著者
本位田 真一 鄭 顕志 石川 冬樹
出版者
国立情報学研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では,空間制御ソフトウェアを対象とし,想定外に備えて迅速なソフトウェア進化を実現する分析,設計,検証手法を提案した.具体的には,(1)物理要素の制御に関する要求をゴールモデル上で明示化させるための制御ループ要求パターンをゴールモデル整形プロセス,(2)要求モデル上で明示化した制御ループ要求に対する実現責務を用意にトレース可能とする,制御ループモデルをモジュール単位として扱うソフトウェアアーキテクチャ,(3)制御ループ仕様の誤りを早期に発見可能とするための検証手法を提案した.さらにそれらの成果を統合した開発プロセスを構築し,スマートルーム内の清掃システムを開発し,その効果を評価した.
著者
新川 拓也
出版者
大阪電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

乳児の吸啜時における舌の運動機能を解明するために、小型力センサを複数個内蔵した人工乳首を開発し、PCをベースとした舌-人工乳首の接触圧をリアルタイムで計測できるシステムを構築した。計測を行った結果、それぞれの力センサからは、舌の蠕動様運動を示す単振動に近い圧力波形が観測され、起因する吸啜周期は1秒間に約2回であった。また、低出生体重児においては、成長に伴って圧力の値に変化が見られた。
著者
齊藤 博英 野村 慎一郎
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

生命の起源において、核酸などの化学物質から、進化する生命システムがいかにして誕生したのかという問題の解決は、生命科学が目指す大きな目標の一つである。天然に触媒分子として働く RNA が発見されて以来、遺伝子と代謝(触媒)機能の両者を兼ね備える生体分子として、RNAは生命の起源研究において注目されている。特に、RNA 同士の連結反応を触媒するリガーゼリボザイムの存在が生命初期の進化に非常に重要であると考えられている。本研究では、人工 RNAシステムを基盤として、自己複製反応を触媒する人工酵素をデザインし、人工細胞モデルシステムを創出することを目指した。具体的には人工リガーゼリボザイムを用い、RNA 自己増幅系のモデルを新たに設計・構築することにより、新観点から RNA ワールド 仮説の実験的検証をおこなった。この知見を基に、RNA 構造モチーフを利用した新規 RNA 自己複製システムモデルを設計・構築した。さらに設計した RNA 分子から構成されるμm サイズのコンパートメント(小胞)の構築を試み、RNA のみからなる機能性構造体の創出に向けて前進した。
著者
長瀬 美樹
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、Rac1によるMR活性化と臓器障害の機序につき検討した。足細胞特異的Rac1活性化、同Rac1 KOマウスは足細胞障害、アルブミン尿、糸球体硬化を自然発症し、Rac1活性とMR活性、MR阻害薬の保護効果が平行していた。マクロファージや心筋特異的Rac1/MR KOマウスでは心腎障害が軽微であった。肥満糖尿病性腎症、TAC心障害モデル、Ang II/食塩腎障害モデル、皮膚老化モデルにおいてRac1やMRの活性化、慢性炎症が関与し、Rac阻害薬やMR拮抗薬により病変が改善した。以上、Rac1-MR系の標的細胞とシグナルカスケードを同定し、この系が関与する新たな病態を明らかにした。
著者
香川 実恵子
出版者
松山東雲女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

153園の保育所等から聴き取り及び観察を行い、115園の年齢毎の子どもと保育者の支援についての観察記録を得るとともに、食に関する100の事例を収集した。これらを分析し、年齢毎の特徴や違いを明確に捉え、事例で多かった「好き嫌い」等への対応策などを資料にまとめた。また、多目的型子育て支援活動(「イクメン企画:パパと一緒にクッキング」、英語遊びを取り入れた「English Kitchen」、低年齢児対象の「おいしい楽しい食育広場」)などを3年間継続的に企画実施し、好評を得た。さらに、愛媛県と連携した地域食育活動を推進し、「愛媛食育かるた」を始め郷土の食を取り扱う新しい教材を製作・配布した。
著者
留岡 和重 関根 利守
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

高温に熱せられた始原的隕石に特有の衝撃溶融脈の電子顕微鏡,放射光X線回折による観察・解析により,溶融脈の鉱物学的詳細そしてその生成プロセスが明らかになってきた。また衝撃実験によって,隕石の高温下における衝撃加熱の影響は常温下における影響とは大きく異なることがわかってきた。さらに本研究遂行過程で,衝突による角礫岩化によって形成された組織に関する新たな発見があり,その研究にもとづいて隕石の母天体における組織形成に関する新たなモデルを提出した。
著者
三根 和浪 橋本 泰幸 若元 澄男 奥村 高明 三澤 一実 神山 貴弥
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

