著者
栗原 伸一 霜浦 森平
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.47-57, 2005-03-31
被引用文献数
1

少子高齢化が進む一方,長引く景気低迷から新たな税源確保も難しい我が国において,財政をいかに効率良く支出するかという「資源の最適分配」はもっとも重要な問題の一つである.そこで本研究は,地域住民を対象とした意識調査を行い,財政構造に関する意識や要因を都市・農村などの地域間比較を中心に整理・考察した.その結果,以下のようなことが明らかになった.(1) 現在行われている公共事業や社会保障に対して,地域住民の大半が「(やや)不満」に感じていた.(2) 公共事業費については,効率化による予算削減を望む者が多かったが,地方部では集落排水などの農村整備に対する選好も比較的高かった.(3) 社会保障費に関しては,農村を筆頭に多くの者が「増額」を望んでいたが,赤字公債発行によるこれまでの景気刺激型財政支出に対する嫌気と相まって,相対句なウェイトは小さかった.また老後等に備えての貯蓄額は平均5万円/月程度であった.(4) 予算支出の総額を抑えた再建型財政に対する選好が高かった.こうした分析の結果は最近の世論とも整合的であり,また都市農村で比較した場合,農村部では公共投資に関して寛大であり,社会保障費の希望増額が都市部よりも若干大きいことが分かった.こうした地域住民の選好を土台にして,財政決定を計画すれば納税者の効用度も向上し,納税者のコンセンサス獲得へとつながると考えられる.
著者
金子 邦彦
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.289-295, 1995-04-05
被引用文献数
2

我々が,例えば,生物界の現象を眺めていくと,進化にしても,発生にしても,なんらかの階層性があるように感じられる.なぜだろうか?こういった階層性を作り出していくダイナミクスは何なのであろうか?それとも,われわれの脳の情報処理の特性として,階層的にとらえようとしてしまう傾向があるだけなのだろうか?1984年,ポスドクでロスアラモス研究所に行った時,なにをやりたい?って聞かれてこう答えたことがある.階層性の理由は,たとえば効率という点で考えてみると,いくつか見出される.実際,「しょっちゅう電話で仕事を邪魔される時計屋さんの時計の作り方」とか「不正確な動作をする素子で,いかに信用できる情報処理系をつくるか」などといった例で階層的構成の有利さは議論されている.前者は,モジュール構造を作った方が電話で邪魔されてもそのモジュールだけやりなおせばよいので全部最初からやりなおさずにすむ,後者は並列入れ子の素子でエラーを除去するといったものである.また,モジュール構造を含んだ進化過程は実際にも見出されているし,また最適化を行う上で有利であることがシミュレーションによっても示されている.しかし,一方で,そういう階層的な構造がどうやってできたかについては,上の議論は何も答えてくれない.「前もって,遺伝子にかきこまれているから」とかいった,ある意味で「逃げ」の解答をしたくないのであれば,たとえば,全く同一のルールで発展するような要素の集団が分化していって階層的な構造をつくりだすこと(さらにはそれがいかに動的に変化していくか)を見ていかねばならない.さて冒頭の問に戻る.4年後の88年,再び,ロスアラモスに滞在することになった時,あれはどうなった?と問われた.その段階でも,それに対する満足な答えを持っていなかったし,実際は,今も持っているかはそう確かではない.ただ,たまたま,この滞在中に解答への一つの方向を見出せた(とも考えられる)ので,その後の発展を含めて解説をしていきたい.
著者
門田暁人 佐藤慎一 神谷 年洋 松本 健一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.44, no.8, pp.2178-2188, 2003-08-15
被引用文献数
19

