著者
徳井 淑子
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

ロマン派の若者の間で流行した懐古趣味の服装について、その発端と背景を回想録・新聞記事・文学作品・風俗版画等から調査し、この流行のロマン主義ににおける意義を考察し、次の知見を得た。1.異装の起因が歴史物の芝居の流行にあることは既に指摘されているが、デュポンシェル制作の舞台衣裳で大成功したデュマ父の戯曲『アンリIII世とその宮廷』の上演が特に大きな影響を与えていること、つまり異装の背景には衣裳の時代考証を重んじるロマン派の新しい演劇思潮のあることが明らかになった。2.異装の流行を促した時代の土壌として、カ-ニヴァルの仮装舞踏会の隆盛と、ボエ-ムの言葉で知られる芸術家の自由奔放な生活態度が指摘されているが、仮装服もヴォ-ドヴィルやオペラ・コミック等の登場人物の扮装に取材され、舞台衣裳の影響の大きいことが具体的に確められ、こうした芝居の世界を日常生活にたやすく取り込む独自の生活感情を芸術家がもっていたことが理解された。異装は生活の中で想像世界に遊ぶ行為であり、これがボエ-ムの生活空間の特質である。3.舞台衣裳であれ仮装服であれ異装であれ、歴史服の知識は巨匠の絵画作品に求められ、従ってル-ヴル美術館や王立図書館版画室に通う画家が、いわば服飾史の専門家として舞台の衣裳係を務め、仮装服のデザイン書を著したこと、そして画学生の異装が過去の肖像画に取材されたことを明らかにした。一方、絵画は歴史小説の服飾描写にも影響を与えており、服飾をめぐって文学と美術と演劇が相互に密接に関わっていることから、服飾を含めた芸術の総合性をロマン主義の特質と見るべきであることを理解した。服飾の歴史に対する強い関心は、世紀後半に服飾史という学問に結実するから、懐古趣味の異装は服飾史学の成立に貢献したといえ、これはロマン主義の成果として位置づけられた。
著者
高橋 健一郎
出版者
札幌大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究は19世紀末から20世紀初頭のロシアの音楽と文学のインターフェースに光を当てるものである。まず、これまであまり研究対象とされてこなかった作曲家たちの基本的な情報を整理し、楽譜や書籍を発表したほか、メトネルに関して、象徴主義との関係、その文化史的意味について研究した。具体的には、象徴主義者アンドレイ・ベールイやヴャチェスラフ・イヴァノフら象徴主義者、そしてイリインらとメトネルとの関係について整理し、ロシア文化史のけるメトネルの位置を明らかにした。
著者
栃内 新
出版者
北海道大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

一昨年度・昨年度と同様に,材料としてアフリカツメガエル純系(Xenopus laevis, JJ)とその近縁種で細胞マーカーをもち,多数の比較的大きな斑紋を持つ近交系(X. borealis, BB),およびJJとBBの第一代雑種(JB)を用いて模様パターン形成の解析実験を継続した.斑紋は成体型の皮膚が完成する変態後期に出現する.通常どおりの時間で変態した個体には比較的大きめのスポットが少数出現するが,変態が遅れたものでは変態までに要する時間に応じてスポットの大きさが小さくなり数も増加する.逆に変態を早めることにより,時間に応じてスポットの大きさが大きくなるとともに融合したりして数が減少することもわかった.JB個体ではJ系とB系の中間型の斑紋が形成される.斑紋は主に黒色素胞の拡がり具合で認知されるが,斑紋部分で数が少なく分布深度も深い黄色素胞,および斑紋部分にはほとんど存在しない虹色素胞の働きも無視できない.つまり,皮膚の中におけるこれらの細胞の3次元的分布およびその細胞質の拡がり具合が斑紋形成の基盤をなしている.これらの色素細胞の分布・分化運命,そして生理的状態を決めているものが,斑紋パターン形成を支配している要因であるといえる.斑紋形成を支配する要因の分布状態(プレパターン)は幼生atage56あたりで形成されたものが変態期に可視化されることがわかった.斑紋のプレパターンが出来上がる時期に筋肉層の表面に分布していた黒色素胞が真皮および表皮に移動して侵入する.プレパターンを支配すると考えられる筋肉層などからの働きかけの実体を探るための移植実験は継続中である.フラクタル解析を用いたコンピューターシミュレーションでは,斑紋によく似たパターンをつくり出すことに成功したが,磁性体形成の際のイジング・モデルの方がより適切であるという可能性が出てきたため,検討中である.
著者
田中 雅一 江田 憲治 小池 郁子 高嶋 航 上杉 妙子 金 柄徹 田辺 明生 福浦 厚子 森田 真也
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究プロジェクトの目的は、ナショナリズムや国民国家創出との関係で論じられてきた軍隊をトランスナショナルな視点から分析することにある。対象は、在日・在韓米軍を含むアジアの軍隊に限り、歴史・人類学的なアプローチをとる。自衛隊のイラク派兵の影響から在韓米軍の再編による地域への影響に至るまで、その研究成果は多岐にわたる。基地反対運動や平和運動もまたトランスナショナル化していることが明らかになった。
著者
川合 悟
出版者
帝塚山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