国内外の優れた図画工作・美術科教員が持つ学習指導に関わる知を取材すると共にそれを共有するシステムをインターネット上に構築し検討を行った。その結果,我が国の図画工作・美術科熟達教員は,常に個に向かう授業を行い,状況に柔軟に対応する教育技術を持っていた。具体的には,制作の過程を重視し,共感的な言葉遣いや常に児童・生徒の個と集団の様子をモニタリングすることによって個を引き出す授業を進めているなどがわかった。
著者
竹ノ上 ケイ子 佐藤 珠美 辻 恵子
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

自然流産した日本人女性とその配偶者の喪失,悲嘆の実態を把握し,実状に合った援助システムを考案することを研究目的とした。平成14年度は,面接調査に着手し,流産前後のカップルの状況や受けた援助の実際,課題等を把握した。援助の試みとして,インターネットのホームページ:http//web.sfc.keio.ac.jp/〜takenoue/「流産を経験された女性&男性のためのページ」を作成し情報提供とインターネットやメールを介した援助を開始した。平成15年度は,神奈川県かながわ女性センターにおいて面接による聞き取り調査と相談活動を開始し,その指導の際に使用するリーフレットを作成した。また,インターネットのホームページに見る流産後女性たちの喪失,悲嘆の実態と癒しについての調査を行い,流産・早産に関するインターネットのホームページ数が増加傾向にあり,インターネットを介した援助の可能性があることが明らかになった。平成16年度は,流産体験者の会(ポコズママの会)の創設とその活動の支援を行った。この体験者の会のサポートを受けてインターネットのホームページ経由でアンケート調査を行った。その結果,病院・産院での援助・配慮が不十分であること,万人に合う援助はあり得ないので援助の個別化が必要であること,流産体験者同士の情報交換や支え合いが有効であること,インターネットのホームページを介した援助による効果が得られる可能性があることなどが明らかになった。これらの研究成果は国内外の学会で発表した。今後は本研究で得られた知見を医療現場へ還元するとともに,医療者と患者(体験者)が協力して,医療施設以外でも自然流産後の女性と配偶者らの意志を尊重し,彼らの持てる力を発揮してもらい,地域社会を巻き込みながら現実のビーズに合った援助システムを創りあげていく必要があると考えており,研究を継続する予定である。
著者
加護野 忠男 石井 淳蔵 猶本 良夫 川上 智子 松嶋 登 坂田 隆文 水越 康介 横山 斉理 日高 優一郎
出版者
甲南大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、医療経営のマネジメントに関する研究を行うことを目的とする。具体的には、医療分野の固有性をふまえつつ、研究上の方法論整備を行い、トヨタ生産方式を中心としたマネジメントノウハウの意義についての研究がすすめられた。研究の結果、方法論として、制度論や実践論に基づく研究の可能性が示された。また、具体的な対象については、トヨタ生産方式はもとより、より包括的に次章を捉える為にも、ITの意義や、ガバナンスの必要性などが確認された。
著者
大地 宏子
出版者
鶴見大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

銘酒澤亀の醸造家で堺酒造株式会社の設立など堺市産業界の重鎮であった宅徳平を祖父に持つ宅孝二は、幼少時より邦楽や芸事を嗜み育った。パリ留学後、最初に奉職した東京女子高等師範学校での舞踊曲の作曲や、東京オリンピックの女子床運動におけるピアノ伴奏など、彼にとっての音楽は身体運動と呼応しあう存在であった。また、数多く手掛けた映画音楽には幼少時代に体験した邦楽と晩年に傾倒していったジャズへの憧憬がみられ、それらが彼の創作活動の基底をなしているものと思われる。
著者
金子 智行
出版者
法政大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

細胞内に蓄えられた後天的情報を定量化するために、モデル細胞として拍動心筋細胞を用い、細胞に摂動を与えたときの緩和過程を測定した。まず、外部から摂動を与えるための電気刺激プロトコールを改良することにより拍動周期の制御を可能にし、心筋細胞の拍動周期と細胞外電位を同時測定する系を確立した。次に、電気刺激により拍動周期を固定すると、イオンチャネルの活動状態がその周期に依存して対数関数的に変化した。このことから拍動周期という後天的情報の表現型は後天的情報であるイオンチャネルの活動状態を変化させ、拍動周期と相関した活動状態まで対数関数的に変化することが示唆された。
著者
石幡 直樹
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

フェミニズムの鼻祖とされるウルストンクラフトのテクストから、「進歩」を共通項として成立する国家と女性の類似性を抽出して、その意味と相互の影響関係を分析した。未開状態から文明社会への「進歩」は、豊かで不安のない生活と高度な精神活動による文化を生み出す。しかし、『北欧紀行』に見られるように、スウェーデンやデンマークの自然と接したことで、彼女は、単純な進歩史観には疑問を呈するようになる。彼女の逡巡は、近代国家の成立と自らの女性としての表象とを重ね合わせつつ、「進歩」の功罪を問い直す懐の深い思索を重ねたことの証であり、ラディカルな女権論者としてのウルストンクラフト像の別な側面を示している。
著者
小野 光弘 塙 政利 平田 拓 下山 雄平
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

