著者
後藤 貴文 平山 紀友 上野 英雄 岩崎 渉
出版者
九州大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

ウシの正確なバイタルデータの検出および最適な牛の健康状態管理を実現するため、ウシの体内埋め込み型のセンシングデバイス、いわゆるインプラントセンサー/アクチュエータの実現に向けた研究開発を行った。従来の外付けの機器ではなく、体内に埋め込み可能なインプラント型の機器を実現することで、ウシにも人にも優しいスマートな畜産営農を実現させる繁殖牛管理や放牧牛等管理の礎とする。本研究は、IT関連の民間企業と協力して開発したものであり、工業用の温度センサ-を活用してインプラントにより,牛の体温をリアルタイムにPCで把握することが可能となった。本成果は、ウシ管理の省力化と効率化に貢献するものと強く確信する。
著者
河合 祥一郎
出版者
東京大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1997

本研究は、すでに平成9年度の時点でエリザベス朝の膨大な数の戯曲のデータベース化の5割程度を完成し、平成10年度はその継続に当たった。しかし、昨年度の時点で、これまでエリザベス朝研究の土台となってきたE.K.ChambersのThe Elizabethan StageおよびG.E.BentleyのThe Jacobean and Caroline Stageを抜本的に見直す必要があることが判明し、その方策を模索していたところ、ちょうどChambersやBentleyを書き直すようなAndrew Gurrによる新しい研究The Shakespearian Playing Companiesが刊行され、このため本研究は大幅な見直しを迫られることとなった。本研究をいずれ『イギリス・ルネサンス演劇事典』として公表する当初の計画に変更はないが、その実現には更に数年を要すると予測される。これとは別に、現在未発表の英語論文「ルネサンスにおける変装」を日本語の図書の形で公表する予定でいるが、この論文についても、「主体」の問題が現在文化唯物論批評と伝統的人文主義批評の間で大きな理解の齟齬を産んでいるために、この問題を一般に受け入れられる形で分析するためには極めて慎重に進めてゆく必要がある。特に変装と主体のテーマは演劇のみならず哲学・思想にも深く関わる点が研究を進めてゆくうちに一層確認されてきているために、容易な姿勢はとれない。幸いにして1999年度のシェイクスピア学会で変装と主体のテーマでセミナーを開く責任者に任じられたので、学会活動なども通じて本研究を更に発展させ、できるだけ早いうちにその成果を公表したいと願っている。
著者
余 健
出版者
三重大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

今年度の目的は、過去2年間に行ったアクセント調査のデータを整理し、考察を深めることにあった。分析基準を確定することに手間取り、更なる詳細な考察は今後の課題であるが、ひとまず全体的な特徴として以下の点が明らかになった。F0最大値とF0最小値の差の平均値やFO曲線図より、どのアクセント型も北摂と南河内における若年層より高年層の方が、高低の起伏の大きいことを認められた。特に低起式無核においては、若年層より高年層の方が約3倍、抑揚が大きく、生理的な自然下降に反して上昇しようとする京阪式アクセントの力強さを典型的に表現しているものといえるだろう。また、高起式無核における気づきにくい方言音声の特徴として、「右肩下がりの自然下降の度合いが大きいほど、伝統的な京阪式アクセントの高起式無核に聞こえる」という仮説を提示した。この点については、今後聴覚実験を行い検証したい。一方で、1拍名詞の上昇調や下降調、そして2拍名詞の拍内下降調も含めた京阪式アクセントらしさの象徴である急激な上昇や下降は、南河内高年層>北摂高年層>南河内若年層>北摂若年層の順でなくなりつつあるというのが、実情のようである。この背景には、北摂地域の「人の流動性の強さ」という言語外的な要因と特に低起上昇音調の特徴が弱まりつつあるという点に関しては、生理的な自然下降に逆らう低起上昇式の有標性の言語内的な要因を想定し得る。
著者
渡邉 志 松本 有二 塚本 博之
出版者
静岡産業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

自律神経活動推定および主観評価測定を組み合わせることにより、学校における健康相談活動を支援するシステム構築に必要となる基礎的事項の開発を試みた。そのため、自律神経活動推定については脈波を測定した結果を解析することにより実施し、もう一方の主観評価については、Visulal Analog Scaleを応用した質問紙および我々が開発したiPadアプリにより測定した。その結果、学生生徒の微妙な感情をこれら二つの指標の複合体として表現できる示唆が得られた。
著者
高野 健人 中村 桂子 木津喜 雅 清野 薫子 森田 彩子 杉村 正樹
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

