著者
内田 育恵
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.143-147, 2015

聴覚障害は加齢とともに有病率が高くなる代表的な老年病で,われわれが地域住民対象研究から算出した推計値によると,65歳以上の高齢難聴者は全国で約1,500万人に上る.わが国が対応すべき緊要な課題の一つである.<br>個人や社会に対して高齢期難聴がもたらす負の影響は,抑うつ,意欲や認知機能の低下,脳萎縮,要介護または死の転帰にまで及ぶと報告されている.一方,高齢期難聴に対する介入の有効性検証はいまだ限定的である.現時点では,補聴器使用により認知機能維持や抑うつ予防が可能かどうか結論にいたっていない.<br>年齢がより高齢になると,語音明瞭度は悪くなり補聴効果をすぐに実感するのは困難になる.補聴による聴覚活用は"リハビリテーション"であって,トレーニングによる恩恵が,耳以外にも波及する可能性があることを,難聴者本人や社会に向けて啓発する必要がある.
著者
神山 裕名 西森 秀太 飯田 崇 内田 貴之 下坂 典立 西村 均 久保 英之 小出 恭代 大久保 昌和 成田 紀之 和気 裕之 牧山 康秀 小見山 道
出版者
日本口腔顔面痛学会
雑誌
日本口腔顔面痛学会雑誌 (ISSN:1883308X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.33-39, 2016-12-25 (Released:2017-04-12)
参考文献数
33

目的:本研究は口腔顔面領域の慢性疼痛疾患である顎関節症患者,舌痛症患者,三叉神経痛患者における病悩期間と質問票を基にした主観的な睡眠感との関連を検討した.方法:被験者は日本大学松戸歯学部付属病院口・顔・頭の痛み外来を受診した患者3,584名を対象とした.診断が確定した顎関節症患者1,838名,舌痛症患者396名,三叉神経痛患者108名の質問票における主観的な睡眠感を検討した.病悩期間は症状発現から3か月未満,3か月から6か月,6か月以上をそれぞれ急性期群,中期群,慢性期群に分類した.睡眠に関する自己申告の質問は入眠障害,中途覚醒,早朝覚醒とした.各病悩期間における入眠障害,中途覚醒,早朝覚醒の睡眠スコアをそれぞれ比較した.結果:顎関節症患者における慢性期群の入眠障害,中途覚醒,早朝覚醒の睡眠スコアおよび舌痛症患者における慢性期群の入眠障害,中途覚醒の睡眠スコアは急性期群,中期群と比較して有意に高い値を示した(p<0.05).三叉神経痛患者における各睡眠スコアは急性期群,中期群および慢性期群の間に有意差を認めなかった.結論:顎関節症患者および舌痛症患者における病悩期間の長期化と睡眠感との間に関連性を認めることが示唆された.
著者
松原 絵里子 小杉 裕一郎 加納 公子 松本 有右 下平 秀夫 内田 寛 湯浅 宏 金谷 芳雄
出版者
一般社団法人 日本医療薬学会
雑誌
病院薬学 (ISSN:03899098)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.129-135, 1993-03-20 (Released:2011-08-11)
参考文献数
16

Accuracy of dividing weight of 11 drugs (5 powders, 3 fine glanules and 3 glanules) were tested on a automatic pre-packing machine, TOSHO BL-4W. The mean coefficient of variation (C. V.) was 3.9% for 30 subpacks of 1g in theoretical weight and sufficient accuracy of dividing weight was obtained. However, fine lactose, corn starch, and precipitated calcium carbonate showed relatively large C. V. values. The mean C. V. of 3 drugs (Gastropylore, heavy magnesium oxide and Marzulene S) were 3.0 and 5.5% obtained on 0.3 and 0.6g in theoretical weight, respectively, and these mean C.V. were regarded as sufficient. However, on 0.3g in theoretical weight, Gastropylore gave relatively large C. V., 8.5%. Gastropylore also gave relatively large C. V. on total weight of 30 subpacks. Angles of fall were highly correlated to C. V. values. It is suggested that angles of fall are especially useful for predict accuracy of dividing weight on a pre-packing machine.
著者
山崎 義亀与 松田 保 黒田 満彦 内田 健三 嶋田 千恵子 大谷 逸子 村上 元孝 北川 正信
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.81-87, 1973

