著者
河村 和徳 三船 毅 篠澤 和久 堤 英敬 小川 芳樹 窪 俊一 善教 将大 湯淺 墾道 菊地 朗 和田 裕一 坂田 邦子 長野 明子 岡田 陽介 小林 哲郎
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

東日本大震災では多くの被災者が生じ、彼らの多くは政治弱者となった。本研究は、彼らの視点から電子民主主義の可能性について検討を行った。とりわけ、彼らの投票参加を容易にする電子投票・インターネット投票について注目した。福島県民意識調査の結果から、回答者の多くは電子投票・インターネット投票に肯定的であることが明らかとなった。しかし、選管事務局職員は、こうしたICTを活用した取り組みに難色を示す傾向が見られた。ICTを利用した投票参加システムを整備するにあたっては、彼らが持つ懸念を払拭する必要があることが肝要であり、財源の担保に加えシステムの信頼を高める努力が必要であることが明らかになった。
著者
陶 徳民
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は、近代における日本人のリンカーン受容の主要事例を検討し、新知見を提示したものである。結論として、リンカーンの健全な個人主義の精神(向上心、職分意識とリーダーシップ)と開かれた政治の理念(正義論、民主主義と人種差別撤廃)がジョセフ彦・松村介石・新渡戸稲造・内ヶ崎作三郎・高木八尺・賀川豊彦などの著述および国定修身教科書を通じて伝播し、青少年の立身出世の精神、国内政治の民主化と国際舞台における政府の人種平等主張などに多大な影響を及ぼした。
著者
吉田 寿人
出版者
福井大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

ハトムギは漢方薬として中国や日本で古くから利用されてきた。近年、ハトムギの抗腫瘍効果が注目され、ハトムギの抽出エキスであるヨクイニンにも抗腫瘍効果があることが示された。今回の研究では、口腔癌におけるヨクイニンおよびその有用成分Trilinoleinの抗腫瘍効果について検討を行った。口腔扁平上皮癌細胞にヨクイニンおよびTrilinoleinを作用させたが、細胞増殖活性に変化はみられなかった。口腔扁平上皮癌にCOX-2 inhibitorを作用させると抗腫瘍効果がみられたため、今後、COX-2が関与している漢方薬の抗腫瘍効果についての検討していく。
著者
谷本 祥
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

代数方程式で定義される幾何学図形を代数多様体と呼び、その方程式を満たす有理数解をその多様体上の有理点と呼ぶ。Manin予想とはFano多様体と呼ばれる多様体上の有理点の数え上げの問題、つまりその多様体上の有理点の数え上げ関数の漸近公式に関する予想である。そのManin予想の幾何的側面を高次元代数幾何特に極小モデル理論を用いて研究する。特に、整数点や有理曲線のManin予想に関する研究を行う。
著者
谷川 晋一
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究の目的は、Chomsky (2013, 2015) が提唱するラベル付け理論において、(i)標準的な主語位置に現れる非名詞句・非主格句が機能主要部Tとどのようなagreementを行うのか、(ii)動詞句内に残る主語・主格名詞句はどのようにして距離的に離れている主要部Tとagreementを行うのか、を明確にすることである。(i)については、素性継承の結果、話題素性のagreementもしくはphi素性に関する部分的なagreementがあることを示した。(ii)については、距離的に離れている2要素間でも同一位相内であればC統御に基づきagreementが行われるという結論を導いた。
著者
好井 健太朗 小林 進太郎 五十嵐 学 今内 覚
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

ダニ媒介性脳炎、狂犬病など神経向性の人獣共通感染症ウイルスは、脳に侵入・増殖することで重篤な神経症状を引き起こし、致死率も高い。しかし血液脳関門:BBBの存在のため、抗ウイルス分子をウイルスの増殖する脳に到達させる手法が無く、治療法が未開発であった。近年の研究により、これらのウイルスの外殻蛋白は、BBBを透過する機能を持つ事が明らかになっている。そこで本研究では、このBBB透過機構に着目し、抗ウイルス分子技術と融合させることで、BBBを透過して脳内に対象分子を輸送可能な新規薬物輸送システム (DDS) の開発、及びその応用を図る。
著者
三浦 弘
出版者
専修大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

