著者
吉田 光明 三浦 富智 葛西 宏介 中田 章史
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

未成熟染色体凝縮(PCC)とPNA-FISH 及びcentromere-FISHを併用して染色体異常を解析し、低線量から高線量まで広範囲に適用できる線量評価法の確立を目的として、健常者より採取した血液をγ線0~25Gyまで17ポイントの線量で照射し、PCC-ring法、PCC-FISH法、DCA-FISF法、ギムザ法の4種類の染色法により解析を行った。その結果、PCC-FISH法、DCA-FISF法において最も効率よく染色体異常を検出することができた。また、低線量から高線量域まで染色体異常頻度に線量依存性が確認されたことから、1つの検量線を作成することが可能であることが明らかとなった。
著者
鍋島 憲司
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

人々が都市で活動を行う結果,交通量が多く危険が発生しやすい地点というものが存在する.そのような地点を発見する手法を,実際の交通条件を反映した都市モデルと,マルチエージェントシステムと呼ばれるアルゴリズムを利用することによって開発した.また開発した手法を建築空間に応用し,どのような平面形状でパニックが発生しやすいのかを明らかにする評価手法を確立する必要がある.そのための基礎的研究を行った.
著者
池内 恵 御厨 貴 牧原 出 宮城 大蔵 鈴木 均 小宮 京
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

中東における政治・経済・外交の非公式の人的ネットワークを現地の文献・文書資料の発掘と解読を通じて明らかにし、中東への日本の関与に関する官庁・企業の文書資料を発掘し、当事者へのオーラル・ヒストリー記録の採取を行なった。成果は「日本経済外交史プロジェクト・オーラル資料編: イラン革命と日系企業 第一冊 IJPC関係(2)」「日本経済外交史プロジェクト・オーラル資料編: イラン革命と日系企業 第一冊 IJPC関係(3): 永嶋達雄氏(元三井物産)」ケイワン・アブドリ編訳・解説(鈴木均監修)『抄訳 ハサン・ロウハーニー回顧録』、池内恵編『IJPC研究の現状と課題 資料の所在と公開状況』にまとめた。
著者
大澤 匡弘
出版者
名古屋市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

慢性疼痛の中でも神経の損傷に伴う痛みである神経障害性疼痛は、既存の鎮痛薬では緩和することが難しい疼痛の一つである。本研究では神経障害性疼痛モデルを作製し、大脳における神経系機能の亢進について検討を行い、その調節による疼痛緩和の可能性について検討を行った。神経障害性疼痛モデルマウスにみられた痛覚過敏は、神経伝達物質の放出を抑制するガバペンチンにより改善した。このガバペンチンの効果は、神経障害後 3 日間の処置でみられたが、神経障害による痛覚過敏が出現してからの処置では改善しなかった。このことから、ガバペンチンは大脳へ作用して神経障害による痛覚過敏の形成を抑制することが明らかになった。次に大脳における神経系細胞の機能変化について検討を行った。大脳の帯状回皮質においてミクログリアならびにアストロサイトの活性化が認められた。また、ミクログリアの活性化を調節する薬物であるミノサイクリンを帯状回皮質へ処置すると神経障害による痛覚閾値の低下が抑制された。このことから帯状回皮質におけるミクログリアの活性化は神経障害による痛覚過敏の発現に関与することが明らかになった。また、ミクログリアの抑制は、アストロサイトの活性化も抑えた。さらに、興奮性の神経伝達に関わるグルタミン酸神経の受容体機能の神経障害による亢進も、ミノサイクリンにより改善した。これらのことから、神経障害により帯状回皮質においてミクログリアが活性化し、この脳領域での興奮性神経伝達を亢進させるため、痛覚過敏が生じていることがわかった。
著者
満倉 靖恵 神崎 晶 浜田 望
出版者
慶應義塾大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

