著者
中村 妙子
出版者
国際基督教大学
雑誌
ICU日本語教育研究センター紀要 (ISSN:13447181)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.27-36, 2000-03-31

中級教育に関心が集まり,そのカリキュラム,教材の開発が行なわれている。そこで,この小論は中級日本語教育とは何かを考えるものである。まず,中級とはどのレベルであるのか,共通の理解が必要である。現在では,日本語能力試験の2級を中級と考えるのがわかりやすい。また,中級のスタートラインははっきりしない。教科書は種々あるが,それぞれ異なる。初級と中級をつなぐいわゆる初中級的なもの,初級とのギャップがあっても,使う側での補足を期待しているものなどである。教科書からは一般的な出発点はたどれない。具体的に国際基督教大学の中級教育についてみると,カリキュラム,教材は完成されてはなく,試用の段階である。ICUの中級は多くの要素を載せなければならない。しかし,これまでの蓄積,現在の日本語教育の成果を活用していけば,難しいことではない。すべてを,教材,カリキュラムに盛り込むのではなく,分からないことを学習者自身が解決する方策を習得させることも必要である。ICUの理念の一翼を担う日本語教育であれば,最適のカリキュラム,教材の確立が急がれる。
著者
玉 真之介 岩手大学 大学教育総合センター TAMA Shinnosuke
出版者
岩手大学
巻号頁・発行日
2006-01-01

第一版は2006年,第二版は2007年,第三版は2009年,第四版は2012年に刊行.第四版から著者が「岩手大学 大学教育総合センター」に変更。
著者
清田 洋正 五十嵐 渉 齋藤 亜紀 古川 博之 星川 浩輝 桑原 重文
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.57, 2015

<p> Enacyloxin (ENX)類(Fig. 1)は、赤パンカビNeurospora crassaの培養上清で培養した酢酸菌の一種Frateuria sp. W-315株の生産する、珍しい鎖状ポリエン-ポリオール型の抗生物質である[1]。そのポリエン構造のため光に不安定であり、渡邉敏彦博士による発見報告以来、当研究室での全立体構造決定まで25年を要した[2]。中でもENX IIa (2) は抗グラム陽性・陰性細菌活性を示し、その作用機構はリボソームelongation factor-Tuに作用するタンパク質合成阻害によることが知られている[3]。酵母やカビには抗菌活性を示さないことからも選択的な抗菌剤としての開発が期待される。ENX IIaの他、ENX oxidaseによる酸化の前駆体であるENX IVa (1) やdecarbamoyl ENX IIa など様々な類縁体が単離されている。</p><p>Fig. 1. エナシロキシン (ENX) 類の構造と逆合成解析</p><p> 我々はENX類の創薬への展開を目指して全合成研究を行っている[4]。ENX IIa (2) の逆合成解析をFig. 1に示す。全体をポリオールC16'-C23'部A、C9'-C15'部B、 ポリエンC1'-C8'部C及びシクロヘキサンカルボン酸部Dに分けた。Aの3箇所の不斉点についてはd-アラビノースを利用し、Bはd-グリセルアルデヒド=アセトニドからクロチルホウ素化で導くことにした。ポリエン部C はWittig反応で調製し、シクロヘキサンカルボン酸部Dについては、d-キナ酸の立体化学と位置選択的なアシル化反応を利用する。AとBの連結では、ジアニオン型求核試薬と酸クロリドとのカップリング反応を計画した。BCD間についてはHorner-Wadsworth-Emmons反応を用いることにした。</p><p>1)ポリオールC16'-C23'部の合成(Scheme 1)</p><p> d-アラビノースをラクトン誘導体3に導き、Wittig-Horner反応により4を経てE-アルケニル部分を増炭した5を得た。4のカルボニル基の還元は非選択的であったが、塩基処理で生じたオレフィンはE-体のみであった。トシラート6を経てエポキシド7を調製後、C16'-C23'部となるスルホンA1を合成した[4b]。また、相当するブロミドA2、ホスホニウム塩A3も調製した。</p><p>Scheme 1. C16'-C23'部の合成</p><p>2)ポリオールC9'-C15'部の合成(Scheme 2)</p><p> d-グリセルアルデヒド=アセトニド9からクロチルホウ素により4炭素増炭してアルコール10を得、酸触媒を用いて1,2-アセトニド部分を2,3-位に掛け替えて11とした[5]。11から相当する酸クロリドB1を調製した。一方、11の二重結合をオゾン分解した後、LiCHCl<sub>2</sub>を用いて増炭[6]、アルキノール12及び酸クロリドB2に導いた。また、12のアルキン部分をRed-Al/NCSを用いて塩素化し、酸クロリドB3を得た。</p><p>Scheme 2. C9'-C15'部の合成</p><p>3)C9'-C15'部とC16'-C23'部のカップリング反応(Scheme 3)</p><p> 予備実験において、相当するスルホン(O-EE-A1)由来のモノアニオンでは、アルデヒド、酸クロリド何れともカップリング体は得られなかった。そこで求核性の向上を狙い、ヒドロキシスルホンA1からジアニオンを調製、酸クロリドB2を加えたところ、目的物A1-B2が10%の収率で得られた。一方、ホスホニウム塩A3を用いても目的物は得られなかった。更に求核性を向上させるため、共鳴安定化していないヒドロキシアルキ</p><p>(View PDFfor the rest of the abstract.)</p>
著者
岩橋 尊嗣
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, 2008