持ち上げ時に知覚される物体の重さへの慣性力の影響を検討した。慣性力は指先の物体接触面から物体までの距離(作用点-重心)および軸周りの質量分布に影響される。故に同じ質量で大きさ(3水準)および距離(3水準)が異なる9種類の竿付立方体を用い、これら刺激から知覚される重さの変化から、距離(実験1)および大きさと距離(実験2)の影響を調べた。実験1からは距離の増大は重さの増大を生じた(p <.05)。実験2からは距離の増大+大きさの減少は重さの増大(あるいはその逆)を生じたが、両要因の拮抗関係が崩れると重さは複雑に変化した。そこで複雑な両要因の影響を量的・組織的に説明できるモデルを提案した。
著者
山川 充夫
出版者
福島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

東日本大震災と原子力災害の発生により,研究目的及び研究実施計画を一部変更して,被災商店街や商業者を対象とする調査を行った。調査結果からは「歩いて暮らせるまちづくり」の重要性がより強く認識されることとなった。商店街は地域社会の経済活動だけでなく,地域社会における諸活動の要の役割を果たしてきている。それは震災・原災という非常時においても,地域住民に商品やサービスを可能な限り早く提供するという業務的役割のほかに,瓦礫の片づけ,除染活動,食糧援助,募金活動など地域社会への貢献活動を積極的に行った。それは大型店とは違った顔の見える地域社会への貢献である。併せて,商店街が復旧に立ち上がるためにも,水・電気・ガソリンなどのライフラインの確保が前提となることが再認識された。
著者
古賀 智之
出版者
同志社大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、スパイダーシルクの有する優れた力学特性とその分子構造特性に着目し、人工ペプチドの自己組織化概念を合成高分子システムとハイブリッド化させるという新しい発想のもと、スパイダーシルク様ナノ構造を有する様々な新規ペプチドーポリマー・ハイブリッドを合成した。水溶液系やフィルム系での自己組織化挙動や高次構造特性,力学物性等を総合的に評価し、高機能ソフトナノマテリアル設計の新たな指針を得ることに成功した。
著者
井樋 慶一 須田 俊宏
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

アセチルコリン(ACh)は脳内の代表的神経伝達物質であるが,ACh作動性ニューロンは視床下部室傍核(PVN)のcorticotropin-releasing factor (CRF)産生細胞の近傍に神経終末を形成している。PVNにおいてAChがCRFの合成,分泌に及ぼす影響を明らかにするために,無麻酔ラットを用い,脳内微量注入法により直接PVN内にAChを投与し,Northern blot法を用いてPVN内CRFmRNAおよび下垂体前葉(AP)内proopiomelanocortin (POMC)mRNAの定量を行った。同時に末梢血中ACTHの変化を検討した。さらにAChの作用がいかなる受容体を介して発現するかを明らかにした。1.無麻酔ラットPVN内ACh (1-100pmol)投与後血中ACTHは用量反応性に増加し,30分で頂値を示し,120分で前値に復した。2.PVN内ACh投与後120分でAP内POMCmRNAおよびPVN内CRFmRNAはACh (0.1-10pmol)用量反応性に増加した。3.脳室内アトロピン前投与により,PVN内ACh投与による血中ACTH増加は抑制されたが,ヘキサメリニウム前投与により抑制されなかった。以上の結果は,PVNにおいてAChがCRFの合成および分泌を刺激することを強く示唆するものであり,ACh作動性神経路がCRFニューロンに対する刺激性の調節系であるころが明らかとなった。またAChの作用はムスカリン受容体を介することが明らかとなった。
著者
上野川 修一 戸塚 護 八村 敏志 飴谷 章夫
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

