著者
山口 幸洋 名倉 仁美
出版者
日本語学会
雑誌
國語學 (ISSN:04913337)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.100-101, 2001-09-29

香川県伊吹島方言は昭和41年の和田実の報告以来,1200年前のアクセント(以下アと略)を保つものとして学界の定評を成している。山口は当時その検証調査によって,その事実を追認したものとして責任がある。山口,名倉は,平成12,13年の調査で,その疑問が明らかなものとして,その反省を述べる。疑問点は,方言ア研究上異例の,言語外事実とのギャップにある。すなわち,燧灘海中の伊吹島は人口定住400年の地で,そこに1200年前のアを認めるのは不自然である。400年前無人島だったことに論議の余地はない。島の生活は少雨地帯で知られる瀬戸内海にあっても,とりわけ,全島岩盤で川も湧き水もなく,飲料水は,地中の岩盤に穿鑿した貯水槽の天水に依存して来た。このとき言語学が,人間の存続に関わる水や人口の問題を,言語外事実ゆえ取り上げるべきでないと済ませて超然とすることは,大仰に言って言語学そのものに関わる問題である。本発表では,伊吹島のアを,純粋に言語的(言語地理学,社会言語学)に次のように考察する。(1)そもそも,伊吹島アに見られる「二拍名詞類別体系(五つの区別)」は,平安時代「類聚名義抄」と同一のものであるにしても,音調そのものが同質のものかどうかに疑問がある。(2)徳川宗賢によって系統樹的方言変化シミュレーション「系譜論」で「類聚名義抄五つの区別」が頂点に据えられ,類別は,「統合することはあっても分裂することはない」というテーゼによって,諸方言の類別体系が考古学の地層のような年代測定に利用されることの是非。(3)伊吹島二拍名詞3類における「下降調」を,「日本祖語」の音調と比定することの是非。それらすべてに疑問を提出し,代わって伊吹島アが香川県の讃岐式ア,愛媛・阪神の京阪式ア,岡山・愛媛の東京式アすべての接点にあるという言語地理的背景ゆえの交流接触,それに加えて,伊吹島の江戸時代以降の阪神方面との関係(組織的な西宮灘の宮水運搬,泉佐野市方面への出漁),大正昭和の漁業振興に伴う異常な人口増大(転入)とともに当アが混淆成立したとする社会言語学的解釈を述べた。
著者
鈴木 祐輔 太田 伸男 倉上 和也 古川 孝俊 千田 邦明 八鍬 修一 新川 智佳子 高橋 裕一 岡本 美孝 欠畑 誠治
出版者
日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会
雑誌
耳鼻咽喉科免疫アレルギー (ISSN:09130691)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.193-200, 2015 (Released:2015-09-25)
参考文献数
21

鼻噴霧用ステロイド薬は,鼻アレルギー診療ガイドラインにおいて花粉症治療の中心的な薬剤として推奨されている。しかし初期療法としての鼻噴霧用ステロイド薬と,抗ヒスタミン薬を中心とした併用療法の効果について比較した報告は少ない。今回我々は,スギ花粉症患者20 例を鼻噴霧用ステロイド薬(デキサメタゾンシペシル酸エステル)群(DX-CP 群)6 例と,第二世代抗ヒスタミン薬(オロパタジン塩酸塩)にモンテルカストを追加併用した抗ヒ+抗LT 薬群14 例に分け,治療効果につき検討を行った。検討項目は鼻症状,JRQLQ No.1 によるアンケートおよび鼻腔洗浄液のeosinophil cationic protein (ECP) と血管内皮細胞増殖因子(VEGF) の濃度とした。DX-CP 群では飛散ピーク期と飛散終期の鼻症状スコアの上昇を抑え,鼻閉症状では有意にスコアを減少させた。抗ヒ+抗LT 薬群では飛散ピーク期に症状スコアが上昇したが抗LT 薬を併用した飛散終期にはスコアが低下した。QOL スコアではDX-CP 群の飛散ピーク期において抗ヒ+抗LT 薬群に比べ有意にスコアを抑えた。鼻腔洗浄液中のECP 値, VEGF 値はDX-CP 群ではシーズンを通じて値の上昇を抑えた。よってDX-CP は抗ヒスタミン薬や抗LT 薬と同様に季節性アレルギー性鼻炎に対する初期療法薬として非常に有用であると考えられた。
著者
片倉 葵 菊竹 雪 楠見 清
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.1_19-1_28, 2020-07-31 (Released:2020-08-10)
参考文献数
13