2006年の日本人の平均寿命は女性85.81歳(22年連続世界一),男性79.00歳(世界第2位,第1位はアイスランド : 79.4歳)であった.厚生労働省では,今後三大疾病の治療効果の向上を見込むと,さらに寿命は延びると予想している.<BR>私達の身体機能は,加齢とともに確実に老化し衰えていく.その一つの現象として,外見上の体力衰退ではなく飲食時の気管への食物の入り込みである.この現象は&ldquo;誤嚥&rdquo;と呼ばれ大きな問題となっている.飲食中に突如,猛烈に咳き込む.このような状況に陥ったり,見たりされた方もおられるでしょう.普通,健常であれば気管に入った異物は咳き込むことで吐き出すことができる.しかし,高齢者・疾病者の場合,咳き込むことが出来ずに,異物が気管に入ったまま放置され続けると,この異物に起因しての発熱,さらには肺炎にまで進行してしまうことがある.<BR>第1編は,海老原氏らに「嗅覚刺激と高齢者摂食嚥下障害」という題目で,上述したような問題点の解決にブラックペッパーによる嗅覚刺激が脳への刺激となり,最終的に誤嚥予防の有益な手段になり得るという研究成果について執筆して頂いた.<BR>第2編は,今西氏に「香りと医療─メディカル・アロマセラピー─」というテーマで執筆して頂いた.本学会誌でも以前に呼気や体表より発散されるガス成分による疾病の診断,予防等への研究が実用化へと向かいつつあることを紹介している(Vol. 36 No. 5, Vol. 37 No. 2).エッセンシャルオイル(精油)を用いてのアロマセラピー(芳香療法)として,私達に最も身近のものはエステティック・アロマセラピーと呼ばれるもので,街なかの美容室やエステサロンなどで行われている行為である.これに対して,標題にあるメディカル・アロマセラピーは医療行為の中で補完的な目的として行われるもので,その効能は科学的エビデンスに裏付けされ,徐々に認められつつある.今後さらなる実施例が増え,病気の予防や症状の軽減への寄与という実用性が期待される分野である.<BR>第3編は,岩崎氏に「都市緑化植物が保有するストレス緩和効果─揮発成分からみた癒しの効果─」というテーマで執筆して頂いた.2006年林野庁より森林セラピー基地の認定箇所が発表され,樹木から発散される揮発性物質の身体におよぼす有効性が確認されている.厚生労働省は&ldquo;治療する医学&rdquo;から&ldquo;予防する医学&rdquo;が重要であると位置付け,主に食生活の改善指導等を積極的に進めるとしている.しかし,&ldquo;食&rdquo;だけではなく嗅覚を活用しての予防医学にも注目すべき点が多い.岩崎氏は都市部の緑化樹木でもセラピー効果が得られることを確認した.たとえば,比較的植樹が多い&ldquo;クスノキ&rdquo;からの抽出精油(主成分はカンファー)について,ヒトへのストレス緩和作用を調べ有効性を確認し,さらに,植物園内にあるラベンダー畑と芝生地においてもストレス緩和性があることを確認している.<BR>第4編は,野田氏らに「五感を刺激する園芸療法」というテーマで執筆して頂いた.&ldquo;園芸療法&rdquo;という言葉自体,読者の方々にとって馴染みの薄い言葉かもしれない.著者らの所属されている千葉大学では,芳香療法,森林療法など植物を媒介としての療法が注目を集めている中,園芸療法科学の確立に向けたプロジェクトをスタートさせている.園芸療法の特徴は,個人が実際に植物の世話をすることで,見たり,触れたり,嗅いだり,食したりすることで五感が活性化されることである.すなわち,自然のリズムの中に身を置くことで,日常の健康増進や生活の質の向上を図ることを目的としている.<BR>以上紹介した4編の研究内容に共通している特徴は,いずれの場合もヒトに対して&ldquo;非浸襲性である&ldquo;ということであろう.高齢,年少,重篤である人達にとって採血・採尿行為などは身体に負荷をかけてしまう.これからはヒトに対して負荷をかけない診断・治療法の確立が極めて重要なことになってくる.執筆して頂いたいずれの研究も,しっかりとしたエビデンスに裏付けされており,今後に大きな期待を抱かせてくれる分野である.これからのますますの発展を願いたい.<BR>最後にご多忙中にも関わらず,本誌への執筆をご快諾いただいた先生方に,本紙面を借り厚く御礼申し上げます.
著者
鄭 石彦
出版者
日本保険医学会
雑誌
日本保険医学会誌 (ISSN:0301262X)
巻号頁・発行日
vol.91, pp.194-201, 1993-12-15