イングランド北部の数地点とマン島において、英語の各地域方言発音を現地にて録音し、音声特徴の現状を社会音声学的な手法で記録し分析した。社会音声学的な手法というのは、地域的な相違のみならず、被験者の社会的階級や年齢などを考慮して方言発音の変異を分類し、音響的な音声分析の結果に基づいて音韻体系を考察するものである。調査はマージサイド州リバプールとマン島(平成29年度)、ランカシャー州プレストンとヨークシャー州ブラッドフォード(平成30年度)、及びランカシャー州ランカスター(令和元年度)にて実施した。
著者
鈴鴨 富士子 蔵品 真理 秋山 純子
出版者
東京藝術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は絵画に発生する劣化生成物の発生原因を解明し、材料の有する特性や保存環境の影響を明らかにすることを目的に行った。更に適切な修復処置を提示すると共に、発生の予防を提言することを目指した。本研究において絵画作品の調査・分析の他、湿熱劣化実験を実施した。また予防修復処置としてワニス塗布の効果を考察した。本研究から劣化生成物の予防処置や適切な保存環境を検討する際の指針を示すことができたと考える。
著者
山田 悟史
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究はドクターヘリ及びドクターカーの運用効果を算出し,基地病院とランデブーポイントの配置計画を検討したものである。運用効果の指標は,医師による医療行為開始時間,救命率,人口をもとにした4指標である。対象は関西広域連合とし,場外離着陸場のランデブーポイント化,三次救急病院を候補とした基地病院の追加の運用効果をGISと既往研究から算出した。これに基づき,場外離着陸場のランデブーポイント化,及び基地病院の追加の効果上昇が平坦化する施設数,効果が大きい適正配置を提示した。具合的な方法,数値や施設名称・位置については研究成果報告・発表済み原稿を参照して頂きたい。
著者
小野 政輝 安田 伸
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

樹脂配糖体は、糖部が部分的にアシル化されたオキシ脂肪酸のオリゴ配糖体で、ヒルガオ科植物に特徴的に含有される。本科植物の、サツマイモ、ハマヒルガオ、ハリアサガオ、ブラジルヤラッパ、ルコウアサガオ、マメアサガオおよびコヒルガオの7種を材料に、樹脂配糖体の研究を行った。その結果、36種の樹脂配糖体を得た。これらのうち、15種の新規樹脂配糖体を含む22種の構造を各種機器分析データならびに化学反応を用いて決定した。また、構造決定した化合物のうち、1種に抗単純ヘルペス1型活性、3種に白血病細胞株(HL-60)に対する細胞傷害活性を見出した。
著者
三浦 直 小田 由香里 志澤 泰彦 塚越 絵里
出版者
東京歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

歯科の研究領域では、現在のところサツマイモを材料とした研究はない。ヒトに対するう蝕予防効果や歯周病の発生を予防でき、低コストで、人体に対して無害で使用回数にも制限がないような天然物由来の物質が、口腔ケア組成物として望まれている。そこで本研究課題では、普段の食生活で利用している国産サツマイモに着目し、口腔ケアとりわけ歯周病予防の応用につながる物質を探索し、その成分を特定することを目的としている。現段階では歯周病原菌に対する増殖抑制の効果を示す、活性成分を探索し、これを特定することを目標としている。
著者
高木 英典 花栗 哲郎 HAROLD Y. Hwang 笹川 崇男
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

本研究課題では、強相関エレクトロニクスヘの展開を念頭に置き、モット絶縁体における半導体物理を構築することを目的とした。具体的にはモット絶縁体中の不純物状態、界面障壁、トランジスタ動作の研究を進め、それらが通常の半導体物理からどのような修正を受けるのかということについて実験的検証を進めた。その結果、以下のような成果を得ることに成功した。1.STM/STSを用いた実空間局所電子状態観察を行い、強相関系特有の磁気・軌道臨界状態にある遷移金属酸化物Sr_3Ru_2O_7を対象として不純物状態および界面状態の考察を進めた。意図的に導入したMn不純物の影響の長さスケールが数nmに及ぶことや表面での電子再構成・強磁性臨界性に由来する低エネルギーでの電子状態密度の異常を発見した。2.有機ゲート薄膜を用いた酸化物トランジスタの構築を考案し、そのペロブスカイト酸化物SrTiO_3への適用を試みた。その結果、低温で世界初の電界誘起金属-絶縁体転移を実現し、その状態において1000cm^2/Vsを凌駕する移動度を達成した。また、磁気抵抗の異方性の評価からSrTiO_3界面において厚さ数nm程度の二次元金属層が生じていることを明らかにした。3.遷移金属酸化物の抵抗変化メモリ効果がNiOやCuOなどの単純な二元系遷移金属酸化物で普遍的に観測されることを見出した。そして、平面型素子の作製、その表面状態の直接観察や電圧電流特性の系統的な評価から、抵抗スイッチングが酸化物バルク領域の伝導フィラメント形成に由来していること、伝導フィラメント-金属電極界面における障壁がメモリ評価を生じていることを実験的に明らかにした。
著者
待鳥 聡史 砂原 庸介 竹中 治堅 浅羽 祐樹 MCELWAIN KENNETH
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

政府の運営の基本原則、すなわち統治の制度やルールがいかに定められ、変更されるかについては、今日国際的な関心が高まっている研究課題である。本研究は、このような研究動向に棹さしつつ、統治の制度やルールの変更が憲法典の改正に拠らない場合を含む多様なものであることに注目し、その帰結として変更に際する多数派形成の過程にも著しい多様性があることを、理論モデルの構築、国際比較可能なデータセットの作成、さらに計量分析と事例分析による検証から解明し、それらの作業を通じて国際的な研究発展に貢献することを目指している。
著者
富永 晃好
出版者
静岡大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

