著者
原科 颯
出版者
公益財団法人 史学会
雑誌
史学雑誌 (ISSN:00182478)
巻号頁・発行日
vol.129, no.4, pp.30-54, 2020

明治22(1889)年に制定された(明治)皇室典範(以下、典範)は、皇位継承や皇族など皇室に関する重要事項を定めた。本稿は、従来等閑視されてきた元老院議官の制定への関与に着目した上で、典範によって規定された皇室の自律性を明らかにするものである。<br>  典範草案の多くは、柳原前光や尾崎三良など、近世朝廷関係者で三条実美を人脈的結節点とする元老院議官によって作成・協議された。それらは、井上毅の意見とは異なり、天皇の皇族に対する監督権(以下、皇族監督権)を尊重しながら、皇位継承順序・摂政就任順序の変更などは元老院へ諮詢されねばならないとした。背景には、皇室の自律性確保や元老院の権限強化といった志向がうかがえる。<br>  しかしながら制定を主導した伊藤博文は、皇族監督権を容認する一方、皇位継承順序の変更については、皇室の政治からの独立性を担保すべく、元老院のみならず内閣への諮詢も否定した。こののち柳原は、伊藤・井上に対し、起草作業の主導権をめぐる対抗意識や政治的闘争心を強めるに至った。<br>  その後、典範諮詢案の枢密院会議では、永世皇族制が採択されたものの、皇族の婚姻や懲戒などに関しては、宮内大臣の副署や皇族会議ないし枢密顧問官への諮詢を要すとしつつ、天皇の皇族監督権が広く認められた。<br>  かくして典範の制定は、憲法のそれとは対照的に、草案の広範な回付や伊藤への対抗意識を伴った。この間、柳原ら議官は一貫して上院の皇室事項への関与を重視したが、伊藤は内閣・議会いずれの関与も斥けた。しかしながら両者は、先行研究では看過されてきたが、皇位継承を除く皇室事項について天皇の意思を尊重する点では概ね一致したといえる。即ち典範は、皇室の自律性を確保すべく、皇室の政治からの独立性(消極的自律性)を保障した上で、皇室事項は原則として、天皇をはじめ宮内大臣・皇族会議・枢密顧問官の意思で決定・運営されるとしたのである(積極的自律性)。
著者
松田 憲亮 本間 和也 吉住 浩平 永井 良治 中原 雅美 金子 秀雄
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.81-85, 2012 (Released:2012-02-21)
参考文献数
21
被引用文献数
2

〔目的〕皮膚冷却刺激下での中殿筋低負荷トレーニング効果と筋活動変化を検討することである.〔対象〕健常成人男性32名を対象とした.〔方法〕対照群と皮膚冷却群に分け,低負荷での股関節外転運動からなるトレーニングを6週間実施した.隔週で等尺性股関節外転最大筋力と中殿筋の表面筋電図を測定した.皮膚冷却群では最大随意収縮時および最大随意収縮時を基準としてその30%の負荷量時の積分値と平均周波数を測定し,トレーニング開始時を100%として正規化し比較した.また,冷却部位の皮下組織厚,皮膚表面,深部組織温度を計測した.〔結果〕等尺性最大筋力は皮膚冷却群で4~6週後有意に増加した.筋積分値は6週後,有意に増加したが,平均周波数の変化は認められなかった.〔結語〕皮膚冷却刺激下での中殿筋低負荷トレーニングでは,有意な筋力増強効果が認められた.筋力増強には皮膚冷却刺激による運動単位動員の促進とtype I線維における筋活動特異性や運動強度が反映されていることが示唆され,type II線維の活動増加については判別できなかった.
著者
小林 伸一
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1294, pp.121-124, 2005-06-06

5月18日、老舗ソースメーカー・イカリソース(大阪市)の会長(当時)、木村敏容疑者らが詐欺の疑いで大阪地方検察庁特捜部に逮捕されました。もともと財務的に苦しい状況でしたが、会長逮捕によって店頭から商品が撤去されたことが引き金となり、5月24日、イカリソースは大阪地方裁判所に会社更生法の適用を申請しました。 私は、昨年4月2日に同社に社長として入社しました。
著者
永井 学
出版者
日経BP社
雑誌
日経ベンチャ- (ISSN:02896516)
巻号頁・発行日
no.254, pp.148-151, 2005-11

「『これは計画倒産ではないか』という声すら、お客様から挙がっている。お客様は毎日、私どもの命が脅かされんばかりの勢いで迫ってこられて、我々は土下座せんばかりに謝っておるんです。出資者に、どうかお金を戻してあげてほしい」 マイクを持った男性は、涙まじりの声で訴えた。 広い会場は、自然とわき上がる拍手に包まれた。
著者
廣田 龍平
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第50回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.D12, 2016 (Released:2016-04-23)

本発表は、日本の「妖怪」を人類学的に把握することを通じて、「無形と有形のあいだ」に現われるフィールドの諸対象を位置づける概念として提示するものである。事例として用いるのは、柳田國男が昭和初期に著した「妖怪名彙」に現われる妖怪、そしてネット怪談として知られる「くねくね」という妖怪の二つである。
著者
栗原 慎二
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.243-253, 2006-06-30
被引用文献数
1

