著者
今泉 鉄平 折笠 貴寛 村松 良樹 田川 彰男
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.11-18, 2013-01-15 (Released:2013-02-28)
参考文献数
31
被引用文献数
1 5

サトイモおよびナガイモの熱湯浸漬過程におけるカリウム溶出現象は拡散方程式の無限円筒モデルで説明された.また,サトイモおよびナガイモのブランチングへマイクロ波(包装試料,無包装試料)および熱湯浸漬を適用し,酵素活性,色彩変化,硬さ,質量損失率,カリウム損失率について検討したところ,以下の知見が得られた.(1) いずれの試料に関しても,試料中のPODの失活までに要する時間は包装,無包装,熱湯浸漬の順で短く,マイクロ波ブランチングによる時間短縮効果が明らかとなった.(2) ブランチング後にはいずれの方法においても色差の増加が見られ,とくに,サトイモでは処理法の違いによる色彩変化の差が顕著であった.(3) マイクロ波ブランチングを行った場合には試料に著しい軟化が見られた.(4) マイクロ波ブランチングを行うことでドリップの発生を抑制することができた.(5) カリウム損失率は加熱後,冷却後,解凍後それぞれにおいて熱湯浸漬よりマイクロ波によるブランチングを用いた試料のほうが低い値となった.以上のことから,サトイモおよびナガイモのブランチングには包装した試料にマイクロ波を照射する方法が有用である可能性が示唆されたが品質に関しては更なる調査が必要である.
著者
今泉 吉典
出版者
THE MAMMAL SOCIETY OF JAPAN
雑誌
哺乳動物学雑誌: The Journal of the Mammalogical Society of Japan (ISSN:05460670)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.102-106, 1969

オオシマアカネズミの標本95点を調査した結果,次のことが判明した。(1)夏毛と冬毛は背毛では刺毛の有無により,腹毛では色彩によってほぼ判定することができる。(2)更毛は年2回,4・5月と10・11月に行なわれる。(3)腹毛には夏毛・冬毛ともほぼ2つの色型があり,冬毛よりも夏毛の方が明らかに濃色である。(4)腹毛の色彩は夏毛・冬毛とも♂ よりも♀のほうが濃色の傾向が強い。
著者
高橋 恵子 田松 花梨 松本 宏明 鮎川 順之介 今泉 紀栄 三道 なぎさ 柳生 奈緒 栗田 裕生 長谷川 啓三 若島 孔文
出版者
日本笑い学会
雑誌
笑い学研究
巻号頁・発行日
no.19, pp.3-17, 2012-07-21

東日本大震災の発災後に被災者自身の手によって行われた「震災川柳」の取り組みについて、参加者が震災川柳の心理的効果をどのように認知していたかを明らかにし、今後の災害後の心理的支援を検討する手がかりを得ることを目的とする。本研究は、調査1(インタビュー調査)と調査2(質問紙調査)によって構成される。調査1では、震災川柳の役割には5つのカテゴリーがあることが示され、さらに、個人内/個人間において効用を持つことが考えられた。さらに調査2では、震災川柳を自ら詠む人(投稿参加)と発表される川柳を聞く人(傍聴参加)という参加形態と、心理的効果の認知との関連を検討した。その結果、投稿参加、傍聴参加ともに、震災川柳により「明るい気持ちになる」ことが分かった。これらのことから、震災という非常事態において、震災川柳が心理的支援の一つの形態として有効である可能性が示唆された。
著者
宮谷 徹彦 川井 久嗣 渡邊 淳 今泉 市郎 安部 俊二
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SST, スペクトル拡散 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.98, no.595, pp.45-50, 1999-02-18

基地局間非同期W-CDMAのロングコード同定について、MF以外に同定用の相関器を必要としない同定回路を提案し、試作装置にて評価したので報告する。提案方式では、MFのシフトレジスタを一時的なメモリとして利用し、任意位相を生成可能な拡散符号生成器を使用する事で、ロングコードの高速同定が可能となる。室内実験の結果、Eb/No=10dBの1波静的環境下、4グループ、128ロングコードの条件にて、770[msec]で同定が終了する事を確認した。また、周波数オフセットに対して、±0.5[ppm]まで耐え得る事を示している。
著者
秋月 康志 今泉 貴史
雑誌
研究報告インターネットと運用技術(IOT)
巻号頁・発行日
vol.2010-IOT-9, no.7, pp.1-6, 2010-05-06

現状のマルウェア対策では,アンチウイルスソフトウェアを各ホストにインストールする方法が標準的となっている.しかし,ルートキット技術を利用して自身の存在を隠すステルスマルウェアが蔓延し始め,既存のアンチウイルスソフトウェアによる検知や対策は困難になってきている.本論文では,仮想化技術を用いて OS の外部から OS を監視することで,マルウェアを隠蔽しているルートキットを検知・無効化する手法を提案する.この手法を用いることで,既存のアンチウイルスソフトウェアでもステルスマルウェアを検知できるようになる.
著者
赤坂 和昭 今泉 啓一郎 大類 洋
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.48, no.12, pp.1085-1094, 1999-12-05
被引用文献数
6 8

