著者
高見澤 滋 山崎 紀江 好沢 克 町田 水穂 高須 香吏
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.842-846, 2010

【背景】近年,成人領域において胃食道逆流症,栄養剤による下痢などの症状を緩和させる目的で胃瘻からの半固形化栄養剤短時間摂取法(以下本法)が行われている.今回,胃瘻栄養を行っている小児において,便性がゆるい,注入時間が長いなどの問題点を改善することを目的に,ミキサー食を用いた本法を導入し,その効果,問題点を検討した.【対象・方法】摂食障害のため胃瘻からの栄養剤投与を在宅で行っている患児5名.本法開始時の年齢,体重の中央値は5歳5か月(4歳3か月〜7歳3か月),14.8kg(10.5〜16.7kg)であった.基礎疾患は低酸素性虚血性脳症後2例,脳梁欠損1例,無顎症1例,染色体異常1例であった.栄養剤投与の1回をミキサー食の投与に当て,1日1回約50mlから開始し,家族の判断で1回投与量を増やし,本法開始前の栄養剤1回投与量まで増加できた後にミキサー食の投与回数を増やした.【結果】全例において1日2〜4回のミキサー食投与が可能になり,栄養剤投与に要する時間の中央値は本法開始前8時間から開始後1.8時間へ短縮された.また本法開始により,全例で便性が改善した.合併症として食事アレルギーのための入院,便秘を各1例ずつ認めた.【結論】本法により,栄養剤投与時間の短縮,便性の改善が得られ患児,家族のQOLが向上した.また,「患児自身の食事に対する興味が出てきた」,「家族と同じ食品を投与できるためとても嬉しい」など,家族の満足度も高く有用な方法と考えられた.
著者
松尾 俊和 中越 享 中村 司朗
出版者
長崎大学
雑誌
長崎醫學會雜誌 : Nagasaki Igakkai zasshi (ISSN:03693228)
巻号頁・発行日
vol.84, no.1, pp.23-27, 2009-06-25
被引用文献数
2

魚骨穿通による肝膿瘍の1例を経験したので報告する。症例は74歳の女性で、右上腹部痛、発熱を主訴に入院となった。入院時胸部CTで肝外側区域から背側に突出するような低濃度腫瘤と線状陰影を認め、魚骨刺入による炎症性肉芽と診断した。Free airはなく魚骨は胃から離れていたため、心不全、脱水の治療を優先し、待機的に手術施行した。術前の造影腹部CTでは、肝外側区域に肝膿瘍を形成していたため、魚骨摘出と肝膿瘍ドレナージ術を施行した。一般的に本症の診断は困難であるが、MDCTの施行により術前の確定診断が比較的容易となった。
著者
砂岡 和子 保坂 敏子 砂岡 和子 敬松
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

日本語と中国語による対面異文化交流時に発生する障害の解決支援を目的に、ミス・コミュニケーション・コーパスを構築し、会議参加者が相互にコメントを付加できる異文化交流ビデオ教学プラットホームを開発した。話者の各種属性による言語・非言語要素、および対話における協調・非協調などの要因から討論シーンが検索可能となる。
著者
河辺 隆也
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.206-214, 1981-03-05

トカマクに代る核融合へのアプローチの内開放系磁場閉じ込めの解説を行う. この系では磁力線が閉じていないために核融合炉としては多くの利点を持っているが, 核融合を起すに至るまで高温高密度のプラズマを閉じ込めるのがトカマクに比べて難しい. しかし多くの新しいアイデアを出しタンデムミラー等磁場の他に静電場も用いたり, 高周波プラグなど高周波を用いたりして, 閉じ込めの改良がはかられ, トカマクにあと一歩というところまで近づきつつある. しかもまだまだアイデアを出す余地があるので, ここに開放系磁場閉じ込め核融合の現状と問題点, 将来への展望を述べたい.
著者
孫立寧 落水 浩一郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.29, no.8, pp.782-789, 1988-08-15

