著者
矢田部 達郎
出版者
京都大学
雑誌
京都大學文學部研究紀要 (ISSN:04529774)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.71-167, 1954-03-30

第一部「綜括的自己診断検査の作製」においてはKiblerの自己診断表から出発し,数次のGP分析を経て,50項目からなる性格診断検査を作製した。これを矢田部Kibler向性検査と名づける。この検査の特徴は各項目が殆んど完全な内的整合性を有し,従つて安心して綜合得点を算出しうるところにある。第二部「特性別自己診断検査の作製」においてはGuilford-MartinのInventoryから出発し,数次のGP分析を経て,各尺度が殆んど完全な内的整合性を有する二つのInventoryを構成した。一つは16特性を各25問の尺度項目によつて測定するものであるが,項目間に重複のあるもので,これを矢田部Guilford性格検査第一型式と名づける。二つは13特性を各12問の尺度項目によつで測定するのであるが,項目間に重複のないもので,これを同じくその第二型式と名づけることにした。第三部「矢田部Guilford性格検査の因子分析的研究」においては,上述の第二型式を200名の京大生に施行した結果から,その因子構造を分析した。一次因子は8個抽出されたが,それらはThurstoneの因子と極めて近親的であつた。ただしかれのImpulsiveに相当するものは明瞭でなく,その社交性は二つに分離された。S^1(D^1).社会的内向性E^1(E^1).情緒安定性M^1(V^1).男子性A^1(A^1).活動性T^1(R^1).思索性F^1(S_1^1).社交性第一(Frustratedness)?(S_2^1).社交性第二(Aggressiveness)(X_1^1)(I^1)この因子の獨立性は疑わしい第二次因子は4個抽出された。A^2.情緒安定性B^2.現実性C^2活動性D^2.社交性これらはBaehrの二次因子A^2,B^2,C^2に対応するが,D^2はBaehrには対応者なく,むしろThurstoneの一次因子社交性に近い。第二次因子間の相関はすべて完全相関を示した。その意味は未だ明らかでない。
著者
近藤 敏行 小林 利宣
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.1-9, 1960-12-30

さきに著者が発表した,K.K.改訂Bemreuter Personallty Inventoryを,中学生の生活や思考に適応するようにあらためた92項目の診断目録(K.B.P.I、-J特型)を作製し220名の被検者の応答に基づいて,各項目間の四分割相関係数を算出し,その相関行列をもとに三因子分析を行ない,7個の因子を抽出した。それはもとの診断目録の因子と5個一致し,2個はもとの因子とは別のものと解釈された。一致した因子は,神経質,自己充足・内向-外向,自信欠如・支配服従1の5特性であり,もとのB.P.I.にあつた社交性のかわりに,情緒性,自我の2特性が抽出された。次に各因子の各項目に対する負荷量を5段階法によって,重みづけを行をつて,2,1,O,-1,-2の得点をあたえた。次に中国・四国,近畿地区のづ・学校5年生以上高等学校1年までの児童,生徒約1,000名に,この診断目録を実施して,その標準化を行をつた。因子解釈において,特にS型との関連において,やや困難を感じさせられたものが若干あり,目録の妥当性についての検討が,今後に残された課題である。
著者
大西 良 辻丸 秀策 大岡 由佳 鋤田 みすず 福山 裕夫
出版者
久留米大学
雑誌
久留米大学文学部紀要. 社会福祉学科編 (ISSN:13455842)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.67-75, 2006-03
被引用文献数
1

本研究の目的は,精神保健福祉現場実習における学生の自己イメージ構造とその変化,さらに自己イメージ形成に影響を与える要因を明らかにすることであった.結果は以下の通りである.実習前の自己イメージとして「社交性」「魅力的」「繊細さ」の3因子が抽出され,実習後では「自主性」「誠実性」「積極性」の3因子が得られた.実習後の3因子は先行研究の精神科医療従事者の自己イメージと酷似しており,学生が実習を経験することで精神科医療従事者の自己理解へと接近していることが明らかとなった.また,ボランティア経験と実習前の「社交性」因子,実習後の「自主性」「誠実性」因子との間で有意な関連性がみられ,ボランティア経験の有無が自己イメージの形成要因になっていることが明らかになった.さらに,教員や友人のサポートが,「自主性」の形成の肯定的要因になっている一方で,有害ストレスが自己イメージの形成の否定的要因であることが明らかとなった.
著者
山田 秀
出版者
熊本大学
雑誌
熊本法学 (ISSN:04528204)
巻号頁・発行日
vol.116, pp.247-274, 2009-03-20

