著者
岡田 正彦 松戸 隆之 三井田 孝 大林 光念 稲野 浩一
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

動脈硬化症の初期変化をもたらす一つのきっかけは、低比重リポ蛋白(LDL)がラジカル種の攻撃で酸化変性を受け、生理的な代謝が行われなくなることにあると考えられている。しかし、具体的にLDLのどのような構造変化が血管内皮に対して異常信号として作用するのかについては、不明のままとなっている。本研究では、以下の成果をあげることができた。1.アポBの糖鎖構造と易酸化性との関係について調べた.その結果native LDLと酸化LDLで糖鎖構造に違いは認められなかったが、ある切断酵素を作用させたときにだけ、易酸化性が有意に上昇するという現象を認めた。この結果から、アポB上のある種の糖鎖が酸化防御に関わっていることが推測された。2.LDLの酸化によって生じるアポBのフラグメント解析を試みた。ところが種々のフラグメントのアミノ酸配列をホモロジー検索したところ、アポB以外のさまざまなたんぱく質が非特異的に結合していることが分かった。3.酸化LDLを血管内皮細胞に作用させ、VCAM-1のmRNAの変化を調べるという実験系の検討に入った。まず内皮細胞にIL-1を、濃度と時間を変えながら作用させ、VCAM-1のmRNAが発現する最適条件を検討した。さらにVCAM-1アンチセンスを用いたハイブリダイゼーションで、当該バンドが安定して確認できる条件を探った。その結果、IL-1および精製した酸化LDLを内皮細胞に作用させると、VCAM-1のmRNAが明らかに増加する事実を確認することができた。4.酸化によってLDLにどのような構造変化が起きるのかを確かめるべく、アポBの立体構造を解析する研究にも着手することができた。その結果、アポBの膜内でαヘリックスの束を作っている領域が5つあることを確認できた。これは、従来の生化学的な分析結果ともよく一致しており、方法の正しさが証明できたものと考えている。
著者
井上 敬一
出版者
新潟大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2020-07-30

機能未知の遺伝子C9orf72のイントロンへのリピートの挿入変異は、進行性神経変性疾患である筋萎縮性側索硬化症ALSと前頭側頭型認知症FTDの最大の原因である。この変異は異常mRNAを発現させ、mRNAが核内で凝集し(RNA foci)細胞毒性を示す。それゆえRNA fociの除去を目的とした治療法が求められるが、オートファジーは細胞質に存在する基質を分解するため、核内の凝集体は分解できない。そこで申請者は、ALS/FTDの治療法の開発を目的として、核内のRNA fociをオートファジーにより分解させる方法の樹立をめざす。
著者
細川 敬祐
出版者
電気通信大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2018-04-01

アンテナ,フィルター,プリアンプ,ソフトウェア受信機からなる観測システムを 1 式製作し,沖縄県恩納村に設置した.受信信号を比較的安価なソフトウェア受信機で処理し,周波数チャネルごとに信号を分割して受信・記録することで,Es の出現を検出することが可能になっている.昨年度までに設置が完了していた 5 箇所と合わせて計 6 地点で得られたデータを電気通信大学に準リアルタイム(1 時間遅れ)で転送し,ウェブ上に表示するシステムを構築した(http://gwave.cei.uec.ac.jp/cgi-bin/vor/vhf.cgi).これにより,スポラディック E に伴う異常伝搬をリアルタイムに可視化することが可能になっている.複数の送信局に同一の周波数が割り当てられることがあるため,中間反射点における Es 発生の有無を地図上にマップするためには,各チャネルの受信信号に対応する送信局を特定する必要がある.我々は,各チャネルに対応する送信局のリストを作成し,アンテナの指向性や各送信局の運用形態,送信パワーなどの情報を用いることによって,受信信号から送信局を自動的に識別する手法を確立した.この手法を用いて,国内 6 地点(調布,呉,菅平,大洗,サロベツ,沖縄)の観測から異常伝搬事例を抽出し,送信元の局を特定することによって Es 発生領域を地図上にマッピングすることに成功している.この成果を地球電磁気・地球惑星圏において公表し,現在論文にまとめているところである.上記以外にも 3 件の論文を査読付き学術雑誌に投稿し,1 件が公表済,2 件が現在査読中となっている.今後は,複数地点のデータを組み合わせて Es 空間分布の時間発展を準リアルタイムで可視化するシステムを構築し,航空局やエアライン,ICAO など,想定されるユーザへのリアルタイムの情報提供に繋げていく.
著者
中村 友也 一條 裕之
出版者
富山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

