著者
竹尾 直子 大石 正樹 佐藤 俊宏 馬場 真澄 関川 紀子 三浦 芳子
出版者
Western Division of Japanese Dermatological Association
雑誌
西日本皮膚科 = The Nishinihon journal of dermatology (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.15-18, 2005-02-01

症例は26歳,女性。第1子出産前より両腋窩に皮疹を生じ徐々に悪化したため,出産から1ヵ月後の1998年7月に当科を受診した。初診時,両腋窩に鱗屑を有す米粒大暗赤色丘疹が環状に配列し,前腕屈側にも粟粒大暗赤色丘疹が多発していた。その後,皮疹は粟粒大の膿疱を伴うようになり,病理組織検査では規則的な表皮突起の延長を伴う表皮肥厚及び角層下膿疱を認め,当初我々は汎発性膿疱性乾癬と診断した。皮疹はさらに多発したためプレドニゾロン25mg/日の内服,PUVA療法を開始したが効果に乏しくプレドニゾロンは漸減した。1999年6月歯周囲炎に罹患し歯科治療後,皮疹の新生は止まり,2000年5月プレドニゾロンの内服を中止した。2001年8月躯幹,上肢に皮疹が再燃。2002年8月第2子妊娠後より皮疹は膿疱を伴うようになった。治療はステロイドの外用のみを行い,皮疹は軽減した。患者は2003年5月に低出生体重児を出産し,3ヵ月後には皮疹は完全に消退した。このため我々は本患者を疱疹状膿痂疹と最終診断した。低出生体重児を出産した原因として第2子妊娠時では妊娠初期から本症を発症しており罹患期間が長期に及んだためと考えられた。
著者
佐藤 俊朗
出版者
慶應義塾大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2011-08-24

炎症性腸疾患は原因不明の慢性炎症性腸疾患であり,免疫統御療法により治療される.しかし,難治性炎症性腸疾患では,その効果が乏しい.我々は,そのような難治症例では粘膜の再生障害が原因であると考え,粘膜再生治療の開発を目指している.粘膜再生治療実現のための,非臨床試験として,マウス大腸より培養大腸上皮オルガノイドを作成し,マウス腸炎モデルに対して経肛門的投与を行い,投与したオルガノイドの生着が確認できた.また,オルガノイド移植群は非移植群に比して腸炎に対する治療効果を認めた.長期間培養した組織幹細胞を移植し,生着させる技術は他の臓器を見ても例がなく,今回の成果は粘膜再生治療を実現させるため,重要な進展となった.次のステップとして,ヒト腸管上皮幹細胞培養技術の開発が求められる.我々は,既にマウス腸管上皮幹細胞培養を確立しているが,本培養方法ではヒト腸管上皮幹細胞の培養は困難であった.そこで,マウス大腸上皮細胞培養の条件に加え,Nicotinamide,A83-01(Alk inhibitor),SB203580(p38 inhibitor)を追加したところ,世界で初めてヒト腸管上皮幹細胞の長期培養に成功した.長期培養されたヒト腸管上皮細胞は染色体異常など,形質転換をすることはなく,正常な分化を保持していた.本成果は粘膜再生治療のみならず,ヒト上皮細胞疾患の研究に非常に有用な技術である.
著者
佐藤 俊樹
出版者
東京大学社会科学研究所
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3/4, pp.157-181, 2006-03-28

靖国神社(およびその前身の東京招魂社)は,長く「国家神道」の中心施設だと見なされてきた.しかし実際には,第二次大戦以前でも,その宗教的な性格や政治的な位置づけはかなり変化しており,特に1900年代の前と後では大きくことなる.ほとんどの靖国神社論は政治的立場のいかんを問わず,この点を無視されている.それらが1911年に出た『靖国神社誌』の靖国神社像を踏襲しているからである.本論では,『武江年表続編』や東京ガイドブックといった同時代史科をつかって,1900年代以前の靖国神社(東京招魂社)がどんな宗教的・政治的な意味をおびていたかを,政治家でも宗教家でもない,東京のふつうの生活者の視線から描きだす.それによって,戦前前半期の日本における宗教-政治の独特な様相の一端を明らかにする.
著者
佐藤 俊 渡邉 香奈 石田 卓 吉川 素子 金沢 賢也 斎藤 純平 大塚 義紀 棟方 充 鈴木 均 丸山 幸夫
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.95, no.2, pp.356-358, 2006-02-10 (Released:2009-03-27)
参考文献数
7
被引用文献数
1 2

