著者
国中 優治 壇 順司 高濱 照
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.C0448, 2006 (Released:2006-04-29)

【目的】膝関節疾患の治療において膝屈曲時の膝窩部痛はしばしばみられ、一般的にその原因を膝窩筋に絞ることが多々ある。しかし関節運動における膝窩筋の位置やその機能について詳しく説明したものを散見しない。そこで今回遺体ではあるが、膝窩筋の位置と膝関節運動時の機能から膝窩部痛の発生機序について検証したのでここに報告する。【対象】熊本大学大学院医学薬学研究部形態構築学分野の遺体で、大腿骨・脛骨の可動性が充分保証されている右膝1関節を用いた。【方法】1)脛骨に対し大腿骨を最大伸展位から最大屈曲位へと可動し、大腿骨と膝窩筋の接触の有無について後方から観察した。2)脛骨に対し大腿骨を最大伸展位から最大屈曲位に可動し、その外側顆部の回転運動について観察した。又、それに伴う膝窩筋腱の動態及び筋が伸張し始める膝関節角度を計測した。3)脛骨に対し大腿骨を内外旋し、膝窩筋腱の緊張を観察した。4)膝窩筋腱の起始部を大腿骨外側顆部にて精査した。【結 果】1)最大屈曲位においても大腿骨と膝窩筋との距離は保たれ、両者が接触することは無かった。2)大腿骨外側顆部は屈曲開始時、軸回転と共に転がりによる回転軸の後方移動が見られた。その後最大屈曲位に近づくにつれ軸回転主体の運動が見られた。0°から60°屈曲では後下方から前上方に斜走する膝窩筋腱が長軸方向に伸張された。屈曲60°から100°屈曲では膝窩筋腱は伸張されず、大腿骨外側顆部の転がりにて起始部が後方移動し、腱の長軸が垂直位となった。その後弛緩状態が120°まで続いた。120°から最大屈曲では、大腿骨外側顆部の回転軸を中心に膝窩筋腱起始部が上方に移動し垂直方向に伸張された。3)膝窩筋は大腿骨の脛骨に対する内旋にて緊張し、外旋にて弛緩した。4)膝窩筋腱起始部は、大腿骨外側顆部膨隆部にある回転軸(外側側副靱帯付着部位)の下方であった。【考察】膝屈曲時の膝窩部痛は角度が増すことで発生又は増強することから、膝窩筋が大腿骨と脛骨に挟まれ圧迫を受ける可能性が考えられていたが、今回の観察では膝窩筋は大腿骨に挟まれないことが判明した。これは膝窩筋停止部である脛骨後上方が凹状であり、そこに膝窩筋が位置することで大腿骨後顆部の接触を回避しているものと考えられた。解剖書によれば膝窩筋の作用は膝屈曲及び下腿内旋とあるが、今回の観察では、下腿内旋作用は推察できたものの膝屈曲においては初期屈曲及び深屈曲において膝窩筋腱が上方に移動し、特に120°から角度を増すにつれ膝窩筋腱が強く伸張された。また、起始部の精査においても大腿骨外側顆部の回転軸下方に位置していたことからも大腿骨外側顆部を後方に回転させることは不可能であった。つまり膝窩筋の作用は屈曲でないことも示唆された。従って膝の屈曲による膝窩部痛は膝窩筋が伸張され発生することが考えられた。
著者
塩田 雅弘 伊藤 毅志
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2021論文集
巻号頁・発行日
vol.2021, pp.42-45, 2021-11-06

京都将棋は 1976 年に田宮克哉によって考案された二人零和有限確定完全情報ゲームである.5×5マスの盤を使用し,駒を一手ごとに裏返すというルールが特徴である.本論文では京都将棋エンジンを開発し,本将棋で広く使われている強化学習アルゴリズムを京都将棋に適用することで十分に強いプレイヤを作成した.そしてこのプレイヤを用いて証明木を効率良く発見した.この結果,京都将棋を弱解決し,本ゲームの初期局面が先手必勝であることを示した.
著者
東京府青山師範学校附属小学校 編
出版者
広文堂
巻号頁・発行日
vol.第2編 算術科,歴史科,地理科,理科, 1911
著者
伊藤 智樹
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.88-103, 2000-06-30 (Released:2009-10-19)
参考文献数
33
被引用文献数
2