過度の幼少期ストレスが成長後の不安やうつを惹起するメカニズムを明らかにするため、生後10-20日のマウスの仔を母親から毎日3時間分離し,成長後の個体の行動とストレス関連部位の外側手綱核、海馬、扁桃体の神経回路変化を調査した。幼少期ストレスを与えた群では、コントロールと比較して外側手綱核特異的に抑制性のParvalbumin陽性細胞数が減少し、ストレス下の興奮性神経細胞の活動性が上昇し、不安様行動とうつ様行動がみられた。本研究では不安やうつを引き起こす幼少期ストレスが外側手綱核特異的に抑制性回路を改変して高次機能に影響を及ぼすことを明らかにした。
著者
北村 義浩
出版者
国立感染症研究所
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1999

HIVのインテグラーゼに対するマウスモノクローナル抗体を作製し、このマウスモノクローナル抗体から単鎖抗インテグラーゼ抗体分子(scAbE)を作製した。scAbEとHIVのアクセサリータンパク質であるVprとの融合タンパク質(scAbE-Vpr)、およびVprと結合することが明らかになっているペプチドモチーフ(WxxF)を付加したscAbE分子(scAbE-WxxF)を作製した。さらにscAbEとHIVのキャプシッドタンパク質(CA)との融合タンパク質(scAbE-CA)も作製した。これらタンパク質を発現するヘクターDNAをHIV infectious clone DNA(pLAI)とともにヒト細胞293Tにtransfectして培養上清中のウイルスを回収した。ウイルス粒子のタンパク質について、ウェスタンブロット法で調べたところscAbE-VprとscAbE-WXXFは効率よくウイルス粒子内に取り込まれていた。しかし、scAbEあるいはscAbE-CAはウイルス粒子には取り込まれなかった。これらウイルスの感染性をMAGIアッセイ法にて調べた。同じ量のRT活性で比較した場合、野生型ウイルスに比べてscAbE-Vprを取り込んだウイルスとscAbE-WxxFを取り込んだウイルスとでは、感染性が最大で、それぞれ10^3倍、10^4倍低下した。scAbE-WxxFを安定に発現するHeLa細胞を樹立できたが、その一方で、scAbE-Vprを安定に発現するHeLa細胞は得られなかった。このようにウイルス粒子に取り込まれてそのウイルス粒子の感染性を低下せしめる分子は全く新規の抗ウイルス治療分子であるので、packageable ativiral therapeutics(PAT)と命名した。scAbE-Vprとは異なりscAbE-WxxFは細胞毒性を呈さず、より理想的なPAT分子と思われた。この分子はAIDSの遺伝子治療に応用できるだろう。
著者
早瀬 文孝
出版者
明治大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

ラットに発がん性ヘテロ環アミノ化合物を与えると,肝臓に前がん病変のマーカー酵素である胎盤型グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST-P)の発現を経て,肝がんを誘発することが知られている。本研究ではラット初代培養肝細胞を無血清培地でPrimariaディッシュを用いてスフェロイド培養し,化学発がん過程におけるメラノイジン(MEL)添加の抑制効果について調べた。MELはグルコースとグリシンの非透析性画分より調製した。発がん性物質にはMeIQx、Trp-P-2を用いた。対照群をMEL無添加群とし、各濃度のMELを添加した群についてMELの化学発がん抑制作用を検討した。5日間の培養後、肝細胞のアルカリフォスファターゼ活性を測定したところ著しい変動は認められず、肝機能は維持されていると推察された。その肝細胞を用い、MeIQxによるGST-PmRNAの発現誘導がスフェロイド培養細胞で認められるかについて、抗GST-P抗体を用いたELISAによってGST-Pタンパク質の検出を行った。その結果、10nM〜1μMのMeIQx添加で対照群と比較し、有意にGST-Pタンパク質の発現が上昇した。そこで5日間の培養細胞から全RNAを抽出し、GST-PのcDNAをプローブとしてノーザンプロット分析を行った。その結果、10nM添加のMeIQxおよび7.8nM添加のTrp-P-2群のGST-P mRNAの発現はそれぞれ無添加群の4.1、9.2倍に増加した。これらの群に0.1%あるいは0.01%MELを発がん性物質と同時に添加することにより発がん性物質無添加群とほぼ同レベルまで抑制された。本研究の結果からMELがMeIQx、Trp-P-2によるGST-P mRNAの発現誘導をほぼ完全に抑制することが明らかとなった。これはヘテロ環アミノ化合物がMELに吸着されること、中間代謝活性化体であるヒドロキシルアミン体がMELとの反応により不活性化されるためであると推察される。
著者
吉川 茂 志村 哲
出版者
九州大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