症例は47歳, 男性. 拡張型心筋症による発作性心房粗動に対しアミオダロンの投与を開始, 2年後に胸部X線写真にて異常陰影が出現. 肺胞洗浄, 肺生検所見などから総合的にアミオダロンによる薬剤性肺炎と診断した. 短期間のステロイド治療が奏功し, 現在まで再燃は認めない. 本症では肺胞洗浄液にて好酸球の著増を認め, 細胞毒性による肺障害と免疫学的機序を背景とした好酸球性肺炎の併発が考えられた.
著者
小澤 俊治 雨宮 毅 佐藤 俊彦
雑誌
山梨県果樹試験場研究報告 (ISSN:03893588)
巻号頁・発行日
no.10, pp.1-9, 2000-03

山梨県果樹試験場では、農林水産省の指定試験地として1951年からブドウの育種事業を開始し、わが国の気象条件下でも容易に栽培が可能で高品質の生食醸造兼用品種の育成を図ることを目標に事業を進めてきた。その成果として、'サマーブラック'を登録するに至ったので、その育成経過及び特性を報告する。本品種は1968年に'巨峰'と'トムソン・シードレス'を交雑した実生11個体から選抜したものである。1969年に播種、育苗後、1970年に個体番号8255として圃場に定植した。1990年に一次選抜を行い、1992年より'山梨35号'の系統名で第8回系統適応性検定試験に供試した。その結果、早生品種として着色や果実品質が優れることから、1997年8月19日に'サマーブラック'と命名、'ぶどう農林16号'として登録、公表された。1997年3月31日に種苗法に基づく品種登録の申請を行い、1999年3月18日に出願公表された。樹勢は強く、新梢の伸びは旺盛である。樹冠の広がりは大きく、樹勢いは強い。葉の大きさは大きい。花穂は複穂円筒形で、1新梢あたり2花穂を着ける。花は完全花(両性花)であり、三倍体品種である。満開期は山梨市で6月中旬で、花振るいは多い。防除は'巨峰'に準じた散布で問題となる病害虫は認められない。自然状態の果房は、有岐円筒形であり、着粒密度は中である。果粒の形は扁円~円で、大きさは3g程度である。満開時及び満開10日後のジベレリン50ppmの処理によって、7~8gに果粒が肥大し、400g前後の果房となる。果粒は紫黒色で着色は良好であり、果粉は多い。果皮は厚く、はく皮性はやや困難である。肉質は塊状と崩壊性の中間であり、フォクシー香を有する。果汁の糖度は20~21°Brixと高く、酸含量は0.5~0.6g/100mlで食味は濃厚である。裂果は少ない。果梗と果粒の分離性は容易であり、果実の日持ちは短い。収穫の目安は糖度19°Brix以上、酸度0.6g/100ml以下、糖酸比30以上とする。
著者
佐藤 俊明
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.213-219, 2005 (Released:2005-04-21)
参考文献数
30

心筋細胞のミトコンドリア内膜に存在するATP感受性K+ (mitoKATP) チャネルやCa2+活性化K+ (mitoKCa) チャネルは, プレコンディショニングの成立に重要な役割を担っている. MitoKATPチャネルの活性化によりK+が細胞質からマトリックスへ流入すると, ミトコンドリア内膜が脱分極し, Ca2+のdriving forceが減少するのでミトコンドリアCa2+過負荷が抑制される. MitoKCaチャネルも同様のメカニズムでミトコンドリアCa2+過負荷を抑制する. ミトコンドリアCa2+過負荷の軽減は膜透過性遷移孔の開口を遅らせるためアポトーシスも抑制するので, 強力な心筋保護作用を発揮すると考えられる.
著者
佐藤 俊治
出版者
The Philosophy of Science Society, Japan
雑誌
科学哲学 (ISSN:02893428)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.75-87, 2001