ソフトウェアに含まれるコードクローン(重複するコード列)は,ソフトウェアの構造を複雑にし,ソフトウェア品質に悪影響を与えるといわれている.しかし,コードクローンとソフトウェア品質の関係はこれまで定量的に明らかにされていない.本論文では,20年以上前に開発され,拡張COBOL言語で記述されたある大規模なレガシーソフトウェアを題材とし,代表的なソフトウェア品質である信頼性・保守性とコードクローンとの関係を定量的に分析した.信頼性の尺度として保守工程で発見された「フォールト数/LOC(Lines of Code)」を用い,保守性の尺度として「モジュールの改版数」を用いた.分析の結果,コードクローンを含むモジュール(clone-includedモジュール)は含まないモジュール(non-cloneモジュール)よりも信頼性(平均値)が約40%高いが,200行を超える大きさのコードクローンを含むモジュールは逆に信頼性が低いことが分かった.また,clone-includedモジュールはnon-cloneモジュールよりも改版数(平均値)が約40%大きく(すなわち,改版のためにより多くの保守コストが費やされてきた),さらに,モジュールに含まれるコードクローンのサイズが大きいほど改版数がより大きい傾向にあることが分かった.Existing researches suggest that the code clone (duplicated code section) is one of the factors that degrades the design and structure of software and lowers the various quality attributes. However, the influence of code clones on software quality has not been quantitatively clarified yet. In this paper, we quantitatively analyzed the relation between code clones and the software reliability and maintainability of twenty years old software, which is written in an extended COBOL language. We used the number of faults per LOC (Lines of Code) as a reliability metric, and the revision number of modules as a maintainability metric. As a result, we found that modules having code clones (clone-included modules) are 40{%} more reliable than modules having no code clone (non-clone modules) on average. Nevertheless, the modules having very large code clones (more than 200 SLOC) are less reliable than non-clone modules. We also found that clone-included modules are 40{%} less maintainable (having greater revision number on average) than non-clone modules; and, modules having larger code clone are less maintainable than modules having smaller code clone.
著者
鈴木 弘孝 小島 隆矢 嶋田 俊平 野島 義照 田代 順孝
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.247-259, 2005-11-30
被引用文献数
7 9

本研究は, 近年ヒートアイランド対策や地球温暖化防止対策への対応等環境負荷の少ない都市環境を形成していくための有力な手法として着目されている壁面緑化について, 現在屋上の緑化や開発利用に取り組んでいる企業とその技術担当者へのアンケート調査結果に基づき, 壁面緑化の市場性, 普及の可能性等について民間企業と技術担当者の意識を把握し, 技術的課題への認識を整理することにより, 今後都市部において壁面緑化を推進していく上での技術開発の方向, 研究開発分野において重点的に取り組むべき対象と範囲を検討するための基礎的資料を得ることを目的としている。調査の結果, 民間企業等の意識として壁面緑化の今後の市場性拡大への期待が高いこと, 技術担当者の意識として壁面緑化に関する技術開発を推進していく上で, 緑化による温熱環境改善効果の定量化, 建設コストの縮減, 維持管理の簡素・効率化等を課題と認識していること, また壁面緑化の6種類のタイプについて対応分析を行った結果, 適用場所や普及可能性に認識の差異のあることが明らかとなった。
著者
Tao W.-K. Lang S. Simpson J. Olson W.S. Johnson D. Ferrier B. Kummerow C. Adler R.
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.78, no.4, pp.333-355, 2000-08-25
被引用文献数
4

