著者
江原 遥
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

Webの発達等により、特に英語では幅広い解説テキストが入手可能になり、これらで学習者の知識を拡充する機会が増えている。こうしたテキストを入力とし、テキストのどの部分が学習者にとってどの程度難しいか(リーダビリティ)を自動判定する技術は、教材推薦や自動作問など様々な学習支援の応用の基盤技術である。しかし、従来のリーダビリティ判定技術は「表現の難しさ」の判定が中心であった。本研究提案では、「表現の難しさ」に加えて、深層機械学習により文脈や意味を考慮することで、テキストの「知識の難しさ」をも判定できるリーダビリティ判定技術を研究する。
著者
北原 圭 宮崎 健太郎
出版者
北海道大学
雑誌
挑戦的研究(開拓)
巻号頁・発行日
2017-06-30

生物の際立った特徴の1つは、外部環境から取り込んだ栄養素を元に自己増殖を行う能力(システム)を有することである。この自己増殖能を最大限に発揮しているのは対数増殖期のバクテリアであり、たとえば大腸菌は至適条件下ではわずか20分おきに分裂増殖することが可能である。本研究では、バクテリアの自己増殖能をひとつの化学システムとして捉え、生命現象の根幹である自己増殖システムの効率(最大増殖速度)を極限まで高めることを目的とした実験を行うことを通して、効率的な化学システムとして完成された生物の姿を探求する。
著者
安房田 智司
出版者
新潟大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

海産カジカ科魚類は、科内で交尾種、非交尾種が含まれるだけでなく、子の保護様式も雄保護、雌保護、無保護と、繁殖様式が特に多様化したグループである。繁殖様式の異なるカジカ科魚類18種について、繁殖行動と性的形質(交尾器形態や雌雄の体サイズ差)や精子特性(精子形態や運動性)を調べた。その結果、交尾の有無および保護様式(雄保護、雌保護、無保護)の違いが、性的形質や精子特性と密接に関係しており、繁殖行動に関連して性的形質や精子が進化したことが示された。
著者
膳場 百合子
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、人工知能(以下AI)が引き起こした被害に対し、一般の人々が誰にどれだけ責任があると考え、どのような責任処理(問題の解決)を望ましいと考えるか、特に日本人の判断にどのような特徴があるかを検討するものである。本研究では3つの日米比較web調査を通じ、AIに関する信念と責任判断について日本人の特徴を包括的に検討する。一つ目の調査では「AIのとらえ方」の文化差を検討する。二つ目の調査では「AIが関与した問題に対して誰をどのような根拠で人々が非難するか」の文化差を検討する。三つ目の調査では、「AIが引き起こした問題に対し人々がどのような処理を望むか」の文化差を検討する。
著者
多賀 悠子 伏屋 玲子 浜野 かおる
出版者
国立研究開発法人水産研究・教育機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

クルマエビ漁獲量の減少に伴い,種苗生産に使用する親エビの確保が近年難しくなっている。そのため,陸上水槽で飼育した親エビを用いた採卵技術の確立が求められているが,交尾が十分に行われないことが問題となっており,その原因として水中音や飼育水の振動によるストレスの影響が疑われている。そこで,水槽内で交尾が行われる条件を明らかにするため,曝気による音と振動をはじめとして,水槽壁の衝撃吸収性,水槽サイズや底質と交尾との関係を調査した。その結果,後二者は交尾に影響を与え,アンスラサイト(破砕石炭)を底質に用いた場合には底面積が0.75 m2以上で交尾が行われた。一方,前二者は交尾に影響を及ぼさなかった。
著者
杉江 真以子
出版者
国立研究開発法人国立成育医療研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

ウイルス感染による上皮傷害は、喘息の発症や増悪に決定的なサイトカインIL-33を放出させる。上皮細胞内に恒常的に発現するIL-33は、細胞傷害により放出され機能すると考えられているが、その産生機構は不明な点が多い。我々の予備検討では、ウイルスdsRNA合成アナログ(polyI:C)で活性化された肺微小血管内皮細胞が、細胞傷害を介さない新規機序でIL-33 mRNA発現を誘導した。本研究ではpolyI:Cだけでなく、インフルエンザウイルスを用いて、この新規IL-33発現誘導機構を解明することで、ウイルス感染を契機とする喘息発症・重症化の予防・治療戦略の基盤となる情報提供を目的としている。
著者
上岡 洋晴
出版者
東京農業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

