著者
吉田 元
出版者
日本科学史学会
雑誌
科学史研究 (ISSN:21887535)
巻号頁・発行日
vol.28, no.169, pp.25-31, 1989 (Released:2021-09-01)

Hiire, low temperature sterilization process of Japanese sake brewing, was first studied by European scientists in the late 1870's. To their surprise the process had widely been carried out for more than 300 years, and it is now believed to be the oldest "pasteurization" in the world. The author described the historical development of the process in Japan. Sterilization of sake may have first been recorded by the early 16th century, several decades earlier than previously believed. The process then became popular by the late 17th century and heating temperature was as low as pasteurization. In China sterilization of alcoholic beverages was first recorded in Beishan Jiujlng (1117). Here two sterilization methods are described, but heating temperature was much higher. The possibility that this Chinese process had an effect on hiire is still uncertain. Although low temperature sterilization was invented in Japan, hiire was not a perfect process. It was invented as a result of long experience and perception, not from microbiological research as pasteurization. So scientists from Europe pointed out defects of the process and suggested improvement of the equipments and addition of salicylic acid, respectively. It took many years to make the process perfect and the author thinks that hiire is overestimated in these days.
著者
川元 俊二 稲田 一雄 金丸 隆幸 永尾 修二 落合 亮二 内田 清久 中里 貴浩 海江田 令次
出版者
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
雑誌
日本輸血細胞治療学会誌 (ISSN:18813011)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.31-37, 2008 (Released:2008-12-19)
参考文献数
14
被引用文献数
2 2

(背景)輸血を受け入れないエホバの証人の患者に対する治療の対応や指針が検討され,現在に至っている.(目的)患者の意思決定を尊重する原則に立って治療を推進していく上で,インフォームドコンセント(IC)の方法とそれを実践する為に必要な他科との医療連携について検討する.(対象と方法)過去十年間にエホバの証人の患者113名(小児3名),128例におこなったICの方法と他科との医療連携の内容を示した.ICの方法は同種輸血拒否と受け入れ可能な代替療法の許容範囲の確認,無輸血治療に伴う合併症の内容の理解と同意であった.医療連携には麻酔科医,放射線科医,消化器内視鏡医との連携が含まれた.(結果と成績)ICの過程で医療者側が治療適応外と認めた症例は無かった.治療症例は110名,125症例で手術治療107例,放射線学的観血治療10例,内視鏡的治療4例,放射線照射化学療法17例をおこなった.緊急手術および治療は15例だった.患者全員が同種血輸血の受け入れを拒否する意思を示したが,4名を除く106名が代替療法として閉鎖回路で連結された希釈式自己血および回収式自己血輸血や血液分画の投与を受け入れた.自己血輸血を29例(23%)に施行し,術中術後の管理を通して,患者の意思により術前に代替治療の適用を定めた許容範囲を超えた症例は無く,無輸血治療が本来の治療の根治性を阻害することはなかった.また手術在院死亡や重篤な合併症の併発を認めなかった.(結論)ICの徹底と院内医療連携による無輸血治療の実践によって個々の患者に対する適切な医療環境と治療成績を提供できた.
著者
辻 雄一郎
出版者
日本法政学会
雑誌
法政論叢 (ISSN:03865266)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.108-137, 2009-11-15 (Released:2017-11-01)

In the United States, the Brandenburg test has been applied to the incitement of the illegal action in the physical world. In this paper, the author asks whether this Brandenburg test is applicable in the internet. Cyberspace has several special factors which do not exist in the physical world. Everyone can be the speaker at a cheap price. The message is sent all over the world instantly. This convenient tool has dark sides such as email bombs, and intimidation homepages. In the internet age, we need to ask the question whether the Brandenburg test is modified or abolished totally in this information society because of these special features of the internet. There are various tools to send messages via internet such as e-mail, homepage, blog, newsletter, mailing list, etc. In this paper, the author focuses just on the expression opened to the public. The author believes that before seeing the internet problem, it is necessary for us to see the origin and applicability of the Brandenburg test in the physical world. The Brandenburg test is not a given. Its origin is clear and the present danger test shaped in common law. In the conclusion, the author suggests that the Brandenburg test has some future since it has been used to protect the opinion of the minority in the real world. However, this test was used mostly in the peaceful period. We need to be vigilant to see this test for internet society.
著者
中村 明浩 後藤 淳 星 信夫
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.40, no.7, pp.631-635, 2008-07-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
8
被引用文献数
2