近年,商品のパッケージデザインは包装技術の発展や新素材の登場,宣伝媒体の変化により多様化している.しかし,ロングセラー商品には発売当初からパッケージのデザインをほとんど変えずにマイナーチェンジだけを行なっている商品と,時代の変遷に合わせてデザインを変更し売れ続けている商品とが存在する.本研究では前者のロングセラー商品に焦点を当てた.長期間メーカーで継承されている一定のデザイン上の法則性を「レギュレーション」と定義し,パッケージ正面部のグラフィックにどのようなレギュレーションが存在するのかを検証した.商品を購入する際,パッケージと共に重要視されている色に注目し,産業革命後の大正期に発売された食品パッケージ正面部の背景色とモチーフに使用される色との二色の色面積比率を算出し,数値を可視化した.現在販売されている商品のグラフィックと発売当初のグラフィックの色面積比率を比較すると色面積比率はほぼ一定に保たれており,パッケージ正面部におけるグラフィックのレギュレーションの存在を見いだすことができた.
著者
名倉 秀子
雑誌
十文字学園女子大学紀要 = Bulletin of Jumonji University (ISSN:24240591)
巻号頁・発行日
no.51, pp.71-79, 2021-03-28

鶏卵は,奈良・平安時代に食べられた記録は見られず,時を告げる鶏の卵を食べることは罰があたるとされ,畏敬の念があったといわれている。安土桃山時代には,ポルトガルからの菓子に鶏卵を使ったカステラなどの料理がみられるが,鶏卵を積極的に料理にもちいていたとは考えられない。また,江戸時代中期以降には豆腐百珍をはじめに,鯛百珍,玉子百珍,甘藷百珍など100種類の料理を材料別に紹介する料理本が刊行された。ここでは,萬寳料理秘密箱にある玉子百珍の理103品について,調理学的,食文化的な視点から分析し,食生活や卵料理の嗜好性を把握することを目的とした。 卵料理の材料は,鶏卵が97%を占め,全卵使用が全料理の84%となり,貴重な鶏卵を大切に扱う調理法の記載があった。調理法は殻付きゆで卵が21%出現し,これは「煎貫」という調理法であることが明らかになった。ゆで卵は,卵白を染色した料理や,花型に変形させ「花卵」などのように,見栄えの良い料理の調理法が多く掲載され,器のなかの料理について視覚を重視していた。また,卵白は,泡立て後に蒸し,汁の具や平皿の一品とする調理法が紹介され,フワフワなどの食感も大切にされていることが散見された。調味料は,醤油や塩,白砂糖の他,煎酒を利用する料理もあり,旨味や酸味の味のバランスを考えた料理も出現していた。卵料理には,砂糖で調味するカステラや冷たい羊羹などの菓子職人の扱う珍しい菓子類も記され,レシピ本と同時に料理の読み物として掲載されていた。また,卵に生薬を加えた料理は効能の紹介があり,料理が健康維持のために利用されていた。視覚,味覚,嗅覚,触覚を楽しむ卵料理から,食生活文化の広がりを把握できた。
著者
坂上 昇 大倉 三洋
出版者
高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.1-7, 2001-03-31

ストレッチングはスポーツ活動後に疲労回復を促し,障害予防,パフォーマンスの維持・向上といった目的で実施されている.しかし,その実施状況は決して高率ではなく,その原因はストレッチングの効果が十分に理解されていないためと考えられる.そこで本研究は,健常成人男性4名(平均年齢20歳)を対象に,ストレッチングの筋疲労回復効果について検討した.自転車エルゴメーターによる30秒間全力駆動を主運動として,その後10分間の休息を取らせることを2セット行った.その休息時に安静臥位,軽運動,ストレッチングを実施した.検討指標として筋柔軟性,血中乳酸値,作業能力,アンケートを取り上げた.筋疲労による筋柔軟性低下の予防効果については軽運動が効果的であり,ストレッチングは大腿直筋においてはあまり効果がなく,ハムストリングスにおいても安静臥位とあまり差がない傾向を示した.血中乳酸値の回復については,ストレッチングは安静臥位と比較すると低い傾向にあるがその回復傾向には差が見られなかった.作業能力の回復については軽運動が比較的良く,ストレッチングが低い傾向を示した.このように,激運動後の筋疲労回復に対してストレッチングは全ての指標において安静臥位とあまり差がなく,効果的でない傾向を示した.今回の結果は,運動後の筋疲労の速やかな回復という観点では,一般的に認識されているストレッチングの効果を否定する結果となった.しかし,今回の結果は,ストレッチングが身体に与える影響を全て否定するものではない.