A 25-year-old male was admitted because of dark-red urine, jaundice and purpura. 5 days prior to admission, the patient noticed that the urine color became dark red, and purpuric rash and jaundice were noted by his wife.<br>Examination revealed scleral icterus, pallor, numerous petechiae and an ecchymosis. The sensorium was clear. The neurologic examination was normal.<br>The patient had hemolytic anemia, thrombocytopenic purpura, fever and proteinuria. Shortly after admission, fluctuating neurologic symptoms developed, and the patient was diagnosed as thrombotic thrombocytopenic purpura.<br>He was treated with prednisolone and heparin without benefits, and expired on the 14 th hospital day.<br>Hyaline thromboses of the vessels of liver and kidney were demonstrated by the examination of the specimens obtained by post mortem needle puncture.<br>Coagulation studies disclosed that partial thromboplastin time and prothrombin time were slightly prolonged, however, factor V activity and fibrinogen titre were not low. Fibrinogen degradation products determined by tanned red cell hemagglutination inhibition immunoassay were markedly increased, although euglobulin lysis time was not shortened.<br>Immunological analysis of serum proteins showed the increase of acute phase reactants, the decrease of &beta;<sub>1</sub>-AC and haptoglobin, and the appearance of fibrinogen degradation products.<br>These results were discussed in relation to the pathogenesis of the disease.
著者
金本 郁男 金澤 ひかる 内田 万裕 中塚 康雄 山本 幸利 中西 由季子 佐々木 一 金子 明里咲 村田 勇 井上 裕
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.133-140, 2020 (Released:2020-08-19)
参考文献数
24

2種類の低糖質パンを摂取した時の食後血糖推移を食パンおよび全粒粉パンと比較するとともに, セカンドミール効果および糖質の消化性を評価するために試験を行った。健常成人11名 (男性2名, 女性9名) を対象者とした。摂取する熱量を統一した食パン (糖質38.6 g) , 全粒粉パン (糖質36 g) , マイルド低糖質パン (糖質8.5 g, 高たんぱく) , スーパー低糖質パン (糖質3.4 g, 高たんぱく高脂質) のいずれかを朝食に摂取し, 昼食にカレーライスを摂取する4通りの試験を行い, 食後血糖を経時的に測定した。糖質の消化性はGlucose Releasing Rate法で測定した。その結果, マイルド低糖質パン, およびスーパー低糖質パン摂取後の血糖値は低値を示したが, セカンドミール効果は認められなかった。本研究で用いた2種類の低糖質パンのうち, 消化性, 食後血糖, 満腹度の観点からマイルド低糖質パンの方が優れていると考えられた。
著者
入江 彰昭 原田 佐貴 内田 均 竹内 将俊 Teruaki Irie Saki Harada Hitoshi Uchida Masatoshi Takeuchi
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.9-18, 2020-06-29

