著者
才田 いずみ INMAN David HARRISON Ric 松崎 寛 川添 良幸 大坪 一夫 HARRISON Richard
出版者
東北大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1995

1995〜1996年度の2年間,メルボルン大学の上級日本語学習者と東北大学日本語教育学専攻の学生との間で,コンピュータ通信による日本語の「文通」を行った。メルボルン側は授業の一環だが,東北側は研究協力やボランティアという形で参加者を得た。両年度ともメルボルンからのメールの働きかけに東北側が応えるという方法で進めた。原則として2週間の日本語授業を1まとまりとして,1限めに読解、,2限めにコンピュータラボでの関連ビデオ試聴やインターネットでの関連新聞記事読解,3・4限でディスカッション,という活動を二巡したところで日本に電子メールを送る。95年度は,東北から返事が来たら,その要約を日本語で書いて提出する,という課題も与えられたが,96年度は学習者のレベルが95年度よりも低めだったため,返信の要約は課されなかった。書き送ったメールは成績評価の対象となった。この活動による学習効果については,日豪双方の学生からの面接調査,日本語の伸びについての学習者の自己評価,担当教師の所見に加え,学習者の通信文の分析から検討した。95年度の学習者の場合,かなりの上級者だったので,日本語で文章を綴ることに対する慣れとコミュニケーションスキルの獲得が促進されたこと,日本語を読む速度が早くなったことなどが自覚された。学習意欲の維持・発展の面でも、真のコミュニケーションを取り入れたことが,通常の作文等の活動に比べ積極的な効果をもたらすことがわかった。また,メールの文章の分析からは,誤用に対しての即効は期待できないながら,化石化して矯正しにくくなっていると見られた誤用が徐々に改善されていく例や,内容的に深いコミュニケーションを行おうとして普段よりも誤用が多くなる例が観察された。後者の学生の場合、通りいっぺんのことを書き連ねるタスクでは力を伸ばすことができないほど能力が高いのだが,そうした学習者には、本プロジェクトのような活動は格好のものと言える。一方,1996年度の学習者は,日本語能力の点で,1995年度に比べて1ランク下に位置する者が中心だったため,95年と同じような形態で通信活動をさせたのでは,タスクの負担が大きくなりすぎて,動機を高めるよりもむしろ負担感とフラストレーションを与えることになると判断された。そこで,1学期の途中からは,1.クラスで勉強したテーマに関する感想,2.そのテーマに関するオーストラリアの事情の紹介,3.東北大学の学生に対する質問,という3つの部分でメールを構成せよ,というガイドラインを学習者に与えることにした。これによって学習者たちは,メールの談話上の構成を整える負担から解放されることになった。こうした枠組みは,逆に言えば,学習者が思うところを自由に綴る機会を制限することにもなるが,96年度の学習者の場合は,たくさん書くということに慣れない時期に,ガイドラインがあったことはよかったようである。学習者レベルが異なると,この通信活動が学習者に与えた実質的・精神的な効果とが大きく違ってくる。まだ詳しい分析は完了していないが,かなり上級のレベルでは,読み手がいて返信をくれるということが「書く」という大きな負荷を乗り越える原動力になりうるが,中の上の学習者にはそれだけでは不十分だと言えよう。95年度の特徴の1つで,豪日双方の参加者に大変好評だったインターネットによる「テレビ会議」も,96年度は人数の点で実施不能となったのだが,96年度の学習者たちにこそ,テレビ会議のような動機維持に貢献する副次的な活動が必要だったのかもしれない。96年度には「漢字Emailer」の機能を強化し,写真や映像が送受信できるようなシステムを作成したが,試用段階での問題点が解決したのが12月だったため,実質的な運用に入ることができなかった。それほど日本語力のない中級学習者の場合には,リアルタイムの「テレビ会議」よりも,繰り返し自分のモニター画面で見ることができる「漢字Emailer」によるパッケージのほうが有効であろう。97年度からは,学習者レベルに対応した通信タスクの与えかたに工夫を加えていくと共に,こうしたプロジェクトの推進力となりうる方策のデザインについても検討を重ねる予定である。
著者
奥谷 喬司 リンズィー ドゥーグル 窪寺 恒己
出版者
日本貝類学会
雑誌
ちりぼたん (ISSN:05779316)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.32-36, 2007-08-31