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著者
岡倉由三郎 著
出版者
研究社
巻号頁・発行日
1922
著者
村田 祐樹 大見 卓司 倉持 梨恵子
出版者
一般社団法人 日本アスレティックトレーニング学会
雑誌
日本アスレティックトレーニング学会誌 (ISSN:24326623)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.115-121, 2020-04-30 (Released:2020-06-05)
参考文献数
5

青少年のスポーツにおいて,アスレティックトレーナー(AT)が関与することの重要性についての認識が高まっている.本邦でも一部の高校では,課外活動の質を向上させるために専任のATを雇用している.しかし,高校におけるATの業務内容とATが関与することの効果を示した報告はほとんどない.本研究の目的は,高校のATがスポーツ現場でどのような業務を行っているかをインタビューおよび自己開示によって明らかにすることであった.2名の私立学校に勤務するATが本研究に参加した.勤務形態は,1名が専任であり,もう1名が非常勤であった.対象者の主な業務は,スポーツ外傷・障害の評価,救急処置,リコンディショニング,スポーツ外傷・障害の予防であった.それらに加えて,スポーツ外傷・障害の予防と管理について,生徒,コーチ,教諭,養護教諭などに啓発することは,学校スポーツにおけるATの重要な役割であった.本研究は,学校現場でのATの介入事例を2例のみ示したものであり,高校の専任ATに関して更に多くの情報が必要である.したがって,高校においてATが関与する状況を明らかにするためには,体系的な調査を実施する必要があると考えられた.
著者
川上 宏之 天倉 吉章 堤 智昭 佐々木 久美子 池津 鮎美 稲崎 端恵 久保田 恵美 豊田 正武
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.258-263, 2010
被引用文献数
2

天然/畜養クロマグロおよび畜養ミナミマグロの赤身,中トロおよび大トロのダイオキシン類および総水銀を分析し,部位,畜養/天然および種差について検討した.検討の結果,ダイオキシン類濃度は,脂質含有量との間に正の相関が見られ,部位別濃度は赤身<中トロ<大トロであった.クロマグロは,畜養と天然産で差がなく,畜養ミナミマグロに対して約2~10倍ほど高い値を示した.総水銀濃度は,脂質含有量との間に負の相関を示し,部位別濃度は赤身>中トロ>大トロであった.畜養クロマグロの総水銀濃度は,天然産と同レベルの蓄積であったが,畜養ミナミマグロの約2~3倍高い値を示した.
著者
倉田 稔
出版者
小樽商科大学
雑誌
商學討究 (ISSN:04748638)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.1-20, 1998-07-31

論説
著者
植田 智之 中西 惇也 伴 碧 倉本 到 馬場 惇 吉川 雄一郎 石黒 浩
出版者
ヒューマンインタフェース学会
雑誌
ヒューマンインタフェース学会論文誌 (ISSN:13447262)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.227-238, 2021-05-25 (Released:2021-05-25)
参考文献数
14

Experimental tasks depicting a bullying scene are being studied to elucidate the causes of bullying and to verify methods for resolving bullying. Bullying involves not only victims, bullies, reinforcers, who are complicit in the bullying, and defenders, who mediate the bullying, but also bystanders, who ignore the bullying. Bystanders comprise the largest group involved in bullying and can play an important role in resolving bullying. However, in previous experimental tasks depicting a bullying scene, participants could not perceive bystanders’ behavior as different from the behaviors of the victim or bully. The present study aimed to contribute to the development of solutions to bullying by creating experimental tasks, including a measurable behavior representing bystanders. In this research, we introduced a new option of behavior representing bystanders in a “catch-ball task” that can express the reinforcing and defending behavior in a bullying scene. Results of our questionnaire survey showed that the newly implemented behavior representing bystanders was perceived as bystander’s behavior by participants. Moreover, according to the results of another questionnaire survey, the improved experimental tasks with one bystander were perceived to be closer to a bullying scene compared with previous catch-ball tasks.
著者
倉員 貴昭 鈴木 稚子 伊藤 千恵子 島原 義臣
出版者
日本食品化学学会
雑誌
日本食品化学学会誌 (ISSN:13412094)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.95-101, 2016 (Released:2016-08-29)
参考文献数
14
被引用文献数
1

