著者
秋山 英三
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本プロジェクトでは、様々なゲーム状況における戦略の進化を比較・検証し、特に、ゲーム構造と評判の効果の関係を分析した。分析は、進化ゲーム的手法とシミュレーションにより行い、また、シミュレーションでは、プレーヤーのモデルとして意思決定機構を有限状態オートマトンとして記述し、その進化の様子を分析した。その結果、囚人ジレンマがさらに拡張された状況の評判の効果に関する一連の発見があったほか、指導者ゲームの分析によるリーダーシップ論の進化的解釈の可能性が示され、また、確率過程によるモデル化により華厳ゲームの新たな進化的分析が行われるなど、研究の様々な発展可能性が示された。
著者
岩崎 亘典 藤田 直子 SPRAGUE David 寺元 郁博 山口 欧志 小野原 彩香
出版者
国立研究開発法人 農業環境技術研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、明治時代初期に作成された迅速測図を元に、高解像度・高位置精度のラスタデータを作成するとともに、このデータを元に100mグリッドでの明治時代初期土地利用データベースを構築、公開した。次に、視図,断面図などの図郭外図についてデジタル化と位置の特定を行い、KML形式とCesiumを使ったWebページで公開した。視図が描かれた地点のうち、27地点において高解像度パノラマ写真を撮影し、現在の景観と比較が可能なデータベースを構築、公開した。さらに、国土数値情報との比較により過去130年間の土地地利用・被覆変化を類型化した。これらのコンテンツはライセンスは、CC BY 4.0 国際とした。
著者
上田 多門 FARGHALY Ahmed Sabry Abdel Hamid
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

CFRP接着補強されたRCスラブの静的押抜きせん断耐力に関し,H20年度の成果をさらに発展させることにより,以下のことを明らかにした.(1)既往のFRP-コンクリート界面用の付着モデルを改良したモデルを導入した3次元FEM解析により,本研究での供試体に既往の研究の供試体を加えた14体の押抜きせん断破壊結果を,その破壊モード,変形量,耐荷力のいずれにおいても,適切な精度で推定できる.(2)接着されたCFRP補強材の引張力の存在により,CFRP接着補強されていない場合より,スラブコンクリートの圧縮領域に作用する圧縮力が増加する.この増加により,押抜きせん断破壊する際の,圧縮領域に作用するせん断力方向力が増加し,耐力が増加することになる.(3)押抜きせん断耐力は,圧縮領域での抵抗成分を考慮するだけで,概ね推定できる.(4)圧縮領域の応力分布推定モデルを提示し,第3方向の応力の影響が小さいことを考慮し,簡便な2次元のモール円に基づく破壊則を適用することにより,押抜きせん断耐力算定マクロモデルを提案した.(5)上記の耐力算定モデルによれば,押抜きせん断破壊は,圧縮領域での引張破壊により生じる.(6)本研究での供試体に既往の研究の供試体を加えた14体の試験結果を,耐力算定モデルは精度よく推定できる(平均値が1.00,変動係数が10.2%).この結果は,日米(JSCEとACl)のRCスラブ用の式を拡張して適用した場合より,精度が良い(JSCE式:平均値が1.59,変動係数が25.0%,ACl式:平均値1.38,変動係数が19.9%).上記に加え,CFRP接着補強されたRCスラブの疲労試験を実施し,押抜きせん断の疲労性状として次のことを明らかにした.(7)補強されていないRCスラブより,疲労寿命が長い可能性がある.
著者
松田 雅子 中島 恵子 西村 美保 ルール ミシェル
出版者
岡山県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

カナダ文学の旗手であるマーガレット・アトウッドの作品世界を、長編小説、短編小説、詩、カナダの文学思潮の4つの側面から解明した。研究代表者は長編小説を担当し、分担者の中島恵子は短編小説を中心に研究を進め、それぞれ、博士論文をまとめた。研究分担者の西村美保は、アトウッド文学におけるイギリスの影響、とくにヴィクトリアニズムの展開についてまとめた。研究分担者の、ミシェル・ルールはアトウッドの詩および子ども向けの本の関係について考察した。3冊の書籍、3冊の翻訳書、7編の論文を出版し、学会発表を8回行った。
著者
佐藤 元状
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究「英国ドキュメンタリー映画の伝統とブリティッシュ・ニュー・ウェーヴの総合的研究」は、イギリスのリアリズム映画の表象が、1930年代から1960年代にかけて、どのように変容してきたのかを時代ごとに総合的に検証し、20世紀のイギリス映画史を把握するための一つのパースペクティヴを提唱するものである。本研究の成果は、『ブリティッシュ・ニュー・ウェイヴの映像学--イギリス映画と社会的リアリズムの系譜学』(ミネルヴァ書房、2012年)に結実した。
著者
降旗 建治
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

