著者
浦木 隆太
出版者
国立研究開発法人国立国際医療研究センター
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

持続感染から、慢性肝炎、さらには肝癌を引き起こすB型肝炎ウイルス(HBV)は、世界中で20億人にものぼる感染者がおり、公衆衛生上重要な感染症である。しかし、HBV持続感染が成立する機序や持続感染が維持される機序に関して、免疫学的に十分な解析は行われておらず、様々な課題が残されている。HBV持続感染時、宿主では抗ウイルス応答が活性化されていないことから、そのような応答を抑制する機序があると予測される。そこで、本研究課題では、免疫抑制能を有する制御性T細胞および制御性T細胞と相互作用する免疫細胞に焦点を当て、ウイルス学・免疫学的視点からHBV持続感染の成立および維持に重要な機序の解明を目指す。
著者
藤井 進也
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.217-223, 2020 (Released:2021-11-01)
参考文献数
19

ヒトが音を奏で,聴き,楽しむ行為の中には,ヒトという生物の巧みさを理解するための鍵がたくさん潜んでいる.例えば熟練したプロドラマーは,巧みに身体運動を制御し,独特の時間ゆらぎ構造を持ったリズムを奏でることができる.また音を聴くヒトの脳は,音楽家が生み出した独特の時間ゆらぎ構造を巧みに知覚し,感情の豊かさや好ましさを感じることができる.近年の音楽神経科学研究では,脳の予測的符号化理論の観点から,音を聴いて喜び,身体を動かしたくなる感覚(=グルーヴ感)が生じる脳の計算原理についても理解が進んでいる.本稿では,巧みな音楽家の演奏にみられる時間のゆらぎとグルーヴについて解説し,音を奏で聴き楽しむヒトの脳の不思議さに迫る.
著者
川添 康司 高橋 由雅
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
ケモインフォマティクス討論会予稿集 第24回情報化学討論会
巻号頁・発行日
pp.J17, 2001 (Released:2001-10-24)
参考文献数
3

We have investigated the audification of molecular information. The musical note information consists of a tone, a velocity and a type of a musical note. The sequence of this musical note information forms a musical score. In the present work, we have developed a computer program for the audification of gene. The DNA nucleotide sequence of a gene was employed for the audification. The program assigns the musical note information to each nucleotide using the transformation algorithm and then outputs the MIDI sequence as the musical score for a MIDI device. Several transformation algorithms were investigated as follows: (1) the simple mapping method that assigns notes to the DNA bases. (2) The unique mapping method that assigns the note information with the base usage on the sequence. (3) The musical-theory-based mapping method that is based on the musical theory to get a better musical score. For the third method, mapping the chord to the codon to form the bass line was employed too. It was observed that it is possible to get some advanced transformation from the DNA sequence to the musical score using the information derived from the base array.
著者
吉野 大輔
出版者
社団法人 可視化情報学会
雑誌
可視化情報学会誌 (ISSN:09164731)
巻号頁・発行日
vol.34, no.133, pp.20-25, 2014 (Released:2015-04-01)
参考文献数
18

本論では,知覚心理学における錯視を数々の図形や研究例を挙げて紹介する.そして錯視と芸術の関係,錯視量と美的印象の判断値との関係性について検討した研究を取り上げる.我々は錯視量が段階的に変化するように図形の複雑さを操作し,それにともなう図形の美的印象を測定した.研究結果は、錯視量が多い図形では美的判断の値も高くなる事を示唆するものであった.また錯視量と美的判断値は、両方とも単純すぎず複雑すぎない図形でそれぞれの値が最大となるV字形の関数に従う事が明らかとなった.   美的判断と刺激要素が与える感覚印象を対応関係で一義的に捉えるのではなく,むしろ「全体としての図」のまとまり方が判断値に影響している事が示唆された.この事から錯視を規定する要因と美的判断値を同様の枠組みで捉える際には,刺激の要素がどのように最適な構造としてまとまりを構成するかという,知覚構造を考慮にいれて検討する必要があるだろう.
著者
新福 一貴 笹嶋 宗彦
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.655-667, 2023-05-15 (Released:2023-05-15)
参考文献数
20