耳鳴りの音を外部から推定することは困難である.耳鳴り患者は医師にその音を"キーン","ジイジイ"と鳴る,などの表現で伝えるが,医師にその音は判らない.これまではピッチマッチ法装置を用いて音の推定を行って来たが,ピッチマッチ法は病院のみで扱える特殊機械であり,音が日によって変化する耳鳴りを正確に知る方法としては相応しくなかった.そこで本研究課題では,簡易に計測できる脳波計を用いてスマートフォン上で取得した脳波を用いて耳鳴り音の特定を行うことを第一の目的とした.また,耳鳴り音として聞こえている周波数の逆位相を持つ音を出すことで,耳鳴りを軽減することができるかどうか,検証する事を第二の目的とした.
著者
近藤 真
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

2000年度より2002年度までの3年間、科研費補助金をうけ、「ニュージーランド行政革命と国立大学のエージェンシー化の憲法学的研究」を行った。その研究成果の一部として2001年9月に地域科学部の紀要に「国立大学の独立行政法人化?ニュージーランド国立大学のエージェンシー化から考える」を発表した。ニュージーランド国立大学のエージェンシー化の概観を行ったが、同時に資料としてニュージーランドビクトリア大学の政治学教授のスティーブン・レビン教授のニュージーランド国立大学のエージェンシー化に関する二つのきわめて重要な講演を翻訳し、付録として添付した。この研究の結果としてニュージーランドの大学改革が失敗であったことがわかった。なぜならば大学の研究者達がこの改革を全く支持していないからである。というのも、この改革が、研究者に利益の追求を求め、学生には授業料を払うように求めたからである。それはとても困難なことである。NZの大学は利益団体ではなく、学生達は1992年までは大学まで無償だったからである。レビン教授はNZがユネスコの宣言に逆行して学生から授業料を取っていることに危惧を示しており、ユネスコ(現在日本が事務局長を務めている)は、1998年の高等教育世界宣言で各国政府に大学教育の無償化を求めているからである。大学では弁護士でもあるロースクールの教授だけはこの改革を支持していたが、彼らは医学部教授と同じく学内でよりも学外で稼ぎが大きく、教授の肩書きを利用するために大学にも勤めているという側面もあろう。こういう人々を別とすれば大学の研究者はほとんどが研究で稼ぐなどということは不可能である。地震や天文学をふくむ地学、数学、生態学に稼げる道があるだろうか。これらの学間はニュージーランドの大学ではいまや消滅しつつある。この改革は改革ではなく、ニュージーランドの大学の破壊者であった。これがこの研究の傾向的結論であった。今後、さらにニュージーランド国立大学エージェンシー化の改革の意味を多面的に検討したい。新たな課題としては、大学改革がいかなる影響をNZの教育改革全体に及ぼしたのかについて検討が必要である。
著者
石黒 盛久
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

ボッテーロの著作『国家理性論』の翻訳・注解を刊行した。その解説文や『社会文化史学』及び『エクフラシス』掲載予定の論文執筆により、ボッテーロの西洋政治思想史における位置につき展望を得るに至った。これと並び我が国内外においてボッテーロの思想に関する口頭発表を行ったが、これらについても今後論考として公刊予定である。加えてマキアヴェッリからボッテーロを経て、ホッブスに至国家理性論思想の展開の考究を主題に、イタリアよりフイレンツェ大学教授Daniela Coli氏を招聘し、早稲田大学と関西大学にて講演会を実施した。また国家理性論の近代日本の文化への継受を主題とする論考を執筆した。
著者
松木 邦裕 大山 泰宏 立木 康介
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

日本の精神力動的心理療法のトレーニングの質を高めるための具体的な方策を検討すべく,米国,ドイツ,イギリス,フランスの力動的心理療法家養成のシステムおよびその実態に関して,養成に関わる人物の招聘やシンポジウム,および研究者による現地の訪問での参与観察や資料の収集を行ない,日本におけるトレーニングの問題点を明らかにした。とりわけ日本では,スーパービジョンや実地研修の不足,事例を見立てる上での構造の不在が指摘された。そして,日本の文化的文脈等を自覚化しつつ,その改善の方向を具体的に討議し,より適切な訓練のモデルを構想した。また,見立て,臨床像記述の方法論等を検討し,実際の訓練に適用した。
著者
鈴木 幸久
出版者
(財)東京都老人総合研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