死亡構造の国際比較における研究に際し,日本,九州を対象として,年齢階級別・死因別死亡率について分析した。結果として脳血管疾患は九州では男子で35〜39歳で増加し,台湾の50〜54歳で略同一となる。女子では15〜79歳まで,台湾の方が九州より高い。悪性新生物の場合では,男子では45〜54歳まで各年齢階級で略同じ死亡率を示しているが,55歳以上では九州が増加している。女子65歳以上では九州の方が高い。そのほかの死因を比較すると,女子の心疾患は,25〜74歳まで台湾の方が高い。肺炎・気管支炎(50歳以上),不慮の事故,肝硬変(25歳以上),全結核,糖尿病(50歳以上)などはいずれも台湾の方が高い。特に糖尿病では女子で45歳〜79歳では九州の2倍の死亡率であることに注目される。台湾県市別において男女とも胃と食道癌は有意に相関する(P<0.01)。肝臓癌は男女ともに日本<九州<台湾の関係である。
著者
北川 洋子
出版者
創価大学
雑誌
創価教育研究 (ISSN:13472372)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.238-272, 2005-03
著者
曾 天然 藤川 昌樹
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.80, no.712, pp.1295-1305, 2015
被引用文献数
1

&nbsp;In order to explore the change of relationship between the white spirit industrial modernization and the city formation in Luzhou city, China, we examined the relationship of more than a century and divided them into 3 periods according to China's economic system: the infancy period of market economy, the planned economy period and the market economic period. In conclusion, we can say that the white spirit industry modernization shaped the scattered urban structure of Luzhou city nowadays.
著者
流王 貴義
出版者
東京女子大学現代教養学部国際社会学科社会学専攻紀要編集委員会
雑誌
東京女子大学社会学年報 (ISSN:21876401)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.1-15, 2018-03-02