本論文は 複数の動作実体がリンクを介して相互作用するような並行ソフトウェアシステムの動作解析手法について述べたものである・実体(プロセス モジュール等)を拡張状態遷移図で記述し 実体間のリンクの特性を指定した上で それぞれをペトリネット表現に変換し さらにそれらのペトリネット群をまとめて一つのペトリネットに結合'解析し 解析結果を再び拡張状態遷移図 およびリンク表現に逆変換する.VAX11-780上のFranz-lispで解析系のプロトタイプを試作し いくつかの例に適用することにより 本手法の有効性を確認した結果についても述べる.
著者
太郎丸 博
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

2007年に実施された郵送調査とインターネット調査のデータセットを使い、いくつかの変数に関してそれぞれの分布をより正確と思われるデータと比較した。まず年齢について2006年11月の人口推計と比較すると、郵送もインターネット調査も15~19歳のサンプルが少ない。特にインターネット調査のほうが歪みが大きい。しかし、その他の年齢に関してはむしろ、インターネット調査のほうが歪みが小さかった。また性別に関してもインターネット調査のほうが歪みが小さい。最終学歴に関しては、郵送もインターネットも、女性の高学歴サンプルが過大に含まれ、中卒男女のサンプルが過小に含まれていた。また、インターネット調査に関しては男性高学歴者も過大に含まれていた。さらに、結婚時の理想の働き方を女性に対して尋ねた質問項目のゆがみを、出生動向基本調査と比較することで検討した。その結果、郵送調査では18~24歳で就業継続希望者が過小に含まれており、25~29歳で中断希望者が過大に含まれていた。インターネット調査は、出生動向基本調査と大差ない分布であった。この理想の働き方と、本人の従業上の地位などの変数との関連の仕方を対数線形モデルやロジスティック回帰分析で比較したが、インターネット調査と郵送調査で有意な違いは見いだせなかった。このような分析結果を総合すると、インターネット調査を行う場合、年齢、性別、学歴という3変数に関しては、クォータ法を使ってあらかじめ割り当てておくことが必要である。今回の分析では、無職と非正規雇用を意図的に過大にサンプリングしたので職種がどのように歪むかはわからなかった。いずれにせよ、分布が既知の重要な変数に関してはできるだけ細かく割り当てを行うことが、インターネット調査の代表性を高める上で重要であることが分かった。また、1変数の分布だけを見れば、若干の歪みが見られるものの、変数間の関連の強さに関しては有意な違いが見られず、一定の有効性があると考えられる。
著者
川久保 秀敏 柳井 啓司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.93, no.8, pp.1417-1428, 2010-08-01

本研究の目的は,単語概念と画像特徴量の関係性をWeb上の大量の画像データを用いて定量的に分析することである.具体的には, (1)Bag-of-Features表現を用いた画像領域エントロピーによる単語の視覚性の分析, (2)位置情報付きの画像の分布を表すジオエントロピーによる単語概念の地理的分布の分析, (3)画像領域エントロピーとジオエントロピーによる単語の視覚性と地理的分布の関連性の分析,を行った.単語の視覚性と地理的分布の両方を分析した研究は,本研究が初めてである.本研究では,230語の名詞と,100語の形容詞について,Webからそれぞれ対応する画像を500枚ずつ収集し,これらの分析を行った.分析の結果, "sun" や "rainbow" など空に関する名詞は,他の単語に比べて画像領域エントロピーが小さく,ジオエントロピーが大きい傾向が分かった.一方,地名・地域名や偉人名に関する単語は,ジオエントロピーが小さく,画像領域エントロピーが大きい傾向にあった.
著者
須子 善彦 小池 由理 村井 純
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.66-77, 2007-10-26