本研究は、機能性表示食品制度において有効性の科学的根拠として企業等から届出られた臨床試験とシステマティック・レビューの結果の適正性について明らかにするとともに、不備の特徴とその詳細を明確にし、最終的には改善提案を行うことに挑戦する。
著者
石井 望
出版者
長崎純心大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

元曲・崑曲は近世チャイナ文藝の中で高い地位を享受し、諸名作を産み出して來た。その作品は歌唱するために作られたものである。本研究は元曲・崑曲のメロディーを中心とする音樂・韻律を明らかにするため、古歌譜(樂譜)・音階・字音の三方面から研究した。歌譜は特に最古の元曲譜「北西廂訂律」にもとづくメロディーの復元を中心とした。「北西廂訂律」はこれまで代表者が部分的に研究を進めて來たものである。音階は崑曲の均孔笛を機器吹奏し、CTスキャン撮影を行なふなど測定面から探究し、唐の音階を簡便化したものであることを明らかにした。また明朝の「中州全韻」を研究することにより、崑曲字音の體系を明らかにすることを目指した。
著者
高橋 雅英 榎本 篤 浅井 直也
出版者
藤田医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

がん組織の線維化はがんの悪性度および治療効果に大きな影響を与える。本研究では膵がん、肺がんを主に、我々の研究グループが最近発見したメフリン陽性がん線維芽細胞の機能解析を通じて、がんの線維化のメカニズムを解明し、新たながん治療法の開発に資する。具体的には1.がん関連線維芽細胞(CAF)におけるメフリン発現レベルと患者予後との関連を明らかにし、メフリン陽性がん関連線維芽細胞のがん間質における機能の解析を行う。2.メフリン結合タンパクを同定し、機能解析により、がん細胞の増殖、浸潤能などの生物的特性への関与を明らかにする。3.がん治療を目指したメフリンの発現を増強する低分子化合物の探索を行う。
著者
比江島 慎二
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

凧型の帆で風を捉えて帆走し,水流タービンで発電する帆走式洋上風力発電を提案する.水流タービンと帆にHydro-VENUS技術を導入し,帆走システム全体のエネルギー取得性能をシミュレーションして実現可能性を探る.発電電力は送電せずに浮体内に蓄電するため,遠洋の膨大な風力を利用した発電が可能になる.固定設置しないため漁業との競合もない.従来の洋上風力発電が,沿岸付近の微弱な風力しか得られず,漁業との競合で導入が進まないのに対してブレークスルーとなる.さらに,観測機器等を搭載して広範囲に配備すれば,洋上通信,防災観測,資源探査,海上監視等に利用でき,海洋空間の利用をこれまでになく活性化できる.
著者
木上 洋一 永田 修一
出版者
佐賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

潮流エネルギーの有効利用を企図し,高出力の大型潮流発電システムを構築することを目指して,潮流タービンに設置する旋回集流装置を提案する.集流によりエネルギーを集め,タービン入口の旋回流れにより入口角運動量を増し,軸仕事の増大により高出力化を図る.初年度はこれまでに開発した集流装置に案内羽根を設置し,衝動型プロペラを対象として数値流体解析とモデル実験を行い,旋回集流装置の効果を検証する.次年度は旋回集流装置を反動型プロペラに適用して,数値流体解析とモデル実験により検討する.最終年度は衝動型と反動型のプロペラの旋回集流装置に対する特性を総合評価し,最も高出力となる潮流発電システムを提案する.
著者
下町 健太朗
出版者
函館工業高等専門学校
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