提案したロジスティックモデルは、1回の測定結果からでも、閾値、許容値、最適値等が推定できる。このモデルを各種感覚・知覚実験法に拡張・展開した。特に、得られた感覚特性(弁別閾値)と各種疲労要因との関係から、疲労現象は、感覚特性だけで把握することは困難であることがわかった。そこで、このモデルが生理学的側面にも有効かどうかを検討した。具体的に、慢性疲労症候群のリスクファクターとして、非侵襲的頭蓋内圧推定法を提案し、新たに頭蓋内圧伝達関数法を構築し、その有効性を検証した。
著者
柳川 洋 藤田 委由 中村 好一 永井 正規
出版者
自治医科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1988

厚生省の実施している感染症サ-ベイランス事業の対象疾患のうち,主に小児が罹患する12疾病を対象として,流行様式の観察を行った。観察の期間は,昭和60年第1週から昭和63年第52週までの209週とし,各週の全国1定点当たりの患者数を資料として用いた。流行の周期性をみるために,自己相関係数を求めた。次に,流行周期は,様々な要因から複合的に構成されることが考えられるため,各疾病ごとにフ-リエ解析を行い,スペクトルを求めた。この際,各疾病で患者数が異なることから,各週の患者数を209週の合計患者数で除して標準化を行った。更に,スペクトルの係数の大きいものから3つの周期を用い,どの程度元のデ-タと一致するかを観察した。結果は以下のとおりである。(1)麻しん様疾患,水痘,乳児嘔吐下痢症,ヘルパンギ-ナについては,季節性がはっきりとしており,第2スペクトルまでで流行の80%以上が説明できる。(2)流行性耳下腺炎,異型肺炎,伝染性紅斑は,長い周期性が推測され,観察期間をさらに伸ばす必要がある。(3)風しん,手足口病は,年間の季節変動と長い周期性があり,複雑なスペクトルを示した。(4)百日せき様疾患は,観察期間の前半と後半で流行の形が異なっており,今後の推移を観察する必要がある。(5)溶連菌感染症,突発性発疹は,季節方動が認められるが,さらに複雑な要因が関与している可能性がある。
著者
山田 実
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

複数課題下で障害物に注意を向けるという能力を強化することで、転倒予防に有用となるのかを検証した。対象は高齢者157名(84±6歳)であり、無作為に2群に割り付けた。各群でそれぞれ、複数課題条件下(MT群)と単一課題条件下(ST群)で24週間の障害物回避トレーニングを行った。複数課題下障害物接触回数では、有意な交互作用を認め、MT群でのみ接触回数の減少を認めた。さらに、MT群では有意に転倒発生が有意に少なかった。複数課題下での障害物回避トレーニングは転倒予防に有用である。
著者
福永 博俊
出版者
長崎大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

非晶質からの結晶化と超多周期人工積層構造創製技術を融合利用して,薄片(10~30μm厚程度)のL10Fe-Ni規則化合金の作製を試みた。その結果,薄片の表面2μm程度の部分に,高保磁力層を作製することができた。軟磁性層も含めた薄片全体の平均保磁力は15kA/m程度となった。作製した試料に対するX線回折では,L10規則相からの回折線と指数付けできるピークが観測された。今後,高保磁力層の厚さを増加させて行く必要がある。
著者
菅谷 成子
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

