著者
高橋 英之 岡田 浩之
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.450-463, 2010-08-15 (Released:2010-11-15)
参考文献数
30
被引用文献数
3 3

コミュニケーションは人間の社会性の基盤となるものである.コミュニケーションは情報交換であり,一般的にはそこに曖昧さは必要が無いと考えられる.本論文では,人間のコミュニケーションに含まれる曖昧さが,特に大きな規模の社会集団では非常に重要な機能を持つという仮説を提起し,それを検討するためのシミュレーションと二つの顔表情を題材とした心理実験を行った.本論文ではそれらの研究の詳細を述べるとともに,それらの結果を受け,社会性やコミュニケーションの背後には曖昧さを処理する脳機能が大きな働きをしているのではないかという議論を行った.
著者
高橋 英之 伊豆原 潤星 改田 明子 山口 直孝 境 くりま 小山 虎 小川 浩平 石黒 浩
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.852-858, 2019-10-15 (Released:2019-10-15)
参考文献数
17

コミュニケーションを円滑に行う上で,相手に対する事前知識や信念を互い有し,それを振舞いや発言にトップダウンに利用することは重要である.その一方で,多くの人間とロボットのコミュニケーションにおいては,ロボットに関する事前知識や信念を人間側が持っていないことが多い.本論文では,事前知識や信念が人間とロボットのコミュニケーションに及ぼす影響を調べるために,著名な文豪である夏目漱石のアンドロイドを用いて,被験者が“夏目漱石”や“ロボット”,“人工知能”に対して有している事前知識や信念がどのように“漱石アンドロイドとのコミュニケーション”に対する印象に影響を与えるのかを調べた.その結果,“夏目漱石”に対する事前知識は緩く漱石アンドロイドとのコミュニケーションにおけるリアリティと関連する一方,それ以上に“人工知能”に対する畏怖の念が強く漱石アンドロイドのリアリティと関連していることが分かった.
著者
高橋 英之
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.556-560, 2023-12-01 (Released:2023-12-15)
参考文献数
13
著者
高橋 英明
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.480-488, 1991-12-15 (Released:2017-08-31)

原子力発電所の設計時には,寿命として一般に40年がとられ,機器類の基本的な設計仕様が決められている.原子力の開発国である米国においては発電所の新設がしばらくとだえているが,このままの状況が続けば,古い発電所が近い将来40年という耐用年数に達して引退するため,発電量の総量が不足するという事態に至ることが憂慮されている.この対策の1つとして,米国では原子力発電所の寿命延長に関する研究が多方面で実施されており,1991年内には開発初期の発電所について寿命延長の申請がな される予定となっている. この寿命延長にあたっての技術的課題解決のために実施されてきた研究について,およびわが国にお ける状況について報告する.
著者
高橋 英彦
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.51-54, 2011 (Released:2017-02-16)
参考文献数
4

自己と他者の所有物の高低と自己と他者との関係性の遠近というパラメータを調節することで,妬みの強さを調節し,f MRI 実験を行った。妬みの感情のもう 1 つの側面として,妬みの対象が不幸に見舞われると,私たちは他人の不幸は蜜の味ともいわれる非道徳な感情を抱くことがあり,この点についても併せて検討した。その結果,妬みと前部帯状回の背側部の活動が関係することがわかった。前部帯状回の背側部は身体的な痛みにも関わる部位で,社会的な痛みといえる妬みも同様な部位が賦活されたことは興味深い。また,妬みの対象に不幸が起こると,報酬系である腹側線条体の賦活を認め,文字通り他人の不幸は蜜の味であるかのような反応を認めた。
著者
大森 肇 渡邉 彰人 大山 卞圭悟 佃 文子 高橋 英幸 久米 俊郎 白木 仁 岡田 守彦 板井 悠二 勝田 茂
出版者
The Japanese Society of Physical Fitness and Sports Medicine
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.385-392, 2000-06-01 (Released:2010-09-30)
参考文献数
15

本研究では1週間に1日という低頻度で5週間のみの筋力トレーニングを行った結果, 筋力の増加がみられた.また筋力トレーニングによって獲得された筋力は17週間の脱トレーニング後でも維持されていることが示唆された.さらに再トレーニング脚と対照トレーニング脚を比較した結果から, 再トレーニングによる筋力増加応答の増強 (Nerve-Muscle Memory) が観察された.これらの現象がiEMGの変化様相と一致していたことから, これらの背景にあるメカニズムが神経系の要因 (運動単位動員の変化ならびにインパルス発射頻度の変化) によるものであると考えられた.
著者
日下部 茂 高橋 英一 谷口 倫一郎 雨宮 真人
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.47, pp.57-58, 1993-09-27