ヒレギレイカCtencpteryx siculus (Verany,1851)は沖合性で稀にしか採集されない小型のイカである。鰭があたかも魚類の鰭のように軟条で支えられているように見える風変わりなイカで,固定標本を見ると大抵軟条間の薄膜は切れぎれになっているところからヒレギレイカ(瀧巌)の和名がある。筆者の一人(D.L.)は昨年3月,房総半島鴨川沖で,スーパーハープ・ハイビジョンビデオカメラを搭載した無人探査機ハイパードルフィンによって,世界ではじめて本種の遊泳する姿を観察・撮影した。映像に撮られた証拠標本はハイパードルフィン装備のスラープ・ガン(吸引式採集器)により採集した。
著者
石田 敏彦
出版者
名古屋大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1999

1.分子レベルでの気泡モデルの改良本研究では単一気泡の内部を分子レベルで扱い,気泡界面の境界条件は従来の連続体の方程式であるKellerの方程式にしたがって決定するモデルを構築したが,気泡界面での水分子の蒸発と凝縮は組み入れられていなかった.また,以前のモデルで確認された気泡内部の衝撃波は,実際には界面での熱伝達により存在しないとも考えられた.今年度ではさらにモデルを改良して,界面での水の蒸発と凝縮,しいては熱伝達と質量流入を考慮し,境界条件も界面での蒸発と凝縮を考慮したYasuiの方程式に変更することで,最近報告された気泡内部における分子種の分布の変動や非平衡状態をシミュレートすることを可能にした.得られた結果では,気泡運動半径,気泡内部の温度,圧力の分布は他の研究者によるシミュレーション結果と一致したが,衝撃波らしき急激に変動する圧力分布が見られ,現在有力視されているソノルミネッセンス発生メカニズムの理論を裏づけるには到らなかった.今後,内部の水分子の解離や希ガス分子のイオン化を含め,より詳細に発生メカニズムの解析を行っていく予定である.2.発光の実験条件への依存性調査昨年度作成した実験装置により,単泡性ソノルミネッセンスから多泡性ソノルミネッセンスへの遷移を確認することができた.本研究では計上した熱電対による水温のモニター,及び計上したポータブルイオン・pH計によりpH値を予定していたが,既に実験で得られているpHの変化量が予定したポータブルイオン・pH計の分解能以下であることが判明し,購入および実験を断念した.しかし,ソノルミネッセンス発生の温度依存性,音圧条件と単泡性から多泡性ソノルミネッセンスへの遷移領域は現在も未知の部分があり,今後も多泡性および単泡性ソノルミネッセンスの差異の支配する要因を計測する手段を開発することを目指す.
著者
土生田 純之 酒井 清治
出版者
専修大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究では古墳時代東日本の渡来系文化が西日本にさほど遅れることなく導入されていたとの認識のもとに、実体・その後の展開の解明にあたった。その結果、渡来系文化の導入地については面的というより点的な分布を示すこと、その後在来文化の中に吸収・解消されて実体がなくなるものの他に、永く影響を与えて残存するものなどが見られた。このうち、渡来系文化の受容地が面的ではなく、点的な広がりにとどまるという点については、西日本が概ね前者の形態をとることに対する大きな相違といえ、このことがこれまで当地の渡来系文化の受容に対する(著しく受容が遅れるという)誤解を生んだのではないかと思われる。また点的な分布の中でも長野盆地では前代の弥生時代から渡来系文化の受容が引き続いており、日本海を通じた直接的な交流も想定される。これに対して積石塚や竈付き住居に見られる渡来人の存在については、自由な往来と言うよりも、在地権力の規制のもとでの移動・定住が想定された。しかしこうした在地権力の動きが畿内のより大きな権力の影響下にあったものか、それとも各在地権力自身の自発的な活動によるものかまでは明確にできなかった。総じて渡来系文化の受容はこれまで考えられていたよりも相当遡上した時期に始まること、しかしその分布は点的な存在にとどまり、在来文化の中に吸収・解消されることの多い点が西日本との目立った相違といえよう。また明確に渡来系文化の継続的な導入が認められる北限は仙台平野であり、直接的導入の濃密な北限は福島県郡山盆地が考えられる。
著者
石丸 紀興 李 明 岡河 貢
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.67, no.557, pp.339-345, 2002
参考文献数
21
被引用文献数
2 4