ポジトロン断層法(PET)を用いて,原発性眼瞼痙攣症例18例(男性5例,女性13例,平均年齢53.2±7.6歳)の脳内中枢性ベンゾジアゼピン受容体密度を測定した。正常人19例(男性9例,女性10例,平均年齢50.3±9.2歳)をコントロールとした。PET画像は,Automated Medical Images Registration(AMIR)プログラム(Ardekani 1995)を用いて三次元的に個々のMRIに合致させた。各症例のMRIを見ながら,正常人および眼瞼痙攣症例全例に対し PET画像に関心領域(ROI)を設定した。ROIは,両側の視床,尾状核,被殻,島皮質,弁蓋部,一次体性感覚野に設定し,各部位のベンゾジアゼピン受容体密度を半定量し,各値は各症例の全脳平均の値で補正した。各部位の値について,複合T検定を用いて検定した(P<0.05/12=0.0041)。両側の島皮質,弁蓋部,一次体性感覚野に有意なベンゾジアゼピン受容体密度の低下がみられた。眼瞼痙攣はジストニアの一型と考えられており,ジストニアの病因として,GABA抑制系の異常(Levy 2002)や体性感覚の異常(Odergren 1998)が提唱されている。中枢性ベンゾジアゼピン受容体は,GABA_A受容体と複合体を形成しており,中枢性ベンゾジアゼピン受容体密度の低下は,GABA抑制系の異常をもたらすと推測される。また,島皮質および弁蓋部は,視覚,体性感覚などの入力が存在し,二次の体性感覚野とも呼ばれている。そのため,島,弁蓋部および一次体性感覚野の中枢性ベンゾジアゼピン受容体密度の低下によって,GABA抑制系の異常や体性感覚の異常が引き起こされ,それが眼瞼痙攣発症の一因である可能性が考えられる。
著者
古川 安
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

喜多源逸は京都帝国大学工学部に在任中、工業化学における「京都学派」を創始し、ノーベル化学賞受賞者を含む多くの逸材を育てた。彼の学風は、基礎研究重視の工業化研究、物理学などの他分野を摂取する柔軟なスタンス、産業界との積極的な連携などの特徴をもっていた。京都学派が手掛けた合成石油、繊維、合成ゴムの研究開発は戦後継承されるとともに、その学風は触媒化学、高分子化学、量子化学などの関連基礎分野の発展に寄与した。
著者
川崎 和男
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究は、医工連携に対してデザインでの実務性をより具体的にすることを目的に、3D-Printerの方式である光造形STL法と熱溶解積層法FDM法式の造形機を用いて、医工デザイン技術=3D-Printingをめざし開発研究を行った。医工デザインによる人工臓器の基礎形態、その造形化を国内初として取り組んだ。
著者
菊田 康平
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2017-04-26

圏論的力学系の不変量であるエントロピーについて研究を行った.非特異射影多様体の自己同値函手のエントロピーに対して,古典的なGromov-Yomdinの定理の自然な圏論的類似としてGromov-Yomdin型等式が成り立つと予想して研究に取り組んだ.実際いくつかの場合で等式が知られている.しかしY-W.Fan氏と大内氏により,K3曲面や偶数次元のCalabi-Yau超曲面の自己同値函手の場合に反例が構成された.そこで「どのようなクラスの自己同値函手がGromov-Yomdin型の等式を満たすか」という問いが自然に出てくる.上記の反例の構成法より,一定の理解は深まったが本質的な理解は得られていない.代数多様体の自己有限射から定まる圏論的エントロピーと自己射の周期点上の局所力学系に対して定まる局所エントロピーに関する基本的な不等式を証明した.局所エントロピーは局所環上の有限局所自己射に対して定義される量である.特に複素(局所)力学系において重要な対象である超吸引的周期点を環論的に一般化したcontractingな自己射に対して有用である.例えば局所エントロピーを用いた,Kunzの定理のcontractingな射の場合の一般化が知られている.上記の不等式の応用として,代数多様体の自己射の周期点が特異点となることの十分条件を,圏論的エントロピーを用いて数値的に与えた.得られた成果をいくつかの講演で紹介した.講演で非可換環に対するFrobenius函手のKunz型の定理について有益なコメントを頂き,現在検討段階にある.
著者
若林 教裕
出版者
香川大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2010