本研究は,宮城県・岩手県において数百年以上の間,持続的なマネジメントによって維持されてきた屋敷林「居久根(いぐね)」の多面的機能性,特に居久根の植栽構成の工夫と生活文化的価値,防風効果の価値,および鳥類の生息環境としての価値を明らかにした。1)居久根の竹類を除いた樹木構成は針葉樹7割,常緑広葉樹2割,落葉広葉樹1割であった。居久根の北西側に枝葉の細かいスギやアスナロなど常緑針葉樹を多数植栽することで防風効果を高めると同時にこれらの樹種は建築材として活用され,スギ下に植えられたタケ類は防風用として,かつ農業・漁業の道具として活用されていた。潮風に強いヤブツバキやマサキ,湿地帯に適応したハンノキを植栽する工夫がみられた。2)居久根の内外の気象データの解析から,居久根は冬季の季節風を7-9割減速させ,居久根内の母屋に安定した居住環境をもたらしていることを明らかにした。さらに3次元GISとCFD(Computational Fluid Dynamics)による風況解析シミュレーションによって居久根の防風効果と風の流れを可視化することで,減速域が風下側に約100 m以上の距離にまで広がっていることがわかった。3)冬季鳥類の生息環境としての居久根の機能を明らかにするため,水田域内の農地,居久根が含まれる水田域内の農地,丘陵樹林地の異なる3つの環境を対象に調査した。その結果,居久根が含まれる農地で31種が確認され,地点当たりの確認種数は水田域内の農地よりも多く,居久根は樹林内や林縁を好む種の生息場所として機能していた。今日の大災害時代の我が国においてグリーンインフラとしての多面的機能性を有する居久根は,気候変動の緩和と適応や災害に対するレジリエンスをはじめ,屋敷林文化の価値,野生動物の生息場所の提供,故郷の風景の再生や愛郷心に大いに貢献できると考えられる。Homestead trees and hedges, known as "Igune", have been a feature of the traditional rural landscape in the Miyagi and Iwate prefectures for at least 400 years. We evaluated the green infrastructure value of the multiple benefits provided by Igune. In particular, we concentrated on the cultural and lifestyle values, windbreak effects, and habitat for forest and forest-edge living birds. Our findings show that 1) conifer trees account for about 70% of Igune trees, evergreen broadleaved trees for about 20% and deciduous broadleaved trees for about 10% of all Igune tree types, excluding bamboos. Fine foliaged conifer trees such as Cryptomeria japonica were found to be planted on the northwest side of the Igune to enhance windbreak effects and for use in building materials. Bamboos were also planted to serve as windbreaks under the Cryptomeria japonica and are used for making agricultural and fishery implements. Camellia japonica and Euonymus japonicus are particularly robust against onshore winds, and the wetland-adapted Alnus japonica is a common Igune tree in wetter areas and is planted to improve poor soils. We found that farmers' wisdom and techniques combine to make the most of species characteristics whilst helping preserve and reinforce traditional lifestyles and cultural values. 2) Igune homestead trees, shrubs and hedgerows provide effective windbreaks : winter wind speeds were found to be reduced by 70-90%, creating a stable and habitable residential area within the bounds of the Igune. Wind dynamics were simulated by three-dimensional GIS and CFD analysis. We found that the reduced wind speed area extended more than 100 m on the leeward side of the Igune. 3) We compared bird species richness, individual abundance and species diversity index among three landscape habitats including open paddy fields, paddy fields where Igune trees and shrubs were present, and forest. These habitat types differed significantly with respect to bird species richness and diversity index. Forest and paddy fields having Igune both had higher species richness than the open paddy fields, but no significant differences in mean bird abundance were found between the habitats. These results suggets that Igune provide habitat for some forest-living birds. The green infrastructure of Igune homestead trees can clearly contribute to climate change mitigation and adaptation, and delivers simultaneous cultural, traditional, and biodiversity co-benefits, which together can support the regeneration of regional landscape identities.
著者
五十嵐 響 内田 君子 奥田 隆史
雑誌
第81回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, no.1, pp.503-504, 2019-02-28

クラスの雰囲気は,クラスが編成され活動が続けられるうちに,構成員である児童・生徒の相互作用により,自然に生み出されていく風土のことである.クラスの雰囲気を良くすれば,いじめ・校内暴力・不登校など学校での問題が解決できることが知られている.クラスの雰囲気は,クラスに外部から適切なアクションを加えると良くなるが,どのようなアクションが有効であるかは明らかにされていない.本研究では,まず外部からのアクションとしてムードチェンジャー(特殊エージェント)をクラスに加入させることを提案する.次にクラスの雰囲気を良くする特殊エージェントの行動特性をマルチエージェントシミュレーションにより明らかにする.
著者
仲谷 美沙子 田島 浩子 川西 智子 高橋 慎治 内田 季之 鈴木 一有 古田 直美 伊東 宏晃 徳永 直樹 金山 尚裕
出版者
静岡産科婦人科学会
雑誌
静岡産科婦人科学会雑誌 (ISSN:21871914)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.50-57, 2014