顧客満足度とは企業が提供するサービスや商品に対する顧客の満足度を表す指標であり,顧客満足度を向上させることは企業にとって最も重要な課題の1つである.しかし,最も投資対効果の高い顧客満足度向上方法を発見することは容易ではない.なぜなら,サービスや商品は,それ自体の品質や価格だけではなく,提供のされ方や提供される店の雰囲気,利用した時に得られる満足感など,多くの軸から評価されるものであり,どの評価軸における課題を解決することが顧客満足度向上につながるのかを見極めることは,一般に困難である.評価軸には,「この企業に対する満足度」のような企業に対する総合的な満足度を問う質問項目に対する回答である総合満足度と,総合満足度を判断する根拠となる,個々の質問項目への回答である個別項目満足度が含まれる.これらから課題の選択を支援するための可視化手法については従来から研究が行われており,総合満足度とそれに対する個別項目の重要度を相関関係より算出し,可視化するCS(Customer Satisfaction)ポートフォリオ分析やIPA(Importance-Performance Analysis)と呼ばれる方法がある.しかし,既存研究は,判断の際に重要である,競合企業との関係性についての可視化が不十分である.そこで本論文では,カフェ,ドラッグストア,保険販売業,など自社企業が所属する業種に含まれる,複数企業を対象に行った個別項目と総合満足度のアンケートを入力として,自社企業に対する顧客満足度が,業種の中でどのような位置にあるかを可視化するツールCSIMGを提案する.CSIMGは,従来研究が可視化してきた,自社サービスや商品の総合満足度と個別項目の関係だけではなく,各個別項目の評価値が,同業種の他社と合わせてどの程度ばらついているか,言い換えれば,改善の余地があるか否かを可視化することで,経営者が,どの項目に優先して投資すべきか判断することを支援する.4つの業界アンケートを対象に,CSIMGの出力と,人間の経営アドバイスの専門家である中小企業診断士の判断とを比較した結果,アンケート回答者である一般消費者が,サービスや商品を自分で複数社利用し比較できるような業種については,CSIMGが,人間の専門家と近い評価結果を出力できる可能性があることを示すことができた.
著者
所 和彦 津田 昌子 千葉 康洋
出版者
認知神経科学会
雑誌
認知神経科学 (ISSN:13444298)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.14-18, 2003 (Released:2011-07-05)
参考文献数
20
被引用文献数
1

4年間で経験した視床出血70例の失語症、半側空間無視(以下USN)、注意障害等の高次脳機能障害の転帰への影響を分析した。平均年齢63歳。CT上の血腫量、失語症、USN、注意障害の程度を分析し、ADL・転帰はFIMで評価した。右視床出血42例で、左USNは25例60%で認め、中等度から重度のUSNは19%であった。血腫量は、右USNなしで4.5±3.0ml、右USNありで9.7±5.9mlと、USNがあると血腫は有意に増大した。左視床出血は28例あり、失語症は16例(57%)で認め、中等度から重度の失語症は18%であった。失語症なし群の血腫量は5.0±2.7ml、あり群は9.5±46mlで、失語症があると血腫は有意に増大した。右USNを5例18%で認めた。失行はUSN重度の右出血1例、左出血1例に認めた。血腫量と白質への進展の程度は、USN、失語症の重症度に有意に相関した。右出血ではUSN、左出血では失語症・USNがあると入院時および退院時FIMは有意に低下した。注意障害が重度なほど、転倒の回数が多いほど、血腫は有意に大きく、入院・退院時のFIMも低値を示した。歩行の転帰が良好な症例ほど入院時および退院時FIMは良好であった。血腫量、年齢は、入院時FIMと退院時FIMと負の相関関係を示した。視床出血では、左右出血とも血腫量が多いほど、高齢者ほど、入院時FIMが低いほど、USN、失語症または注意障害が重度なほど、歩行能力が不良なほど退院時の転帰が不良であった。
著者
田口 学 谷脇 功一 木屋 博昭 弓削 孝雄 金井 一男 川谷 洋右 池尻 洋史 福田 朋博
出版者
West-Japanese Society of Orthopedics & Traumatology
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.471-474, 2000-03-25 (Released:2010-02-25)
参考文献数
2