The activities of Kenzo Tange and their contribution to the reconstruction of Hiroshima in the period right after the war is studied in this paper. It is well known that lots of discussion about Kenzo Tange can be found so far beginning from the Peace Park of Hiroshima. Most of those discussions about Kenzo Tange were introducing his respective works or analyzing his design from a view point of the context of the history of architecture of Japan or the world. The architectural activities of Kenzo Tange in the period of reconstruction of Hiroshima are studied in this research, and not from view point of Japan or the world, his contribution to proposition of reconstruction plan and design activities is discussed considering the development of the reconstruction in that period. As the first one of a serial research, more detailed discussion about the land use plan proposed by Kenzo Tange is performed in this paper based on investigation of the literatures. Firstly, the decision process of the reconstruction plan of Hiroshima is studied and some confirmation and complementation about the contribution of Kenzo Tange to this plan are presented. Secondly, as for the discussion about the proposition of Kenzo Tange to the reconstruction plan, his contribution to the Functional Area Principle is studied.
著者
宮崎 賢太郎
出版者
長崎純心大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究は日本人のキリスト教(主としてカトリック)理解と受容に関する調査研究の一部をなすものである。日本人とキリスト教のかかわりは、キリシタン時代(1549-1644)、潜伏時代(1644-1873)、明治6年の実質的なキリスト教解禁以後の復活キリシタン(現在のカトリック)と、キリスト教解禁後も復活しなかったカクレキリシタンという4つのステージに分けて捉えることが適切と思われる。調査者は従来カクレキリシタンの実証的調査研究に20年あまり従事し、またキリシタン時代および潜伏時代に関する文献による考察もある程度進めてきた。本研究は明治6年以降復活したキリシタン伝統を受け継ぐ比較的郡部・離島地域に住む信徒と、都市部において新しくカトリックに改宗した比較的インテリ層に属するカトリック信徒の間に相違が認められるのか、認められるとすればどのような相違かという問題意識を持って取り組んだ。カクレキリシタンがあれほどまでに土着信仰と習合していることからして、キリシタン伝統を受け継ぐ信徒の信仰はかなりの程度日本的に変容しているであろうとの仮想の下に研究を進めたが、意外にも都市部のいわゆる新信者との間に大きな差異は認められなかった。その原因はカトリックというグローバルな普遍宗教の持つ一枚岩的な性格にもよるであろうが、明治初期からのフランス人パリミッション会の司祭団の日本における徹底した厳格な保守的カトリック司牧の影響が今にいたるまで強く残存していることである。日本人信徒たちも神への信仰というよりはむしろはるばる渡日し献身的に尽くしてくれた外国人宣教師たちの御恩に報いるために、いかなる厳格な教えであっても従順に従って見せようとした。それゆえ日常の信仰生活からは信仰の喜びは感じられず、司祭から与えられた義務を忠実に果たすだけの「お勤め信仰」となっている。新たなカトリック改宗者が少ない原因もここにあるといえよう。
著者
黒木 進
出版者
広島市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本年度は、以下の項目について研究を行った。(1)プロトタイプシステムの構築と評価前年度までに行ってきたプロトタイプシステムの構築を引き続き行った。本年度は特に、多次元インデックスの構築と改良を中心に行った。本研究においては、位置や時刻は数値化された座標として表現されている。よって、データベースに蓄積されたテキストは、それぞれが含む位置や時刻を表す語句を数値化して表現された多次元空間の座標値によって参照される。そのため、テキスト集合に対して時間的、あるいは位置的な検索を行う際には、数値化された多次元空間の座標値に関する多次元インデックスの効率化が重要である。このような観点から、多次元インデックスの構築法について研究を行った。ツリー型のインデックスを想定して、ツリーのノードの持つデータの種類と個数に関して検討を行い、1ノードあたりのデータ量を圧縮することによって、検索に要するデータアクセスの回数と時間に関する効率化を図ることができた。また、この考えをさらに発展させて、より次元の高い多次元インデックスを用いる画像の検索にも応用を試みた。(2)位置や時刻に関する知識の発見テキストに含まれる位置や時刻を数値化するためには、これらの情報を数値に変換するための規則が必要である。しかし、初見の位置や時刻については、そのような規則による変換を行うことができない。そのため、文脈情報を利用してそのような規則を推定しなくてはならない。そこで、テキスト中に出現する初見の位置や時刻とその他の位置や時刻の共起関係を基にして初見の位置や時刻を推定する方法について検討を試みた。しかし、これについてはあまりよい結果が得られなかったので、今後引き続き検討を行いたいと考えている。
著者
小西 いずみ
出版者
日本語学会
雑誌
國語學 (ISSN:04913337)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.30-44, 86, 2001-09-29

