著者
大岡 伸通 内藤 幹彦
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.41-45, 2020 (Released:2020-01-01)
参考文献数
20
被引用文献数
1

近年、細胞内の狙ったタンパク質を特異的に分解する化合物を創製する技術が開発され、新しい低分子薬の創薬モダリティとして製薬業界やアカデミアを中心に大きな注目を集めている。本稿では、これらの化合物の総称として定着しつつあるPROTAC(Proteolysis-targeting Chimera)の開発経緯、医薬品開発企業の動向、従来の低分子薬とは異なる特徴や将来の展望などについて概説する。
著者
倉沢 愛子 内藤 耕
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

経済大国化しつつあるインドネシアにおけるテレビ放送について「公共性」と「商業主義」という観点から多角的に分析した。具体的には公共放送が定義づけられた2002年放送法制定をめぐる調査と研究、民放における公共性の確保をめぐる調査、公共広告放送やニュースの分析、地方局の現状に関する調査をおこなった。公共性がうたわれつつも、テレビ放送が商業的利益の追求や政治的動員のために利用される現状が明らかにされた。
著者
内藤 直子
出版者
大阪歴史博物館
雑誌
大阪歴史博物館研究紀要 (ISSN:13478443)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.0051-0062, 2012 (Released:2022-06-19)

天明元年(一七八一)に大坂で出版された『装剣奇賞』は初の本格的な細密工芸の作家名鑑として、刀装具や根付研究に今なお大きな影響を与えているが、その意義や筆者稲葉通龍については、昭和十六年の後藤捷一『稲葉通龍とその著書』以降、大きな進展がなかった。本稿は、大阪府立中之島図書館本(開板出願用の手稿本)、住吉大社本(奉納された初版本)、大阪歴博本(普及本)の三種の本をもとに、本書の成立について時系列的に考察を行った。その過程で、混沌詩社や木村蒹葭堂との接点、さらには安永四年(一七七五)刊行の『浪華郷友録』との類縁性に注目し、本書は大坂の文化ネットワークに組み込まれ得るとの視点を呈示した。一方、七巻に掲載されている根付師については同時代の大坂の出版物との異同表を作成し、当時の生業としての根付師の置かれた立場について、未だ余技的な要素が残るもののひとつのカテゴリーとして自立しつつあった状態ではないかとの推論を述べた。
著者
友竹 偉則 後藤 崇晴 石田 雄一 内藤 禎人 荒井 安希 清野 方子 渡邉 恵 市川 哲雄
出版者
公益社団法人 日本口腔インプラント学会
雑誌
日本口腔インプラント学会誌 (ISSN:09146695)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.309-319, 2018-12-31 (Released:2019-02-20)
参考文献数
23

顆粒が配合された歯磨剤では,その顆粒がインプラント周囲溝に侵入,残留することで,インプラント周囲組織の炎症を惹起する可能性が懸念される.そこでメインテナンス受診者において,歯磨剤の使用状況とインプラント周囲組織の状態を調査し,顆粒配合歯磨剤を使用した歯磨き試験を行い,インプラント周囲組織の炎症と顆粒の侵入に関して検討した.メインテナンス受診の55名,臼歯部に装着したスクリュー固定式の上部構造78装置を支持するインプラント145本を対象とした.上部構造周囲の歯垢付着とインプラント周囲粘膜の炎症の有無を評価した.顆粒配合歯磨剤の使用者では顆粒の残留を観察した.インプラント周囲粘膜の形態を計測した後,上部構造を再装着して顆粒配合歯磨剤を使用した歯磨き試験を行い,顆粒侵入の有無を確認した.観察調査と歯磨き試験から,周囲組織の炎症の有無とインプラント周囲粘膜の形態における顆粒の侵入の有無との関連について分析した.日常での顆粒配合歯磨剤の使用は19名で,6名14本のインプラントに顆粒が残留していたが,炎症の有無とは相関を認めなかった.顆粒配合歯磨剤を使用した歯磨き試験では55名中13名22本のインプラントで顆粒が侵入しており,炎症の有無と相関を認めなかった.本研究の結果から,歯磨剤に配合された顆粒がインプラント周囲溝に侵入して残留することと周囲粘膜の炎症との関連は少ないことが推察された.
著者
石田 肇 下田 靖 米田 穣 内藤 裕一 長岡 朋人
出版者
北海道大学総合博物館
雑誌
北海道大学総合博物館研究報告 (ISSN:1348169X)
巻号頁・発行日
no.6, pp.109-115, 2013-03