症例は39歳,男性で突然の前胸部痛を訴え来院した.心電図上I,aVL,V2~6誘導でのST低下とCKの上昇を認め,急性冠症候群の診断で緊急入院した.心臓カテーテル検査では冠動脈に閉塞所見や有意な狭窄病変および血栓像は認められず,左室造影でも収縮能は良好に保持され局所壁運動異常も認めなかった.アセチルコリンなどの薬物負荷試験は施行しなかったが,検査時には心電図でST変化は回復していたことから冠攣縮性狭心症とそれに起因した心筋障害と考えられた.入院直後より硝酸薬の持続点滴を行ったが,ST上昇あるいは低下を伴う狭心症発作が頻発したため,塩酸べニジピンと塩酸ジルチアゼムの併用を試みた.しかし,狭心症発作はコントロールできず,Rhokinase阻害薬(塩酸ファスジル)90mg/日点滴投与を開始したところ狭心症発作は消失した.本症例は硝酸薬,Ca拮抗薬に抵抗性を認め,Rho-kinase阻害薬が有用であった難治性冠攣縮性狭心症であり,冠攣縮の活動亢進にRho/Rho kinase系が深く関与しているものと推測された.
著者
浮田 悠 佐藤 臨 大澤 剛士
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
pp.2219, (Released:2023-04-30)
参考文献数
43

日本人にとって身近な生き物であるゲンジボタル Luciola cruciata は、レクリエーション目的等により各地で放流が行われている一方で、開発圧等による生息地の劣化、それに伴う個体数の減少も報告されている。地域における遺伝的構造、遺伝的多様性を考慮した上での絶滅地域への適切な再導入(re-introduction)や、個体数減少地域に対する補強(re-inforcement/supplementation)は、必ずしも推奨される手法ではないものの、その地域に生息する種の保全を目的とした手段の一つになりうる。既に各地で放流が行われている本種に対し、適切な放流の方法を示すことは、無秩序な放流の抑制に繋がることが期待できる。そこで本研究は、既存のゲンジボタル放流における指針においてほとんど言及のない、適切な放流場所の選定について、過去から現在にわたる土地被覆に注目して検討を行った。過去の土地被覆は現在から改変等を行うことはできないため、もし過去の土地被覆履歴がゲンジボタルの生息可能性に影響していた場合、現在の土地被覆のみから好適な環境を判断して放流を行うことは、個体が定着できない無意味な放流につながってしまう可能性がある。東京都八王子市および町田市の一部において面的なゲンジボタルの生息調査を行い、ホタルの生息と現在および過去の土地被覆の関係について統計モデルおよび AIC によるモデル選択によって検討したところ、現在の土地被覆のみを説明変数としたモデルでは開放水面面積のみが選択され(AIC 271.11)、過去の土地被覆も考慮したモデルでは、AIC の差は僅かであったものの、現在の開放水面面積に加え、1980 年代の森林面積、 1960 年代の農地面積が選択され(AIC 270.44)、これらが現在のホタル生息に影響を及ぼしている可能性が示された。この結果は、現在の土地利用のみから放流地を選定した場合、放流個体が定着できず、死滅してしまう可能性を示唆するものであり、過去の土地被覆が有効な再導入、補強を行う上で欠かすことができない重要な前提条件になる可能性を示唆するものである。ゲンジボタルの放流は各地で行われてきているため、今後は様々な地域における検証の積み重ねが望まれる。
著者
古澤 聡司
出版者
心理科学研究会
雑誌
心理科学 (ISSN:03883299)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.10-28, 1985-09-30 (Released:2017-09-10)

"The Section of Psychology, the Association of Japanese Democratic Scientists"had two principles.One was the democratic, and the other was the materialistic.These two principles have been historically discussed in this article.
著者
Morinaga Shinichiro
出版者
[富山大学杉谷キャンパス一般教育]
雑誌
研究紀要 : 富山大学杉谷キャンパス一般教育 (ISSN:1882045X)
巻号頁・発行日
no.41, pp.1-9, 2013-12-25