社会的凝集性、集団的エフィカシーならびに帰属意識について、指標分析、キーインフォマントインタビュー、住民調査を実施し、居住地域に対する帰属意識を形成する都市の社会的物理的な環境条件、市区町村レベルの疾病傷病リスクと社会的凝集性、集団的エフィカシーおよび帰属意識を含む地域関連指標との関連と、各要素の寄与を検証した。市区町村レベルの地域健康関連指数を作成し、住民の健康水準と地域指標の関連モデルを得た。全国の市区町村を悪性新生物、糖尿病および脳血管疾患、心疾患、不慮の事故の4分類による健康指標とその差について分析を行い、健康指標水準の差異と健康関連要因指標の差異の関連を明らかにした。
著者
野村 俊明
出版者
信州大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

1 銅(11)などと錯体を形成するジフェニルカルバゾンやジフェニルカルバジドを水晶発振子上に塗布した場合、pH緩衝液によりわずかずつ溶出し、繰返し実験に耐えない。銅(11)錯体としての塗布は、溶出がほとんどなく、EDTA溶液などの溶離剤を用いれば、銅(11)と反応して重量を変化させるが、付着した銅(11)が次第に溶出するので、感度が悪い上に再現性も悪い。サリチリデンジアミノベンゾフランをアセトン溶液にして水晶発振子上に塗布した場合、pH緩衝液による溶出は認められず、亜鉛(11)と反応して非常に大きな振動数変化を与えるる。しかし、付着した亜鉛(11)に対する適当な溶離剤がないので、定量には用いられない。酢酸セルロースとの等量混合溶液として塗布し、溶離剤として0.01M硝酸溶液を用いれば、試薬のみの時よりも感度は悪くなるが再現性よく亜鉛(11)を定量できる。2 サリチリデンジアミノベンゾフラン-酢酸セルロースを塗布した水晶発振子をフローセル装着し、0.01Mベロナールナトリウム-塩酸緩衝液(pH8.4、試薬ブランク液)を流速4.4ml.【min^(-1)】で流し、振動数を一定(【F_1】)にする。つぎに亜鉛(11)試料溶液(pH8.4)を5分間流したのち、再び試薬ブランク液を流して振動数を一定(【F_2】)にする。亜鉛(11)による振動数変化量(【F_1】-【F_2】)と、あらかじめ求めた検量線とから亜鉛(11)量を求める。付着した亜鉛(11)は0.01M硝酸溶液を約10分間流して除去し、つぎの実験に備える。3 この定量法によりμΜ濃度の亜鉛(11)が簡単迅速にしかも再現性よく定量できる。本法の確立により、水に不溶でしかも金属イオンと特異的に反応する有機試薬は、酢酸セルロースなどの樹脂との混合物として塗布することにより、水中の微量金属イオンを特異的に定量するための塗布剤として利用できることがわかった。
著者
馬場 章 吉見 俊哉 佐藤 健二 五百旗頭 薫 北田 暁大 研谷 紀夫 添野 勉
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-10-21

本課題では、明治維新期から日独防共協定締結期、すなわち、1860年代から1930年代を対象に、日独交流の歴史を3期に分けて、日独関係史の再構築を行った。従来の日独交流史研究は、主として両国の政治家や学者の文献資料を基に描かれて来た。それに対して、本課題では、ドイツと日本の両国において歴史写真をはじめとするメディア資料と関連文献資料の調査・収集・分析を行い、日本とドイツ両国の国民の視点を重視した。ドイツにおける調査では、とくに、トラウツ・アーカイブ(ボン大学所蔵)、グラウ・アーカイブ(ヘルムート・グラウ氏所蔵)に重点を置おいて、写真資料・映像資料と関連する文献資料の調査を行った。
著者
本間 経康 高井 良尋 吉澤 誠 成田 雄一郎
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

