Generally, mobile clients have limits in power consumption, i.e., battery, and each of the three methods consumes different amount of power for query processing. In this paper, we reveal the characteristics of power consumption by conducting a preliminary experiment on the implemented prototype, then propose a new query processing method which dynamically chooses a query processing method among the three query processing methods considering energy consumption.
著者
石原 宏 米津 宏雄 鳳 紘一郎 雨宮 好仁 柴田 直 岩田 穆 岡部 洋一 山川 烈
出版者
東京工業大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1995

本研究班では、2次元の空間情報に時間軸をも含めた多次元情報を、バイナリ、多値、アナログ融合アーキテクチャを用いて高速に処理するハードウェアを実現することを目的とした。特に、過去の情報に基づいて刺戟に対する対応を変化させる適応学習機能や、必要に応じて自己を再構成する自己組織化機能などの生体機能をハードウェア的にシステムに作りつけ、大枠の判断、連想のような高度の知的作業を瞬時に行う新しい知能システムを構築するための基礎を築くことに重点をおいた。強誘電体ゲートFETを用いて適応学習機能を持つパルス周波数変調型ニューロチップを作製する研究では、強誘電体としてSrBi_2T_2O_9を用いたFETとCMOS構成のシュミットトリガー回路とをSOI(絶縁物上のSi膜)基板上に集積化し、良好な学習動作を確認した。カオス信号を生成する集積回路に関しては、npnトランジスタとキャパシタとを用いる外部クロック型と、CMOSマルチバイブレーターを用いる自励発振型の両者について検討を行い、それぞれについて反復一次元写像が行われ、カオスが発生することを明らかにした。パルス幅変調型AD融合回路技術に関しては、機能イメージセンサ、セルオートマトン、パターンマッチングプロセッサを1チップに集積化し、特徴連想イメージプロセッサを開発した。CMOSデジタル技術並びにニューロンMOS(νMOS)技術を用いた検討では、過去の膨大な経験を特徴ベクトルとして記憶するVast Memoryを実現するために、高精度アナログ不揮発性メモリ技術を開発すると共に、沢山の事例の中から最類似記憶を瞬時に検索・想起するための連想エンジンチップを開発した。外網膜の機能を有する集積回路の作製に関しては、エッジ検出などの機能を持たせるために受光セルを相互に結線する場合に、最近接セル以外のセルとも結線しようとすると、配線が極めて複雑になるという問題を解決するために、受光セル以外の部分は全てMOSトランジスタのチャネル領域になっている新しい構造の光検出チップを開発した。
著者
中嶋 志保里 浜田 徹哉 上田 淳也 奥出 直人
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. HI,ヒューマンインタフェース研究会報告 (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.110, pp.65-72, 2004-09-10

若者を中心に形成される「サブカルチャー」は、その独自のスタイルが新たな文化の形として近年脚光を浴びる一方で、外部からはブラックボックスのような存在と見なされシャットアウトされている。こういった状況において、外部の人間(ビギナー)と内部の人間(エキスパート)という二項乖離の概念を打ち破って、新たなカルチャーや人との交流のニーズを満たし、アクティビティーの合間にコミュニケーションを発生させるタンジブルメディアがGismoである。ビギナーの動作によりその興味と合致したコミュニティーヘナビゲートし、携帯するリュック内の興味をエキスパートと共有することで交流を深めていく。エキスパートはそうした外部との接触から、新たなカルチャーとの出会いを果たす。またエキスパートの技の情報を搭載したチップを交換するシステムは、ビギナーの技術上達にも役立つことが期待される。
著者
山崎 和彦 笹島 学 岡田 衛
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. HI,ヒューマンインタフェース研究会報告 (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.110, pp.73-80, 2004-09-10

ユーザーエクスペリエンス・デザイン(UED)がこれからの人工物や環境をデザインする手法として期待されている。ここでは,UEDのアプローチを企業に効果的に導入するために,UEDとはどのような概念か確認するとともにUEDを考慮したデザイン手法について提案する。また,そのデザイン手法をサポートするための道具として,UEDスタジオというツールを提案し、そのツールの開発およびそのツールを活用した事例を紹介する。