Im Nationalsozialismus wurden etwa 70.000 Behinderte als „nicht lebenswert― und Millionen von Juden unter dem Namen der „Endlösung― in die Gaskammern geschickt. Hannah Arendt, die beim Eichmann-Prozess zuhörte und „Eichmann in Jerusalem― schrieb, erwiderte Karl Jaspers, Eichmanns Verbrechen seien nicht nur „Verbrechen gegen die Menschlichkeit―, sondern „Verbrechen gegen die Menschheit― gewesen. Ein „Verbrechen gegen die Menschheit― ist ein Verbrechen gegen den Status des Menschseins, oder ein Verbrechen gegen das Wesen des Menschengeschlechtes selbst; in anderen Worten, ein Angriff gegen die menschliche Mannigfaltigkeit, die eine so wichtige Eigenschaft des menschlichen Status ist, dass ohne sie Wörter wie „Menschheit― und „Menschengeschlecht― ihre Bedeutung verlieren würden. Das heißt, es ist eine Bedrohung des menschlichen Daseins. In diesem Bericht möchte ich die Gedanken der beiden um in Bezug auf den Begriff „Menschheit― behandeln und ihn aufzuklären versuchen.
著者
藤井 達也 BURTI Lorenzo 谷中 輝雄
出版者
上智大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、Lorenzo Burti教授との対話と現地調査に基づいて、ヴェローナの地域精神保健においてセルフヘルプグループの機能を活用する社会的協同組合Self Help San Giacomoの支援方法と意義を解明した。また、日本の地域精神保健におけるピア・サポート推進に関する2つの事例調査と文献研究を行った。最後に、イタリアと日本の活動の比較を行い、多様なピア・サポートを推進する活動モデルの試案を提案する。
著者
金沢 星慶 國吉 康夫
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.63-68, 2022 (Released:2023-05-01)
参考文献数
34

ヒトは遊びという行動を通して世界における様々な物理法則や因果関係を学び,のちの運動発達や認知発達まで影響する経験を積む.特に発達初期の遊びにおいては自発性が最も重要な要素と考えられ,自発的に生成された運動出力は身体特性を反映した運動を生み出すと同時に感覚フィードバックを得る.この運動と感覚の構造は他者を含む環境との相互作用によって動的な特性を示すとともに,神経成熟や身体発育,環境の変化に伴って多種多様に変化する.本稿ではこれらの複雑な発達的変化について,実際のヒト胎児や新生児にみられる行動特性を紹介し,それらを説明付けるいくつかの数理的および計算論的モデルについて解説する.
著者
阿萬 裕久 野中 誠 水野 修
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.3_12-3_28, 2011-07-26 (Released:2011-09-26)

ソフトウェアメトリクスは,ソフトウェアの品質マネジメントを実践する上で必要不可欠な存在である.しかしながら,実際のところ広く積極的に活用されているとまでは言い難い.その背景には“何を測り,どう活用するのか?”というシンプルではあるが容易でない問題がある.本論文はそのための一助として,ソフトウェアメトリクスとそこでのデータ分析の基礎,特に,どういったソフトウェアメトリクスや数理モデルがあり,分析で何に気を付けるべきかを中心に解説を行っている.また,ソフトウェアメトリクスの円滑な活用に役立つツールもいくつか紹介している.
著者
杉浦 圭子 伊藤 美樹子 三上 洋
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.717-725, 2007 (Released:2008-01-16)
参考文献数
22
被引用文献数
13 12