生徒の興味関心と科学的な思考力を高めるための教材開発として音の引き起こす不思議な現象に着目した教材開発をした結果、共鳴現象を利用したワイングラスの破壊が成功したので、その実践例を報告する。〈実践1〉音でワイングラスを割る方法(1)選挙カー用のスピーカーを100Wのアンプにつないで使用する。(2)低周波発信器でワイングラスの固有振動数を探し、その周波数にあった音でグラスを共鳴させる。(3)ストローをグラスに入れてその揺れ具合で固有振動を発見する。(4)ストローの揺れ具合が一番激しくなった(ストローがグラスから飛び出るぐらい)ところで、アンプの音量を一挙にあげるとワイングラスが破壊する。固有振動が一致していれば、瞬時に破壊することができる。(動画・画像あり)〈実践2〉「音でワイングラスを割る」実験を盛り込んだ授業実践(1)大きさの違うワイングラスにスピーカーで音を当て、特定のワイングラスしか揺れない現象を演示。(2)特定のワイングラスしか揺れなかった原因を考えさせる。(3)自作の「目で見える共振器」(昨年開発)を使い、課題を解明する実験を行う。(4)高い声には短い棒が、低い声には長い棒が振動するという気づきから、特定のワイングラスにあった振動数の音を当ててやるとグラスが揺れやすくなることを見いださせる。(5)身近なところに共鳴現象があることにふれる。→再度、ワイングラスを揺らす実験を行い、音を大きくするとどうなるか訪ね、ワイングラスを割る実験を見せて、音が引き起こす面白さや不思議さを実感させる。音でグラスを割った瞬間、生徒からは驚きの大歓声があがった。授業後の振り返りにも、身の回りの共鳴現象として、音楽室である特定のピアノ弦をたたくと周囲の楽器が鳴ったり、通る車によって窓ガラスが揺れたりする現象があげられたりして身近な生活との関連も図ることができた。
著者
加藤 毅
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

我が国の大学のマネジメント現場では、問題解決に向けてIRを起点とする多くのプロジェクトが実施され、成果をあげている。そこでのマネジメントスタイルについて調査したところ、 PMBOK型とは対称的な「弱い計画性」「無期限性」「目的の創発性」「通常業務との融合」などの特性が観察された。通常業務の直接延長線上でプロジェクトも担うという働き方は、わが国のホワイトカラー総合職のスタイルに非常に近いものである。先行するそこでの関連研究の成果を参考として、プロジェクトを中核として構成されているわが国の大学職員の職務特性や育成環境を分析するための枠組みを構築し、定量調査を通じてその実態について明らかにした。
著者
中山 和弘 大坂 和可子
出版者
聖路加国際大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、患者が治療法や療養生活の選択において、エビデンスに関する情報を得られて、自分の価値観をつないで意思決定できるガイド(ディシジョン・エイド)を開発することを目的とした。難しい決定の1つである乳がんの術式選択に焦点をあてディシジョン・エイドを開発した。開発過程では、1)患者のニーズ把握、2)試案作成、3)体験者による内容評価、4)医師と看護師の確認、を行った。手術を受ける予定のある乳がん女性にディシジョン・エイドを提供し評価を行った結果、意思決定ガイドの提供により意思決定の葛藤の減少に効果があった。
著者
金 テイ実 槻木 瑞生 花井 みわ 朴 仁哲 李 東哲 本田 弘之 永嶋 洋一
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

旧満洲・間島(現在の中国東北の延辺朝鮮族自治洲)で盛んに行なわれた日本語教育に関連して日本人である斎藤季治郎、鈴木信太郎、川口卯橘、渡部薫太郎、日高丙子郎、工藤重雄、濱名寛祐、樋口芝巌、安東貞元、山崎慶之助、飯塚政之に焦点に当てて彼等の役割を明らかにし、現在に於いても盛んに行なわれている日本語教育のルーツを明らかにしたものである。
著者
北田 暁大
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

