著者
齋藤 昇 秋田 美代 跡部 紘三 村田 勝夫 佐藤 勝幸 今倉 康宏
出版者
鳴門教育大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究は,教員養成大学大学院の開発途上国への設置に向けての学術調査研究を行うことを目的としている。学術調査の結果,次のことがらが明らかになった。1 ラオスの教育大臣,教育省教員養成局長から,ラオスへの大学院修士課程設置について,国として歓迎するとの意向を受けた。また,ラオス教育副大臣から,具体的な設置場所について提案があった。さらに,設置について鳴門教育大学への協力要請があった。2 ラオスの小・中・高等学校の学校制度は,5-3-3年制である。ラオスの教員養成学校卒業生の就学総年数は,14年間である。ラオス教育省は,中学校を4年制に改革する計画を立てている。3 ラオスの教員養成学校(8校)理数科教員の学力及び授業実践力は,かなり乏しい。ラオスの理数科教育の質を高めるためには,教員養成学校教員の質の向上が必要である。4 ラオスの教員養成学校の施設・設備,特に実験装置,実験器具・薬品類は,皆無に近い。大学院修士課程を設置する際には,それらの設備の充実が必要である。必要な設備の例を列挙した。5 ラオスの教員養成学校教員の学位取得状況は,修士が16%で,博士が0%である。また,教員養成学校教員の100%が修士課程の設置を希望している。6 ラオスの教員養成学校及びラオス国立大学教育学部のカリキュラムを調査し,それをもとにラオスに適する大学院修士課程理数科コースのカリキュラム案及び履修方法案を作成した。7 大学院修士課程のラオスへの設置に際して,タイのコンケン大学から連携協力の申し出があった。それに基づき,連携した場合のカリキュラム素案を作成した。
著者
多田 充裕
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究では、低出力レーザー照射の生物学的効果についてラットを用いたin vivo実験系を応用して実証することを目的とし、Type 2 collagenのブースター免疫による膝関節リュウマチの病態モデルを作成して半導体レーザー照射と自由電子レーザー(FEL)照射を行い、低出力レーザー照射による炎症抑制効果について検討を行った。実験動物はLewis系ラットを用い、初回感作としてウシII型コラーゲンを含むFreund's Adjuvant Incompleteのエマルジョンを背部に皮内投与し、初回感作の7日後に同エマルジョンを尾根部より皮内投与して関節炎を発症させた。低出力レーザー照射装置はGa-Al-As半導体レーザー照射装置(松下電器産業)を、FELは日本大学量子科学研究所電子線利用研究施設に設置されているものを用いた。レーザーの出力は2.2Wで総照射エネルギー密度は5J/cm^2であり、照射時間は500秒とした。動物は1群5匹として3群にわけ、第1群は無処置群、第2群はコラーゲン感作を行い数日おきにレーザー未照射で動物を固定するだけとしたレーザー未照射群、第3群はコラーゲン感作を行い数日おきにレーザー照射したレーザー照射群とした。実験期間中は、動物の一般状態を毎日観察し、週1回体重測定および関節部分の腫脹をノギスで測定し、頚静脈より血液を採取した。その結果、いずれの低出力レーザー照射によっても、実験的に引き起こされたラット後肢の腫脹を抑制することが認められた。また、炎症性サイトカインであるIL-1βおよびIL-6の血清中の濃度を測定したところ、レーザー未照射群に比較して照射群で有意に低下していた。これらの結果より、低出力レーザー照射によって腫脹抑制効果が得られたものと示唆され、低出力レーザー照射は副作用のない非侵襲的な抗炎症効果を期待しうる治療法であることが示唆された。
著者
跡部 ヒサエ 尾形 学
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.39-46, 1977-02-25

Investigation was made on the resistance to intranasal challenge with thevirulent strain of Mycoplasma pulmonis of mice vaccinated intranasally or intramuscularlywith the formalin-killed organisms. The protective effect of vaccination was evaluated bycomparing the clinical appearance, establishment of organisms in the respiratory tract,and development of pneumonia between these mice and those unvaccinated and servingas controls. A significant protection was observed after either intranasal or intramuscularvaccination. No relationship was shown between such protective effect and serum anti-body titer. Intranasal vaccination could inhibit the establishment of organisms in therespiratory tract without causing a remarkable increase in antibody titer. In contrast, theprevention of pneumonia was observed after intramuscular vaccination resulting in producLion of high antibody Liter. These findings suggested that the mechanisms to inhibit theestablishment of organisms in the respiratory epithelium might be separate from thoseto prevent the occurrence of pneumonia.
著者
金子 邦彦
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
1998

