著者
浅田 正雄
出版者
関西大学
雑誌
關西大學經済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.113-132, 2005-06-15

戦後の日本経済・産業の急成長は大きな謎であった。この要因としては、欧米では、通産省と企業とが一体となる官民協調体制、いわゆる「日本株式会社」によって成し遂げられたものであると批判された。OECDが70年代はじめに、その要因として日本の産業政策に注目し始めて以来、欧米では日増しに産業政策への関心が高まり、わが国以上に実証的・理論的研究が大きく進んだ。ところが、戦後我が国の高度経済成長に果たした通産省の産業政策の評価について、最近、三輪・マークライザーの両氏による『産業政策論の誤解』なる書物が発表された。本稿では、彼らの通説に対する徹底した産業政策論批判論を題材としながら、従来から行われてきた産業政策論の再検討と議論の整理を行うこと主目的にする。そして、産業政策の定義・政策手段に焦点を合わせて、従来からの議論をレビューし産業政策の有効性を検討した。その結果、三輪・ラムザイヤーの彼らの言う通説に対する批判や主張は、一部正しいが、問題があることも判明した。
著者
月本 昭男
出版者
一般社団法人 日本オリエント学会
雑誌
オリエント (ISSN:00305219)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.34-48, 1981-09-30 (Released:2010-03-12)
被引用文献数
1

There are two types of divination by means of birds in Ancient Mesopotamia. The first one is auspicium, namely the practise of divining the future by the observation of the flight and behaviour of birds. We have more than 350 kinds of such omina in texts of relatively good condition.As to the relation between protases and apodoses in these omina, we can find out at least three principles which explain the reason why a positive apodosis results from a certain protasis, and a negative from another:1. principle of metaphor; an example: “if a falcon puts a raven to death the king will win over his enemy” because the falcon is compared to the king, and his enemy to the raven.2. principle of association; an example: the appearance of a black (gi6) bird wakes an association of an eclipse (an. gi6) in the future.3. principle of the dichotomy of space; an example: the existence of a falcon at the right side of a man divines a favourable future for him, while the same falcon at the left side means a malicious one.Several protases which seem extremely unlikely to happen in reality must be interpreted as the products of the imagination.The second type is concerned with the physical peculialities of sacrificial birds. There has been a discussion among scholars about “a bird” (mušen=issuru) in certain types of ominous texts. Owing to the courtesy of Mrs. G. A. Matheson, the Keeper of Manuscripts of the John Rylands Library (Manchester), we published here one more late OB text of such a type which reports the observation of “a bird”.
著者
須田 朗
雑誌
人文研紀要 (ISSN:02873877)
巻号頁・発行日
no.77, pp.165-198, 2013-10-10

本稿は哲学的良心概念を手がかりにカントとハイデガーの思想を比較するものである。カントは良心を道徳法則から発せられる「内的裁判官の声」と呼ぶ。良心の声は、現象的存在者としては自然必然性に支配される人間に、自らが理性をもつ自由な叡知的存在者であることを告げるという。本稿は人間のこの両面を時間概念に即して解釈する。良心現象は現象を支配する「自然的時間」とは別の「倫理的時間」のごときものを示している。これが本稿のカント解釈の真骨頂である。他方ハイデガーは『存在と時間』で良心論を展開する。良心は、世間に頽落した現存在に対して本来的自己が発する呼び声である。おのれが負い目ある存在であることを自覚するように促す呼びかけなのである。これに応えることが覚悟性であるが、それは同時に本来的な時間性を自覚的に生きることでもある。それはもはやおのれの手中にない、いやそもそもおのれの手中にない非の根拠を引き受けることを意味する。一方カントが良心に見たものも、過去を現在の瞬間として引き受ける責任であった。このようにカントとハイデガーはまったく違う文脈ではあるが、同じように良心現象に人間存在の本来性を見ていたという共通点をもつ
著者
竹中 平蔵 高柳 正盛
出版者
日経BP社
雑誌
日経トップリーダー
巻号頁・発行日
no.310, pp.12-15, 2010-07

──鳩山由紀夫首相が辞任し、菅直人内閣が発足しました。菅首相とは郵政問題などを巡り議論を戦わせてきた竹中さんですが、日本の新しいリーダーをどう見ていますか。竹中 リーダーにはいろいろな能力が必要ですが、菅さんが長けているのは、「人事のうまさ」と「発信力の強さ」だと思います。
著者
岩橋 勝
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集. 社会科学篇 = Journal of Nagoya Gakuin University (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.51-63, 2018

近世日本の経済発展を検討する際,貨幣流通量の推移把握は基本的事項のひとつである。これまで幕府発行金銀貨についてはおおむねあきらかであったが,銭貨については鋳造所の分散等による理由から鋳造高総量の動向や,銭貨種別ごとの構成比率などはあきらかでなかった。明治新政府による金銀銭貨在高調査記録はあるが,これまで判明するかぎりの徳川期銭貨在高データとは接合が困難であり,同記録の正確性自体にも疑念が向けられていた。 本稿は,これまで銭貨在高に関連する個別先行研究を検討しつつ,日本銀行調査局が詳細に調査した各地銭座鋳造高の集計化をはかった。ついで金銀貨改鋳時期に対応させつつ,徳川期銭貨在高と新政府記録との接合を試みた。さらに,銭貨種別ごとの鋳造高も推計し,金銀貨との関連で経済発展に銭貨が果たした役割を考察した。
著者
岸本 麻子 金 義慶 南 豊彦 中川 のぶ子 多田 直樹 井野 千代徳
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.97-103, 2006-03-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
10