東京都練馬区在住の若者を調査対象者として想定し、趣味・文化にかかわる意識・行動、情報行動、社会への態度について量的調査を行った。その結果、趣味領域ごとの性質の相違や、領域内で「サブカルチャー資本」として機能しうる事柄の違いなどがあきらかとなり、サブカルチャー研究において「サブカルチャー資本」「文化資本」といった概念を適用していく際の理論的・方法論的な課題をあきらかにすると同時に、個別趣味と社会関係の関連性について考察した。
著者
井上 雄介
出版者
国立大学法人琉球大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2017

本研究は, 研究分野に応じた研究機関の研究力および研究業績の評価指標の確立を目的として実施した。具体的には, 主に人文社会科学系の研究分野(現在の科研費の「中区分」に相当する研究分野とする)における(1)研究力や研究業績と認められるエビデンスを明らかにすること, (2)それらのエビデンスの客観的な指標化をおこなうこと, の2点を目的とした。まず, 予備的な調査として, イギリスの研究評価制度であるResearch Excellence Frameworkに関する情報収集をおこなうと共に, オランダの評価基準および評価方法であるStandard Education Protocol(SEP)についても先行研究を含めた情報収集をおこなった。その結果, 双方とも, 論文などの客観的に数値化された情報に加え, 政策提言, 社会におけるインパクトなど, 数値化が困難な指標も含まれていることを確認した。しかしながら, 特に数値化が困難な指標をどのように客観的な評価に利用しているかについては明らかにできなかった。そこで, 調査研究事業があり, 研究者が所属しつつ, 標本資料の収集・保管および展示・学習支援事業において社会に対する貢献が必要とされている国立科学博物館の広報担当課長に対し, 博物館の評価において社会への貢献をどのように扱うかを聞き取り調査した。その結果は, 博物館の入館者数, 特別展・企画展の数, 学習支援事業参加者数など, 数値化可能なものでの前年度(あるいは前中期目標期間)との比較であった。次に, オランダの人文社会科学系の総合大学であるティルブルフ大学の評価およびSEP担当者への聞き取り調査をおこなう予定であったが, 都合上, この計画は実施できなかった。そのため, 研究計画を十分に遂行することができなかった。なお, 本研究の結果については, 琉球大学研究集会「日本版研究IRの発展を目指して一統計科学に基づく異分野融合指標を例に-」のパネルディスカッションにおいて一部発表したほか, 学会発表および雑誌投稿の準備中である。
著者
緑川 早苗 大津留 晶
出版者
福島県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

昨年度に引き続き、すでに倫理審査並びにデータ利用の許可が得られているものについて、さらに次の1)から3)について解析を進めた。1)出前授業のレスポンスカードにおける理解度満足度のその要因について、2)小児の甲状腺がんの自然史とスクリーニングのメリットデメリットについて 3)若年者におけるスクリーニングの同意取得におけるメンタルヘルスに関する問題点について。現時点で次のことが明らかになった。1)対象者である小中学生は出前授業に積極的に参加し、甲状腺スクリーニングについてよく理解するが、理解度と満足度は必ずしも一致せず、理解に伴いより不安や深刻さが増す場合がある。2)スクリーニングで発見された小児あるいは若年者の甲状腺がんはその多くが初期に増大後に増殖停止に陥いるが、そのにもかかわらず多くが手術を受ける。3)甲状腺検査の受診率は非常に高いが、受診率は必ずしも対象者の意思を反映しておらず、保護者の不安や検査の場の設定方法などを反映していると考えられる。以上の結果を以下の学会、論文にて発表した。1)学会発表 日本内分泌学会シンポジウム(2017年4月)、アメリカ甲状腺学会(2017年10月)、2)論文発表 Comparative Analysis of the Growth Pattern of Thyroid Cancer in Young Patients Screened by Ultrasonography in Japan After a Nuclear Accident The Fukushima Health Management Survey (JAMA Otolaryngology Head and Neck Surgery 2018(144),57-63)、3)については論文投稿準備中