本システムは,イラストやアニメーション等のデジタルアート作品の流通を支援するWebベースのシステムである.本システムでは,世界中のブログを一種のセレクトショップと見なし,ブログを仲介にしたアート作品の流通モデルを実現することで,デジタルアート作品の流通の問題の一部である,1)デジタルアート作晶へのニーズが切迫していない点,2)検索におけるアート作品特有の困難さ,という問題を解決した.a)上記の課題の導出は要件定義段階からアーティストとの協働によるものである点,b)その解決モデルの実現のためのdesign choicesとして,各要素技術の難易度や新規性を求めず,しかしながら組み合わせが斬新で有用である点を重視,c)前述の結果として短期間に一般公開可能なシステム開発が可能となった点,が特徴である.本システムは,一般ユーザに気軽にデジタルアート作品に触れる機会を増大し,ユーザ個々人の趣味・嗜好によって異なった作品発見を可能にした.また,周囲の環境にマッチする必要性など,アート作品特有の検索要件に新たな解を与えた.
著者
松村 多美恵 菅井 勝雄 (1984) 本田 敏明 菅井 勝雄 新妻 陸利 馬場 道夫
出版者
茨城大学
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1984

今回の研究は、IRE-【I】(Ibaraki Daigaku Response Environment-【I】)、IRE-【II】に続くIRE-【III】の開発に関するものである。最終年度である昭和61年度は、昭和59年度および昭和60年度に開発されたタッチスクリーン式コンピュータディスプレイ装置を用いて、実用化に向け、本格的な実験を行うとともに、本システムによる学習効果を実証するため、教材とされた生活単元学習としての「宿泊学習」での実際の宿泊場面や授業場面における児童の行動をビデオに記録し、分析した。具体的には、(1)F養護学校小学部における「宿泊学習」の事前と事後にプログラム学習(ことばと動画の対応、および次の行動の予測の動画選択)を実施した結果、学習成積の改善が見られるとともに、反応時間に関しても、反応時間が短かくなり、標準偏差も小さくなった。(2)児童の宿泊場面における行動を17項目の児童に対する質問調査、25項目のVTR反復視聴分析、および担任教師による21項目の行動評価によって検討した結果、多くの場面で自律性の向上が見られた。(3)実験群と統制群を設定し、実験群にみるプログラム学習を実施したところ、実験群において、生活単元学習としての「宿泊学習」の第1回の授業場面の行動がすぐれていた。すなわち、発語や指さしをしながら積極的に授業に参加している行動が、統制群より統計的に有意に多かった。以上の結果により、本システムの有効性が認められた。従来の視聴覚的方法であれば、宿泊学習のビデオを事前に視聴して、その効果を調査するという方法をとったであろうが、本システムは、場面を分解整理した上、児童自らが、タッチスクリーンに反応し、選択視聴するという方法をとり、児童の大きな興味を引いたように思われる。本結果の一部は、日本教育工学会(1986)において発表された。
著者
横山 美江
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,多胎児の身体発育・発達過程を縦断的に調査し,単胎児との比較から身体発育・発達過程の特徴を明らかにすることを目的とした。その結果,三つ子と単胎児における体重の発育差は,出生時が最も大きく(40%以上の発育差),最初の 1 年で急激に減少するものの,学齢期においても三つ子は単胎児よりも体重が軽いことが明らかとなった。さらに,身長に関しても,出生時に最も差が認められ,最初の 1 年でその差は急激に減少するものの,学齢期においても身長が低いことが判明した。
著者
山口 亨 増田 士郎
出版者
東京都立科学技術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