真性唾液過多症の1例を報告した。患者は24歳の女性で15歳頃より唾液過多を自覚していた。今日まで心因性のものとして加療されてきたが効果なく当科を紹介受診した。安静時唾液量は5分間で9-10mlと非常に多く、RI検査では両側の顎下腺で集積が低下していた。これは分泌に集積が追い付かない現象と理解した。唾液腺造影ではワルトン氏管の拡張が認められた。これは恒常的に多量な唾液が分泌されての現象ととらえた。顎下神経節をブロックして唾液量が著しく低下したことより顎下腺が責任腺と考えた。治療として抗ヒスタミン剤、マイナートランキライザー、H1受容体ブロッカー、カルバマゼピンを選択し投与した。結果、カルバマゼピンにてやや有効と判定された。最終的に左顎下腺摘出術を行ったが、結果は予想以上に良好で手術後49日目の安静時唾液量は1.5mlで、自覚的にも有効と判定された。
著者
岸本 美緒
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究では、身分制度の諸側面を通底する「身分感覚」に焦点をあて、社会的意識という視点から、中国身分制度の全体像を長期的な視野で再構成することを目指した。具体的には、明初から清代中期に至る時期の良賤身分の問題を取り上げて、多様な史料を用いて実証的な研究を行い、以下の諸点を明らかにした。(1)明清時代を通じて「賤」観念の核心は、他者に対する服役性・従属性という点に存在した。(2)明代初期には、法律上の「賎民」を特定の限定された集団に限り、民間で形成される従属関係を法律上の「賤」と切り離す政策が取られた。(3)明代後期には、社会的流動性の増大に伴って服役的な産業が発展し、従来の政策が破綻すると同時に「賤」をめぐる議論が活発化した。(4)清朝に入り、18世紀前半の雍正帝の時代には、被差別集団の戸籍の廃止や契約による奴婢化の容認など、身分をめぐる幾つかの改革が同時になされたが、それらはいずれも、社会的流動性の増大を肯定するとともに、そこに生ずる上下格差を新たな身分制度のもとに秩序化しようとするものであった。(5)清朝のこのような政策は、社会的身分をめぐる激しい競争の一因となり、賎民の身分上昇を抑えようとする既存の紳士階層によってしばしば冒捐冒考紛争(科挙資格や官職の保有を禁じられた賎民が身分を偽って科挙資格・官職の保有をはかったという理由で告発され、訴訟などに至る紛争をいう)が起こった。(6)清代後期に良・賤の判定基準をめぐり煩瑣な法令が制定されたのは、こうした紛争の頻発を背景としている。以上、同時期の日本の身分制度とは大きく異なる明・清時代の身分制度の特色と展開につき、大筋の枠組を明らかにすることができた。
著者
三井甲之 著
出版者
原理日本社
巻号頁・発行日
1934
著者
海野 るみ
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.197-197, 2009

今回の報告では、まず、映画『ツォツィ』を巡るR指定論争にみる「大人のモラル」間の対峙―配給会社vs映画倫理委員会―並びに同映画の試写会に参加した子どもたちの感想について分析し、三者の映画に対する視点のズレを明らかにする。また、同映画を通して子どもたちが観た、現代の身近な社会の現実=「子どものリアル」について議論する。 こうした議論を踏また上で、「話が通じない」まま展開するように見えるコミュニケーションについて、ズレの所在を質すことを始めとする、「話の通じなさ」を問題にすることに潜在する志向性を明らかにすることで再検討する。
著者
鈴木 洋仁
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 = NIHON KENKYŪ
巻号頁・発行日
vol.54, pp.79-104, 2017-01-31

本稿は、「平成」改元にあたって、小渕恵三官房長官(当時)が行った記者会見を分析することによって、大日本帝国憲法(1889)と日本国憲法(1947)における天皇の位置づけの相違を分析するものである。具体的には、改元を天皇による「時間支配」の究極の形式と定義したうえで、「平成」改元における、(1)政治性、(2)公共性、(3)メディア性という3点の違いを抽出する。なぜなら、日本国憲法においても、大日本帝国憲法と同様、「一世一元」の原則が法律で定められているからである。
著者
宮永 孝
出版者
法政大学社会学部学会
雑誌
社会志林 (ISSN:13445952)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.200-179, 2013-03
出版者
日経BP社
雑誌
日経コンストラクション (ISSN:09153470)
巻号頁・発行日
no.533, pp.40-44, 2011-12-12

最近の若者は本業でなくても、やりたいことには労を惜しまず、行動するという積極性がある。ここで紹介する5人は、既存の枠にとらわれないで何か新しいことに取り組んでいる若手ばかりだ。行動する若手は何を考えているのだろうか。やりたいことをやるんだと、社会人3年目にして自ら志願し、新事業に積極的に取り組む若手がいる。