ナガボナツハゼはツツジ科スノキ属の絶滅危惧種であり、絶滅回避技術確立のためには絶滅危機に至った原因を究明することが必須である。この原因について、ツツジ科およびマツ科植物が代表的な菌根菌共生植物であることと、ナガボナツハゼがマツの樹周辺にのみ自生するという調査に基づき、「ナガボナツハゼは、地下部で菌根菌の菌糸を経由してマツと繋がっており、マツの養分に依存して生きているのではないか?」と考え、植物・菌・植物の3者間共生の仮説を立てた。本研究ではこれを検証し、我が国のマツ林の激減とナガボナツハゼの絶滅危機との因果関係を科学的に解明するとともに、絶滅危惧種の絶滅回避技術確立のための基盤を形成する。
著者
小幡谷 英一
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

木材の物理・化学加工技術を組み合わせ、枯渇が危惧されるグラナディラ材の代替材を、持続可能な汎用木材や天然樹脂を用いて製造する技術を開発する。具体的には、化学処理(寸法安定化)と樹脂含浸圧密(緻密化)を複合することで、グラナディラ材に匹敵する高い力学性能と寸法安定性を達成する。グラナディラ材のストックが払底する数年以内の実用化が求められることから、第1段階として、薬品を用いた化学処理と合成樹脂を用いた樹脂含浸圧密を組み合わせ、速やかに実用化できる材料を開発し、第2段階として、天然化合物や天然樹脂を用いた、持続可能な加工法を検討する。
著者
望月 新一
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

14年度は、「Hodge-Arakelov理論」のDiophantus幾何への応用に向けて理論を具体的に定式化する上で大きな進展を見た。主な発見および新しく得た視点は次の通りである:(1)以前は、この応用を妨げている技術的な障害を取り除くための手段として、遠アーベル幾何によるアプローチを考えていたが、様々な理由により、13年度に検討していたアプローチでは不十分であることが判明した。しかし、遠アーベル幾何の精神を受け継ぎながら、Galois圏だけでなく、もっと一般的な圏や圏論によるアプローチが有効になる可能性が高いことが分かった。(2)この圏論的アプローチを実現するための技術ないしは「言語」として、圏論や、集合論における「宇宙」の概念を活用した宇宙際幾何(inter-universal geometry)を開発した。(3)圏論的なアプローチでは、遠アーベル幾何におけるGrothendieck予想に対応する様々な結果を証明した。その中で代表的なのは、log schemeの圏に関するものである。なお、最近では、このような結果を、archimedeanな構造が付いているlog schemeの場合に拡張し、またこの結果の延長線上にある理論の中で、数体上の大域的な数論的Frobenius射(=正標数の関数体上のp乗写像の類似物)という興味深い対象も構成している。(4)Hodge-Arakelov理論との関係でいえば、以前考えていたHodge-Arakelov理論の基本定理である「比較同型」よりも、theta convolutionという対象による定式化の方が、圏論的なアプローチとの相性がよいことが分かり、そのような観点による、圏論とHodge-Arakelov理論との「融合」を推進することにした。また、Diophantus幾何への応用と直接は関係ないが、正標数のコンパクト双曲型代数曲線のGrothendieck予想の証明の完成に向けて様々な技術的な進歩があった。
著者
宇田津 徹朗 中村 敏夫 田崎 博之 外山 秀一
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

生産遺構土壌から安定的に検出されるイネを中心とした1年生イネ科植物に由来するプラント・オパールに含まれる炭素を利用して、生産遺構の年代決定を行う手法の構築に取り組んだ。その結果、年代の測定精度には検討の余地があるが、国内の生産遺構土壌については、土壌採取からプラント・オパール抽出、夾雑炭素除去、プラント・オパール中の炭素抽出、年代測定(AMS)までの各工程について、実用性や普及性を備えた条件や方法を決定でき、生産遺構の年代を測定する一連の手法を構築することができた。
著者
藤原 辰史
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

伊藤永之介の描いた東北地方の農村分析によって、わたしは、近代日本の開発政策におけるある重要な性質について明らかにすることができた。それは、開発を進める日本政府が、単に、農村住民の生活世界を破壊しただけではなくて、農村内外の非合法的な世界に対する農村生活者の柔軟な対応力に頼っていた、という点である。たとえば、農村住民たちは、開発政策と不況で苦しむなかで、非合法でどぶろくを作り、販売して苦境を凌いだり、軽犯罪をおかしてわざと逮捕され、一時的に苦境から脱出したりしていた。伊藤文学は、いかに農村住民たちが日本のダイナミックな開発政策を生き延びたのかについて、生き生きとかつコミカルに描いているのである。