著者
今泉 誠子 舘野 淳 藤森 嶺
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.8-17, 1997-05-30
参考文献数
26
被引用文献数
4

スズメノカタビラ用微生物除草剤であるXanthomonas campestris pv. poae (JT-P482) の防除効果を明らかにするために, 1993年より1994年に温室試験および野外ポット試験を行った。菌濃度別の処理効果を確認するために, 10^5より10^9cfu/mlの菌液を, あらかじめ滅菌ハサミで傷口を付けたスズメノカタビラに処理したところ, 処理3ヶ月後に10^8および10^9cfu/mlの濃度で約75%以上(対生重比)の防除効果が温室試験により得られた(Table 1, Fig. 1)。また野外ポット試験を用い, JT-P482の菌濃度および処理時期(12月単独処理, 4月単独処理, 12月および4月の反復処理)の変動が, スズメノカタビラの生育量, 茎数および種子生産量におよぽす影響について試験したところ, 10^8および10^9cfu/mlの濃度を12月および4月に反復処理を行った時に, スズメノカタビラの生重減少率は約67%, 茎数減少率は86%と最も高い効果を示した(Fig. 2, 3)。種子生産量への影響は、12月単独処理および4月単独処理において、菌濃度が10^8および10^9cfu/mlの場合に、77-88%と著しい減少率が認められ(4月30, 5月18日, 6月6日の3日間の収穫種子の合計の比較), 12月および4月反復処理では, 10^7cfu/mlの菌濃度の処理により85%の減少率が, また10^8および10^9cfu/mlの菌濃度により94%の減少率が得られた(Table 2)。85%以上の種子減少率を有効と仮定した場合, 12月処理の場合に10^9cfu/ml, 4月処理の場合に10^8cfu/ml以上, 12月および4月反復処理の場合に10^7cfu/ml以上の菌濃度を使用すればよいことになる。以上の結果より, Xanthomonas campestris pv. poae (JT-P482) はスズメノカタビラに対し高い防除効果を有することが明らかとなった。また、12月および4月に反復処理を行うことにより、スズメノカタビラの種子生産を大きく減少させ得ることが明らかとなった。
著者
今泉 飛鳥
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は、第二次世界大戦以前の東京府の機械関連工業を対象に、経済発展に産業集積の存在がもたらした効果とその変化を明らかにすることである。本年度は分析結果を博士論文等の形でまとめる計画であった。実際に11月末に博士論文を提出し、3月に学位の認定を受けた。今年度中の研究の具体的内容は主に以下の4点であり、すべて上記博士論文に収録されている。(1)先行研究のサーヴェイと研究枠組みの整理本研究の土台となる先行研究整理を行った。そこでは特に人文地理学の分野の研究を参考にしながら、空間経済学と近年の産業集積論双方に目を配り、集積地から集積内企業が受け取り得る効果を「集積のもたらすメリット」として総合的に整理した。比較的狭い範囲の産業集積内部に注目してきた従来の集積論を客観化することにより、産業集積と広域の工業分布や「都市化の経済」との関係を論じる足掛かりをも得ることができた。(2)産業集積の実態東京市芝区に存在した機械工場(大塚工場)の経営資料を用い、産業集積内に立地する企業がどのような取引ネットワークを構築していたかを明らかにした。この成果は4月と9月のコンファレンスにおいて報告した。また、1910年代に相次いだ東京における機械工業関連の組合の結成過程を分析し、産業集積との関連を考察した。(3)危機に際する集積の効果の働き方1920年代に開始された都市計画用途地域制を事例に、産業集積が突発的なショックや継続的な制約に対して示した反応の解明を通して集積のメリットの実証を試みた。この成果を『経営史学』に発表(掲載決定済)した。(4)長期的・全国的俯瞰1902年から35年の4冊の『工場通覧』を包括的にデータ化し、戦前期日本の産業立地とその決定要因を分析した。この結果は8月の国際経済史学会(於ユトレヒト)において報告した(なお、同様のデータを用いた共同研究2つにも参加し、現在論文を作成中である)。
著者
今泉 眞之 奥山 武彦 備前 信之
出版者
一般社団法人日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.268-282, 1995-10-10
参考文献数
24
被引用文献数
1