以下の論述は、固より試論に過ぎないが、ポパー思想のより十全な理解に幾分でも資するとすれば、これにすぐる幸いはない。同時に本稿は又、伝統的自然法論ないし哲学的カトリック社会倫理学への興味の喚起をも狙っている。
著者
南雲 秀次郎 白石 則彦 田中 万里子
出版者
東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林
雑誌
東京大学農学部演習林報告 (ISSN:03716007)
巻号頁・発行日
no.71, pp.p269-330, 1981-12
被引用文献数
1

東京大学千葉演習林スギ林生長試験地の資料に基づき,電算機を用いてスギ林収穫表を調製するシステムを研究した。この収穫表調製システムでは,さまざまな間伐方法のもとで林分から得られる幹材積と利用材積が計算できる。このシステムによる収穫表の調製手順は次の通りである。1.林分の平均直径,その分散,立木密度を組み合せて林分胸高断面積の生長を記述するモデルを確定する。2.上で確定した林分胸高断面積のもとで,林分の直径分布を決定する。この直径分布の関数としては,ワイブル分布を利用する。3.林分平均樹高の生長曲線を決定する。この曲線式としてはミッチェルリッヒ式を利用する。4.樹幹の相対幹曲線式を決定する。この曲線式としては三次の多項式で,いわゆる吉田式と呼ばれる関数を用いる。5.樹高-直径関係を相対化した相対樹高曲線式を決定する。いま,任意の樹幹の胸高直径,樹高をd,hとし,林分の平均胸高直径,平均樹高をそれぞれ〓,〓とすれば,この式は〓となる。ただしa,b,cはパラメター,tは時間である。これらの式を組み合せると次のようにして収穫表を調製することができる。まず,地位,林齢,間伐方法に応じた直径分布を決定し,林分平均樹高を求める。この平均樹高を相対樹高曲線に適用して,実際の大きさをもつ樹高曲線を復元する。この曲線に基づいて,相対幹曲線を利用して径級ごとの細り表をつくる。この細り表によって径級ごとの幹材積および利用材積を計算し,これを全径級にわたって加え合せて収穫表が確定する。以上の手法によって東京大学千葉演習林スギ林収穫表を調製した。利用材積の計算は三種類の木取り法によっておこなった。計算の結果,幹材積で測った平均生長量最大の時期より利用材積で測った平均生長量最大の時期の方が5年から15年程度おそいこと,また,利用材積による金員収穫は木取り法によって大きな差があらわれることがわかった。A computerized system TUSYCS constructing an empirical yield table for sugi even-aged stands was developed on the basis of data from the permanent experimental plots in the Tokyo University Forest in Chiba Prefecture. Using the basic stand variables of age, mean height growth expressed by the so-called Mitscherlich equation, number of stems, basal-area per hectare, taper curve, and relative height-diameter curve, the system predicts the stand diameter distribution, the volume, followed by the assortment of logs produced by a specific log cross-cutting strategy.
著者
中村 照美 平岡 和雄
出版者
社団法人溶接学会
雑誌
溶接学会論文集 : quarterly journal of the Japan Welding Society (ISSN:02884771)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.44-53, 2001-02-05
被引用文献数
19

Narrow gap welding (NGW) joints offers many advantages over conventional welding methods, such as good mechanical properties of joints, high welding efficiency and low residual stress. As the groove gap width becomes narrower, the arc heat input can be reduced and the merits in narrow gap welding increases more. Generally, GMA welding method has been never applied to less than 5 mm groove gap, because it is guessed that it is arc instability and lack of fusion at the groove bottom area occur. In this paper, first of all, arc behavior under narrower gap joints is discussed, and it was concluded that the arc in MIG arc welding irregularly perturbates up-to-downwards along the groove wall under less than 5 mm gap, but CO_2 arc was stable under narrower gap. Next, penetrations at the groove bottom area in CO_2 arc welding were discussed. Characteristics of bead formation phenomena in CO_2 buried arc welding of bead-on-plate were analyzed. From the results, the relationship between hydrostatic potential of molten metal and arc force corresponding with welding current was estimated. Furthermore, the width of gauging region of penetration by arc force was measured and the relationship between the melting width at groove bottom and welding conditions (welding current and welding speed) can be suggested. With these results, numerical simulation model was proposed and the optimum welding conditions to melt the groove bottom area sufficiently and to minimize heat input were searched by numerical simulation. And then narrow gap welding with 5 mm groove gap was carried out using these simulated welding conditions. In the experimental results, the weld bead was obtained without lack of fusion at groove bottom, but the convex surface bead was formed which is disagreeable in multi-pass welding. The new welding process was proposed from numerical simulations in order to prevent this convex bead and to obtain sufficient melting at bottom area. In the new process, the wire extension can be controlled by welding current waveform and then arc regularly oscillated up-to-downwards along the groove wall. In this arc oscillation, arc heating distribution along groove wall 1ed to both sufficient penetration at groove bottom and concave surface bead shape.
著者
工藤 貴之
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.154-174, 1995-04-30
被引用文献数
6