本稿は, セルフヘルプ・グループにおいて個人の物語が果たす機能的意味を探る.そのために本稿は, まず従来のセルフヘルプ・グループ研究が持つひとつの問題点を探り出すことから出発する.それらの先行研究は, セルフヘルプ・グループが, 他では実現困難な効果を参加者たちにもたらすだけの固有性を持つと考えながらも, その本質的な部分を知識の伝達や情緒的効果として大雑把に片付けてしまっている.近年, 物語という観点をとることで, グループへの参加者の発話行為に即した分析が行われるようになってはきているが, 検討の結果, それらの先行研究も実は十分な知見を提供できていないことが明らかになる.本稿は, このような先行研究の検討を通じて, セルフヘルプ・グループに関していまだ中途半端にしか答えられていない問題を明確にし, そのことを通じてセルフヘルプ・グループ研究が進むべき有意義な方向を提示する.
著者
安達 町子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.82-86, 1988-06-20

いの豚肉の調理性の検討を目的に、豚肉との比較による官能検査、剪断応力の測定、組織観察を行い、次のような結果を得た。1.官能検査の結果、ロース肉を「トンカツ」に調理した場合、3点識別試験により、いの豚肉と豚肉は0.1%の危険率で区別された。また3点嗜好試験では、歯ごたえを除いて、いの豚肉の方が、味、色、香り、総合評価とも有意に好まれた。もも肉を「ローストポーク」に調理した場合、豚肉はやや硬く水気が少ないが、いの豚肉は、少し匂いがあると評価された。2.ロース部位を加熱後、赤身部分を2cm角で1cm厚さに切り、肉硬度試験機で剪断応力の測定を行ったところ、いの豚肉、豚肉に有意の差は認められなかった。3.組織観察の結果、いの豚肉の方が、脂肉が発達し、脂肪交雑の状態もよい、また豚肉の筋繊維にほぐれや裂け目が多く認められた。
著者
西山 晃
出版者
日本セキュリティ・マネジメント学会
雑誌
日本セキュリティ・マネジメント学会誌 (ISSN:13436619)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.22-32, 2021 (Released:2021-03-12)
参考文献数
15

テレワークの推進に向け書面規制、押印、対面規制についての見直しが規制改革推進会議を中心として推進されている。しかしながら必要なのは書面への押印を廃止することではなく、押印が必要な書面による手続きのデジタル化である。書面への押印廃止のリスクとそのデジタル化に伴うリスクは別物であり、デジタル化に伴うリスク評価を行い、対策の検討が必要となる。すなわちオンラインでの「本人確認」や「授受データの真正性」、「取引事実の否認防止」などをどのような信頼レベルで担保すべきかデジタル化を行う手続き、業務のリスクに応じた検討が必要となる。それらの検討は「行政手続におけるオンラインによる本人確認の手法に関するガイドライン」が官民に関わらず参考になるためその概要を解説する。一方で、電子署名などの電子署名のトラストサービスの使いやすさと低コスト化がデジタル化の拡大に向け課題となると考えられるため、クラウド技術を用いたリモート署名などの対応策を解説した。さらにトラストサービスの利便性向上をめざすため、デジタル・ガバメント閣僚会議」に設置された「マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤抜本改善ワーキンググループ」及び「データ戦略タスクフォース」からの報告が参考となる。 すなわち、マイナンバーカード証明書を利用し、ベースレジストリと紐づけた属性付きeID(個人用、法人用)のオンライン発行により利用者の利便性が向上すると考えられる。。また、それらオンライン発行されたeIDをリモート署名で利用することにより押印廃止後のトラストサービスの活用と利便性が向上しオンラインによる官民の手続等が拡大すると考えられる。

4 0 0 0 OA 短信

出版者
国立国会図書館
雑誌
外国の立法 : 立法情報・翻訳・解説 (ISSN:13492071)
巻号頁・発行日
vol.(月刊版. 290-1), 2022-01
著者
Alex AGOSTINI Stephanie CENTOFANTI Antonietta COLELLA Lisa DEVINE Caroline DINGLE Helen GALINDO Sophie PANTELIOS Gorjana BRKIC Siobhan BANKS Jill DORRIAN
出版者
National Institute of Occupational Safety and Health
雑誌
Industrial Health (ISSN:00198366)
巻号頁・発行日
pp.2021-0091, (Released:2021-11-16)
被引用文献数
1