We treated three cases of shaft fractures of both bones of the forearm with the TRUE/FLEX intramedullary nailing system. The patients were evaluated by the Grace & Eversmann's rating system. All of these fractures united and all three patients achieved excellent functional results. Rotational stability of the forearm was obtained and early active motion was possible. Damages to the soft tissue and scars from the operation were small. We therefore concluded that this method is effective for treating shaft fractures of the forearm.
著者
矢守 克也 岡田 夏美
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
pp.2217, (Released:2023-05-18)
参考文献数
31

本研究は,既存の質問紙調査研究やそのデータをメタレベルの視点から考察する立場に立って,防災・減災に関する実践・実務に対して,これまで欠落・不足していた長期的かつ俯瞰的な観点を与え,あわせて,質問紙調査法に新たな視点を提供することを目的とした。特に,単一の調査研究から得られた結果だけではなく,複数の調査研究の方法や結果を俯瞰的に総覧することで,新たな洞察が得られる場合があることを指摘した。具体的には,第1に,日本社会における家庭での防災対策を具体的なトピックとして取りあげ,質問紙調査から得られるデータを読み解く際の〈ベンチマーク〉や〈ベースライン〉の重要性について論じた。第2に,「自助・共助・公助」というフレーズを取りあげ,「自助・共助・公助」をめぐる葛藤や矛盾を十分に把握するためには,一つには,調査の結果ではなく,調査の形式(設問の立て方)に注目する必要があること,また,もう一つには質問紙調査を通して主として〈平均化〉の論理によって得た知見を,それ単体としてではなく,〈極限化〉の論理を通して別途得た知見とリンクさせて総合的に理解することが重要であることを明らかにした。
著者
古賀 太
出版者
日本映像学会
雑誌
映像学 (ISSN:02860279)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.24-34,85, 1990-06-30 (Released:2019-07-22)
参考文献数
12

It is rather surprising to know today that Japan's Films Act of 1939 had anarticle about the film conservation. This law was not just a simple set of regurations to control the film industry, as we generally consider now, but contained many positive points for the promotion of japanese film. And there were many intellectuals who supported this law and wrote about the relation between cinema and the State. This phenomena is international at that period in the history of cinema. In this text, I would like to situate this law in the context of the film history of the world.

2 0 0 0 OA 愛知県史

著者
愛知県 編
出版者
愛知県
巻号頁・発行日
vol.別巻, 1940
著者
藤原 正義 朝隈 進 桝谷 充男 中村 多一 中村 清子 岩崎 忠昭
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.23-26, 1996-01-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
9

ゴルフプレー中に発症した急性心筋梗塞(以下AMI)症例について検討した.対象は1978年1月1日から, 1 9 9 4 年1 月3 1 日まで当科に入院したA M I患者1,153名のうちゴルフプレー中に発症した13例(すべて男性,平均60.7±11.9歳).AMI全体に占める割合は,1.1%.ゴルフを含めたスポーツ中の発症例32例中では41%を占め,原因として最も多いスポーツであった.13例中何らかの冠危険因子を有していた者は11例.前駆症状は4例にあり,そのうち運動負荷テストを含めたメディカルチェックを受けていた者は1例のみであった.前駆症状のない者でメディカルチェックを受けていた者はいなかった.冠動脈造影は11例に施行され,1枝病変6例,2枝および3枝病変がそれぞれ2例,左冠動脈主幹部病変1例.発症時期は,春から夏,秋から冬にかけてに多かった.ゴルフは運動強度も低く比較的安全で気軽に楽しめるスポーツと思われやすい.しかし,プレー中にAMIが発症する可能性もあり,冠危険因子を多く持つ中高年男性プレーヤーが多いことより,メディカルチェックが必要と考えられた.