TOGA COARE集中観測中の3つの対流活動の活発な期間(1992年12月10-17日、1992年12月19-27日、1993年2月9-13日)の潜熱加熱鉛直分布をGoddard Cumulus Ensemble (GCE) Modelの2次元バージョンを用いて調査するとともに、Goddard Convective and Stratiform Heating (CSH)アルゴリズムを用いて推定した。CHSアルゴリズムに入力した降雨に関するデータソースはSSM/I、観測船レーダ、GCEモデルである。6時間ごとのゾンデデータを用いて診断的に求めた潜熱加熱鉛直分布を検証データとして用いた。GCEモデルを用いて計算した降雨強度及び潜熱加熱鉛直分布はゾンデ観測から見積もられた値と良い一致を示した。典型的な対流性及び層状性加熱構造(形態)はGCEモデルで良く再現されていた。レーダで観測した降雨強度は12月の両期間についてはGCEモデルやSSM/Iから見積もった値よりも小さくなった。SSM/Iから求めた降雨強度は12月19-27日と2月9-13日についてはGCEモデルより大きな値となったが、12月10-17日についてはGCEモデルと良い一致を示した。GCEモデルで見積もった層状性降水の割合は12月19-27日が50%、12月11-17日が42%、2月9-13日が56%であった。これらの結果は大規模場の解析と矛盾しない値であった。精度の良い潜熱加熱のリトリーバルのためには層状性降水の割合の正確な見積もりが必要である。層状性降水の割合が高く(低く)なると最大加熱率がより高(低)高度に出現する。GCEモデルは三つの期間について常にレーダよりも層状性降水の割合を10-20%高く計算した。SSM/Iから求めた層状性降水の割合は12月19-27日が38%、12月11-17日が48%、2月9-13日が41%であった。GCEモデルまたはレーダから見積もった降水強度と層状性降水の割合を用いてCHSアルゴリズムで推定した潜熱加熱の鉛直分布の時間変化は、三つの期間について診断的に計算した結果と良い一致を示した。しかし、レーダから見積もられた降雨強度や層状性降水の割合が小さめであったために、診断的に計算された結果と比べると潜熱加熱量を減少評価し、最大潜熱加熱高度を低く目に推定した。SSM/Iの降雨に関する情報は時間解像度が低いために、ここの対流活動を推定することはできない。しかし本研究は対流活動に関するSSM/Iによる良い降雨強度のリトリーバルは良い潜熱加熱のリトリーバルにつながることを示唆した。感度実験の結果は、SSM/Iから求めた12月19-27日の時間平均した層状性降水の割合は過少評価されるとを示した。しかし、12月10-17日については、SSM/Iから求めた時間平均した層状性降水の割合はゾンデ観測から得られた結果とそれほど矛盾しない値であった。観測結果にバイアスがなければ、長期間の加熱量を求めるリトリーバルはより精度の高いものとなると思われる。CHSのlook-up tableから適切な潜熱加熱鉛直分布を選択することが重要である。この問題を取り扱った感度実験も実施した。
著者
片瀬 泰幸 三輪 昌也 半田 志郎 大下 眞二郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IE, 画像工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.512, pp.37-42, 1999-12-16

ディジタル無線通信において,効率のよい電力増幅を考えた場合,増幅器の非線形領域までも利用することになる.その時,AM-AM,AM-PM歪みにより符号誤り率は劣化する.本稿では,振幅位相変調方式について,非線形増幅器が用いられた場合のスペクトルの拡大,符号間干渉,符号誤り率について考察している.白色ガウス雑音通信路およびフェージング通信路に対して,多シンボル遅延検波および同期検波が用いられた場合のスターQAMの符号誤り率を検討し,多シンボル遅延検波の方が,同期検波よりも良好な誤り率特性が得られることを確認した.
著者
島田 昌彦 成田 弘成
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学研究紀要 (ISSN:13447459)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.A1-A17, 2002-03-31

サミュエル・P・ハンチントン著『文明の衝突』で予想するとおり、二一世紀は、世界の主要な八つの文明が抗争する時代になりつつある。世界が悲劇的な状況に陥ることを防ぐためにも、その中の一つとノミネートされている日本文明のこれからの義務責務とは何か明らかにしなくてはならない。「日本文明」の追究を最大の課題とする「日本学研究」はその組織的な研究体制を確立するため、国家の営為として「日本学研究大学院大学」を創設、併せて、「日本学研究国際学術シンポジウム」を開催、世界の英智を結集、地球の危機の克服に各国文明を超えて献身しなくてはならない。
著者
泉 朋子 泉 泰介 小野 廣隆 和田 幸一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告アルゴリズム(AL) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.18, pp.49-56, 2009-02-26