V言語はデータフロー向き関数型言語validを拡張したもので,依存関係のないものは全て並行動作することを前提とした言語である.計算の進行する頂序を規定するのは依存関係だけである.依存関係を持つものの間で頻繁な同期が必要となるが,データフロー同期方式により同期は暗黙のうちに行なわれ,プログラマが明示的に同期を指定する必要はない.ある計算に必要な値がまだ求まっていない場合は,その値が決まるまで実行が中断し,値が求まった時点で自動的に同期がとられ計算が再開する.V言語では,自律して並列に動作するプロセスとしてagentインスタンスを生成し,並列オブジェクト指向風の計算を行なうことができる.agentインスタンスはカプセル化された内部状態を持ち,お互いの間でストリームを通じてデータをやり取りしながら計算を進める.インスタンス間の同期もデータフロー同期方式によって行なわれる.送信側では通信路に次々にデータを流し,受信側では通信路の出口からデータを読みとって計算を進める.データが到着していなければ読みとり側のプロセスは待たされ,データが到着すると待ちが解かれ処理が進む(メッセージ駆動orデータ駆動).ストリームの要素をメッセージとみなせば並列オブジェクト指向と考えることが出来るが,処理内容がメッセージだけで決定するなら,Validの枠組での関数呼び出しで済む.ここでagentを導入したのは,並行に動作し内部状態を持ったプロセスと,それらの間の自由度の高い通信を容易に記述することが目的である.出来る限り関数性を保持するため,agentの内部で状態を保持するためには,再帰で明示的に状態をフィードバックする.本稿ではagentを中心にV言語の特徴とその処理系,並列実行モデルの概略について述べる.V言語プログラムは命令レベルの細並列処理も可能だが,ここでは種々の並列計算機上での実現を意識したマルチスレッド並列実行モデルについて述べる.
著者
高橋 英之 堀井 隆斗
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.31, 2017

我々は刹那的な体験を言語などの共有信念にプロジェクションすることで他人と社会的インタラクションを行っている.このようなプロジェクションはコミュニケーションする上で有用であるが,もともとの刹那的体験そのものに含まれていた情報が欠損することで創発の可能性が失われる.今回の発表では刹那的体験から共有信念へのプロジェクションのダイナミクスをモデル化し,インタラクションに宿る創発現象について議論をしたい.
著者
高橋 英之 寺田 和憲 上出 寛子
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.29, 2015

その実在の議論とは別に,我々がかみさまを知覚する際に,他者やエージェントを知覚するのと同様な神経回路を用いていることが近年示唆されている.我々は,宗教,そして神は古代から人が作り上げてきた最も成功したHAIの一つであるという仮説を提起し,その誕生と機能について,宗教の歴史や形態と既存のHAI研究との比較を行いながら議論を行いたい.
著者
伴 碧 池田 亮午 高橋 英之 神山 貴弥
出版者
日本感性工学会
雑誌
日本感性工学会論文誌 (ISSN:18845258)
巻号頁・発行日
pp.TJSKE-D-20-00058, (Released:2021-06-16)
参考文献数
41

Previous studies have shown that behavioral synchronization with others positively affects various psychological and behavioral variables. However, no consistent view has been given on the effects of synchronization, as different researchers tend to use different indicators. In light of this, the purpose of this study was to comprehensively examine the effects of synchronization by using multiple psychological and behavioral indicators that have been shown to be associated with synchronization, as dependent variables. We set up conditions in which the upper arm motion was synchronous and asynchronous between two participants who maintained a controlled gaze. The results showed that synchronization of behavior with others was not an effect and not a mediated effect by psycho-logical variables; however, it had a direct effect on behavioral indicators. Specifically, compared with the asynchronous condition, the synchronous condition resulted in closer interpersonal distance between participants and greater cooperation with others in the prisoner’s dilemma game.
著者
竹内 友里 高橋 英史
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.58-60, 2013 (Released:2013-01-24)
参考文献数
7

独特の食感を有するボイルしたクルマエビについて,これを X 線 CT で観察したところ,腹部は 3 つの筋群(前斜筋,中央筋および横断筋)が絡み合って形成された特徴的な構造を有していることを見出した。すなわち,中央筋が前部前斜筋と後部前斜筋を束ね,それらを横断筋が保持した複雑な構造を有しており,このことが独特の食感に起因すると推察した。
著者
本江 昭夫 鈴木 啓助 岩間 和人 高橋 英紀 稲村 哲也 山本 紀夫
出版者
帯広畜産大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