不斉を有するエタノールアミン骨格と2,3-アントラセンジカルボン酸無水物より, 非常に強い蛍光性を有する2,8-アントラセンジカルボキシイミド型の不斉誘導体化試薬を合成した. この試薬によりメチル基の分岐による不斉を有する分岐脂肪酸を誘導体に導いた後, -50℃〜室温で, ODSカラムを用いたHPLC分析に供したところ, 2〜12位の不斉を識別することができた. NMRやCDスペクトルの解析結果より, この試薬による脂肪酸誘導体は, 試薬のエタノールアミン部で, 試薬の立体化学に依存したゴーシュ/トランス配座を優位にとり不斉の折れ曲がり構造を形成するため, 脂肪酸のアルキル鎖が試薬のアントラセンイミド基の真上を規則的なジグザグ構造をとりながら覆いかぶさるような構造をとることにより, 遠隔位の不斉識別能が発現したものと考えられた. また, 本誘導体は蛍光検出によりfmol レベルの高感度検出が可能であった.
著者
今泉 吉晴 臼杵 秀昭 織田 聰 尾崎 徹
出版者
日本動物学会
雑誌
動物学雑誌 (ISSN:00445118)
巻号頁・発行日
vol.73, no.8, pp.242-243, 1964-08

Oze district is located in Nikko National Park in Central Honshu. The region studied is a 50×50m patch at an altitude of 1,670m near Lake Oze and is covered by a dense forest of Abies mariessi with a thick growth of Sasa oseana. Collecting was carried out during August 14-26, 1962, May 26 to June 4, 1963, and August 24-27, 1963, using one hundred snap traps (about 2,500 trap-nights). From these investigations, 11 species of insectivores and rodents were collected, including 6 species which had naver before been collected in the Oze district. The numbers of specimens collected and their percentages are shown in Table 1. The following observations seem especially noteworthy: 1) Glirulus japonicus (Japanese dormouse) is usually believed to be arboreal and no cases of capture by earth -surface traps had been reported. In this investigation, however, four specimens were trapped in mole galleries. It follows therefore that this species utilizes underground galleries during these periods at least. 2) Althouge Dymecodon pilirostris (Furry snouted shrew-mole) and Urotrichus talpoides (Japanese shrew-mole) have been reported to be allopatric (Tokuda, 1953, 1954), this area yielded both species.
著者
今泉 祐治 大矢 進 山村 寿男 戸苅 彰史
出版者
名古屋市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

脳神経等の興奮性細胞では、強い刺激と興奮により細胞にCa^<2+>負荷が生じた場合、自己防衛的にスパイク発生頻度を減じてCa^<2+>過負荷による細胞障害を回避するシステムが存在する。特にCa^<2+>活性化K^+チャネルはその活性化により、過分極を介して電位依存性Ca^<2+>チャネル活性を低下させるため、多くの興奮性細胞において最も基本的な[Ca^<2+>]_i負帰還調節機構を担う重要な分子と認識されている。本研究はCa^<2+>活性化K^+チャネルの分子制御機構の解明を基盤とした創薬研究を目的としている。研究期間内に以下の事柄を明らかにした。(1)脳血管内皮細胞に発現している小コンダクタンスCa^<2+>依存性K^+(SK)チャネルがアストロサイトなどから遊離されたATP刺激による内皮細胞増殖促進機構において、極めて重要な機能を果たしていることを発見し、創薬ターゲットとしての可能性を示した(JBC,2006)(J Pharmacol Sci,104,2007)。(2)型リアノジン受容体(RyR2)異型接合性欠損マウス膀胱平滑筋を用いて、[Ca^<2+>]_i負帰還調節機構へのRyR2と大コンダクタンスCa^<2+>活性化K^+(BK)チャネルの寄与を明らかにし、尿貯留・排泄調節という膀胱機能発現において生理的に重要であることを示した(J Physiol,2007;J Pharmacol Sci,103,2007)。(3)電位感受性蛍光色素として創薬探索に汎用されているオキソノール化合物がβ1サブユニット選択的なBKチャネル開口作用を有することを発見し、BKチャネルβサブユニット選択性のある初めての化合物として創薬シーズの可能性を示した(Mol Pharmacol,2007)。(4)本態性高血圧症モデルラット(SHR)の大血管において細胞外液酸性の状態で収縮が著しく増強されることが知られていたが、高血圧の補償として発現促進されたBKチャネル機能更新と酸性時に活性が抑制される特有の機構が主な原因であることを見出した(Am J physiol,2007)。
著者
今泉 敏 横田 則夫 出口 利定 細井 裕司 新美 成二
出版者
広島県立保健福祉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