Shiftworkers are more likely to suffer from gastrointestinal disease and Type 2 Diabetes than the general population, likely due to their altered dietary intakes. Previous research has suggested that coping strategies and health behaviours may be linked, however, questions remain regarding these relationships in shiftworking populations. The Standard Shiftwork Index and Food Frequency Questionnaire were completed by nurses/midwives working forward rotating shifts (N=27, female=24, age=38.4 ± 13.1 y). Greater engaged coping strategy usage was associated with lower total energy, fat, carbohydrate and sugar intake (ρs>−0.1). Greater disengaged coping strategy usage was associated with greater intake of these nutrients (ρs>0.1). Results suggest that engaged coping strategies may contribute to healthier dietary choices. A greater focus on coping styles, particularly during nursing education, may improve shiftworkers’ health.
著者
桃原 郁夫
出版者
公益社団法人 日本木材保存協会
雑誌
木材保存 (ISSN:02879255)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.132-137, 2016 (Released:2016-08-02)
参考文献数
5
被引用文献数
2 1
著者
富成 司 市丸 亮太 松本 千穂 平田 美智子 宮浦 千里 稲田 全規
出版者
ファンクショナルフード学会
雑誌
Functional Food Research (ISSN:24323357)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.59-66, 2019 (Released:2020-01-01)
参考文献数
20

カテキンは緑茶に含まれるポリフェノールであり,エピカテキン(epicatechin, EC),エピガロカテキン(epigallocatechin, EGC),エピカテキンガレート(epicatechin gallate, ECG),エピガロカテキンガレート(epigallocatechin gallate, EGCG)の4種類が含まれる.これらカテキンは抗酸化作用などさまざまな生理活性を示すことが明らかとなっているが,骨代謝に対する効果については不明な点が多い.これまで,筆者らは,天然由来因子の骨代謝調節作用の解析や骨系統疾患への効果に着目し,ポリフェノールやカロテノイドについて,骨粗鬆症や歯周病への予防効果を検討してきた. カテキン類の中で,ガレート基を持つEGCGは強い生理活性を持つことが知られている.近年,特定の茶品種に高含有のメチル化EGCG(methylated EGCG, EGCG3’’Me)に生理活性があることが示された.筆者らは,これらカテキンに破骨細胞の分化抑制作用があることを見いだした.その作用機序として,EGCGおよびEGCG3’’Meが骨芽細胞に作用することで,IκBキナーゼ(inhibitor of NF-κB kinase, IKK)の活性阻害を介してNF-κB(nuclear factor κB)の活性化を抑制し,プロスタグランジン(prostaglandin, PG)E2産生,破骨細胞分化誘導因子(receptor activator of NF-κB ligand, RANKL)の発現を抑制することが明らかとなった. In vivo実験における歯周疾患のモデルマウスにおいては,歯周疾患原因子であるリポ多糖(lipopolysaccharide, LPS)の投与により誘導される歯槽骨吸収において,EGCGまたはEGCG3’’Meの投与によってその歯槽骨吸収が改善されることを明らかにした. 現在,日本の超高齢社会において,骨と歯の健康増進は生活の質(quality of life, QOL)の向上に繋がるため国民的課題となっている.EGCGの経口投与実験では,閉経後骨粗鬆症モデル動物におけるエストロゲン欠乏性の骨量減少が改善されたという報告もある.茶に高含有のカテキンは日常的な摂取が可能であり,歯周病など骨系統疾患に有用な機能性成分として期待される.そこで,本総説では,カテキンの中でも特に強力な生理活性を持つEGCGおよびEGCG3’’Meの骨代謝調節作用について最近の知見を紹介し,骨の健康増進作用について解説する.