In this paper, I examine van Fraassen's original version of modal interpretations, which have the increasing significance in the foundational research concerning elementary quantum mechanics. I argue that although van Fraassen's modal interpretation has a salient advantage over the standard Dirac-von Neumann interpretation with the projection postulate, it is confronted with two kinds of interpretive difficulties stemmed from one and the same fact of experience, repeatability of the first kind measurement.
著者
宍戸 英明 三宅 章吾 佐藤 俊治
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.734, pp.91-96, 2004-03-12

近年の生理学的知見により,アセチルコリンが長期記憶の形成に重要な役割を果たしている事が示唆されている.アセチルコリンには海馬の情報伝達の制御やθリズムの生成,睡眠・覚醒のリズムの生成等の働きがあり,これらの働きによって長期記憶が形成されると考えられる.そこで本稿では,アセチルコリンの働きとそれに伴うθリズム及び睡眠の効果を全て取り入れた海馬-新皮質モデルを提案し,長期記憶の形成過程を数値実験を用いて検証した.その結果,長期記憶形成におけるアセチルコリンとθリズムの役割を明らかにした.
著者
佐藤 俊樹
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.3-20, 1990

プロテスタンティズムの倫理は近代資本主義を生んだか? この問いは現在の社会学の出発点である。だが、Weber自身のを含めて、従来の答えはすべて失敗している。経営の規律性や強い拡大志向、資本計算などは日本をはじめ多くの社会に見出されるからだ。この論考では、まずそれを実証的に示し、その上で、プロテスタンティズムの倫理が「禁欲」を通じて真に創出したものは何かを問う。<BR> それは合理的な資本計算や心理的起動力などではない。個人経営においても、経営体(組織)と個人の人格とを原理的に分離可能にしたことである。この分離と両者を規則を通じて再結合する回路こそ、日本の経営体に決定的に欠けているものであった。なぜなら、それが近代の合理的組織の母型になったのだから。その意味においてはじめて、プロテスタンティズムの倫理は近代資本主義を生んだといえるのだ。
著者
佐藤 俊哉
出版者
日本計量生物学会
雑誌
計量生物学 (ISSN:09184430)
巻号頁・発行日
vol.28, no.Special_Issue_1, pp.S57-S62, 2007-10-01 (Released:2011-09-25)
参考文献数
17

In this paper, I will review recent development in epidemiologic theories. It is emphasized that case-control studies are considered to be based on a underlying hypothesized cohort. Thus, various control selection options have been developed as the selection from the population at risk in that hypothesized cohort.As an example of the use of new epidemiologic designs, a case-control study of infant asthma is illustrated. It is a part of the SORA (Study on Respiratory Disease and Automobile Exhaust) project which is a complex of epidemiologic studies for infants, school children, and adults conducted by the Ministry of the Environment. In that study, a two-stage case-control design which is effcient both for rare exposure and rare disease is adopted.
著者
今城 周造 佐藤 俊彦
出版者
東北文化学園大学
雑誌
保健福祉学研究 (ISSN:13484567)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.1-11, 2004-03-31

本研究の目的は喫煙行動の規定因の検討であった。計画的行動の理論によれば行動意図は、行動への態度や、主観的規範、統制認知の影響を受ける。本研究では、これらの変数を測定する質問紙調査を行った。対象者は大学生159人(男75、女84)であった。その結果、喫煙への態度には喫煙者と非喫煙者の間に差はなく、両者とも喫煙をむしろ否定的に捉えていた。一方、喫煙者は非喫煙者よりも、重要他者から喫煙を是認されていると感じていた。また喫煙者は喫煙を容易なことと認知するが、非喫煙者はむしろ困難と認知していた。階層的重回帰分析の結果、行動意図と統制認知の間には強い正の相関があった。態度と主観的規範はいずれも行動意図と正の相関を示すが、その関係は弱い。これらの結果は、計画的行動の理論が、喫煙行動の理解と予測に有効な道具となりうることを示す。また喫煙・禁煙に伴う困難さが、分煙・防煙の成否を左右する可能性が示唆された。
著者
山田 嘉昭 佐藤 俊雄
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.6, pp.217-225, 1974-06-01