平成12年8月30日〜10月22日に、本江、稲村、山本は、チベット自治区東部へ行き、ヤクとヒツジの遊牧を主体とする牧畜業と、コムギとオオムギを主体とする農業の現状について調査した。さらに、平成12年5月25日6月6日に、高橋、鈴木は、チベット自治区のラサの東40kmにある中国科学院農業生態実験站、および、西部の当雄において、コムギ畑の熱・水収支、葉面積と気孔の挙動、降水および地下水の電導度・pHを測定し、低炭酸ガス濃度、低水蒸気圧というチベット高原特有の低圧環境の特性と作物の反応を調査した。一般の畑では、標高3800m以下でオオムギとコムギが栽培されていた。これより標高の高い所では自然草原を利用した、ヤクとヒツジの遊牧が行われていた。今回調査したチベット東部は、湿潤、温暖な気象条件下で針葉樹林があり、前年に調査した中部とは全く異なった景観であった。林芝では、水田、リンゴなどの果樹栽培も行われており、従来のチベットに対する認識を根底から覆す必要があると思われた。ムギ畑に多数侵入している雑草エンバクを秋に抜き取り、水洗後に根を切り取り、乾燥して越冬用の飼料として利用していた。畑に多数見られた雑草エンバクは、雑草としてではなくて、むしろ、青刈り用飼料として栽培していると、見なすべきである。以前はオオムギ栽培が主体であり、チベット族の人はザンパ(ムギこがし)を主食としていた。しかし、漢族の人が増加するにつれ、コムギを主体とする食生活へと変化していることを、前年に続いて観察した。ラサ近郊ではコムギ畑の栽培面積が拡大しているが、地方では、オオムギ栽培が今までどうり行われていた。コムギ栽培が拡大している理由として、化学肥料の利用にともなうコムギの単収の増加が大きいことが判明した。ラサ近郊では、ジャガイモやトウモロコシなどの栽培、あるいは、トマト、ナスなどをビニールハウスで栽培するケースが増大していた。都市住民の所得増加が消費生活の水準を高くしていることが確認された。同時に、地方の農民との所得格差が拡大していることも確認できた。
著者
高橋 英之 大森 隆司
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.138-157, 2011 (Released:2011-09-07)
参考文献数
60
被引用文献数
4

Human being can be called “social animal”. There are no other animals that can communicate with other individuals in common with human. Many researchers are interested in cognitive and neural functions that exist behind advanced human sociality. Most of these researchers break down human sociality into individual cognitive components, such as mirror neuron system, and try to reveal the stand-alone function of these individual components. There are no doubts that these reductionist approaches are valuable for the realization of human sociality. However, we also feel the limitation of these reductionist approaches for the realization of human sociality. In this paper, we propose the new framework “social belief effect” for the realization of human sociality. We define social belief as a subjective belief on an interacting agent (e.g. the agent is a human individual or not). And “social belief effect” means the preparation of executive functions driven by a social belief. In our framework, various cognitive components are dynamically configured by a social belief and this top-down configuration enabled a dynamical social adaptation. To evaluate our framework, we review related previous studies and our behavioral and fMRI experiments for the direct measurement of “social belief effect”, and discuss its feasibility. And we try to model the neural mechanism of “social belief effect" from these previous experimental studies.
著者
宮崎 美智子 高橋 英之 岡田 浩之 開 一夫
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.9-28, 2011 (Released:2011-09-07)
参考文献数
56

The emergence of “Sense of agency” contributes to self-recognition. However there are few useful experimental paradigms for evaluating the development process of the sense of agency in young infants because the sense of agency is a subjective sense and young infants cannot verbally describe their internal experience. In this article, we propose a new experimental paradigm for examining the sense of agency using on-line eye tracking which we named “eye-scratch task”. This task enables us to evaluate the emergence processes of the sense of agency by a trajectory of voluntary eye movement. Besides, this task enables direct comparison of eye movement trajectories between infants and adults in common criteria. Hence, we can discriminate whether an infant feels the sense of agency or not by comparison with adults. Further, we analyzed participants' behavior in the task by the concept of feed-forward model that are the most famous computational frameworks for motor control and sense of agency. And we claim that our new infant's model based measurement give fruitful suggestions to the computational modeling for the development process of the sense of agency and self-recognition.