本研究は,摂食障害で不登校に陥った女子高校生に対して教員が支援チームを作って関わり,無事卒業していった事例を通じて,学校教育相談における教員によるカウンセリングやチーム支援のあり方について検討することを目的とした。本事例の検討を通じてチーム支援の有効性が確認されるとともに,以下の点が示唆された。(1)学校や教員の特性を生かしたチーム支援の有効性と可能性(2)学校カウンセリング独自の目標設定と方法選択の重要性(3)コアチームのメンバー構成の重要性,(4)学校における秘密保持のガイドライン作成の必要性。
著者
藤田 淳也 小倉 貴志 大河内 一弥 松本 典剛 澤田 賢治 金子 修
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌C(電子・情報・システム部門誌) (ISSN:03854221)
巻号頁・発行日
vol.142, no.3, pp.328-338, 2022-03-01 (Released:2022-03-01)
参考文献数
25
被引用文献数
2

Threat modeling is a process to determine effective cybersecurity measures to secure industrial control systems (ICSs). However, deep cybersecurity knowledge is required to perform threat modeling processes and those results including prioritization of cyber attack scenarios are depended on security analysts. To reduce the dependency of analysts, it is required to express cyber attack scenarios with a structured model. In this study, a new structured model that expresses cyber attack scenarios for ICSs is proposed. The proposed model is based on the Diamond model and capable of expression behaviors of adversary in a targeted system by a structured form. The model makes it possible to express structured cyber attack scenarios and reduce dependency of analysts. This paper provides a detail of the proposed model and evaluation results of the model in terms of the usefulness of threat modeling.
著者
岩崎 信治
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.1988, no.67, pp.11-16, 1988

日本のモーターサイクルが米国に輸出をしはじめたのは1960年前後である。輸出モデルはどのメーカーも国内用のものをそのまゝ米国向に転用したもので、せいぜい塗色や部品を変える程度であった。米国よりそこはかとなく「トレール」という市場ニーズが知らされても、なかなか理解することができなかった。現地に進出したばかりの営業本社やデザインオフィスの情報ネットができ、日本からの開発チームのフィールドサーベイが可能になってから「トレールの遊び方」が判ってきたのである。輸出史上初の米国専用モデル、ヤマハトレールDT1は1968年に発売された。発売と共に大ヒットとなり米国市場で大成功を収めた。予定外の日本、欧州市場でも新カテゴリーモデルとして大人気で受け入れられた。本稿はデザインを担当した筆者の体験による「研究ノート」である。
著者
石倉 恭子 加藤 美生 甲斐 裕子 山口 大輔 吉葉 かおり 福田 吉治
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.254-265, 2021-08-31 (Released:2021-09-03)
参考文献数
43

目的:小型通信機器搭載アプリ等にて,身体活動を促進する一連のしかけ(ツール)に使用されたナッジを明らかにした.方法:「physical exercise」等と「app」等を検索語として,データベース検索(Scopus, Pubmed, Web of Science, CiNii)により2014~2019年に発行された論文を抽出した.論文で扱われた身体活動を促進する無作為化比較介入試験(RCT)を抽出したのち,ツール毎にナッジチェックリストMINDSPACEの9要素(“Messenger”“Incentives”“Norms”“Defaults”“Salience”“Priming”“Affects”“Commitments”“Ego”)の有無を分類した.国内実装事例を全国紙新聞記事から抽出し同様に分類した.結果:抽出されたRCTは32本であり,全て海外で実施されていた.使用されたツールは32 件で,MINDSPACE要素は平均4.2(範囲0–9)個であった.多用された要素は“Priming”(n=30, 93.8%),“Ego”(n=26, 81.3%),“Norms”(n=17, 53.1%),“Commitments”(n=15, 46.9%)であった.国内実装事例で使用されたツールは36件で,要素は平均1.4(範囲0–9)個であり,“Incentives”(n=31, 86.1%)が最も使用されていた.結論:有効なツールに使用された“Priming”や“Ego”,“Norms”,“Commitments”は,国内実装事例では殆ど使用されていなかった.今後,身体活動促進を意図しツールを開発する際は,これらを考慮することが望まれる.
著者
石丸 大稀 藤本 まなと 中村 優吾 諏訪 博彦 安本 慶一
雑誌
2021年度 情報処理学会関西支部 支部大会 講演論文集 (ISSN:1884197X)
巻号頁・発行日
vol.2021, 2021-09-10

本研究では人が互いにコミュニケーションを取る際,リアルとバーチャルでどのような違いがあるのかを考察し,その違いを小さくするための技術開発を行う.本発表では目的や用途による変化の分析から,今後のAR技術開発の対象とする分野を検討する.
著者
三宅 貴久子 久保田 賢一 黒上 晴夫 岸 磨貴子
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.41, no.Suppl., pp.221-224, 2018-03-01 (Released:2018-03-01)
参考文献数
8

本研究の目的は,児童が持つルーブリックに対するイメージを分析することを通して,教師と児童が共同的にルーブリックを作成する意味について明らかにすることである.ルーブリックは,教師が児童のパフォーマンスを質的に評価するための道具として活用されることが多い.同時に,授業において,教師と児童が共同的に学習目標を設定するための道具としても利用されている.本研究では,教師と児童が共同的にルーブリックを作成することの意義を,児童の観点から明らかにする.そのため,A 小学校の4年生64名に対してイメージマップを活用した調査を行った.分析の結果,児童はルーブリックを共同的に作成するプロセスを通して,学習目標を意識し,主体的に学習活動に取り組んでいることがわかった.さらに,学習目標を自分で設定することの重要性とその方法についても学んでいた.一方で,一部の児童の発言を中心に目標設定されてしまうことへの抵抗感,目標設定に授業の多くの時間を費やす必要性への懐疑,活動目標を設定することへ参画することの難しさがあることがわかった.

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著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1914年01月31日, 1914-01-31

2 0 0 0 OA 官報

著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1914年03月13日, 1914-03-13