本研究の目的は、スペイン支配の中枢がおかれたマニラを外世界(文明)、と内世界が出会う場所として設定し、そこに生きた人々と植民地都市マニラの発展との関わりを解明することであった。具体的には、中国人移民およびその社会が、(1)故郷福建といかなる関係を構築していたのか。(2)マニラの都市的発展に具体的にどのように関わったのか。(3)都市住民として、スペイン人あるいは原住民を中心とする植民地社会といかなる社会・経済関係を構築していたのかという観点から、スペイン植民地都市マニラの歴史を解明することを主な課題とした。まず、先行研究の蓄積を批判的に継承しつつ、スペイン語手稿文書による新知見をもとに、スペイン植民地都市マニラの発展過程をイントラムーロスとアラバーレスとの関係を軸に跡づけた。その過程で、マニラの発展を特徴づけるキーワードは、マニラ・ガレオン貿易、中国人の流入、地震、および周辺海上勢力の動向であるとの認識をえた。次に、マニラの都市住民としての中国人の生活実態を、カトリシズムを基底にすえた植民地社会の文脈に位置づけ明らかにするために、「結婚調査文書」「マニラ司教区裁判所文書」「マニラ公正証書原簿」「マニラ税関文書」等の分析を行った。その結果、植民地社会の人間関係をめぐる個々の具体的な諸相の抽出をえて、その成果の一部を公刊した。さらに18世紀は東南アジア史において「華僑・華人の世紀」と言われるが、マニラの中国人移民社会を、同時代の東南アジア島嶼部各地における中国人移民社会成立の文脈に位置づけ、その特徴を明らかにした。また、過去3年間の研究成果の一部を2001年9月に中国厦門大学で開催された「21世紀初的東南亜経済与政治」国際学術研討会において報告する機会をえた。しかし残された課題も多い。とくに、量的分析によるデータの蓄積や中国人を受入れた現地の人々の視点からの分析はこれからの課題である。
著者
高濱 謙太朗
出版者
静岡大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

本研究の目的は、テロメアが形成するグアニン四重鎖に対するTLSの結合性とテロメアにおける機能との関係を明らかにすることである。そこで研究計画では、平成24年度に試験管におけるTLSのテロメアDNAとテロメアRNAに対する認識機構を詳細に解析して、平成25年度に細胞内でのTLSによるテロメアDNAとテロメアRANAの結合性と、TLSがガン化の機構に関与しているかを解析することであった。実験計画が当初の予定以上に進展し、平成24年度中にTLSのRGG3領域がテロメアDNAとテロメアRNAに対してグアニン四重鎖特異的に同時に結合することを明らかにして、テロメア構造のヘテロクロマチン化とテロメア短縮に関与していることがわかった。この結果はChemistry & Biology誌に掲載された(Chemistry & Biology (2013) 20, 341-350.)。そこで本年は、TLSのRGG領域によるテロメアDNAとテロメアRNAに同時に結合する分子機構をさらに詳細に解析することで、テロメアRNAが形成するグアニン四重鎖に結合する分子の開発を行なった。RGG領域中の芳香族アミノ酸がグアニン四重鎖DNAとRNAの識別に重要であることを見出したので、このタンパク質中の芳香族アミノ酸をすべてチロシンにしたところグアニン四重鎖DNAに結合せず、RNAに結合することがわかった。さらに、この開発されたタンパク質はグアニン四重鎖RAAのループ構造の2'-OHを認識することがわかった。これらの結果はJournal of American Chemical Society誌に掲載された(J. Am. Chem. Soc. (2013) 135, 18016-8019.)。この成果は、グアニン四重鎖構造の機能解明に大きく貢献すると考えられる。
著者
小林 邦和 大林 正直 呉本 尭
出版者
愛知県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では,先ず他者の状態や行動の予測を行う状態・行動予測モデル,他者の行動政策の推定を行う政策推定モデル,他者の行動意図の推定を行う意図推定モデル,複数の感覚刺激の中から特定の刺激のみに着目する注意生成モデル,ヒトの情動を模倣した情動生成モデルをそれぞれ構築した.次に,それらのモデルと学習・推論システムを統合し,マルチエージェントシステムにおける協調行動の創発を指向した脳情報処理模倣型統合システムを開発した.同時に計算機シミュレーションとロボット実験により,本システムの性能評価を行った.なお,成果は,学術論文23編,学会発表(国際会議,国内会議)69編,図書6冊として公表した.
著者
伊藤 啓
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