我が国の漁村ではその持続可能性を脅かす問題が未解決である。漁業におけるエネルギー消費の問題と,漁業のみを生活の基盤とするリスクを解消するために,既存の概念から飛躍するような新しい漁村システムの確立が急がれるが,そのような漁村はまだ発生していない。本研究では漁村が再生可能エネルギーの導入適地であることに着目し,これを利用したシステムによって前述の問題を解決する。具体的には漁村がエネルギーを活用しつつ売却もできるシステムを新たに提案し,これが漁村を持続可能とすることを明らかにする。これにより,日本各地に点在する漁村を持続可能としつつ,新たなコミュニティ形態へと昇華させることが期待される。
著者
井田 徹哉 綿崎 将大 山口 康太
出版者
東京海洋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2021-04-01

我が国における潮流発電と波力発電による海洋エネルギー発電の実用化を目標に、海洋エネルギー発電に適合した小形リニア発電モジュールの研究開発を行う。タービンを用いず直接的に海洋からエネルギーを低損失に取り出し得るダイレクトドライブ型波力発電機とアンジュレータ型潮流発電機は共に幅広い沿岸海域で小規模な発電を実現できる。回転機による発電とは異なり、リニア発電機では長い直線状の機構を要し、低流速かつ短ストロークであることから高い発電効率を達成し難い。加えて、海洋発電に向けて高い制動性が要求される。本研究は海洋エネルギー発電に向けたリニア発電モジュールの研究開発を行い、海洋エネルギー開発の推進を目指す。
著者
高木 健 巻 俊宏
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

水中浮遊式海流発電装置は、流速変動により生じる動揺運動を回避して安全性を確保する制御が実施されているが、将来はこの安全性確保と変動流中での出力増加・品質向上による経済性向上を両立させなければならない。本研究では制御システムが安全性を担保しつつ経済性向上が可能かを明らかにすることと、どのような評価関数による最適制御が単位発電出力当たりのコスト削減に適しているのかを明らかにすることを目的として実施する。この目的を達成するため、制御シミュレーションコードを確立するとともに、このシミュレーション結果と海流の長期予測結果を利用してライフタイムの経済性を考慮したLCOEを算出する方法論を構築する。
著者
立花 誠 大久保 範聡 勝間 進 諸橋 憲一郎 菊池 潔 長尾 恒治 深見 真紀 田中 実 宮川 信一
出版者
大阪大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2017-06-30

本研究領域では「性スペクトラム」という新たな概念のもとに、性を再定義することを目指す。領域の全ての研究者が「性はこれまで言われれてきたような二項対立的なものではなく、連続的な表現型である」という視点を共有し、上記の領域目標の達成にむけて研究を推進する。このような目標のもとで、本領域では領域代表の下に総括班を置き、領域活動をサポートしていく2020年9月25日から10月23日にかけて、自己紹介を兼ねた公募班員のセミナーを開催した。新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、オンラインでの発表となった。9月25日、10月2日、16日、23日の4日間で、全16名が研究発表を行った。活発な議論が交わされ、オンラインにもかかわらず大いに盛りあがった。2020年12月21日(月)から23日(水)までの3日間、東京農業大学世田谷キャンパスにて、新学術領域研究「配偶子インテグリティの構築」・「全能性プログラム:デコーディングからデザインへ」合同公開シンポジウムが開催され、立花が特別講演を行った。2021年3月25日(木)と26日(金)の2日間、第4回領域会議をオンラインにて開催した。本会議では、計画研究の研究代表者・分担者のほか、班友の3名、そして新たに公募研究班に加わった研究者1名も研究発表を行った。また、領域外からも講師1名を招き、ショウジョウバエ類の性染色体進化に関してご講演をいただいた。対面方式での会議の開催が叶わなかったが、非常に活発な議論が交わされ、各班員が順調に成果を上げていることを確認した。
著者
古道 一樹 芝田 晋介 湯浅 慎介
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

拡張型心筋症、肥大型心筋症、および左室心筋緻密化障害は小児によく認められる心筋症であり、不整脈や心不全の原因となるが、根治療法は存在しない。新たな治療戦略の開発に、病態形成に関連する心筋発生学的な知見は必要不可欠である。しかし、ヒト遺伝子型-表現型の相関性を完全に説明できるモデルはいまだ存在しない。この課題を克服するために、同一の遺伝子背景を有し、心筋症特異的遺伝子変異のみが遺伝情報として異なる心筋症特異的isogenic-iPS細胞株を樹立する。各細胞株を心筋に分化する過程において、心筋発生・成熟各段階のシグナルに注目し、心筋症の遺伝子型-表現型相関を制御するメカニズムの同定を目指す。
著者
菊地 章太
出版者
東洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