「舞蛟」、「露堂々」など江戸、明治期の虚無僧尺八の名器は「地無し尺八」と呼ばれ、竹管の自然形体をそのままに、節をわずかに残して製管されている。本研究では、第2節(第4孔の少し上に位置する)より上と下では管内形状が有意に異なり、かつ第2節の残し方に独特な特徴のあることが低音域と高音域での響きと音色の差異(多彩さ)をもたらすと推論した。さらに、名器を用いた実演や CD 録音での演奏者や聴衆の印象から、メリカリ奏法での上下への音高変化と運指が現代尺八よりも虚無僧尺八において容易であり、響きと音色の差異を導くと推論された。このような特徴は第2, 3 孔が高めに開けられていることの利点と考えられる。
著者
松田 兼一 平澤 博之 織田 成人 仲村 将高
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

液体換気(liquid ventilation,LV)とは特殊な液体であるフルオロカーボンを酸素ガスの代わりに人工呼吸に用いる全く新しい人工呼吸法である.液体を用いて人工呼吸することによって肺洗浄効果及び虚脱肺拡張効果が期待され,重症呼吸不全の肺酸素化能を改善することができる.一方,液体を用いることから,施行中の人工呼吸器の操作条件が呼吸生理に与える影響はガス呼吸とは異なる可能性がある.そこで今回LVを有効かつ安全に施行するための基礎的検討を行った.まず.成熟ラットを用い,従来の酸素ガスを用いた従量式人工呼吸管理を小動物用人工呼吸器を用いて行った.これをコントロール(GasV群)とした.GasV施行中,操作条件を種々変更し,各操作条件に対する血行動態,血液ガス分析値の変化を検討した.次に,フルオロカーボンをラットの肺内にあらかじめ注入した後,従来の酸素ガスを用いた従量式人工呼吸管理(LV)を行った.これをLV群とした.GasV及びLV施行中,操作条件を種々変更し,各操作条件に対する血行動態,血液ガス分析値の変化を検討した.次に,先のデータを用いて,分時換気量(MV)と呼吸回数(RR)および吸気呼気時間比(I:E)を種々変化させたときのGasVとLVにおけるPaCO2,PaO2の変化の違いを検討した.操作条件の影響はGasV群に比しLV群では大きく,その影響はMVが低い場合により顕著となった.このことよりLVにおける人工呼吸器の操作条件に対するPaO2,PaCO2の変化はGasVとは全く異なるため,LVを安全かつ有効に施行するためにはPaO2,PaCO2をモニタリングしながら操作条件を決定する必要があると結論された.今後はFIO2などの操作条件を変更させ,さらに検討する予定である.
著者
関口 順
出版者
埼玉大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