昨年度解析を始めた、1050色の色票を色名に従って被験者に分類してもらい、「ある色名の範囲内に感じられる色」と「その中でもっともその色らしいと感じられる色」の分類を行う実験で、L錐体を持たないP型(1型)色覚の人に続き、M錐体を持たないD型(2型)色覚の人の解析を行った。D型ではP型よりもC型と知覚が一致する色の種類が若干多かった。3つの色覚タイプを合計すると、赤・ピンク・オレンジ・クリーム・黄色・緑・水色・青・黒ではどの色覚タイプでも同じ色名に感じられる色域が見つかったのに対し、茶色・ベージュ・黄緑・薄緑・青紫・薄紫・紫・赤紫・灰色ではどの色覚タイプでも同じ色名に感じられる色域の範囲が狭く、これらの色で共通の色認識を得る困難さが判明した。また、これまでの知見をベースにして分かりづらい配色を分かりやすい配色に自動的に置き換えるシステムの試作として、昨年度までに作成したどの色覚でも比較的分かりやすい配色セットを用いて、近隣の色域の色をこれら20色の方向ヘシフトさせるアルゴリズムの開発を始めた。境界部の色の扱いが難しく、まだ安定して動作するシステムには至っていないが、今後引き続き検討を継続する。並行して、テレビ放送局からの依頼を受け、従来から各放送局で使用色が統一されておらず、しかも混同しやすい色があると視聴者からクレームが寄せられていた津波・大津波警報の画面表示について、より見やすい配色の検討を行った。このシステムには津波注意報・津波警報・大津波警報の3色の表示色と、陸地・海の2色の背景色の、合計5色が必要であり、しかも注意や警戒感を呼び起こすことができる色の範囲は限られている。数十種類の試作画面を被験者によって比較検討した結果、黄・赤・赤紫の表示色と灰色・濃紺の背景色を用いた組み合わせが最適と判断され、実際に放送局の警報システムに組み込む検討が始められた。
著者
松本 浩幸
出版者
独立行政法人海洋研究開発機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、沖合の深海底に設置された水圧式津波計からのリアルタイムデータを有効利用するため、観測データに基づく知見を整理した。水圧式津波計について、海底設置前に実施した室内実験ならびに現場観測による長期安定性評価の結果、室内実験で確認されたドリフトは、海底設置後も継続して観測されることが分かった。また2011年東北地方太平洋沖地震(M9.0)ならびに三陸沖で発生した地震(M6.9)による津波について、水圧式津波計データを近傍の海底地震計データと併せて精査した。水圧式津波計に含まれる擾乱を発生させる要因を分析し、震源近傍でも適切なフィルタを適用すれば津波を抽出できることを示した。
著者
稲垣 伸吉 鈴木 達也
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、未知で複雑な環境を移動できる多脚歩行ロボットを実現することを目標に、分散型歩行制御法「接地点追従法」を改良し、高次の運動計画と分散制御のローカルな適応的運動生成とが一貫した分散型歩行制御法を確立することを目指した。まず、高次の運動計画として深度センサを用いた接地点探索手法を開発し、ムカデ型および6脚の多脚歩行ロボットでのシミュレーションおよび実機での実証を行った。そして、運動性能の向上を目指して能動体節間関節と脚の統合的分散制御手法を開発しシミュレーションにより有用性を示した。また、多様な環境での歩行を想定した高次の運動計画と下位の運動制御の統合的なパラメータ設計手法を開発した。
著者
古荘 純次 小柳 健一 井上 昭夫 武居 直行
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

機能性流体を用いた高性能かつ安全な力覚提示システムに関する研究を行い以下の成果を得た.(1)ER流体ブレーキを冗長個数使用した冗長自由度を持つパッシブ型力覚提示システムを開発し,その制御方式について検討を行なった.パッシブ型力覚提示システムは本質的に安全であり,広範な使用が期待される.(2)ER流体ブレーキを用いた力覚提示システムの新しい制御方式を提案し,力覚提示実験によりその評価を行なった.(3)機能性流体アクチュエータを用いた2次元および3次元の力覚提示システムを開発した.また,その応用例として,上肢のリハビリテーションなどへの適用を行なった.(4)ERアクチュエータにおけるクラッチ入力部の回転速度をできるだけ下げることが,安全性に大きく寄与する.そこで,クラッチ入力部の回転速度をどこまで下げても力覚に違和感が生じないかについて,検討を行なった.(5)開発したERアクチュエータやブレーキを用いて高性能な力覚提示システムを開発するため,ベルト等を用いた伝達機構技術の確立を行なった.(6)ベルト等を用いたシステムでは,2慣性特性を考慮した制御系設計が必要である.本研究では,2慣性系制御について検討を行い,力覚提示システムの制御性能の向上を図った.(7)ワイヤ駆動型の安全性の高い力覚提示システムを開発した.(8)上記で開発したシステムの安全性について検討を行なった.
著者
黄瀬 浩一 岩田 基 岩村 雅一 内海 ゆづ子 クンツェ カイ デンゲル アンドレアス 外山 託海
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