The Tertiary mudstone landslide slope around Ohoike pond in Itakura Town, Niigata Prefecture is complicated geologic structure characterized by the prevalence of faults and small landslides. The strata of slope may be divided into fresh mudstone, weakly weathered mudstone, moderately weathered mudstone, strongly weathered mudstone and colluvial deposit, strongly weatherd mudstone and moderately weathered mudstone. The underground temperature survey reveals three groundwater vein-streams; the West groundwater vein-stream, the Center groundwater vein-stream and the East groundwater vein-stream. The gamma-ray spectrometry reveals the NNE direction fault system and NE direction faults system. The NNE direction fault system consist of the West fault, the Central fault and the East fault. The points of radon concentration anomalie of soil-gas coincide with back-scar, side-scar and cracks of foot part of small landslide configurations. From the relationships of the distribution of groundwater vein-streams, fault and fissure zone of combination of the back-scar and side-scar of small landslides, it may be inferred as follows; (1) The West groundwater vein-stream runs of through the passage of crack caused by the West fault. (2) The Center and the East groundwater vein-streams run off through the passages of fissure zones.
著者
海野 徳仁 平田 直 小菅 正裕 松島 健 飯尾 能久 鷺谷 威 笠原 稔 丸井 英明 田中 淳 岡田 知己 浅野 陽一 今泉 俊文 三浦 哲 源栄 正人 纐纈 一起 福岡 浩 渥美 公秀 大矢根 淳 吉井 博明
出版者
東北大学
巻号頁・発行日
2008

臨時余震観測から本震時には西傾斜の震源断層が主に活動したが、それと直交する東傾斜の余震活動もみられた。震源域直下の深さ30~40kmには低速度域が広く存在しており、そこから3本の低速度域が地表の活火山にまで続いていた。GPS観測データから本震時すべりは岩手・宮城県境付近で最も大きかった。本震後の顕著な余効すべりは震源断層の浅部延長で発生し、地震時すべりと余効すべりは相補的である。強震動データでは0.1~0.3秒の短周期成分が卓越していため震度6弱の割には建物被害が少なかった。
著者
古川 直広 今泉 敦博 藤尾 正和 酒匂 裕
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PRMU, パターン認識・メディア理解 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.101, no.421, pp.85-92, 2001-11-08
被引用文献数
8

振込帳票などの項目内容を読取る場合、帳票種毎に項目位置が異なるため、入力イメージの帳票種を識別する必要がある。用紙サイズや罫線特徴を利用する従来方式では、それら特徴が類似した場合、帳票識別精度が低下する問題があった。そのため本報告では帳票種を特徴付ける文字列の組合せ(星座)を利用することによって帳票を識別する方式を提案する。166種653サンプルの評価実験から、正識別率97.1%、誤識別率0%、平均時間3.1秒となり本方式の有効性を検証した。
著者
渡辺 稔 武井 智美 河合 智之 今泉 祐治
出版者
名古屋市立大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1988

ラット、ブタ等の哺乳動物の虹彩散瞳筋において各種薬物により張力変動が生じる時、平滑筋細胞でのどのようなCa動態の変化がそれをもたらしているかが研究課題であった。特に副交感神経興奮時或いはムスカリン様作用薬投与時の弛緩機構解明を主に検討した。まずムスカリン作用薬がM_2タイプのリセプタ-を介する可能性が高いものの従来のM_1、M_2という分類では充分説明できないことがわかった(あたらしい眼科、1989)。また毛様体神経節除去によりラット散瞳筋を副交感神経除神経すると、神経刺激による弛緩だけでなく、ムスカリン様作用薬による弛緩も消失した(E.J.P.,1988)。このことは、化学伝達物質のアセチルコリンが何等かの弛緩物質の遊離を介して散瞳筋を弛緩させている可能性を示唆するものである。そこで、弛緩を引き起こす生理活性物質を広く検索した結果Ca、ベ-タ、アルファ、ムスカリニック拮抗薬すべての存在下で高K液により顕著な弛緩が生じることを発見した(B.J.P.,1990)。遊離弛緩物質としては、血管上皮細胞由来の弛緩物質(NO)或いはペプチドではないこと、またその弛緩の際の細胞内情報伝達系としては、_cーGMPおよび_cーAMPが関与している可能性は低いことが示唆された。一方、上頸神経節切除による交感神経除神経では、散瞳筋の交感神経終末の変成によるノルアドレナリン再取り込み能消失のためと考えられるノルアドレナリンに対する特異的感受性の増大が見られたが、ムスカリン性弛緩は影響を受けなかった(J.J.P.,1989)。Ca動態を探るのに最も有用と思われたFura2による細胞内Ca濃度の測定は散瞳筋では組織が非常に小さいため張力との同時測定の成功率が非常に低くまだ結果の発表段階に到っていない。以上の結果からラットおよびブタ虹彩散瞳筋において、ムスカリン作用薬および高K液は副交感神経由来の弛緩物質を遊離させ、筋を弛緩させる可能性の高いことがわかった。
著者
佐藤 比呂志 岩瀬 貴哉 池田 安隆 今泉 俊文 吉田 武義 佐藤 時幸 伊藤 谷生
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