本研究課題の対象である『司馬法』の研究蓄積は従来無きに等しかったが、最近、田旭東氏による成果が中国で出ていることが分った。これは学位論文であるため、現在同氏に内容を照会中である。この論文を作製したのち田氏は『司馬法浅説』という簡単な概説書を著したが(1989年5月出版)、それはその学位論文の成果を反映しているようである。その書によって推測すれば、田氏の研究は書誌学的な考証を主としており、思想史的な研究視角による本課題とは取り組みの傾向を異にすると言える。研究代表者(関口)は思想史的研究の立場に立ちつつ、本年度は逸文の収集に努めた。張〓の『司馬法逸文』一巻;黄以周の『軍礼司馬法攷徴』二巻;〓〓の『司馬法逸文』一巻;銭煕祚の『司馬法逸文』一巻などを基とし、さらに若干の原資料を調査した。それらの逸文は、大体において零細なものであったので、これらの逸文を整理し、資料集を出版する事とした。その計画では、次のようになっている。タイトルは『司馬法資料集成』。内容は1.思想史的分析に基づいた書誌的解題。2.現行本『司馬法』の校勘、注釈と翻訳。3.逸文の網羅的集成と内容に即した整理。現行本は明らかに残欠の文章の集成であり、全体の構成を多少なりとも伺うには逸文を重視しなければならないだろう。逸文および現行本の内容を総合して考えると、『司馬法』の構成は、1.平時における王官(王者の官職)司馬の職務、その主な内容は軍制の整備や軍賦の管掌、2.戦時における王師(王者の軍隊)の軍礼・軍法ーーの二つが大きな柱となっていると思われる。いずれも王者の統治の観点から王官・王師を論じている。このうち、司馬の職務は『周礼』と類を同じくし、軍礼・軍法は、韓信が整備したとされる漢の軍法(沈家本:漢律〓遺巻二十一)の理念形態を開示するものである。
著者
山田 剛史 村井 潤一郎 杉澤 武俊 寺尾 敦
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は,心理統計担当教員間で共有できるテスト問題の項目データベースの開発を行うことであった。具体的な成果は,(1)これまでの研究成果(基盤研究(C)課題番号:17530478)を発展させ改良を加えた,心理統計テスト項目データベースの開発,(2)データベースのユーザビリティについて,全国の心理統計の講義を担当する大学教員を対象にした試験的運用,基礎データの収集を計画した,といったことをあげることができる。
著者
五十嵐 理慧 武永 美津子 中山 利明
出版者
聖マリアンナ医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

臨床応用可能な神経系DDS製剤の開発を目ざして脳神経細胞由来神経栄養因子(brain derived neurotrophic factor, BDNF)とレシチン誘導体を結合したレシチン化BDNF(PCBDNF)を合成し検討した。まずBDNFの薬理活性が報告されているC57BL/KSJ-db/dbマウスにおける摂食抑制効果、血中グルコース抑制効果、体重増加抑制効果で検討した結果、PCBDNFはBDNFそのものに比較して著明な薬理効果の増強が見られた。用量で比較するとPCBDNFはBDNFそのものより20倍も活性が増強していることが示唆された。その薬理効果増強の機序が何に起因するのかを検討したところ血中半減期の長さに起因するのではなくPCBDNFの高い細胞親和性によることが示唆された。またIn vivoでの検討により中枢神経系への集積性が高くなっていることが観察され血液脳関門(BBB)の通過性が高くなっていることが示唆された。さらに神経系細胞であるPC-pAB1細胞を用いて活性化MAPKをウエスタンブロッティングで追いかけたところPCBDNF添加PC-pAB1細胞は持続的なMAPK活性化を示し、レシチン化によってBDNFに新たな機能が付加されていることが示唆された。持続的なMAPK活性化は細胞を分化の方向に誘導するとされており、これらが薬理効果の増強と大きな関係を持つと考えている。また最適レシチン導入数の同定のために有機合成したPCBDNFについて結合部位と結合数を分析したところ、結合部位は平均的に導入され、平均導入数はBDNF一分子あたりおおよそ3分子のレシチン誘導体が結合していることが判明した。
著者
伊藤 元己
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