証明書分散問題(Minimum Certificate Dispersal Problem, MCD)とは,グラフGと要求集合Rが与えられたときに,Rに含まれるすべての要求を満たすよう各ノードにGの辺を割り当て,各ノードに割り当てられる辺の総数を最小化する問題である.要求とはグラフG上の異なる2つのノードの順序対で表され,要求(u, v)を満たすにはノードu, vに割り当てる辺の和集合にGにおけるuからvへの経路が含まれる必要がある.MCDは与えられるグラフが強連結の場合においてもNP-困難であることが既に示されている.本研究では,MCDの近似可能性について議論する.まず,強連結グラフにおいてMCDの近似率の下界がOmega(log n)(nはGのノード数)であることを示し,さらに任意のグラフにおけるMCDに対する多項式時間O(log n)-近似アルゴリズムが構成可能であることを示す.また,既存研究において多項式時間2-近似アルゴリズムであると評価されていたアルゴリズムが,無向グラフを入力とするMCDに対しては多項式時間3/2-近似アルゴリズムであることを示す.Assume that G is a graph and that R is a set of requests which is represented by a reachable ordered pair of nodes in G. The problem discussed in this paper requires us to assign edges to each node such that all requests in R are satisfied and the total number of edges all nodes have is minimized for a given G and R. To satisfy a request (u, v), a set of assigned edges to u and v must contain a path from u to v in G. This problem is called the Minimum Certificate Dispersal problem (MCD) and is NP-hard even if the input graph is restricted to a strongly connected one. In this paper, we consider approximability of MCD. We clarify an optimal approximability / inapproximability bound in terms of order: we prove the approximation ratio of MCD for strongly connected graphs is Omega (log n) and MCD has a polynomial time approximation algorithm whose factor is O(log n) (n is the number of nodes in G). In addition, we prove that when a given graph is restricted to an undirected graph, the MCD algorithm proposed in [11] guarantees 3/2 approximation ratio.
著者
梶原 栄二 重田 暁子 堀内 浩幸 松田 治男 古澤 修一
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.607-614, 2003-05-25
被引用文献数
21

鶏ではファブリキウス嚢(BF)がB細胞の分化に重要な組織であるが,一部の哺乳動物では回腸バイエル氏板(PP)などのgut-associated lymphoid tissue(GALT)が嚢相当組織であると考えられている.鶏GALTにはPPも存在するし,また盲腸扁桃(CT)などの存在も知られている.しかしながら,これらの組織とBF濾胞でのB細胞発生の関係は検討されていない.そこで本研究では胚発生におけるPP,CTとBF濾胞形成を免疫組織化学的染色により比較した.その結果,BFでは13日胚でMHC class II陽性細胞のリンパ濾胞への移入開始と少数のB細胞の集族が,15日胚以降でB細胞のさらなる濾胞移入が観察されたが,同じ13日胚でMHC class II陽性細胞の集族,Bu-1陽性細胞およびIgM陽性細胞の出現(PPとCTの原基)が腸管で初めて観察された.15日胚ではMHC class II陽性細胞,Bu-1陽性細胞およびIgM陽性細胞の数も増加した.これらの胚発生時期のPPの出現は,メッケル憩室付近と盲腸・回腸分岐部付近の2箇所に限定されていた.さらに,BF濾胞形成を完全に阻害させた場合でもPPとCTの原基が観察された.本研究により,鶏のPPやCTの形成はBF濾胞形成や外来抗原の刺激に依存することなく,胚発生の段階でBF濾胞形成と平行して行われている事が明らかになった.
著者
国松 豊 市原 俊治
出版者
京都府立大学
雑誌
京都府立大學學術報告. 農學 (ISSN:00757373)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.42-49, 1967-10-15