アレルギーや自己免疫疾患など免疫系の異常で発症する疾患の激増は大きな社会問題となっており,その安全かつ有効な治療法の開発が熱望されている.本研究では,食品由来タンパク質・ペプチドおよびそのアミノ酸置換体を用い,これらの疾患をより根源的かつ安全に治療する方法の開発を目指した.1.基礎的知見として,アレルゲン,自己類似抗原に対するT・B細胞応答をマウスを用いて解析した.牛乳アレルギー患者に特異的なT・B細胞応答についても明らかにした.2.上記免疫疾患の抑制における抗原分子のアミノ酸置換体の利用について検討した.主要な牛乳アレルゲンであるβ-ラクトグロブリンの抗原構造を詳細に解析した.この知見をもとに抗原分子のアミノ酸置換体によるアレルゲン特異的免疫応答の抑制について検討し,その有効性を明らかにした.また,α_<s1>-カゼイン由来ペプチドのアミノ酸置換体によるCD8^+T細胞応答制御の可能性を明らかにした.3.上記免疫疾患の抑制における経口免疫寛容の利用について検討した.経口免疫寛容の誘導条件・機構を解析し,CD4^+T細胞,CD8^+T細胞およびB細胞の役割を明らかにした.また,抗原の投与量,投与条件と免疫寛容誘導の関係を明らかにした.さらに,T細胞抗原レセプタートランスジェニックマウスを用いて,経口抗原に対する免疫応答,腸管免疫系の応答を解析した.4.自己免疫疾患,アレルギーの新しい抑制法について検討した.アレルゲン,自己類似抗原由来ペプチドの投与による抑制法,抗T細胞応答を利用した抑制法の有効性を明らかにした.本研究で得た知見は,食品由来タンパク質・ペプチドおよびそのアミノ酸置換体によるアレルギー・自己免疫疾患の新規予防・治療法の開発のみならず,未だに不明な点の多い経口免疫寛容誘導機構,免疫系の抗原認識機構,および上記免疫疾患の発症機構の解明に大きく寄与すると確信する.
著者
藤伊 正
出版者
筑波大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1987

暗黒下で赤色吸収型(Pr)としても生合成されたフィトクロムは, 赤色光照射後, 近赤外光吸収型(Pfr)に交換し, 様々な光形態形成現象を引き起こすとともに生体内ですみやかに分解される. 従来, 活性型であると考えられてきたPfrが急速に分解されることは, Pfrの分解が光情報の伝達において重要な意味を持つ可能性を示す. 我々はフィトクロムによる光情報の伝達機構を研究する一環として, Pfrを特異的に分解するプロテァーゼの性質を各種阻害剤を用いて検討した.黄化アラスカエンドウの七日目の芽ばえから上部2mmを切り出し, 各種阻害剤を与え, (時間の暗処理後, 3時間の赤色光照射を行った. それ等α材料を用いSDS-PAGE及びイムノプロッティングを用い, 抗フィトクロム抗体でフィトクロム検出, 解析を行った. 結果は以下の通りである.(1)invivoでのPfrの分解は, 分光学的及び免疫化学的にほぼ同じ動向を示し, 半減期は約90分であった.(2)DFP, TLCK, Leupeptin等αセリンプロチアーゼの阻害剤によってPfr分解が抑えられることから, 目的とするプロテアーゼはトリプシンtypeαセリンプロテアーゼであると考えられる.(3)Ophenanthrolin, α2'-dripyridyl, EDTA等のキレーターは, Dfr分解を抑え, 又, 金属による分解活性の回復実験から, Fe^<2+(3+)>, Zn^<2+>を必要とすることがわかった.(4)アサイド, アンチマイシンA, CUP, オリゴマイシン等のATP産生系の阻害剤は, Pfr分解を強くすることから, ATDが必要であると考えられる. 以上の結果から, Pfrを特異的に分解するプロテアーゼは, トリプシン typeセリンプロテアーゼであり, 分解にはFe, Znを要求し, ATP依存性であることが示唆された.
著者
一ノ瀬 俊明 LIKHVAR Victoria ビクトリア リグバル
出版者
独立行政法人国立環境研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