生体のin vivo(生きたままでの)電子常磁性共鳴(EPR)計測、とりわけラットのホールボディ計測の実現を目標として、350MHzパルスEPR装置の開発を行った。本研究で得られた成果をまとめると次の様になる。(1) 数値解析により、最適なパルス幅と共振器の共振尖鋭度Qは、緩和時定数T_2=10〜100nsの生体ラジカルに対して夫々10〜68ns、10〜60、T_2=100〜800nsの固体のラジカルに対して夫々68〜158ns、60〜280であることが分かった。(2) 試作した350MHzパルスEPR装置を用いて、γ線照射クオーツ粉末37.5gの電子スピンエコー(ESE)信号の受信に成功した。受信信号電圧はパルス間隔が1400〜1600nsにおいて3〜5mVであった。(3) 本研究で得たESE信号から、γ線照射クオーツの緩和時定数はT_2=778nsと推定される。これは我々の研究室で既に開発した1.3GHzパルスEPR装置による測定結果T_2=759nsに極めて近い値である。(4) 生体計測を行うために、今後共振器のQを更に下げる必要がある。
著者
岩佐 有華
出版者
新潟大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2011

面会に回数や時間などの制限がないICUにおける重症患者の家族のニーズを構造化することを目的とし,24時間面会可能なICUに入室した重症患者の家族を対象に半構造化面接を行い,質的記述的に分析を行った.その結果,【そばにいたい】【会いたいときに会いたい】【後悔したくない】【居心地の良い場の提供】【その場にいても良いという保障】【そばにいることを自分の意志で選択】【帰ることの自己決定】などのカテゴリーが抽出された
著者
小林 健史 橋本 竜作
出版者
北海道医療大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は専門家の少ない地域において住民参加型授業を通して、特別支援教育体制を構築することを目的とした。我々は住民参加型授業を活用した介入を通して、教員をエンパワメントしつつ、さらに簡便かつ効率的に相談者が地域に存在する社会資源を活用しやすくするツールを作成し支援を行った。その結果、社会資源の少ない地域に合致した特別支援教育体制構築の手がかりが示された。
著者
松沢 哲郎 WATSON C.f. WATSON C.F.
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

Within the last fiscal year I have carried out a complete experimental study investigating cultural transmission of an arbitrary gesture in Japanese macaques using the group diffusion paradigm. I also collected data regarding the observation of a Japanese macaque carrying her dead infant for an unusually long period, followed by mother-infant cannibalism. I will present the findings of both studies at an International conference, this summer, and will write them up as an original research article and an observational case study, respectively, for submission to journals. The JSPS grant has enabled me to collaborate with Japanese researchers. I plan to attempt to carry out a survey of potentially cultural behaviours across Japanese macaques in Japan.
著者
足立 吉隆 森戸 茂一 佐藤 尚
出版者
独立行政法人物質・材料研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

マルテンサイトパケットは互いに複雑に入り組んでいること、その界面は特定の晶癖面を持っていること、またブロックも入り組んだ構造を持っていることが明らかとなった。すべてのブロックは旧オーステナイト粒界に接していた。さらに、三次元像の定量化を位相幾何学および微分幾何学の観点から行うに当たって、種数、オイラー評数、ガウス曲率、平均曲率といったパラメータを導入して、形態の定量化への可能性を検証した。その結果、これらのパラメータを使うことによって、複雑な実際の金属組織形態の定量化が可能であることを示し、今後の新しい3D定量材料組織学構築への布石となるものと期待される。
著者
田中 庸介
出版者
独立行政法人水産総合研究センター
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

クロマグロは生活史初期にプランクトン食から魚食へと食性が転換する。本研究では,本種仔魚の魚食性への転換が,その後の成長や生き残りにとって,どのような役割をはたすのかを明らかにすることを目的に,飼育技術を活用して実験に取り組んだ。その結果,魚食性への食性転換は,クロマグロ飼育仔魚の成長や生き残りに重要な役割を果たし,餌となる餌料仔魚の給餌条件によってクロマグロ仔魚の成長・生残は大きく変化することが分かった。これらの知見はクロマグロの加入量変動の仕組みの解明や,養殖種苗の大量生産のための重要な基礎知見になると考えられた。
著者
目 義雄
出版者
国立研究開発法人物質・材料研究機構
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

ユビキタス元素のみからなるTi-Al(Si)-C(N)系MAX相を対象に配向積層体を作製し、強度、靭性の優れた材料系を提示することを目的とした。代表的なMAX相炭化物であるTi3SiC2およびAl2O3を添加したTi3SiC2の配向体を強磁場中コロイド成形およびパルス通電加熱により作製し、配向体化およびをAl2O3添加により強度・靱性は向上することを明らかにした。また、Ti2AlNについても配向化により、強度・靱性は向上し、摩耗特性も向上した。さらに、従来MAX相のXがBでも熱力学的計算により安定相が存在すること、MAX相の相関元素が溶出したMxenes2次元化合物の特性の可能性を示した。