冷蔵中および冷蔵卵蔵出し後における卵質の変化を調査する目的で本試験を行なった。シェーバー種産卵鶏の産んだ産卵当日の鶏卵を5ケ月間室温1℃温度70%の冷蔵庫に冷蔵し15日毎に卵質変化を調査した。気室の深さおよび直径, 卵白高そしてHaugh unitは最初の1ヶ月間急激に変化するが, その後の変化は比較的ゆるやかであった。卵重及び比重の変化は冷蔵期間中を通じて直線的に減少し, 冷蔵5ヶ月間の卵重減少率は, 3.2%であった。しかしながら卵黄高, 卵黄直径及び卵黄係数は殆んど変化しなかった。1・2・3・4および5ヶ月冷蔵した冷蔵卵を冷蔵庫より蔵出して後, 30℃の恒温器内に置き1日目より22日目まで3日毎に蔵出し後の卵質変化を調査した。対照区として新鮮卵も恒温器内に置き同様に調査した。冷蔵卵の比重, 卵白高, Haugh unitは, 冷蔵中に変化しているため蔵出し後における変化は, むしろ新鮮卵の方が顕著であり, 10日以後の変化は冷蔵卵も新鮮卵も殆んど同じであった。新鮮卵と冷蔵卵の間の卵黄高・卵黄直径及び卵黄係数の変化は殆んど同じ傾向であった。冷蔵卵は蔵出し後早いもので7日目より, 全体的には13日目より腐敗卵が見られた。
著者
岡山 高秀 今井 利憲 伊藤 和彦
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学農学部研究報告 (ISSN:04522370)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.157-161, 1986

食肉の鮮度を保持させる目的で, 牛肉ロース部を(1) 70%エチルアルコール(Et. al.), (2) 3% L-アスコルビン酸(AsA)を含む70% Et. al., (3) 0.08% DL-α-トコフェロール(Toc)を含む70% Et. al.及び(4) 3% AsAと0.08% Tocを含む70% Et. al.の各溶液に20秒間浸漬した後, 10秒間付着溶液を滴下させた。なお, 無処理試料を対照とした。各試料は400ml容プラスチック容器内に静置し, 4℃の暗所に保存した。3,6,9及び13日後に各試料のMetMb生成量, TBA number, pH値, 揮発性塩基態窒素(VBN)量, 生菌数及び残存AsA量を測定した。その結果, MetMb生成量は(1)試料と対照は7日目に20%に達したが, (2)と(4)試料は保存期間中15%以下を維持した。TBA numberも(1)試料と対照は保存中直線的に上昇した。一方, AsAを含む(2)と(4)試料は保存期間中ほとんどTBAnumberは増加しなかった。VBN量は対照を除くすべての試料は保存期間中比較的低い値を示した。生菌数(Log/g)について対照は9日目に6.7に達したが, 他の試料は13日後も6.4∿6.8の範囲であった。(2)と(4)試料中の総及び還元型AsA量は保存期間中減少傾向を示したが, 13日後においても還元型AsAのわずかな存在が認められた。以上の検討からAsAを含むEt. al.への浸漬処理は生肉の保存性をかなり延長させることが示唆された。
著者
森 宏一
出版者
北陸作物・育種学会
雑誌
北陸作物学会報
巻号頁・発行日
vol.10, pp.10-12, 1976

1.供試外国稲の出穂期間の変異は13日から20日間も要する品種まであった。2.出穂期を中心に50%の個体が出穂する日数はほとんど3日以内であった。3.比較的短かい品種ほど出穂期間は短かかった。4.出穂期間の長さが品種内の各個体の遺伝構成差によるのか, 環境変異によるのかは判明しなかった。
著者
大浜 和憲 土田 敬 矢崎 潮 田中 松平 長尾 信 亀水 忠 川口 雅彦 俵矢 香苗 清水 博志
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.776-783, 1996
被引用文献数
4