社会学が政治・公共を論じることは可能なのか.現代の社会学にとっては,このような問い自体が無用に思える.20世紀の後半以降,政治社会学は社会学の一分野として確固たる地位を占め,21世紀になってからは,公共社会学という標語が注目を集めている.その一方で,ハーバーマスやアレントが公共を重視する立場から社会学的な思考に投げかけた疑念に対して,適切に答える準備が私たちには整っているであろうか.
著者
辻 雅晴
出版者
公益社団法人 日本生物工学会
雑誌
生物工学会誌 (ISSN:09193758)
巻号頁・発行日
vol.99, no.6, pp.314-317, 2021-06-25 (Released:2021-06-25)
参考文献数
25
著者
大園 享司 門 祐太 Takashi Osono Yuta Kado
出版者
同志社大学ハリス理化学研究所
雑誌
同志社大学ハリス理化学研究報告 = The Harris science review of Doshisha University (ISSN:21895937)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.221-229, 2021-01-31

本稿では土壌におけるリン溶解菌(リン化合物の可溶化に関わる細菌・真菌)の機能的多様性をまとめる。土壌における主要な無機リン・有機リン化合物の動態についてまとめ、土壌微生物のリンプールとしての役割ならびにリンの変換における役割を紹介する。微生物は無機リン・有機リンの可溶化能力の点で機能的に多様であり、リン可溶真菌として50属の子嚢菌類、担子菌類、ケカビ類が報告されている。有機リン化合物を加水分解するホスファターゼをコードする遺伝子を有するリン可溶細菌のメタバーコーディングについての最近の研究をレビューし、リン可溶真菌に関する今後の研究について議論する。
著者
北崎 充晃
出版者
心理学評論刊行会
雑誌
心理学評論 (ISSN:03861058)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.312-323, 2016

<p>I aim to implement 'we-mode' in cyberspace by connecting several physical spaces. The we-mode is a special cognitive mode to intimately cooperate with others, and enhance human cognitive abilities and behavioral performances beyond the individual's ability and performance. Studies on self-body perception, illusory body-ownership (e.g. rubber hand illusion, out-of-body experience, virtual embodiment), social interactions with others (e.g. Mutual gaze), changing one's own body image, and its social and psychological impacts in cyberspace using virtual reality technologies as well as in physical space are reviewed. Based on those findings I consider how to induce or create we-mode in cyberspace and what can be realized by the cyberspace we-mode compared with the physical-space we-mode.</p>
著者
金綱 正夫 関本 恒浩 関田 欣治 島田 潔
出版者
The Japan Society of Naval Architects and Ocean Engineers
雑誌
日本造船学会論文集 (ISSN:05148499)
巻号頁・発行日
vol.1994, no.175, pp.227-239, 1994 (Released:2009-01-08)
参考文献数
18

This paper deals with the measured data obtained through the at-sea measurement of the TLP “EHIME”, an offshore nursery pilot firm station of Marino-Forum 21, of which tendons are parallel wire strands (PWS) protected by polyethylen sheath with specially manufactured cushion rubber rings at each ends and connected to a gravity type template through a belimouth shape structure. The measured data of the TLP dynamic responses are compared with theoretical estimation, and the strength performance of PWS as TLP tendons are discussed.The main results are as follows; 1) the TLP with the PWS mooring system has the same dynamic response characteristics as the conventional TLP with the steel pipe mooring system, 2) the mooring system by use of PWS type tendons adopted for the TLP “EHIME” exhibits sufficient strength and durability characteristics.
著者
Toshitaka KANEI Munetaka IWATA Hiroaki KAMISHINA Takuya MIZUNO Sadatoshi MAEDA
出版者
JAPANESE SOCIETY OF VETERINARY SCIENCE
雑誌
Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.84, no.1, pp.25-30, 2022 (Released:2022-01-07)
参考文献数
24

C-C chemokine receptor 7 (CCR7) contributes to cell homing to lymph nodes (LNs). Recent studies reported that CCR7 is also expressed in tumor cells, which correlates with LN metastasis in various cancers. However, the expression of CCR7 in tumor cells is unknown in dogs due to the lack of appropriate antibodies. In the present study, a fusion protein of C-C chemokine ligand 19 (CCL19) was employed as an alternative method to CCR7 antibodies. The fusion CCL19 protein specifically detected CCR7 expressed in canine lymphoma cell lines, which showed active chemotaxis to both canine and mouse ligands. The present study will help further research on the involvement of canine CCR7 in LN metastasis.