目的:本研究は在宅認知症高齢者の問題行動に由来する特有の介護者負担に着目し,従来の介護負担感尺度とは異なる視点から新たに介護負担感(Caregiver's Burden caused by Behavioral and psychological symptoms of Dementia:CBBD,以下CBBDと略す)を評価する項目を作成し,高齢者の介護者全般を対象にした大規模サンプルを用いて測定した上で,CBBDの特性を統計学的に明らかにすることを目的とした.方法:大阪府東大阪市の介護保険サービス利用者から層別無作為抽出した5,000人に対し,H15年10月に郵送による無記名自記式質問紙調査を行った.得られた回答から介護者不在等を除外し,1,818人の介護者を分析対象とした.調査項目は,介護者·要介護者の基本属性,過去の調査や先行研究を元に作成したCBBD 10項目,要介護者の認知障害の有無,全般的介護負担感であった.結果:CBBDは全項目において要介護者に認知障害がある方が有意に選択されていた.特に予想不可で怖い·不安,介護者の言うことを理解しない,理解不能でイライラというような介護者に心理的な緊張や圧迫を与えるような負担のリスクは高かった.認知症の症状とCBBDの関係をみるとCBBDは全項目にて認知症高齢者の興奮·妄想的行動と強い関連がみられた.その他の症状については夜何回も起きる,常時監視の必要性,不潔に嫌悪感は要介護者の記憶障害と,近所に迷惑,非難拒否がつらい,予想不可で怖い·不安という負担は認知症高齢者の見当識障害と強い関連がみられた.さらに,家事が増えた,不潔に嫌悪感がするという負担は認知症高齢者の異食行動と強い関連が確認された.結論:CBBDは要介護者の認知障害に対する感度が高く,問題行動に由来する介護者の心理的な緊張や圧迫などの負担をより詳細に表現することができるため,介護者に対する援助の際の支援ニーズの把握に利用可能であると考えられる.
著者
松田 千明 吉原 真紀 茶谷 麻衣子 滝谷 知之 千葉 奈津記
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会宮城県理学療法士会
雑誌
理学療法の歩み (ISSN:09172688)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.16-20, 2009 (Released:2009-02-17)
参考文献数
8

パーキンソニズムの歩行障害は,内的リズム形成障害による影響が大きいと考えられており,それに対して外的刺激が有効なことは知られている。今回は重度のパーキンソニズム進行例に対して,音楽CDによる音リズム刺激を運動療法に導入することで動作性改善を期待した。結果,精神活動面での変化がみられ,覚醒時間拡大,発語量増加等がみられた。動作面においては起立・立位,歩行動作能力の向上がみられ,本症例自身も身体の動きやすさを自覚された。これらの変化の要因として,音楽による精神面への作用が,活動意欲を引き出すことに結びついたと考えられる。また音リズム刺激により十分な内的リズム形成の機会を得られたことが,運動開始やその遂行のためのリズム獲得につながり,動作性向上もみられたと予測される。
著者
若島 孔文
出版者
一般社団法人 日本家族心理学会
雑誌
家族心理学研究 (ISSN:09150625)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.15-26, 1998-05-31 (Released:2023-04-30)
参考文献数
19

In this case, we approached an Alopecia client on the basis of therapist's epistemology which is based on the brief therapy. The purpose of this article is to represent a communication process which binds the client's narrative of his present behavior and estimation to direct toward a positive one. We applied questions as follows; which clarifies the client's problem; which clears vicious circle behavior and the exception as virtuous circle behavior ; which constructs therapeutic paradox ; which used reframing. The client in this case had suffered from Alopecia for seven years. The session was held eight times, once about a month, and the problem was solved in relatively a short period. This article described the case without any explanation, and discussed it along with the therapist's epistemology. And moreover, the concept of “bind” was re-defined by us. In general therapist have no weapon to the client other than language in broader meaning, whose property is to bind the receiver's behavior. Finally, considering the therapist's epistemology a context, we proceeded with the therapy.
著者
安野 眞幸
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
no.93, pp.7-23, 2005-03-30

本稿は天正五年六月に織田信長が安土山下町に宛てて出した定書十三ヵ条に付いての考察である。安土を理解するには、「景清道」と八風街道から延びた「浄厳院道」と、両者の交点にある港町の「常楽寺」の三者を知る必要がある。常楽寺は「沙沙貴神社」の門前町ならぬ(門裏町)だった。この定書の実質的な受取手で、自治都市安土山下町の自治の担い手は「沙沙貴神社」の神官で、この神社の長い伝統を背負って立つ木村次郎左衛門尉だった。この法令中には「兵工未分離」な木村氏の「奉公人」「給人」が同時に都市住民身分として登場し、「惣村」から「惣町」への過渡期の在り方を示している。