Recently, consumers have a heightened awareness of food safety; moreover, complaints regarding off-flavor are also increasing. There are various causes of off-flavor in frozen food, but in our experience there have been repeated cases in which p-DCB detected in residential environments and styrene detected in refrigerators have been detected in food that has generated complaints of off-flavor. Therefore, we consider that these compounds might pertain to off-flavor in frozen food products. Also, testing has been done on the migration of volatile organic compounds (VOCs) to food at room temperature up to now. On the other hand, there is no knowledge regarding frozen food. In this study we investigated VOCs and monitored the amount of migration regarding p-DCB and styrene in home freezers for an extended period. The results showed that p-DCB and styrene have existed in all of the home freezers examined, and both substances have migrated to frozen food. For this reason, it is possible that both of these substances are indicators of lingering odors when keeping food refrigerated. Therefore, it was shown that the amount of migration varies according to the type of food and how packages of food are resealed once opened. These observations indicate that frozen food whose packages were opened has a risk of lingering odors the same as food stored in other temperature zones does.
著者
舛田 勇二 高橋 元次 佐藤 敦子 矢内 基弘 山下 豊信 飯倉 登美雄 落合 信彦 小川 克基 佐山 和彦
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.202-210, 2004-09-20 (Released:2010-08-06)
参考文献数
3
被引用文献数
5 6

美容上問題となる「目の下のくま」の発生要因として, 一般的に血流の停滞が言われているが, 実際にくまと血流の関係について調査した報告は少なく, また, くまについて皮膚生理学的に論じた報告もほとんどない。そこで本研究では, 非侵襲的な方法を用いくまを皮膚科学的に解析し, その要因を明らかにするとともに, その対応を考え, 「目の下のくま」改善効果の高い商品の開発を行った。くまの発生要因を明らかにするために, くまのある女性とない女性を対象に, 眼下部の皮膚メラニン量, ヘモグロビン量およびヘモグロビン酸素飽和度, 血流速度の計測を実施した。くまのある女性の眼下部では, ヘモグロビン量の増加およびヘモグロビン酸素飽和度の減少が観察された。くま部位では頬と比較して血流速度の低下が見られたことから, 上記結果は血流の停滞により引き起こされたと考えられる。またメラニン量の増加も同時に観測され, その傾向は高年齢層でより顕著であった。以上の結果から, くま部位の明度低下は, 血流速度の低下による皮膚毛細血管内の還元ヘモグロビンの増加と, 皮膚メラニン量の増加によるものと考えられた。以上の検討をもとに, くま発生の主要因である「鬱血」および「色素沈着」, くまを目立たせる小じわ, キメの悪化の各々に対処した「血行促進剤」「美白剤」「保湿剤」配合プロトタイプ製剤を処方し, 3週間の連用効果試験を実施した。その結果, 美容技術者による目視評価, 被験者のアンケートにおいてプロトタイプ製剤の, 高いくま改善効果が確認された。また, 機器測定によってもヘモグロビン酸素飽和度の上昇とメラニン量の低下が確認され, 「くま」の改善に本処方は効果的であることが示された。
著者
水町 龍一 川添 充 西 誠 小松川 浩 五島 譲司 羽田野 袈裟義 椋本 洋 御園 真史 寺田 貢 高安 美智子 高木 悟 落合 洋文 青木 茂 矢島 彰 藤間 真 森 園子 船倉 武夫 上江洲 弘明 松田 修 森本 真理 井上 秀一 山口 誠一 萩尾 由貴子 西山 博正 堀口 智之 渡邊 信 近藤 恵介
出版者
湘南工科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

研究に着手後9か月で国際研究集会を行い,当初の研究目標である学士力の基盤となる数学教育を,モデリングを軸にしたリテラシー教育として行うことの可否・可能性を議論した。結論は,解釈の多義性があるので「高水準の数学的リテラシー」とすること,モデリングではなく概念理解の困難を緩和する方向で近年の数学教育は発展してきたこと,しかしいくつかの留意事項を踏まえれば十分な可能性があるということであった。そこで「高水準の数学的リテラシー」とはコンピテンスであると定式化し,教育デザイン作成に際して価値,態度,文脈を意識する必要を明らかにした。微分積分,線形代数,統計等の諸科目で教材作成・科目開発を実践的に行った。
著者
城倉 正祥 石井 友菜 川村 悠太 呉 心恰 谷川 遼 高橋 亘
出版者
早稲田大学東アジア都城・シルクロード考古学研究所
巻号頁・発行日
pp.1-67, 2020-10

早稲田大学東アジア都城・シルクロード考古学研究所 デジタル調査概報 第2冊