細胞内部の化学反応ネットワーク、化学物質のやりとりによる細胞間相互作用、細胞内での反応の進行に伴う体積増加による分裂、の3つの機構だけをとりいれた構成的モデルの数値実験と理論研究を行なった。このような簡単なモデルでも細胞分化さらには幹細胞システムががあらわれることを既に我々は見出しているが、それを進めて今年度は以下を調べた。(1) 安定性:我々のモデルは(a)細胞内の化学成分のゆらぎにもかかわらず同じ細胞タイプがあらわれる(b)あるタイプの細胞を取り除くなどの大規摸な乱れに対しても、分化の比率の自発的制御により、もとの細胞分布が再現する、という2種類の安定性を有することを明らかにした。(a)については、そのために必要な分子の数などを調べ(b)についてはそのためのダイナミクスの性質を調べた。(2) 細胞が2次元空間の上で増殖していく場合のモデルを調べ、それによって幹細抱から派生したいくつかの細胞タイプが、同心円状、縞模様などのパターンをつくることを示した。これらのパターン形成過程は安定であり、たとえば一部をとりのぞくと再生する能力をもつ。このパターン形成は位置情報の生成過程としてとらえられ、特に位置情報と細胞内部のダイナミクスの間の相互フィードバックによって安定性が生まれることを示した。また細胞間の接着の違いを導入することにより、幹細胞→分化した細胞集団のコロニー→幹細胞の放出による次世代の細胞集団の誕生→残った細胞集団の増殖の停止、という多細胞生物のサイクルが簡単に生じることを明らかにした。
著者
岩田 浩太郎 イワタ コウタロウ
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.103, pp.57-77, 2003-03

本稿では、近世荷主の経営帳簿に記載された「着値」の概念に関する検討を手がかりに、遠隔地間取引をおこなう荷主の価格計算・損益管理の方式について実証的な考察をおこなった。従来の研究では、「着値」の概念やその市場取引において持つ機能について掘り下げた検討がなされてこなかった。紅花生産地帯である羽州村山郡の商人や豪農、京都紅花屋の経営文書の分析から、以下の諸点をあきらかにした。(1)着値とは、商品がある地点に到着する迄にかかった総経費を実際額面ないし単位あたり原価で示すもので、流通過程の諸段階において元値を厳密に示す概念であった。(2)着値は、市場における実際の売買交渉においては荷主にとっての損益ラインを示す単位あたり値段として機能した。(3)荷主は着陸計算を基礎にそれに一定の利潤を上乗せした差値で市場に対する価格要求をおこない、仕切後は商品個々の着値と手取税金を比較し損益計算を実施していた。(4)経営を進展させていた豪農の場合、紅花の銘柄別・産地別あるいは出荷ルート別に損益計算をおこない、さらには中央-地方(産地)の市場相場変動をふまえながら利益予測をおこない出荷形態の選択をおこなうなどの損益管理を展開していた。(5)着値による原価表示・損益計算は村山郡のみならず全国の紅花荷主に共通した方式であった。また、この方式は村山郡の商人や豪農が実施した「のこぎり商い」の帰り荷についても採用されていたことが確認でき、遠隔地間取引における荷主の原価積算および損益記録の方法として広く通用していたことを指摘した。最後に本稿でおこなった考察は、(A)世直し状況論において論点とされた豪農経営発展をめぐる「幕藩制的市場関係の規定性」の実態的な吟味、(B)幕藩制的市場における価格形成のヘゲモニーの実態的な検討、などの課題のための実証的な前提であり、方法的な視点であることを指摘した。
著者
杉山 卓史
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

本年度はまず、研究第一年次(平成16年度)に得られた成果である<『カリゴネー』におけるヘルダーのカント批判の意義は、カントの『判断力批判』における「超越論的」趣味論と人間学講義における「経験的」ないし「心理学的」趣味論との比較検討を促す点に存しており、趣味判断が主観的普遍性を要求するというカントの主張は、この比較検討によって捉え直されるべきである>という見解を承け、この比較検討を実践した。その結果、経験的・心理学的趣味論は人々が考えたことや感じたことを実際に伝達している「社会」という経験的な要素からトップダウン式に、そしてそれゆえ共通感覚概念によらずに趣味を規定する「社会的存在としての人間の陶冶」を意図するものであることが明らかになり、カント美学受容史に新たな理解の基軸をもたらしえた。次いで、研究第二年次に行ったヘルダーの共通感覚論の研究を、視点を変えてさらに継続した。具体的には、その音楽論におけるクラヴィーアのアナロジーに即して「五官」に「共通」の「感覚」と「人々」に「共通」の「感覚」との連関を検討した。クラヴィーアは一方でその内部に調和することもあれば不調和に終わることもあるさまざまな音を生み出す点において人間の快および不快の感情を説明し、他方、自ら音を発するのみならず外からの音に共鳴して新たな音を発しもする点において人間の共感を説明してくれる。もちろん、このアナロジーはヘルダー独自のものではなく、同時代のフランス唯物論者たちも好んで用いたものではあるが、唯物論者でないヘルダーにとってこのアナロジーは、彼がライプニッツのモナドロジーをハラーの生理学を参照しつつ批判的に摂取して形成した「有機的モナドロジー」とでも呼ぶべき独自の自然哲学の表現であった。その意味で、二種の共通感覚の連関の問題は、ヘルダーの思想の中心に位置している。
著者
平野 恵
出版者
文京ふるさと歴史館
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