AndroidにCO2濃度等のセンサーを組み込み、リアルタイムに計測データを位置情報、時刻情報とともにサーバーに集約する、ポータブル型環境モニタリングシステムを開発し、ラグランジュ的環境モニタリングの実施をつくばと東京で行った結果、大気汚染現象の局地性がきわめて高いことが具体的な時空間情報として示された。また、送信された被験者の暴露情報と健康情報を組み合わせることにより、リアルタイムのリスク診断が可能となった。
著者
小澤 智宏 米村 俊昭
出版者
名古屋工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

生体内で血管弛緩、免疫などに関与している一酸化窒素(NO)は、作用に応じた適量が決まっているが、いったんその濃度が変化すると動脈硬化や敗血症など重篤な病気を引き起こす。本研究では生体内NO濃度に着目し、これをセンシング可能なシステムの構築を目指した。強い電子供与により正味の正電荷が減少した金属イオンは、外部からのさらなる電子供与に対して抵抗する。これを利用して金属イオンとの反応性が高いもの(NOなど)のみが反応する分子の構築に成功した。これらを電極表面に修飾してデバイスの構築を試みたところ、金属イオンと電極表面との直接的な相互作用により、本来の分子の性質を電極上で再現することができなかった。
著者
渡辺 めぐみ
出版者
龍谷大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

グリーンツーリズムは、近年、農業・農村セクターにおいて推進され、新聞などのメディアでもその動きが報道されている。とくに、農家民宿における女性の活躍が期待されている。しかしながら、調査の結果、農家民宿経営は、(1)女性の感情労働が期待され重荷になっている、(2)農家民宿運営に必要な労働が、家事労働の延長として無報酬で行われる傾向がある、(3)旅館業との競合から価格が安く抑えられ利益が上がりにくい、といったさまざまな問題を抱えていることが明らかになった。現在、修学旅行などの教育旅行の受け入れが主となっているが、これらは季節的な労働になるためであり、年間を通じて一般客を受け入れることは依然困難だ。
著者
尾松 万里子 松浦 博 山元 武文 森 康博
出版者
滋賀医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

Atypically-shaped cardiomyocytes(ACMs)は,成体マウスの心室組織から単離された細胞である。ACMsは低酸素環境に耐性を有し,培養すると自発的に大きく成長して拍動を開始する.培養ACMsを経時的に観察した結果,プリオンタンパク質を発現する小型細胞が互いに融合して多核の大型細胞に成長することを見出したが,細胞分裂は現在の培養条件下では観察されなかった.これらのことから,ACMsは幹細胞から次の段階へ分化の進んだ心筋前駆細胞の一種であると考えられた.また,ACMsはマウスおよびヒトにおいて老齢に至るまで心臓組織に存在することも明らかにした.
著者
新井 勝紘 西村 明
出版者
専修大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究では、軍事郵便と従軍日記をパーソナルメディアとしてとらえ、資料の所在を明らかにするとともに、軍事郵便の内容や制度史、軍事郵便・従軍日記を記した人々の戦争に対する意識や対外認識についての考察を重ねた。そのために現地調査を実施し、資料の収集や写真撮影を行ない、その分析を試みた。また、研究成果を公開し、各地の研究団体と積極的に連携を図った。こうしたなかで現在、全国各地で個人及び保存機関などが軍事郵便・従軍日記の翻刻や出版をさかんに取り組んでいることを把握した。それにより軍事郵便・従軍日記がいまだに多くの人々に強い影響力をもっていることを認識するとともに、その内容分析の深化をはからなければならないという認識に至った。
著者
野津 裕史
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