話し相手の心を理解するコミュニケーション機能を支える脳機構とその発達を研究した。まず、話し言葉から話し相手の心を理解するテスト(音声課題)を作成し、小、中学生、成人合計339名を対象にその能力の発達を調査した。文章による比喩・皮肉文理解課題(文章課題)も行った。その結果、言語的意味と話者の感情とが一致しない皮肉音声やからかい音声に対して、他者の心を理解する能力が小学生から中学生に掛けて有意に上昇し発達するものの、中学生になってもなお成人の成績には達しないことが分かった。特に、からかい音声から話者の発話意図を理解する能力は中学生でも成人より有意に低いものだった。低年齢児の能力を評価するためには音声課題の方が文章課題より適していることが示された。さらに、健常成人24名(男性12名,女性12名)を対象に,感情(「喜び」と「憎しみ」)を込めた音声から,話者の気持ちを判断する場合(感情課題)と語の言語的意味を判断する場合(言語課題)の脳活動をfMRIで解析した。その結果,女性に比較して男性の反応時間は有意に長く、正答率も低かった。脳の賦活パターンには両課題とも性による違いが観測された。感情課題では,心の理論や社会的・倫理的推論で重要な役割を果たす前頭内側部(FMC)が男性でのみ有意に賦活した。左右上側頭回や左下前頭回の賦活も男性のほうが高かった。話し言葉から相手の心を理解する脳機能には性差があり,男性では推論作業が重要であることが示唆された。以上の結果に基づいて、音声から話し相手の心を理解するコミュニケーション脳機能を計測する装置を開発した。この装置によって、言語理解障害、感情認知障害、心の理解障害と、それらの機能の発達障害を検査できることが示された。
著者
今泉 裕美子
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

日本統治下の南洋群島研究は、国内外に残存する文書史料が少ないと見なされてきたこと、ゆえに実証に裏付けられた研究が少ないだけではなく、海軍占領以来の日本の統治期全般を射程にいれた研究は行われてこなかった。こうした研究状況に加え、戦前、戦時期の日本の南洋群島統治時代を経験した人々が格段に減りっつあるなか、とくに聴き取りや個人が所蔵する史料の調査は緊要な作業であった。本研究では、国内外での文書史料を収集(米国議会図書館、ハワイ大学図書館、北マリアナ諸島歴史保存課、サイパン博物館、韓国政府記録保存所、日本国立公文書館、日本外交史料館、など)し、その内容分析に留まらず、個別分散して所在する各史料の関係を明らかにしようとした点で、南洋群島関係史料の発掘に大きな成果をもたらした。また面接調査、および個人や引揚げ者団体が所蔵する史料の調査を進めたことも、僅少な文書史料を裏づけ、まな文書に残されない諸事実を発掘することになった。これら諸史料に基づき、日本海軍による南洋群島占領(1914)から、第二次世界大戦中および戦後にかけての米軍による占領と日本人引き揚げまで(1946)を射程にいれた日本の南洋群島統治政策、及びそのもとでの植民地社会の形成について分析を進めた。なかでも、在住日本人については、出身地(沖縄、福島、九州、八丈島、朝鮮半島など)別の、あるいは職業別、男女別、そして子どもの生活など植民地社会の形成を多面的に追究した。現地住民については、サイパン、テニアン、パラオおよびアンガウルで聴き取り調査を行い、植民地社会下での彼、らの生活や意識に、ついて分析を進め、現在論文を作成中である。しかし、以下の事態から本計画の取材対象の多くを日本人にせざるをえなかった。それは、研究期間中の2005年が日本の「敗戦60周年」にあたり、これを機に、南洋群島関連の主要な引揚げ者団体や親睦団体がつぎつぎと解散したこ.とである。報告者は、約20年にわたってこれら諸団体や徊人の取材を進めてきたが、この間の活動を踏まえながら、組織の最終段階を取材することができたごとで戦後の南洋群島引揚げ者たちの活動を明らかにするという次の研究課題の準備ともなり、また解散時だからこそ聞きうる貴重な情報を得た。一方、従来、充分に明らかにされていなかった朝鮮半島出身者についても韓国の史料と米国の史料をつき合わせて、その実態の一端を明らかにした。同時に、ミクロネシアの研究者との交流も行い、現地では大きく不足している文書史料調査や分析についても、今後も積極的に協力を続けることとなった。また、これら研究は随時、研究会で報告し方法論や史料分析について示唆を得た。米軍占領下における占領政策とそのもとでの「植民地社会」については、主に日本人の聴き取り調査に終始したが、今後はミクロネシア住民からの聴き取りと、当該時期み公文書史、料の収集をすすめ、本研究課題を発展させ、論文化を進めたい。