Knowledge Logとは,人が日々獲得している知識の記録である.従来から存在するライフログとの違いは,Knowledge Logが知識という高次記号情報をログの対象とするのに対して,ライフログは,信号情報あるいは記号であっても単純なもの(例えば人の座る,歩く,食べるなどの行動)を記述する点にある.人の知識の大半は,人の読むという行為によって獲得されていることに着目し,本研究では,読むことに関連した知識のログを中心に,その量や質について推定するための各種手法を構築した.また,その基礎となる特徴照合,文書画像検索,文字,顔,物体などの認識技術,大規模文字画像データベースについても開発した.
著者
青柳 正規 岸本 美緒 馬場 章 吉田 伸之 越塚 登 大木 康 長島 弘明 今村 啓爾 田村 毅
出版者
東京大学
雑誌
特別推進研究(COE)
巻号頁・発行日
1999

本研究プログラムは、人文科学の基礎となる「原資料批判の方法論」に関する再評価と情報科学と連携した新たな資料学の構築を目的としている。この目的遂行のために象形文化資料のデジタル画像とその記載データに基づく象形文化アーカイブを構築する一方で、積聚された文書資料による研究を併用し、歴史空間の復元とその解析について、以下のような成果をあげた。A.古代ローマ文化および日本近世文化を中心とした象形文化アーカイブを構築した。特に、ポンペイとローマに関するアーカイブの完成度の高さは、国際的に注目されている。B.アーカイブ構築過程に置いて、その媒介資料となるアナログ写真とデジタル画像の比較研究を行い、資料の色彩表現に関してはアナログ写真が優れていることを明らかにした。C.象形文化資料の記載について、多言語使用の可能性を研究し、複数の言語システムを活用し、成果をあげた。D.稀覯本などの貴重文献資料のデジタル化を行い、資料の復元研究を行った。たとえば、1800年ごろに活躍した版画家ピラネージの作品をデジタル化し、そこに表された情景を現代と比較し、新古典主義の特質を明らかにした。E.こうした象形文化アーカイブを活用し、共時的研究を行った。特にポンペイに関するアーカイブ構築によりポンペイ遺跡内における地域的特徴を明確にし、新たな社会構造に言及するまでに至った。F.日本近世文化に関しては、回向院周辺の広場的空間復元研究を行った。上記した数々の実績を基礎として、今後も古代ローマに関する象形文化資料を中心とした収集・公開を進め、研究を推進する予定である。このため、現在の研究組織を継続させるのみならず、象形文化研究拠点のハード・ソフトの両面で改善をはかり、国際的な「卓越した研究拠点」として成長させることが期待されよう。
著者
松田 暁子
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

平成24年度は、会津若松と郡山をフィールドに、それぞれ以下のようなことを研究し、明らかにした。まず会津若松に関しては、簗田氏の家の経営について検討した。特に、商人司としての側面がどのように変化するのかに注目して研究した。その結果、簗田氏は18世紀以降、商人司が本来持っていた商人を統括する権限を喪失し、一介の町役人として存在していたことが明らかになった。ただ、町役人としての職務の中に、会津若松を通過する商人の荷物の改めがあるところを見ると、商人司としての職務が町役人のそれの中に引き継がれていることがうかがえる。また、簗田氏はこの時期、小規模ながら町屋敷経営を行っており、こうしたところから収入を得ていたものと思われる。次に郡山に関しては、永原家の経営分析を行った。永原家は城下では比較的大規模な酒造屋であった。しかし、18世紀末に一時、酒造経営を休止する。そして、それと時を同じくして酒造仲間内の役職である酒造改役を降板する。このことから、酒造屋経営の盛衰と酒造仲間内での地位のあり方は、相互に連関しあっていると評価できる。また、郡山の株仲間と町についても分析を試みた。その結果、近世半ば以降、郡山では株仲間の種類と町域との間に関係性は見られないことが判明した。以上の点から、地方城下町の社会構造の一端を、家の経営・仲間組織・町の三つの要素から明らかにし得たと言える。