東京都内のF小学校および埼玉県内のN小学校を対象に歯科健診資群について,1学年時のう蝕状況から6学年時の永久歯う蝕の予測およびハイリスク群の検出を行い検討し,以下の結論を得た。1) 11歳時DMFT(11-DMFT)が3歯以下群を陰性としたスクリーニングテストのROCカーブに比べ11-DMFTの有無,6歳から11歳までのDMFTの増加数(6-11⊿DMFT)の有無について行ったスクリーニングテストの方が識別能力に優れていた。2)6歳時臼歯部のdmft(6-M-dmft)をスクリーニングの基準とし,6学年時の永久歯う蝕の有無について行ったスクリーニングテストでは5歯以上群がう蝕ハイリスク群となった。同様に6歳時dft (6-dft)を基準とした時も,5歯以上群がう蝕ハイリスク群となった。また,6学年時の永久歯う蝕の増加の有無についてのスクリーニングテストでも同様の結果となった。3)11-DMFTが4歯以上群を知るためのスクリーニングテストでは,6-M-dmft,6-dftとも6歯以上群がう蝕ハイリスク群となった。4) 11-DMFTを目的変数としたとき,危険率1%以下で有意な重回帰式を得た。5)6-11⊿DMFTを目的変数としたとき,危険率1%以下で有意な重回帰式が得られた。以上より1学年時のう蝕状況から6学年時のう蝕経験歯数,増加う蝕経験歯数の予測は十分可能であることが示唆された。
著者
新矢 恭子
出版者
鳥取大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

1997年以来、高病原性鳥インフルエンザ(H5N1)ウイルスは東南アジアを中心に発生し続けている。160人を超える人々がこのウイルスによって感染・死亡しているが、人間同士の感染の発生は稀である。この事実は、新型ウイルス発生・世界流行の可能性に関与する基本的な問題を提起している。鳥由来のH5N1ウイルスは、鳥型のウイルスレセプターを欠くと思われる人間に、なぜ、効率的に感染・増殖が可能なのであろうか?また、人間同士での感染を制限する分子学上の障壁は何であろうか?私達は、前年度に、高病原性鳥インフルエンザウイルス感染患者から分離された1つのウイルス株が、鳥型・人型の両方のシアル酸(インフルエンザウイルスレセプター)を認識する性質を有することを報告すると同時に、宿主側要因として、人間の呼吸器組織に分布するシアル酸の性状を報告した。本年度、更に、1918年に流行したインフルエンザウイルス(スペイン風邪)の生物学的性状の特徴づけを行い、病原性の獲得機構を解明した。また、ウイルスRNA合成酵素(RNAポリメラーゼ)における点変異の、ヒト細胞での増殖における生物学的意義、同変異に感受性を示す哺乳動物を用いた生物学的意義付けを行った。つまり、この変異はヒトを含む感受性細胞においてウイルスポリメラーゼ活性を上昇させ、ウイルスポリメラーゼ活性の上昇は感染個体内での一次増殖部位におけるウイルス粒子生産量を増加させる。一次増殖部位におけるウイルス粒子生産量の増加は他の感受性組織への二次的な播種の効率を増加させることが判明した。私達の研究成果はいずれも、今後の鳥インフルエンザウイルスの病理発生機序解明の主軸となる結果を提示している。
著者
安岡 茂和
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EE, 電子通信エネルギー技術 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.562, pp.21-24, 2007-02-23

ニッケル水素電池の自己放電のメカニズムを検討した結果、負極から溶解したCoやMnを含む化合物のセパレータや正極への析出物や窒素化合物等によるシャトル効果等による正極の還元が原因であることを見い出した。負極としてCoやMnを含まない超格子水素吸蔵合金を用いることによりセパレータ上の析出物を抑えて自己放電を抑制することができた。この知見を基に自己放電の改良を行った結果、我々は、次世代のニッケル水素電池"eneloop"の開発に成功した(Fig.1)。"eneloop"は優れた自己放電特性に加えて、1000回繰り返し使うことができる。
著者
沼 晃介 平田 敏之 濱崎 雅弘 大向一輝 市瀬龍太郎 武田 英明
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.85-97, 2007-01-15
被引用文献数
10