平成16年度には、2003年7月26日に発生した宮城県北部地震の震源域を横断する反射法地震探査を行い、中新世に形成された正断層が逆断層として再活動することによって発生した地震であったことが判明した。この北方の宮城県北部で1900年以降に発生したM6.5を越える内陸地震は、2003年の震源域の北方の領域から、南方に破壊してきたことが明らかになった。この一連の地震は、中新世の日本海の拡大時の最末期に形成された北部本州リフトの東縁のリフト系の再活動によるものであった。このリフト系の延長である水沢地域における石油公団が実施した反射法地震探査データと、現地の活断層調査によって、この地域の活断層はリフト系のハーフグラーベンを限る西傾斜の正断層が逆断層として再活動して形成されたものであることが明らかになった。また、リストリックな形状の正断層の再活動に伴って、浅層の高魚部分をショートカットして形成された、footwall short cut thrustも見いだされた。同様の再活動は、このリフト系の東縁の延長である三戸地域でも見いだされ、地表地質と重力から推定される密度構造から、中新世初期に活動したハーフグラーベンの東縁の断層が鮮新世以降再活動し、現在、活断層として知られる折爪断層はこの再活動によって形成されている。東北日本の太平洋側に分布する活断層は、仙台市周辺の長町-利府断層も含め、こうした中新世の背弧海盆の拡大に伴って形成されたかつての正断層が再活動したものである。したがって、震源断層は均質な物質中で形成される30度前後の傾斜を有するものではなく、50度前後の高角度のものとなる。本研究プロジェクトで検討した、中央構造線活断層系や糸魚川-静岡構造線活断層などの成果も含め、現在の大規模な内陸地震は、既存の断層の再活動によって発生しており、深部の断層の形状は地質学的なプロセスと密接に関連している。
著者
橋本 直純 長谷川 好規 今泉 和良
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

肺線維症の線維化病変においてさまざまな細胞起源由来線維芽細胞の存在が証明された。その中で血管内皮間葉系細胞転換による線維化病変は低酸素状態をもたらしうる。遷延化低酸素状態は線維化微小環境として更なる線維化および肺構成細胞間葉系形質転換を介した線維芽細胞誘導をもたらすことを明らかにした。これらの知見は、線維化形成における誘導因子を解明することにつながり新たな治療標的を確立できると考えられた。
著者
南塚 信吾 下斗米 伸夫 加納 格 伊集院 立 今泉 裕美子 佐々木 直美 木畑 洋一 橋川 健竜 小澤 弘明 趙 景達 山田 賢 栗田 禎子 永原 陽子 高田 洋子 星野 智子
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、1980年代の世界史を、いわば輪切りにして同時代史的に分析し、それを一つの有機的に繋がる世界史として認識する視座と方法を探り出すことを目的とした。そして、まず、現代に繋がるグローバルな諸問題を確認した。それは、(1) グローバリゼーションの過程の始まり、(2) ネオリベラリズムの登場とIMFモデルの神格化、(3) 市民社会論の台頭、(4) IT革命、(5) 大量の人の移動などである。次いで、このグローバルな問題に対応して、世界の諸地域での根本的な変化を確認した。そして、アフリカやラテンアメリカでの構造改革から始まり、中越戦争、アフガン戦争、イラン革命の三つの変動を経て、ソ連や東欧での社会主義体制の崩壊、イスラーム主義の登場と湾岸戦争などにいたる世界の諸地域の有機的相互関係を析出した。
著者
今泉 容子
出版者
筑波大学文藝・言語学系
雑誌
文芸言語研究 文芸篇 (ISSN:03877523)
巻号頁・発行日
no.42, pp.80-51, 2002

「このぉ、食欲と性欲というのは、いつまでも衰えませんな。」米寿をむかえられてなお研究にいそしんでおられる恩師が、すこしばかりまえの立食パーティーで、取り皿に山と盛られたご馳走をほおばりながら、そう ...
著者
大西 英雄 網島 ひづる 金井 秀作 近藤 敏 今泉 敏 細羽 竜也 古屋 泉 細川 淳嗣 ONISHI Hideo AMIJIMA Hizuru KANAI Shusaku KONDO Satoshi IMAIZUMI Satoshi HOSOBA Tatsuya FURUYA Izumi HOSOKAWA Atsushi オオニシ ヒデオ アミジマ ヒヅル カナイ シュウサク コンドウ サトシ イマイズミ サトシ ホソバ タツヤ フルヤ イズミ ホソカワ アツシ
出版者
県立広島大学
雑誌
人間と科学 (ISSN:13463217)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.111-120, 2009-03