富山県笹川方言における形容動詞述語形式には,名詞述語と同形の「〜ジャ/ジャッタ/ジャロー」等とともに,名詞述語とは異なる「〜ナ/ナカッタ/ナカロー」等がある。「〜ナ」は連体用法のほかに終止用法も持ち,また「カ」(疑問の「か」)や「ミタイナ」(みたいだ)が後続する場合にも使われるが,「〜ジャ」は終止用法しか持たない。また,終止用法では,「〜ナ」は詠嘆文で,「〜ジャ」は真偽判断文で用いられやすいという違いがある。そこで,「〜ナ」は,形容詞の「〜イ」形と同じように,テンス・モダリティに関して無標の形式であり,「〜ジャ」は〈断定〉を表す有標の形式であると考えられる。「〜ナカッタ/ナカロー」などの形式は「〜ナ+付属的用言カッタ/カロー/…」,名詞述語と同形の形式は「語幹形+付属的用言ジャ/ジャッタ/…」と分析できる。以上から,この方言の形容動詞は,名詞とは異なる述語形式もとるものの,類型論的には名詞的性格が強いと言える。
著者
岡本 健
巻号頁・発行日
pp.105-108, 2010-05-29

日本情報経営学会(JSIM)第60回全国大会予稿集. 平成22年5月29日~5月30日. 北星学園大学. 札幌.
著者
長屋 幸助 小島 多香子 細谷 俊介 葛 徳梁 安藤 嘉則
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
Dynamics & Design Conference
巻号頁・発行日
vol.2004, pp."753-1"-"753-6", 2004-09-27

Changing diapers hurts prides of the patient, so that a panty type toilet that can be worn to the patient is of importance., in which feces and urine are washed automatically. One of the panty type toilets has been reported. In the report, however, the principle of the toilet was only discussed, and so it cannot be used in practice, because of lack of production process. In addition, since the clamp up pressure to the body was not controlled, it often gives pains to patients. The present article gives a method of producing the panty type toilet, and a new rotary type electromagnetic valve, and a method of pressure control is presented. To have cheaper toilet, this article also provides a device of detecting faces and urine by using a humidity sensor. Some demonstrations are performed for the toilet made in this experiment.
著者
三井 誠 大澤 裕 酒巻 匡 長沼 範良 井上 正仁 松尾 浩也
出版者
神戸大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1990

本研究の目的は、犯罪の捜査および立証の両面における科学技術の利用の実態を明らかにするとともに、比較法的・理論的分析を踏まえて、その適正な限界や条件を検討し、刑事訴訟法上の解釈論的・立法論的提言をおこなおうとするものである。3年間の研究期間を終了し、本年度においては、以下のような成果を得ることができた。1.2回の研究会を開催し、研究分担者が検討中のテーマならびに既に論文を執筆ないし公刊したテーマにつき、報告を行い、全員で討議した。 従前の研究状況を総賢して、刑事手続法上の問題点を抽出して検討を加えた個別テーマとして、次のものがある。「毛髪鑑定とその証拠能力」「強制的な体液の採取に附随する刑事手続法上の問題点」「筆跡鑑定とその証拠能力」「検証としての写真撮影とこれに対する不服申立の可否」「情報の押収」2.内外の関係文献・識料の収集・整理の作業を継続した。内外ともに関係資料・論文の増加が著しいため、文献目録の追補・改訂作業を開始し、進行中である。3.各研究分担者が、担当テーマにつき研究論文を執筆ないし執筆準備作業中である。主要なテーマについては、既に公刊されたものも含め、平成5年度中に発表(大学紀要・法律雑誌等)が完了する予定である。4.研究進行中の最大の問題は、進歩の著しい科学的捜査・立証手段それじたいの正確な理解を得ることに相当の時間を必要とする点であった(例えばDNAによる個人識別法の原理と手法)。現在までの具体的成果は、主として個別的な捜査・立証手段の問題点の分析となっているが、今後は、それらに共通する法律上の問題点の抽出と統一的な視角からの分伏が課題となると思われる。
著者
太田 出
出版者
神戸商科大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
2000