振動や動的応答の解析では,大次元の固有値問題に直面するのが普通である.この報告では有限要素法の分野で最近新しく開発された2つの有力な固有値解法,すなわちsubspace iteration(またはsimultancous iteration)およびWilkinson-Gupta法について各々の特徴を 従来用いられてきた解法との関連において明らかにする.またsubspace iterationについては,数値実験を通じてその有力なことを実証する.二つの固有値解法により,有限要素法は,また新しい進歩の段階を迎えたものと考えられるのである.
著者
佐藤 俊 平野 聡 太田 至 河合 香吏 湖中 真哉 岡倉 登志
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

地域間の生態的,政治的,経済的,社会的,軍事的な諸要素の相互浸透的な相互作用は地域連環と定義され,在地の遊牧民が地域社会を自ら変容させつつ外的要因を選択的に取り込み,社会の持続性を維持するシステムを生活安全網と定義される。後者の概念はすぐれて地域社会に根ざすものであるが,複雑な地域連環を視野に入れてはじめて理解できるものである。1.遊牧生態系のGIS/RSによる解析:SRTM成果を標高値,DEMから計算された水系網の評価によって,基盤地図データの整備,地理情報の視覚化,自然環境のモデル化,遊牧民研究への応用が可能であることが検証された。2.地域社会の生活質リスクの解明:個々の遊牧社会が直面している問題のうち,家畜の略奪,市場経済化による社会的平準化機構の脆弱化,貧富の格差増幅による地域社会の変質,町場形成による牧野生態の劣化,就学と就労の増加による牧人不足と家計の多角化による家族構造の変化,伝統的政治体系と儀礼体系の変質などが,実証的資料によって明かにされた。3.地方的社会経済の広域的枠組みとその歴史的背景の解明:エチオピアでは,経済自由化によっても,社会的紐帯に制約された皮流通経路は開放されないことが判明した。ジブチのFRUD(ジブチ民族統一回復戦線)結成の背景,ならびに13〜15世紀のスルタン国家アファルに由来するアファル人のアイデンティティが文番資料によって明らかにされた。ケニアの政治的動向を,大統領の権限縮小,地方分権化をめざす現行憲法の見直し問題の経緯,国民投票(2005年11月実施)の選挙区党派別分布,憲法見直し問題とNARCの本格的分裂の3点について分析した結果,政党組織が意見集約機能を喪失して地域化していく過程が明らかとなった。今後の課題として,地域社会の生活安全網と地域連環を統合的に理解できるモデルを精緻化する作業が残されている。
著者
佐藤 俊彦
出版者
東北文化学園大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究課題では,高血圧ラットSHRの驚愕反応に関する行動的特徴と,その生理学的基礎,特に循環器機能との関連を明らかにすることを目標としている。昨年度に行ったSHRとWKYの驚愕反応と恐怖増強(fear-potentiated startle, FPS)を調べる実験について,追加実験を行って,データを追加した。各セッションの前半と後半の試行とで別個に平均を集計したところ,恐怖条件づけ後24時間では,セッション前半の試行のFPSの指標(%FPS)には有意な系統差はなく,後半でのみ,SHRの%FPSが大きかった。この結果より,SHRの情動的性質について,情動的な興奮性が一般に高まっているというよりはむしろ,情動喚起刺激に対する慣れが遅いと推定できた。この研究成果については平成18年10月に開催された北米神経科学会(米国Atlanta)にて発表するとともに,驚愕反応ならびに恐怖増強の世界的権威Michael Davis教授のラボ(Emory大学)を訪問し,実験手法についてアドバイスを受けた。また,同年11月の日本心理学会においても,SHRの驚愕反応に関する研究成果の発表を行った。今年度には新たな実験も開始した。昨年度からの予備実験の結果を踏まえながら,Davis教授から受けたアドバイスも参考に実験をデザインした。血管拡張薬ヒドララジンの静脈内投与により,血圧の低下したSHRでは,FPSの程度が有意に減少していた。また,少数の個体に対して,別種の降圧剤を投与したところ,同様にFPSが小さくなった。SHRで比較的大きなFPSがみられる生理学的背景として,心臓血管系の高い機能水準が寄与している可能性が示された。この成果は平成19年度の国内外の学会において発表するとともに,論文投稿を準備している。なお,本研究における動物飼育と実験実施にあたっては,東北大学文学研究科心理学研究室の設備を借用した。