放射線治療において,肺腫瘍などの位置・形状変動(動態)に応じた連続追尾照射により治療効果向上と副作用低減を汎用機を用いて短時間で実現するための必須要素技術である,腫瘍の3次元動態の画像計測法とその変動予測法の開発を行い,臨床上有用な性能を達成した。とくに,呼吸統制による呼吸変動予測性能を制御工学的に解析し,より患者負担が少なくかつ効果的な統制法に関する知見を得た。また,リアルタイム適応追尾照射法が実現された場合の効果について,治療計画システムを用いた線量解析を行った。その結果,従来の移動全領域照射法,同期(待伏せ)照射法などと比較し,提案追尾照射制御の有効性を明らかにした。
著者
北中 千史 根本 建二 佐藤 篤
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究ではグリオブラストーマ幹細胞を非幹細胞に分化誘導できる薬剤の探索を行った。その結果、糖尿病治療薬であるメトホルミンがFoxO3a活性化によりグリオブラストーマ幹細胞を非幹細胞化することを見出した。また、グリオブラストーマ幹細胞維持にシグナルキナーゼJNKが必須の役割を果たしていることを見出し、JNK阻害薬がグリオブラストーマ幹細胞を非幹細胞化する作用を有することを明らかにした。
著者
堀部 直人
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

昨年度までのニューラルネットワークを用いたコンピューターシミュレーションならびにキイロショウジョウバエを用いた研究に引き続き、運動における記憶の効果、ならびに多様な運動の生成機構を解析するため、自律運動を行う油滴の運動について解析を行った。この油滴は無水オレイン酸とニトロベンゼンを混合したものであり、pHを調整した微量の界面活性剤を含む溶液中で不規則な運動を行う。これは、単純な履歴情報を用いて運動するシンプルな系であり、運動における記憶の効果を調べるのに適したものである。キイロショウジョウバエと同様の解析を行った結果、油滴からもLevy walkを見いだすことで、効率の良いとされる運動の生成にさほど記憶情報を参照する必要がないことを示した。さらに、油滴の運動軌跡を自己組織化マップを用いて分析し、運動要素を特定、油滴の形と対流との相互作用で多様な運動要素が生成されることを示した。複雑な運動が、さほど記憶情報を用いることなしに生成されていることを示すとともに、油滴の形といったなんらかのパラメーターを変化させるだけで多様な運動が生成されうることを示している。小数のパラメーターを調整することで、記憶情報に頼らずに複雑で多様な運動を次々と生成していくことは、生物の適応的な行動にとっても重要と考えられる。本研究は、この機構がシミュレーション上ではなく、実際に存在する物理系で起こることを発見したという点で、新奇で意義深いものである。
著者
堀 智英 上本 伸二 加藤 琢磨
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

従来よりUV照射による抗原特異的な制御性T細胞が誘導できることが報告されていますが、これらの報告ではUV照射後に抗原に感作を行っており(前照射・後感作)、そのメカニズムについてはC4+T細胞を介してTh1からTh2へ偏向することにより説明されています。我々は申請時のプロトコールどおりに各レシピエントマウスから精製したCD4+T細胞と、ドナーの脾細胞とのmixed lymphocyte cultureを行い、培養上清におけるサイトカイン産生について解析し、従来のUVに関する報告と異なりIL-4の有意な産生は全く認めませんでした。そこで、前感作・後照射による感作抗原特異的な免疫抑制のメカニズムが従来のTh2へ偏向ではないことを証明するために、IL-4,IL-10,IL-5,IL-13,IFN-γ,IL-2について解析を行い、これまでの報告と異なり、Th2へ偏向ではなくIL-10のみを感作抗原特異的に高濃度に産生することを証明しました。さらに、抗原特異的な免疫寛容作用を有するCD4+T細胞について、その誘導および機能に関してのIL-10依存性を解析するために、UV照射の前後1日に抗IL-10抗体で処置したマウスおよびCD4+T細胞をナイーブレシピエントに移入する際に抗IL-10抗体を同時に投与し、その場合には免疫抑制効果は失われました。我々の抗原感作後にUV照射を行う系(前感作・後照射)では、感作抗原に一致してドナー抗原特異的なグラフトの生着の延長及びproliferation assayでの抗原特異的な免疫抑制が得られました。今回、感作した抗原に特異的なTr1様の免疫抑制性T細胞をUV照射により誘導でき、従来の報告と大きく異なりTh2偏向のメカニズムではなくIL-10のみに依存性にCD4+T細胞を介して免疫抑制効果を得ている点を証明でき、以下の論文に発表しました。
著者
中富 康仁
出版者
大阪市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