本研究は、東アジアの海域世界で守護女神として圧倒的な信仰を集めている媽祖を研究対象とし、その伝播の過程における東西交渉の足跡を比較宗教史的に解明することを目的とする。中国南部の民間信仰の中で芽生えた媽祖の崇拝が東アジア各地に伝播しはじめた16世紀は、世界史上の大航海時代にあたっていた。媽祖崇拝の広域的拡大という中国民間宗教史上の一大事象について、東西文化交流の実態を現地調査と文献研究をもとにたどり、一地方の崇拝対象から出発した媽祖が巨大な信仰圏を築くに至った経過をより広範な射程から明らかにしていく。
著者
高橋 真美
出版者
独立行政法人国立がん研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

ラット及びマウスの大腸化学発がんモデルとハムスター及びマウスの膵臓発がんモデルの腫瘍組織において、OPNaの顕著な発現上昇が認められた。OPN欠損が大腸発がんに及ぼす影響は明らかではなかったが、マウス膵臓発がんモデルにおいてはOPN欠損により発がん率及び発生個数の減少が認められたことから、OPNが一部のがんへの進展、浸潤等に関与しており、発がん抑制のターゲットとなりうることが示唆された。
著者
長谷部 正基 明嵐 政司
出版者
北海道大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

都市部においては道路舗装やコンクリート構造物など、熱容量の大きい構造物で覆われた空間が形成されており、赤外放射等による温度上昇が発生しやすい環境となっている。特に道路舗装面は太陽熱エネルギーにより真夏には70℃以上にまで上昇する。近年、地球温暖化防止、一次エネルギー消費量削減のために新エネルギーの普及促進、未利用エネルギーの利用促進が求められており、こうした道路舗装面に蓄積された太陽熱エネルギーの有効利用は省資源、省エネルギーの見地から重要である。利用方法としては温水供給などの直接利用方式と電気エネルギーへ変換する間接利用方式とがあるが、直接利用方式は需要、立地などの観点から今後とも大規模な利用は困難である。本発電システムでは熱源の温度変動などに即応できる性能が要求される。道路舗装面の太陽熱エネルギーによる熱電発電の場合、システムの構成要素が熱電素子を含む熱交換器のみで、負荷の変動による燃料所要量の変化に対する追従性が良いこと、可動部分が無いため信頼性が高く保守が容易である等の利点がある。本研究では道路舗装面の熱エネルギーを熱電素子の発電機能により電力として回収する発電システムを研究した。我々は当該システムを路面熱利用発電システム(RTEC : Road Thermal Energy Conversion System)と称する。本研究はRTECの概念設計を行い、その実用化の可能性を明らかにした。なお、アスファルト舗装は舗装材料の物性により高温になると軟化し、その結果通行車両から受けるせん断力によりわだち掘れが発生する。これは舗装の耐用年数を短縮させる主因となっている。RTECの機能として、発電による路面温度の低下、これによるヒートアイランド現象の緩和、なおかつアスファルト舗装の耐久性が向上することも期待される。
著者
後藤 航
出版者
大阪市立大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

近年,乳癌治療において腫瘍微小環境(TME)の評価が重要な役割を担っていると考えられるようになった.TMEには上皮間葉転換や腫瘍免疫応答など,癌細胞の悪性形質獲得に関わる変化が含まれており,TME制御が治療戦略の鍵と考えられる.非タキサン系の微小管阻害剤であるエリブリンは,TME調整作用などユニークな薬剤特性を有することが前臨床研究により明らかになっている.申請者はエリブリン耐性乳癌細胞株の樹立に成功し,耐性機序の観点よりエリブリンのTME調整作用について探究をすすめている.本研究ではエリブリンにおける腫瘍微小環境制御による新たな乳癌治療戦略を検証していく.