胆道穿孔を合併した先天性胆道拡張症4例を報告した.性別は男児1例,女児3例で,年齢は13日から4歳であった.形態は嚢腫状拡張3例,紡錘状拡張1例であった.主脈は腹痛,発熱と嘔吐が3例に,腹部膨満,黄疸と意識障害が1例に認められた.全例とも炎症所見はそれほど強くなかった.直接ビリルビンの上昇が1例に,高アミラーゼ血症が2例に認められた.発症から手術までの期間は2日から13日であった.初期治療として腹腔単ドレナージ術が2例に,嚢腫十二指腸吻合術と外胆瘻造設術が各1例に行われた.全例,1ヵ月から5年後に根治術を受けて生存している.自験例4例を含む本邦報告例93例の検討から,症状は嘔吐が最も多く,腹部膨満,腹痛,発熱がそれに次ぐ.小児の急性腹症で黄疸や肝胆道系酵素・膵酵素の上昇などがあれば,腹部超音波検査を必ず行い,胆管の拡張と大量の腹水貯留があれば胆道拡張症に胆道穿孔を合併したものとほぼ診断できる. 初期治療は外胆道瘻造設術が妥当である.先天性胆道拡張症で胆道穿孔をおこす原因は胆道内圧の上昇と膵液の逆流による胆管壁の荒廃の2つが考えられるが,嚢腫状拡張よりも紡錘状拡張の方が穿孔を起こしやすいことから,後者の方がより大きな因子といえる.また穿孔をおこす年齢は4歳までがほとんどで,胆道壁の未熟性も穿孔に関与していると考えられる.
著者
岡山 高秀
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学農学部研究報告 (ISSN:04522370)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.333-337, 1984

小売用牛肉のガス充填包装に最も適したガス組成を見いだす目的で, 牛肉もも部を(1) 20%CO_2+40%O_2+40%N_2,(2) 20%CO_2+80%N_2,(3) 80%CO_2+20%O_2さらに(4)真空及び(5)空気(対照)環境下に4℃で13日間保存を行い, ガス組成, MetMb生成量, TBA値及びpHの変化を測定した。その結果, 各ガス充填試料は保存13日後も食用に適したが, 対照は9日目, 真空包装試料は13日後には明確な腐敗現象を示した。ガス組成(1)と(2)は保存期間中各ガス組成の変化は±2%以内に保持された。しかし, ガス組成(3)には6.6%N_2の混入が認められた。MetMb生成量はガス組成(1)試料は保存期間中低く13日後においても約20%であった。ガス組成(2)は保存9日目までMetMbは直線的に増加し約75%となったが, 13日後には40%以下へと減少した。ガス組成(3)試料は3日目までほとんどMetMbは生成せず, その後増加し13日後には約60%に達した。TBA値は対照及びO_2を含む試料(1)と(3)で比較的高く, 真空及びガス組成(2)試料において低い値が得られた。pHはすべての試料とも保存3日目には低下し, その後対照と真空包装試料は上昇したが, ガス組成(1)の13日後を除いて各ガス組成下の試料は保存期間中低いpHを維持した。以上の結果から, 牛肉のガス充填包装に関して6日以内の保存には真空包装で十分であり, 13日間以上の保存の場合は20%CO_2+80%N_2が有効であることが示唆された。
著者
馬場 暁 山崎 亮輔 大平 泰生 新保 一成 加藤 景三 金子 双男 サマンタ サチャ ロックリン ジェイソン
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EID, 電子ディスプレイ (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.468, pp.7-11, 2009-02-27

グレーティングカップリング表面プラズモン共鳴法は、金属で覆われたグレーティング基板上に入射した光の波数にグレーティングベクトルが足し合わさることによりプラズモンの波数と一致してSPを共鳴励起する方法であり、プリズムを必要としないことなどから、実用的なセンサーへの応用が検討されてきている。本研究では、金属グレーティング上での白色光照射多重励起型表面プラズモン共鳴現象を利用したセンサーへの応用を行ったので報告する。また、可視域で大きなエレクトロクロミズムを持つPEDOT-PSS/テルピリジン鉄錯体ポリマーを用いて、センシング感度の向上を試みた。
著者
飛佐 学 田尻 一裕 村上 研二 下條 雅敬 増田 泰久
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.149-157, 2003-06-15