近年、情報通信技術の急速な進展に伴い、情報インフラストラクチャ整備が進められている。しかし、膨大な情報量に対応する強力で拡張性の高い情報インフラ整備が進み、日々の生活でその恩恵を得る人が増える一方で、病院や家庭内の高齢者・機能障害者(以下、情報弱者と呼ぶ)に代表される、情報技術から疎外され、その恩恵を十分得られていない情報弱者と呼ばれる人々との格差が相対的に進んでいるのも現状である。少子高齢化社会への深刻な進展の中、こうした情報弱者は益々増加するという警鐘が鳴り響く。こうした社会的背景の中、情報バリアフリー・ナチュラルインターフェイスを備え人間を空間的にサポートする人間中心型都市空間の構築は急務である。本研究(人間安心化ネットワーク形成機構と人間性志向分散感覚知能システム)では、情報インフラの整備された都市空間に生活する情報弱者やその他の人々を支援する知的インターフェイスを想定する。情報弱者やその他の人々への日常時の物理的サポートを、携帯情報端末(PDA)による福祉情報や防犯情報の相互伝達と、オントロジー(人間同士のコミュニケーションに見られる共通基盤の工学的表現)を用いた人間意図の共有を可能にするネットワークインテリジェンスにより行い、防犯サイバー都市の実現、更に、福祉防犯PDAを利用したサイバー都市との連携による安全なヒューマン連携型モビリティシステムの実現を目指す。この際、以下の1)、2)、3)について実現し、さらには、1)、2)、3)を統合した全体システムの構築の研究を進めてきた。1)都市情報をPDAにより集め再構成するサイバー都市と情報再構成機構の研究2)構成により得た情報をナチュラルに利用者へ伝える情報バリアフリー・ナチュラルインターフェイスの研究3)再構成情報を用い、利用者を安全に誘導する人間中心型ヒューメインビークルの研究以上の課題の実施により、人間安心化ネットワーク形成機構と人間性志向分散感覚知能システムの実現の成果を得た。
著者
福本 恵美子 川崎 浩二 林田 秀明 古堅 麗子 北村 雅保 福田 英輝 川下 由美子 飯島 洋一 齋藤 俊行
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.176-183, 2007-07-30

指しゃぶりは約半数の乳幼児が経験していると報告されており,その習慣化は歯列に大きく影響を与える.本研究の目的は,指しゃぶりの誘発とその習慣化の要因を明らかにすることである.3歳児健康診査を受診した3歳児(36〜47か月)512名を対象とした横断調査をもとに,指しゃぶりの開始と習慣化に関連する要因について分析した.対象者の36.3%が指しゃぶりを経験していた.3歳児健康診査時において指しゃぶりが習慣化している児の割合は,全対象者の15.8%,指しゃぶり経験者の43.5%であった.指しゃぶり開始の要因解析結果から,有意であったものは「郡部」と「兄弟姉妹の指しゃぶり有」であり,オッズ比はそれぞれ1.67(p<0.05),3.05(p<0.001)であった.指しゃぶり経験者における,その習慣化にかかわる要因解析では,「郡部」「弟妹の妊娠無」「母乳終了月齢12か月未満」で有意な関連が認められ,オッズ比はそれぞれ2.56(p<0.05),5.00(p<0.05),6.14(p<0.001)であった.以上の結果から,指しゃぶりの開始には「郡部」「兄弟姉妹の指しゃぶり有」が誘発要因として挙げられ,指しゃぶりの習慣化を防ぐためには母乳栄養を少なくとも生後12か月までは継続することが重要であることがわかった.
著者
山崎 千恵 天野 絵里子
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.75-80, 2010-02-01

資料保存環境整備部会の活動を中心に,京都大学の図書館における資料保存活動について具体的に報告する。資料保存環境整備部会は,「資料保存環境の点検調査と基準・指針の提示」「資料保存に関する情報の提供と支援(ウェブサイト,職員研修等)」「資料の劣化対策」をその使命とし,2007年に設置され,各種研修や情報の共有化,啓発活動を行っている。部会が設置された背景として,職員が自発的に始めた資料保存ワークショップの活動や,海外での貴重な研修体験を紹介しながら,最後に,専門的な知識や予算が少なくても「できることから」始めることが資料の保存にとって重要であることを提言する。
著者
童 鳳環
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学ユーラシア言語文化論集
巻号頁・発行日
vol.2, pp.121-131, 1999-03-27

金子亨先生退官記念号Homage to Prof. Tohru Kaneko