CFS患者9名と健常者10名の脳を11C-(R)-PK11195を用いてPET検査で比較した。11C-(R)-PK11195はグリア細胞におけるTSPOと結合し炎症が起きた場所を可視化することができる。患者の脳内では主に、視床、中脳、橋、海馬、扁桃体や帯状回という部位での炎症が増加しており、炎症が強い患者ほど強い疲労感を訴えることが分かった。さらに、炎症が起きた部位とCFS/MEの各症状には相関があり、視床、中脳、扁桃体での炎症が強い場合は認知機能の障害が強く、帯状回や視床の炎症が強いほど痛みの症状が、また海馬での炎症が強いほど抑うつの症状が強いことが明らかとなった。
著者
尼岡 邦夫 矢部 衞 仲谷 一宏
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

本研究は1995-1999年に実施された千島列島の生物多様性に関する国際共同学術調査において採集された魚類標本約13,000個体を対象に系統分類学的および生物地理学的に精査し,千島列島に生息する魚類の種多様性の実態を解明する目的で行われた。本研究の結果,以下に示す研究成果を得た。1.千島列島全域にわたる15島で採集された浅海性魚類を分類・査定した結果,未記載種4種,原記載以来初記録種2種および西部北太平洋初記録種2種を含む5目14科60種を確認した。2.未記載種4種(Icelinus sp., Microcottus sp., Porocottus 2 spp.)はいずれもカジカ科魚類であり,前2種については新種として命名・記載種ための論文をすでに学会誌に投稿した。3.千島列島中部で得られたタウエガジ科Alectridium aurantiacumおよびカジカ科Sigmistes smithiを詳細に記載し,西部北太平洋初記録種として学会誌に発表あるいは投稿した。4.千島列島中部で得られたゲンゲ科Commandorella popoviおよびカジカ科Archaulus biseriatusは原記載以来の初めての記録に当たる希少種であることが判明した。5.本研究で確認された千島列島の浅海性魚類について列島内での分布パターンおよび周辺海域での出現状況を基に生物地理学的に解析した結果,千島列島のURUP島以東とITRUP島以西で浅海性魚類の種組成が著しく異なること見出し,この間に生物地理学的境界が創成されているとの結論を得た。6.本研究課題の研究成果をまとめて報告書を作成するとともに,本研究で扱った千島列島産の魚類標本を北海道大学水産学部生物標本館に学術標本として登録し,データ・べース化を図った。
著者
牧野 芳大 馬 紹平
出版者
大分大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

日本脳炎ウイルス(JEV)は、そのC-prM遺伝子領域(240塩基)による分子系統樹解析およびそのウイルスの分離地をもとに4つの遺伝子型(G1〜4)に分類される。日本国内のJEVの遺伝子型は従来G3型に属するとされていた。しかし、1994年頃を境にG3型からタイ北部の株に属するG1型と交代していることが明らかになり、JEVが海外から持込まれた可能性が示唆された。大分、長崎、沖縄、大阪、石川、東京で1965-2001年に分離された23株について、JEV遺伝子のC-prM遺伝子領域の塩基配列をもとに分子系統樹解析を行ったところ、従来のG3型は時間的経過と共にA, B, C, D, E1, E2のクラスターに分類された。次に、これらのクラスター間の抗原性の差異について検討するため、大分県で1981〜2003年に分離された、異なるクラスターのJEV6株と大分県内で飼育され、JEVに自然感染したブタ血清検体(20検体)を用い、ベロ細胞を用いた50%プラーク減少法による中和試験を行った。各ウイルスによる20検体の血清抗体価の幾何平均値間の多重比較による有意差検定を行った。その結果1981年の株は1989年の株との間に有意の差が見られた。また、1989年の株は1995年の株および2003年の株との間に有意の差が見られた。尚、1995年の2株の間にも有意の差がみられた。しかし2003年の株は1995年の株および1981年の株との間に有意の差は認められなかった。C-PrMによる系統樹分類は中和試験に関与するエンベロープによる系統樹と類似することが報告されている。本研究では、中和試験による各系統間の差は明確ではない。しかし、1980年代前半、後半および1990年代以後のJEVで中和反応に関与するウイルスの抗原性にわずかな差が見られる。異なる抗原性をもつJEVの国内持込に対し継続した監視が必要である。
著者
松野 泰也 谷川 寛樹 藤本 郷史 村上 進亮 中島 謙一
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、世界全体での鋼材のダイナミックMFAを実施した。具体的には、鋼材の最終用途(自動車、土木、建築、機械など)に関して2050年までのストック量を推計するとともに、需要量、使用済み製品からのスクラップ発生量を推計した。統計データ等ダイナミックMFAを実施するためのデータが得られない地域に関しては、夜間光衛星画像やGISを用いて、ストック量を推計した。さらには、国際貿易に伴う取引量(グローバルマテリアルフロー)を推計するとともに、途上国でのスクラップの回収状況を調査、推計することで、将来需要を鑑みたスクラップの利用に関して提言を得た。
著者
濱島 ちさと
出版者
国立研究開発法人国立がん研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