ファジービーンの刈取り語の再生に関与する諸要因と再生機構との関係を明らかにするため,生育温度及び刈取り高さが再生過程における乾物生産,窒素固定能,貯蔵養分などの推移に及ぼす影響について検討した。野外で1/10,000aポットに栽培したファジービーンを播種後28日目に,昼夜温一定の20℃, 25℃および30℃の環境調節実験室に入れ,播種後47日目に地際から7.5cmまたは15cmの高さで刈取った。刈取り後全ての処理区で乾物重の一時的な減少がみられ,根の減少は13日目まで続いたが,その後増加した。刈取り後28日目における植物体乾物重は15cm刈区が7.5cm刈区より1%水準で有意に高く,15 cm刈区においては25℃および30℃区は20℃区より5%水準で有意に高かった。これは葉面積比が高かったことから,刈取り後の葉面積の展開速度の差によるものであった。全非構造性炭水化物(TNC)含有量,根粒重,窒素固定能についても刈取り直後に減少し,特に,7.5cm刈の全温度区と15cm刈30℃区で減少が著しかった。このことから,ファジービーンは高刈りをすれば刈取り後の貯蔵養分量が多く,再生速度も高く,また,生育適温とされる25-30℃では,貯蔵養分の消費は多いが,その後の再生は速いことが示された。
著者
印出 秀二
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.261-269, 1978-03-01

初期流産,黄体機能不全,排卵誘発例等の内分泌動態を分析するための正常対照を得るべく,正常月経周期16例,正常初期妊娠14例につき,排卵前より可及的経日的に血中LH (HCG), FSH, P, E_2, HCG (RIA法,RRA法,及びβ-subunitのRIA法)値を測定し,正常域(M±SD)を設定した. 1) 正常月経周期においては,LHは排卵期に鋭いLHピークを示し,卵胞期では後半の方が前半よりも高く,黄体期では前半の方が後半よりも高値を示し,LHピークを中心とする山型のカーブを示した.卵胞期の平均は黄体期の平均とほぼ同等の値であつた. FSHはLHピークに一致して小さなピークをつくり,卵胞期の方が黄体期より高値を示した.PはLHピーク後,増加し始め,+6日〜+9日に6ng/ml〜18ng/mlの正常域を待つピークを示し,この間5ng/ml以下の値を示す例は存在しなかつた.E_2は,-5日より増加し始め,-1日にピークを示し,次いで0日が高く,+1日に極小,+6〜+9日にかけ再び小さなピークを形づくる. 2) 初期妊娠においては,LH (HCG)は+11日に正常月経周期の値を有意に越し,+20日にはLHピークを有意に越し,+21日以降急増する.FSHはLHと一致した小さなピーク後,妊娠が成立しても卵胞期より低値の黄体期レベルを持続する.Pは+12日より正常月経周期の値を有意に越し,以後漸増して+42日頃,一時低下し,その後再び増加する.E_2は+13日より正常月経周期の値を有意に越し,+28日より急増する.HCGのβ-subunitは,早いもので+9日より検出され,RIA, RRA値ともに+49日頃ピークを示す.
著者
林 勇気
出版者
宝塚造形芸術大学
雑誌
Artes : bulletin of Takarazuka University of Art and Design : 宝塚造形芸術大学紀要 (ISSN:09147543)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.117-128, 2007-03-31

身近な人々や景色をコマ撮りし、それらを1フレームずつ切り抜いていき、つなぎ合わせることで、コンピュータ・グラフィックスのように見えるが、コンピュータ・グラフィックスではない、現実世界とゲーム画面のスキマに存在するような世界の映像作品を制作している。今回、制作した『LAST BOY LAST GIRL』という映像作品について、その作品の考察と、展覧会や映画祭での作品発表についての報告である。