本研究は、近世後期から近代初期までの約100年間を対象として、日本における温室の歴史的意義を解明することを目標として据え、前段階として温室にかかわる史料を、近世的な「窖」と、近代的な「ガラス温室」の二つに分けて収集した。「窖」に関しては、本草学者また植木屋がその網羅的著作、植物図鑑・名鑑から、窖をどのように記録したかを調査した。小野蘭山『重訂本草綱目啓蒙』ほか五種の著作のなかでは、全体で数えても57例、重複分を除くと44種の植物に関して窖の記載があり、記述の傾向には異国産植物に対して詳しい記載があった。また、窖の一部を形成するガラス障子の史料、崖地や地下を掘って作った窖の史料をも提示し、これらにより、19世紀前半は土や岩を掘る古い形の窖から、新しい形式の窖を工夫して製作しようとする段階であることを明らかにした。以上は、2007年12月9日開催)で口頭発表を行い、論文「本草学者による和風温室『窖』の記録」(『洋学』16号、2008年)としても発表した。一方、19世紀後半ガラス温室の史料は、内国博や、酒井忠興や大隈重信ら華族らによって広められ一般に公開されたことが判明した。近代における園芸は、果樹・疏菜に重点を置き、花卉栽培は趣味人の道楽という側面が強くなっていった。ただし、華族の園芸趣味は、「奇品」の収集公開という点では、近世後期における旗本を中心とする園芸愛好家の事例と非常に酷似していた。このことは、近世から近代への連続性として今後の重要な課題として研究を続けたい。以上の一部は、2007年度長崎大学における洋学史学会秋季大会(2007年11月11日開催)シンポジウムC「本草から植物学へ」において「十九世紀における植物概究と商業園芸」として口頭発表した(発表要旨集『平成19年度日本医史学会秋季大会・平成19年度日本薬史学会年会・2007年度洋学史学会秋季大会合同大会プログラム・抄録集』に所収)。
著者
京谷 啓徳
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、ルネサンス期の宮廷祝祭の構成要素たる美術、すなわち山車行列とそれを飾ったタブロー・ヴィヴァン(活人画)、沿道に設置された各種アッパラート(仮設建造物、仮設仕掛装置、既存の建築物の仮設装飾)、そして祝祭を記録するメディアであったフェスティヴァル・ブック(宮廷や市当局等の祝祭主催者が当日もしくは後日に発行する公式記録)等に関して、美術史の側からの包括的な研究が従来行われてこなかった現状に鑑み、研究の基本的な枠組みの構築を試みた。
著者
新井 健司 石井 久夫 伊藤 孝 内田 克 遠藤輝 岡部孝次 熊井 久雄 小菅 範昭 近藤 洋一 郷原 保真 酒井 潤一 斎藤 義則 塩野 敏昭 島田 安太郎 下野 正博 隅田 耕治 角谷 邦明 関口 尚志 田中 俊廣 趙 哲済 中西 一裕 中島 豊志 中村 由克 林田 守生 松本 俊幸 三谷 豊 柳沢 文孝 山本 裕之 吉野 博厚
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.14, pp.93-102, 1977-02-21
被引用文献数
11

A wide-spread lake assumed to be larger than the recent Matsumoto Basin had existed in Early Pleistocene, and the Enrei Formation and its equivalent formations had been deposited in the lake. An extensively even erosion surface formed on the sediments in the latest Early Pleistocene is called the Ohmine geomorphologic surface. After the formation of the Ohmine surface, the recent mountainous areas such as the Northern Japan Alps, Mt. Hachibuse, Mt. Utsukushigahara and so on had been upheaved, while the Matsumoto Basin area had been depressed and the Nashinoki Gravel Formation, the upper Middle Pleistocene, had been deposited. The base of the Enrei Formation is 1,800 m above sea level in Mt. Hachibuse, while 700 m above sea level in the southern part of the Basin. The amount of upheaval of the mountainous areas can be estimated to be more than 1,000 m. The Matsumoto Basin area had been depressed again in the middle part of the Upper Pleistocene (about 40,000 years B. P.) and the Hata Gravel Formation had been deposited. The amount of depression may be estimated to be about 150 m in the eastern periphery of the middle part of the Basin.
著者
小山 雄佑 越桐 國雄
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. V, 教科教育 (ISSN:03893480)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.25-37, 2006-09-29
被引用文献数
1

平成10年の学習指導要領の改定では,学校週5日制や総合的な学習の時間が導入された。これに伴い小中学校では教科内容が従来に比べて3割程度削減され,これが児童生徒の学力低下をもたらしているという議論がある。教育内容の削減は,教科書の記述量にも反映されるが,一方で,教科書の表現自体が変化しているとの指摘がある。そこで,小学校理科教科書の体様のうち特に,図,表,絵,写真などの図画像表現がどのように変化してきたかを,昭和33年から平成10年までの40年間5期にわたる学習指導要領に対応した教科書について調査した。これにより,図画像表現が占める割合が増加してきたことが定量的に確認された。また,理科における学年別,領域別の図画像表現の違いやその変遷が示される。
著者
松田 征士
出版者
新潮社
雑誌
新潮45
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.166-176, 1998-02