胎児と胞状奇胎が認められる病態には、胎児が存在する部分胞状奇胎の場合と、正常胎児・全奇胎の双胎の場合がある。今回、我々は胎児が共存する部分胞状奇胎と診断された3例を経験した。3症例とも妊娠初期に稽留流産となり、子宮内容除去術が施行された。そのうち2症例では、施術前に胎盤の超音波断層法像に異常を指摘されておらず、子宮内容除去術後に診断された。胞状奇胎の超音波像は多彩であり、必ずしも典型的な嚢胞状所見を示さないこともある。胎芽(児)を超音波で描出する稽留流産の場合、稀ではあるが胎児共存奇胎の可能性を念頭に置き、慎重に超音波検査を行い、胎盤・絨毛組織の病理検査を怠らないことが重要であると考えられた。
著者
齋藤 晃 長谷川 裕也 内田 正哉
出版者
公益社団法人 日本顕微鏡学会
雑誌
顕微鏡 (ISSN:13490958)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.39-46, 2013-04-30 (Released:2019-09-10)
参考文献数
31

本稿では,らせん状の波面をもつ電子波の物理的基礎を概説し,最近われわれが行った電子らせん波の生成,伝播および干渉についての結果を紹介する.透過電子顕微鏡の照射レンズ系にFIB加工したフォーク型回折格子およびスパイラルゾーンプレートを導入し,試料上でのビーム径がナノメーターオーダーの電子らせん波を生成した.特にスパイラルゾーンプレートをもちいた実験では,±90ћという大きな軌道角運動量をもつ電子らせん波が生成できた.また,回折格子等を通過した電子がらせん波を形成するまでの伝播過程を観察し,その強度分布がフレネル伝播理論にもとづくシミュレーションときわめて良い一致を示すことを明らかにした.さらに2つの電子らせん波をもちいた干渉実験を行い,互いの軌道角運動量によらずそれらが干渉することを見出した.この結果から,軌道角運動量はスピンと異なり,位置や運動量と同時計測不可能な物理量であることが確認できた.
著者
杉原 英雄 谷口 暢子 上原 伸基 臼井 勝久 内田 博之
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会研究発表会講演集
巻号頁・発行日
vol.27, 2016

<br>防府市クリーンセンターは、一般廃棄物を焼却処理するごみ焼却施設にメタン発酵処理するバイオガス化施設を併設した「ごみ焼却・バイオガス化複合施設」である。混合収集されたごみを機械選別し、隣接施設から受入れた下水、し尿汚泥と混合してメタン発酵を行い、得られたバイオガスを用いて高効率なごみ焼却発電を実現している。<br>2014年4月から商用運転を開始し、これまで安定的な処理を継続しているが、日常運転の中では複合施設特有の問題が発生することがあるため、都度対策を講じ解消することで、より効率的な運用を図っている。本稿では、バイオガス化施設から排出される発酵残渣の焼却処理に関する改善事例について報告する。
著者
岡村 正嗣 森 一樹 志水 泰夫 内田 真樹 吉本 和徳 相良 亜木子 里 輝幸 中村 健
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.745-748, 2017 (Released:2017-10-23)
参考文献数
9

〔はじめに〕理学療法士が京都府DMAT(災害派遣医療チーム)に業務調整員の役割で参加した.DMATにおける理学療法士の支援活動の可能性について報告する.〔経過〕2015年に理学療法士が京都府DMAT養成研修会に参加し,隊員として登録された.同年,当院において大規模災害対応訓練を実施した.研修や訓練では,傷病者の情報を業務調整員がDMAT・災害対策本部・消防に伝達し,治療や医療搬送等が行われる場面を多く経験した.医学的知識を有した理学療法士が業務調整員を行うことにより,多職種間でのさらなる深い連携が可能であった.〔考察〕理学療法士は,重症患者の診療に関わる機会を有し,災害時に速やかに適切な対応を実施する能力があり,DMATに参画することが可能であると考えられた.