報告Reports本研究の目的は,ICT(information communication technology)を活用した効果・効率を高めた教育-学習システムを構築しその評価を行う。そのシステムは,教員が授業内容として作成したコンテンツをインターネット上にあるサーバーにuploadを行い,コンテンツを教員・受講生ともに各自のPCからインターネット経由でサーバーにアクセスを行う。同時にSkypeTMによるWebカメラとヘッドホーンを利用した双方向のリアルタイム音声・画像システムを利用して,対面授業を行う。授業内容は大学院(保健福祉学専攻)レベルとした。研究参加に同意した受講生を対象に本システムを活用した模擬授業を行い,その有効性及び特異性などについて質問紙調査を実施した。その結果,遠隔地からでも受講可能であること,対面授業による学生と教員のコミュニケーションの効果や受講生が自由にインターネットでコンテンツにアクセスすることで予習や復習ができることなどから学習意欲が高まるなどの評価が高かった。しかし,SkypeTM使用における通信スピードの低下などによう画像劣化や音声の劣化など今後の対策が求められた。The purpose of this study was to construct and evaluate a Web-based education and learning system, which enhances the effects and the efficiency of learning by the use of ICT (information communication technology). The system allows class contents to be uploaded to an Internet server, and to be simultaneously accessed by both the teacher and students using PCs. An interactive lesson could be held by means of a real-time audio and visual system using Skype™ with Web cameras and headphones. The class contents in our study were graduate-school level (Faculty of Health and Welfare). Having obtained consent for our research from the participants, we conducted a class utilizing the system and conducted a questionnaire survey about its efficacy and specific qualities. The results indicated a high evaluation of the system in that learning was facilitated by the capability of the system which allowed students to prepare and review lessons, to access contents even from distant locations, and to participate in interactive lessons with the teacher. However, future measures to deal with problems including image distortion, poor sound quality and slowness in Skype™ communication speed are required.
著者
片山 美和 今泉 浩幸 野尻 裕司 伊東 晋
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.22, no.19, pp.19-24, 1998-03-17
被引用文献数
8

This paper reports the results of a subjective assessment for stereoscopic HDTV coding using MPEG2 MVP@HL, which is a standard for stereoescopic television coding. The results of assessment for coding images of MVP are compared with those of coding images of simulcast, left and right image of which are each coded using conventional MP@HL. The image quality of MVP coding is almost as same as, or is higher than that of simulcast coding. According to the test of bit allocation to left and right images, an adaptive bit allocation depending on image contents can improve the subjective image quality.
著者
新山王 政和 今泉 美貴子 磯部 妙子
出版者
愛知教育大学教育実践総合センター
雑誌
愛知教育大学教育実践総合センタ-紀要 (ISSN:13442597)
巻号頁・発行日
no.8, pp.253-260, 2005-02

今日のユビキタス化された社会では,様々なことを気軽にバーチャル体験できる反面,自分自身の力で考え結果をイメージングしようとする機会が失われてしまっている。生きる力の問題としても,脳科学や発達教育科学の分野からこれに対して警鐘が鳴らされている。よって小・中学校音楽科の授業という視点から,次の2点を視野に入れてこのユビキタス社会における音楽の基礎・基本の力について改めて考察してみたい。1.過度に視聴覚機器に頼ることをやめ,イメージングを通じて活きた活動体験を模索する 2.活動の主体を子どもヘシフトし,教師が言語・非言語指示を駆使して一方的にリードした為に子どもが思考停止の状態や指示待ちの状態のようになってしまうことを,イメージングを活用した活動体験によって防ぐ 今回の一巡の授業研究では,この二つのポイントを視野に入れながら,実体験と体感を伴った子ども自身によるイメージングの活動を基盤に据えた授業のあり方について模索してみたい。そして本論文においては,次の二つの授業実践を取り上げて分析を行った。1.小学校4年生を対象にした授業:楽曲の構造からショートストーリーをイメージングし,それを伝える為の演奏表現とリコーダー演奏技法を工夫する 2.中学校3年生を対象にした授業:歌詞のイメージングに基づいて,自分達が歌いたいと感じる表現を考え,それを演奏表現できるような歌い方を工夫する
著者
今泉 和則 原 英彰 伊藤 芳久 田熊 一敞 布村 明彦
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.130, no.6, pp.477-482, 2007 (Released:2007-12-14)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

アルツハイマー病,パーキンソン病を代表とする神経変性疾患は,進行性の神経細胞死という解剖学的所見を共通の特徴とする疾患であるが,その発症原因は不明であり,充分に有効な治療法・治療薬は未だ見いだされていない.また,脳虚血などの脳血管性疾患については,脳血流の低下あるいは再灌流をトリガーとして神経細胞死が惹起されることは明白であるものの,未だ著効な治療法・治療薬は明らかではない.このような背景のもと,これら神経変性疾患および脳血管性疾患に共通する「神経細胞死」という現象に関わる分子機序の解明を通して新たな治療法開発にアプローチしようという試みが,国内外ともに最近の研究の潮流となりつつある.本稿では,第80回日本薬理学会年会において開催された表題のシンポジウムでの講演より,神経変性疾患および脳血管性疾患の病態解明ならびに新規治療法の開発に大きく貢献しうる神経細胞死メカニズムの最先端研究を紹介する.