花の形態形成遺伝子を解析した成果として、ABCモデルと呼ばれる花の形態形成モデルが提唱され、広く受け入れられている。その後の研究で、特殊な花の形態をしているイネ科の植物にもABCモデルが成り立つことが示され、今では、ほとんどの被子植物にほぼ当てはめることができると言われている。ドクダミの花は3本の雄しべと3枚の合成心皮からなり花被をもたない。しかし、総苞片と呼ばれる花序の基部に白く大きな花弁状の形態をもつ器官がある。これは、花序の最下部につく苞葉が変化したものといわれている。今回、特にこの総苞片の形態形成にABCモデルで示されるような花弁形成のメカニズムが関与しているのか、それとも独自の進化の過程で獲得した異なるメカニズムで形態形成がなされているのかを調べることに焦点を当てた。そこで、ドクダミより花器官の形態形成に関与すると思われるMADS-box遺伝子を単離し、遺伝子系統樹を構築し各遺伝子の相同性の検討を行なった。また、定量的RT-PCRやin site hybridizationにより各遺伝子の発現を調べた。その結果、ドクダミの総苞片でAP1グループ、PIグループ、AP3グループ、SEPグループに属する遺伝子の発現が確認された。これらの遺伝子発現の組み合わせは、シロイヌナズナにおいて花弁の器官決定を行なうのに必要十分なものであることが明らかになっている。ドクダミの花弁状の器官でこれと同様の発現様式を示したことは、形態学上、花弁とは異なる総苞片の形態形成において、花弁形成同様のメカニズムが働いている可能性を示唆するものである。
著者
山本 宗立 松島 憲一 田中 義行 小枝 壮太
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

アジア・オセアニアにおけるトウガラシ属植物の利用および酒文化(麹のつくり方、醸造・蒸留方法、それらに伴う儀礼)についての文献調査を行うとともに、インドネシアおよびミクロネシアにおいてトウガラシ属植物の遺伝資源・文化資源に関する現地調査を行った。また、種分類が未定のネパール産トウガラシ、ダレクルサニ系統群についてSSR、AFLP、GBSSの配列解析を用いて種分類を試みた結果、トウガラシとハバネロ類の種間雑種由来で、他栽培種と遺伝的に距離があることが明らかになった。そして、SSRおよびAFLPを用いて、国内の在来トウガラシ品種等の多型解析を行った結果、大きく7つのグループに分けられ、大まかに地域や果実形質によって分類できたが、異なる果実型でも近縁と思われる集団の存在が明らかとなった。さらに、トウガラシ属植物の遺伝資源の大規模分子系統解析に向けた準備を行った。具体的には、アジア・オセアニアのキダチトウガラシ404系統およびハバネロ類246系統を栽培し、合計650系統のDNAを抽出した。カプサイシン類の定量分析については、アジアのトウガラシ属植物を栽培し、HPLC分析により各系統の辛味成分組成を明らかにした。ネパール系統の中から、高いカプサイシノイド含量を示すキダチトウガラシの系統を見出した。葉緑体配列に基づくプライマーセットにより、トウガラシ属植物の細胞質の種分類を検討した。今年度に得られたデータについては、国内外における学会発表や国際誌の論文として来年度以降に公表する予定である。
著者
栗林 均
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では、清朝の公用語であったモンゴル文語について、官製の満洲語辞典(清文鑑)、官製史書、および档案(政府公文書)等の「官用」モンゴル文語文献資料の言語的特徴を明らかにした。これに基づき、17世紀以降のモンゴル文語を、木版刷の仏教経典に用いられた「古典式」モンゴル文語と、規範からはずれる「世俗的」文献に分ける従来の捉え方に対して、「官用」のジャンルを加えて「近世モンゴル文語」という枠組みで捉え直した。研究の基礎資料として作成した各種「清文鑑」と官製史書を含むモンゴル文語のデータベースに基づき、テキストデータと原本の画像データをリンクさせた資料検索システムを構築してインターネットで公開した。
著者
小田部 夏子 原田 浩司
出版者
国際医療福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

書きの困難さの背景には、運動覚性記憶能力や文字の中にまとまりを見つける能力に問題があるのではないかと考え、それを確かめること、さらに運動覚性記憶に問題がある場合は運動感覚に問題がないかを確認することを目的とした。運動覚性記憶は運動覚性書字再生、音読課題で測り、文字の中にまとまりを見つける能力はまとまりを見つける課題を作成し、読み書き困難児と定形発達児に実施し比較した。運動感覚は手の関節位置覚を再現法にて評価し、先行研究で得られた値と比較した。その結果、読み書き困難児に運動覚性記憶の形成に問題がある者が多く運動感覚が不良であること、まとまりを見つける能力が書きに影響していることが示唆された。