CTやMRIが過剰供給される一方でマンモグラフィの供給は充足していない可能性が示唆された。ピロリ菌保険適応となって以来、導入前と比べヘリコバクターピロリ感染関連検査は2倍に増加し、胃炎・十二指腸炎の有病率は45-64歳で増加した。がん検診の過剰診断の推計方法には、無作為化比較対照試験、コホート研究、時系列研究、モデル評価が用いられるが、算出方法は標準化されていない。胃がん年齢調整死亡率は、胃内視鏡検診を行っている新潟市に比べ胃内視鏡検診を行っていない新潟市以外の市町村で減少割合が大であった。新潟市では他の市町村に比べ死亡率減少の割合が大きく、進行度1の罹患率が高いことから過剰診断が示唆された。
著者
田崎 直美
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究は占領下(1940-44年)パリにおける音楽活動状況を解明する一環として、当時新設されたパリ市芸術総監本部(パリ市芸術局)が独自に行った音楽政策を調査し、その実態と意義を考察した。その結果、(1)定期演奏会事業を市として初めて実施することで積極的な現代フランス音楽促進を図っていたこと、(2)第三共和政期から続くパリ市音楽コンクールを継承することで音楽による「国家」シンボル確立に貢献しようとしたこと、が判明した。ただしこうした努力は、ヴィシー政権からもパリ解放後の市民からも評価されることはなかった。
著者
立川 真樹 松島 房和 久世 宏明
出版者
東京大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1992

原子分子の共鳴線を用いたレーザーの長期周波数安定化は、モードジャンプを抑制して干渉計を安定に連続運転するために必要不可欠であるとともに、将来宇宙空間において観測可能になるであろう超低周波重力波にも対応しうる干渉計を開発するうえでも重要な要素技術である。我々は、極低温イオンの超高分解能スペクトルを利用した干渉計用レーザーの長期周波数安定化を目的として、原子イオンのトラッピングとレーザー冷却を行った。RF(Paul)トラップに蓄積したMg^+に288nmの紫外光を照射したところ、レーザー冷却効果を反映してドップラー幅が著しく狭窄化された蛍光スペクトルが観測された。このスペクトルは、イオンの共鳴周波数よりも低周波側でピークを持ち、高周波側では急激に減衰する非対称形になるものが特徴である。我々は、レーザー光の輻射圧による冷却効果とRF電場下でのイオン同士の衝突による加熱効果を考慮したモデルを導入し、イオン運動の解析を行うとともに、観測されたスペクトル形を精密に再現した。その結果、イオン運動はスペクトルがピークを持つときに最も冷却されており、温度に換算して1K程度になっていることが明らかになった。更に、イオン数が減少し衝突による加熱が弱くなると、蛍光スペクトルには不連続な変化が現れる。これはイオン運動が、比較的大きな軌道を衝突を繰り返しながらカオス運動している状態から、トラップポテンシャルとイオン間のクーロン力で決まる平衡点に結晶化した極低温状態へ一次相転移を起こしたことを示していることが明らかになった。このように、レーザー冷却によって比較的多数のイオンが1K以下にまで冷却できることが示され、ドップラーフリーの高分解能分光の基礎技術が確立した。