今年度は本研究課題に関わって8月3日〜19日まで中国北京、9月1日〜7日まで台湾台北で海外調査を行った.北京では、社会科学院歴史研究所に赴いて中国人研究者と交流を深めると同時に、第一歴史〓案館・国家図書館(旧北京図書館)・首都図書館で監獄・警察・裁判関係の史料を閲覧・複写した。また台北では、短期間であったが、中央研究院で同様の史料を閲覧・複写した。国内では、12月末に東京大学東洋文化研究所に赴き、広西省の模範(モデル)監獄など監獄関係史料を中心に閲覧・複写した。以上が本年度の史料調査の概要であるが、筆者の勤務先の変更もあって十分な時間を確保できず、当初の予定すべてを行うことはできなかった。今後の課題としたい。また今年度は昨年度に複写・蒐集した史料の読解・分析作業も同時に進めた。成果の一部は後掲の雑誌論文「「自新所」の誕生-清中期江南デルタの拘禁施設と地域秩序-」(『史学雑誌』111-4、2002)で公開する予定である。これは監獄に関わる調査の中で入手できた史料群に分析を加えることで、これまで全く未解明であった授産更正的な拘禁施設=自新所の実態を検討し、その誕生が刑罰制度や地域秩序の有り様と如何に関わっていたかを考察したものである。このほか監獄関係については興味深い史料を多数蒐集できている。今後さらに分析を進めていく予定である。犯罪現象については、京都大学人文科学研究所(明清班、班長岩井茂樹)において研究成果の一部を「清前中期江南デルタ社会と犯罪抑圧の変遷-労働力の流入、犯罪そして暴力装置-」と題して口頭発表した。これは犯罪抑圧の研究を江南デルタ開発の全体史の中に位置づけようと試みたものである。
著者
金井 利之 岩橋 健定 斎藤 誠 高橋 裕 島村 健 金井 利之 國島 正彦
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

公共事業コントロール法の重要論点については,(1)公益確定手続に関して、政策評価,公共事業再評価,パブリック・インボルヴメントについて,国内の現地鯛査を踏まえた研究を進めた。(2)環境配慮に関して,環境影響評価,戦略的環境アセスメント,景観アセスメント,米国の湿地保誕法制に関する調査を行い,その公共事業策定手続への統合の可能性を検討した。(3)公共工事施行過程に関して,受注者選定手続・契約形態・支払方法の多様化,独占禁止法による談合抑止,企業内によるコンプライアンス体制の構築策について検討を進めた。土地利用規制をめぐっては、都市計画争訟手続,都市計画と時間の経過,建築確認制度,景観法の検討の他,米国,ペルーなどの現地調査を踏まえた比較法的研究も行った。特に,都市計画争訟手続については,具体的な立法的提案を可能とする成果が得られた。さらに,都市計画への環境配慮の統合,国立公園などの形での政府による財産権取得を通じた土地利用規制についても検討した。公共事業と土地利用規制が交錯する場面としては,計画間調控,地方自治体の制度改革,破綻処理についての研究を進めた。さらに,空間設計という視点から,公共事業手続と土地利用規制とを自治体のレベルで集約する可能性について検討した。以上の研究は,諸外国の研究成果や事例を踏まえて目本の事例を比較検討するとともに,法学,工学,政治学,経済学の各手法を取り入れる学際的手法によって行った。
著者
竹内 孔一 松本 裕治
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.500-509, 1997-03-15
被引用文献数
11

本論文では日本語形態素解析システムにHMM (Hidden Markov Model)を適応する手法について提案する.日本語では英語と異なり,わかち書きがされていないため,HMMパラメータの初期確率を等確率にした単純な学習では精度が上がらない.よって以下の3つの手法に対するHMM学習の効果について実験を行った.1)初期確率の影響.2)文法制約の導入.3)スムージング.最初の実験から初期確率については少量であっても正確なタグ付きコーパスから獲得することがHMM学習に大きく効果があることを明らかにする.次に文法による制約と確率の再推定におけるスムージング化を行った場合,人手により整備されている日本語形態素解析システムと同等以上の解析精度が得られることを示す.This paper presents a method to apply Hidden Markov Model to parameter learning for Japanese morphological analyzer.When we pursued a simple approach based on HMM for Japanese part-of-speech tagging,it gives a poor performance since word boundaries are not clear in Japanese texts.We especially investigate how the following two information sources and a technique affect the results of the parameter learning:1)The initial value of parameters,i.e.,the initial probabilities,2)grammatical constraints that hold in Japanese sentences independently of any domain and 3)smoothing technique.The first results of the experiments show that initial probabilities learned from correctly tagged corpus affects greatly to the results and that even a small tagged corpus has an enough effect for the initial probabilities.The overall results gives that the total performance of the HMM-based parameter learning outperforms the human developed rule-based Japanese morphological analyzer.