4 0 0 0 OA 真空管入門

著者
佐野昌一 著
出版者
力書房
巻号頁・発行日
1948
著者
石倉 幸雄 Yukio Ishikura
雑誌
国際経営・文化研究 = Cross-cultural business and cultural studies (ISSN:13431412)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.29-61, 2005-11-01

The Spanish-American War started on April 23rd ,1898 and ended on August 12th of the same year, resulting in Spain being defeated. The defeat of this war gave Spain the "disaster of 1898", leaving it much to be reformed,and at the same time accelerated international disintegration of the Old World, the framework of which had been deteriorating since the early 19th century. On July 3rd ,1898 the Spanish Squadron was destroyed by the American Fleet off Sanchago de Cuba. The outcome at Sanchago de Cuba converted general trends of the war to be more favorable to the United States, and Spainユs attitude clearly took a different turn from then on. Spain inaugurated the quest for peace behind the scenes.This article attempts to investigate conditions of the so called the "disaster of 1898" of Spain by analyzing the mutual telegraphic communications between the Naval Ministry of Spain and admiral Cervera, commander in chief of the Spanish Squadron. The squadron set sail on April 7th,1898 from Cadiz for Puerto Rico, and was destroyed in the sea engagement off Sanchago de Cuba.With a good understanding of details of the "disaster of 1898", which would indicate how Spain was then, we will study its cause and effect in a context of Spainユs own history as well as in the historical context of international order.There are two collections of telegraphic communications. One is of Cervera's redaction, and the other is of the Naval Ministry of Spain. We will use mainly the former, and secondarily the latter in order to check if the Cervera's collection might include his political bias because he was well known before the war for his viewpoints in opposition to possible confrontation with the United States.
著者
池田 浩明
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.243, 2020 (Released:2020-12-24)
参考文献数
25
被引用文献数
1

農業による生物多様性の損失を低減させるためには、生物多様性に配慮した農業を普及させる必要がある。この普及のためには、環境に配慮した農業の取り組みによる生物多様性の保全効果を定量的に評価する手法を開発し、農地における生物多様性の「見える化」を図ることが有効である。これを受けて2012年に、農業に有用な指標生物(天敵など)を用いた生物多様性の評価手法を構築した。しかし、この手法は、指標生物がクモ類、昆虫類、カエル類で構成され、その訴求力や評価の簡易さの部分に改善する余地が残されていた。そこで新たに、訴求力が高く視認性も高い鳥類を指標生物に加え、絶滅危惧種などの希少種を加点する水田の簡易評価手法に改良した。 改良した評価手法は、包括的に生き物の生息環境を指標する生物1種類(サギ類またはその餌生物から選択)と栽培方法の指標生物2種類(クモ・昆虫類から1種類を選択、本田・畦畔の指標植物は必須)の個体数または種数をスコア化し、その合計スコアで総合評価する。ここで、スコアの基準となる個体数と種数は地域別(一部は農事暦や栽培方法・降水量で異なる)に定めた。また、環境省または都道府県のレッドリストにおける準絶滅危惧種以上の水鳥、絶滅危惧種のカエル類・植物(本田・畦畔)を加点(3種類の分類群ごとに+1点)できることとした(調査は任意)。最終的な評価は合計スコアを用い、環境保全型農業の取り組みによる保全効果を4段階(S?C、Sが最高ランク)で評価した。 本手法で全国6地域の調査水田(207圃場)を評価した結果、最高ランクのS評価となった圃場は、有機栽培で46%、特別栽培で13%、慣行栽培で3%だった。また、加点対象の希少種のうち、植物とカエル類は有機栽培の水田に、水鳥は特別栽培の水田が卓越する地点(グリッド)によく出現した。これらの結果から、水田における環境保全型農業の取り組みが希少種を含む生物多様性の保全に有効であることが示唆された。
著者
宇佐美 貴士 松本 俊彦
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1139-1148, 2020-08-15

抄録 わが国における10代の薬物乱用の実態を調査するために,全国の有床精神科医療施設を対象に実施した病院調査から得られた10代の薬物関連精神障害症例71例を比較検討した。危険ドラッグは2014年調査の48%から2018年調査で0%へと低下し,市販薬は2014年調査の0%から2018年調査で41.2%へと増加し,乱用薬物が危険ドラッグから市販薬へと推移していた。2014年の危険ドラッグ乱用群と2018年の市販薬乱用群を比較すると,学歴やICD-10 F1分類の下位診断カテゴリー,併存障害が異なり,臨床現場において,新たな薬物乱用層が出現していることが示唆された。得られた知見から今後のわが国の薬物乱用防止教育と精神科医療に求められることについて考察を行った。