本論文では,学術会議における参加者の活動の振り返り支援ならびに参加者間のコミュニケーションの支援を目的とした,Weblog コンテンツの作成および共有システムActionLog について述べる.ActionLog とは,個人の行動の履歴に基づきユーザのWeblog 上に位置や発表,周囲にいる人などのコンテキストを付加したコンテンツのドラフト(草稿)を自動的に生成するシステムである.行動をドラフトとしてユーザに提示することにより,ユーザが自身の活動を振り返り,その理解を深めることを支援する.生成されたドラフトはユーザの意思により編集,公開され,公開されたコンテンツはコンテキストをもとに閲覧される.エントリは,ユーザの実世界での行動に関する情報とユーザ自身の記述した主観をともなうコンテンツからなり,ユーザの体験を表しているといえる.こうしてコンテキストを共有するユーザ同士の体験の共有とコミュニケーションを促す.我々はActionLog を,第19 回人工知能学会全国大会において大会支援システムの1 つとして実装,運用した.この実装では,他の学会支援システムと連携することによってユーザの行動を取得した.運用の結果,提案システムが参加者の振り返りならびにコミュニケーションの手段として,期待した効果を果たしたことを確かめた.In this research, we propose a system called ActionLog which supports authoring and sharing Weblog contents for the purposes of support on reviewing and support on communicating in academic conferences. ActionLog collects users' actions from other information systems placed at a conference site, and automatically generates drafts of the Weblog contents based on the contexts of the actions. Users can edit and publish entries according to their will. We implemented and applied the system on an academic conference as a field test. The result shows that the system was used both for reviewing their activities and for communicating other participants.
著者
増栄 成泰 伊藤 康久 楊 陸正 土井 達朗 加藤 範夫
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.91, no.10, pp.683-686, 2000-10-20
被引用文献数
1 1

患者は74歳,男性.1998年11月5日,無症候性肉眼的血尿を主訴に近医を受診.膀胱鏡検査にて左尿管口より出血を認め,静脈性腎盂造影(IVP)にて左腎盂腫瘍が疑われたため,11月17日当科を受診した.CT上,左下腎杯に腫瘍性病変が疑われ,逆行性腎盂造影で左下腎杯頸部の圧排像を認めた.11月26日精査加療目的で当科に入院した.12月3日,喘息発作をきたしたため気管支拡張剤,ステロイドを投与した.同時に心不全も合併したため,アルブミン製剤,カテコラミン,利尿剤を投与した.症状が軽快したため12月16日,左腎摘除術を施行したが腫瘍は認めず,病理組織学的診断はAllergic granulomatous angitisであり,臨床経過よりChurg-Strauss症候群と診断した.諸検査を追加したが,好酸球増多,P-ANCA陽性および血清IgEの高値を認めた.12月29日からプレドニン60mg/dayの内服を開始し,呼吸状態や腎機能は改善したが,1999年1月28日,急性心不全にて死亡した.
著者
津田 正臣
出版者
社団法人日本鉄鋼協会
雑誌
鐵と鋼 : 日本鐡鋼協會々誌 (ISSN:00211575)
巻号頁・発行日
vol.81, no.5, pp.589-594, 1995-05-01
被引用文献数
1

Effect of B addition (B≦0.012%) on the cold rolling and recrystallization textures of Fe-36%Ni alloy has been studied. The {001} <110> preferred orientation, which is increased with increasing B contents, developes in the surface layer. The surface rolling texture penetrates from the surface to a depth of less than about 20μm. The pure-metal type rolling texture of {4 4 11} <11 11 8> which is found in the inner layer, irrespectively of B contents. The surface recrystallization texture of B containing alloys is almost random. The inner recrystallization texture showes a gradual change with increasing B contents from the {100} <001> orientation to the {4 4 11} <11 11 8> orientation of rolling texture which is retained after completion of recrystallization.
著者
福岡 洋 石塚 栄一 福島 修司
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.74, no.8, pp.1429-1435, 1983-08-20

珊瑚状結石を田口が考案した腎実質一層縫合法による腎切石術で治療し, 術後の腎実質変化をcomputerized tomography (CT) で検討した.対象は17症例, 20腎で術前 (4腎は術前検査せず), 術後に CTを行ない腎実質の切開, 縫合部の変化を検討した.対象症例は1例に術後一過性の腎血管性と推定される高血圧を合併した他は重篤な合併症は認められなかった.腎実質切開長の平均は8.4cm, 腎血流遮断時間の平均は27分11秒であり, 術後の CT検査時期は3週から2年5ヵ月に分布した.術後のenhancement CTで濃度の低下した領域や実質の陥凹が認められるものがあり, 下記の3つのパターンに分類した.I型:実質に全く変化がみられないか, 線状の低濃度領域を認めるもの (5腎, 25.0%), II型:実質の切開縫合部に一致して帯状の低濃度領域を認めるもの (5腎, 25.0%), III型:楔状の低濃度領域や実質の陥凹を認めるもの (10腎, 50%) .