近年我々はNavier-Stokes方程式のための安定化特性曲線有限要素スキームを開発した.それは特性曲線法と圧力安定化法を組み合わせたスキームである.得られる連立一次方程式の係数行列は対称であり,安価なP1/P1要素が用いられている.よって特に3次元問題において有用である.同スキームの安定性と収束性を証明した.その誤差評価は最良である.その結果,開発したスキームは,数値的に有用であることに加えて,数学的信頼性ももつことが示された.その他にも本研究期間において特性曲線法に関連するいくつかの数値的・理論的結果を得た.
著者
山室 信一 菊地 暁 坂本 優一郎 谷川 穣 藤原 辰史 早瀬 晋三 早瀬 晋三
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

専ら時間軸上で構築されてきた従来の学的パラダイムを空間軸に沿って見直し、これまでの空間把握の営みの成果を取捨選択しつつ、人文・社会科学における諸概念を再構成していくための基底的研究を進めた。文献会読、フィールドワーク、個別研究を通じて、政治学・経済学・農政学・地政学や、景観・海域・宗教・戦争で問題とされた空間に関する思想や実践のありかたを明らかにしつつ、従来前提とされていた諸概念を再検討した。
著者
山崎 圭
出版者
国文学研究資料館
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1999

当初たてた研究計画は、(1)組合村-惣代庄屋制の解体過程の解明、(2)取締役など特権的豪農の活動の解明、(3)明治地方自治の解明、の3点を柱としながら信州幕領をフィールドとして分析を深めると同時に、他地域との比較研究も行うというものであった。今年度はポイントをしぼって上記課題の(2)について集中的に検討した。まず第一に、郡中取締役の阿部家について金融を中心とした経済的活動のあり方を検討し、同家は18世紀半ば以降諸領主や酒造家への大口貸金などによって経営を伸ばし、18世紀末に領主貸が行き詰まると、当時盛んになりはじめた繭・綿・細美などの農間商いを行う南佐久の百姓たちを相手にした商仕入金などの貸付を急増させて、一層の経営発展を遂げたこと、天保期後半に貸付が停滞すると資金を土地集積に振り向けて地主経営にウェイトを移し、金融も貸出対象の範囲を上層に限定して継続したこと、このような活動が明治期の伊那県商社、第19国立銀行などに関与する前提となっていること、などを明らかにした。第二に、この地域の政治構造については上記のような阿部家を一つの核とするような経済構造とはあまり関係なく、年番名主制や組合村制などが展開していく傾向があるが、文久期以降社会情勢が緊迫していく中で郡中の豪農層が郡中取締役に就任し、政治的な秩序のあり方に大きな変化をもたらしたことを明らかにした。この問題は課題(3)の「明治地方自治の解明」にもつながっていくテーマであるが、見通しを持つにとどまったので今後の課題としておきたい。なお、以上の成果の一部を組み込みながら歴史学研究会2001年大会で「地域社会構造の変容と幕領中間支配機構」という題のもとに報告を行う予定である。
著者
馬場 雅志
出版者
広島市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

画像を撮影するカメラとCG画像を作成するカメラモデルとの対応付けをとるカメラキャリブレーションとカメラモデルに基づく画像生成について研究を行い、以下の成果を得た。(1)ぼけと幾何特徴の統合カメラキャリブレーションについては、キャリブレーションに用いる各特徴点でのぼけ幅の計測において、空間フィルタリングの手法を適用し閾値処理によりぼけ幅を求めることで高速な処理が可能となった。(2)カメラキャリブレーションに基づく画像生成については、通常のCG画像の生成に使用されるピンホールカメラモデルとは異なるカメラモデルによる画像生成の手法を複数提案した。また、カメラキャリブレーションに基づく画像生成の応用として、広島原爆によるきのこ雲の写真からの高さ推定を行った。
著者
大下 修造 田中 克哉 堤 保夫
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

GLP-1受容体拮抗剤を前投与することで、GLP-1および吸入麻酔薬によるプレコンディショニング心筋保護作用が棄却されることを示した。このことより、吸入麻酔薬による心筋保護作用がGLP-1を介して発現することが明らかとなった。さらに、GLP-1受容体抗体とメディエイターの抗体とを共に蛍光抗体反応させ、共焦点顕微鏡を使用しタンパクの局在を同定した。また、ミトコンドリア膨化アッセイ等を用いて、GLP-1のプレコンディショニング作用に心筋保護作用があること、また、これらの作用が各種メディエイターを介して発現していること、そして最終的にはミトコンドリア機能に影響していることが明らかとなった。