The Okhotsk culture spread from southern Sakhalin Island to northeastern Hokkaido Island and the Kurile Islands from the 5th to the 12th centuries AD. The Okhotsk culture developed a considerable maritime infrastructure which was different from that of the native population in Hokkaido. The demographic structure of prehistoric hunter-gatherers contributes to our understanding of life history patterns of past human populations. Age-at-death distribution was estimated using the Buckberry-Chamberlain system of auricular surface aging and the Bayesian approach to discuss whether paleodemographic estimates can yield an appropriate mortality profile of the prehistoric hunter-gatherers in Japan. The age distributions of the Okhotsk revealed low proportions of young adults and high proportions of elderly adults. The results indicated 24.4-51.3% for the proportion of individuals above the age of 55 years. The newly-employed technique of the Bayesian estimation yielded age distributions with significant numbers of elderly individuals, which are contrary to usual paleodemographic estimates. Apical periodontitis, accompanied by considerable wear, was frequently seen in the upper first molars of the Okhotsk people. The bone cavities around the root of the upper first molars were probably caused by chronic apical periodontitis and radicular cyst. The bone cavity was clearly surrounded by sclerotic bone tissue diagnosed as condensing osteitis. Excessive amounts of secondary cementum were deposited on the root surface as a result of radicular granuloma. Pulp exposure through extreme wear very likely resulted in bacterial infection of dental pulp and periapical tissue. Degenerative changes in people of the Okhotsk culture were investigated using adult human skeletons and reconstructing their lifestyle. Findings were compared with materials obtained from skeletons from the medieval Kamakura period and skeletons of early-modern peasants on the Ryukyu Islands, Japan. Severe osteophytes on the lumbar vertebrae were more frequently seen in the Okhotsk males. Degenerative changes of the articular process were also most frequently seen in the lumbar vertebrae of the Okhotsk skeletons. This is a significant contrasted from the high frequency of degenerative changes in the cervical apophyseal joint among Ryukyu peasants. The high prevalence of elbow and knee joint changes in the Okhotsk skeletons was a strong contrast to the high frequency of hip joint changes seen in materials from Kamakura and changes in shoulder and hip joints common in materials from Ryukyu. Because the Okhotsk culture developed a considerable maritime infrastructure, the lifestyle required for sea-mammal hunting and fishing seems to have particularly affected the incidences of severe degenerative changes in the lumbar vertebrae, elbow, and knee. Isotopic signatures in bulk collagen and some amino acids inform of significant differences in the subsistence of each group. Reconstructed diets are taken into consideration to correct the marine reservoir effects on radiocarbon dates for human remains.
著者
内藤 裕子 Yuko Naito
出版者
関西外国語大学・関西外国語大学短期大学部
雑誌
研究論集 = Journal of inquiry and research (ISSN:03881067)
巻号頁・発行日
no.110, pp.193-202, 2019-09

第十二代景行天皇の時代にまとめられた五七の長歌で書かれたヲシテ文献である「ホツマツタヱ」と「ミカサフミ」の第一章に、アワウタが出てくる。アワウタは五七・四行の四十八文字でできた歌で、「アカハナマ」で始まり、それを並べると四十八音図ができる。カミヨ六代の時代に、国が乱れて言葉も通じにくくなった。七代目を継いだイサナギとイサナミは、タミの言葉を整えてクニを立て直すために、上の二十四声をイサナギが、下の二十四声をイサナミが、楽器に合わせて歌い、農業や機織りも指導しながら全国を巡ったという。このアワウタで大人も子供も言葉を整えたというだけあって、音声学的にも驚くべき工夫があった。共通語として、日本語の拍の感覚を習得すると同時に、それぞれの母音と子音の発音の仕方を身に付けるのに最適な形になっているなどの知恵がつまっている。そして、縄文哲学における重要な概念をも示している。
著者
田中 耕一 吉野 健一 内藤 康秀 豊田 岐聡
出版者
一般社団法人 日本質量分析学会
雑誌
Journal of the Mass Spectrometry Society of Japan (ISSN:13408097)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.49-54, 2008-04-01 (Released:2008-04-15)
被引用文献数
2 2

Linear mode, reflectron mode, and multi-turn are techniques for m/z analysis in time-of-flight mass spectrometry. Reflectron mode and multi-turn enable analysis to be performed with a higher mass resolving power than that attained with linear mode. In this commentary, starting from the basic principles of time-of-flight mass spectrometry in linear mode, the possible improvements in mass resolving power that can be made by reflectron mode and multi-turn techniques will be explained.
著者
内藤 哲雄
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.129-140, 1994-11-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
12
被引用文献数
2

本研究では, 内藤 (1993a) によって開発されたPAC分析の技法を利用することで, 性の欲求や衝動の解発刺激, 欲求の生起にともなう生理的・身体的反応, 心理的反応, 異性や同性への対人行動に関する全体的・統合的な態度 (イメージ) 構造を, 個人別に分析することを試みた。被験者は, 実験者とは初対面の女性で, 専門職職業人1名, 大学生3名であった。また, いずれも未婚で, 交際中の異性と性行為の経験をもっていた。被験者Aの事例では, 恋人への依存欲求と自立への欲求間の葛藤が, 恋愛感情と身体的な性の衝動や反応を分離させるシンデレラ・コンプレックスを示唆する構造が析出された。また, 構造解釈を通じて被験者自身が気づくという現象が見いだされた。被験者Bの事例では, 強い正の報酬価をもつ性行為と性欲求の解発刺激として焦点化した恋人を独占的に占有しようとする欲求とが, 相互に循環的に補強し合う機制が成立していると考えられた。被験者Cの事例は, 性欲求へのマイナスイメージが父親やマスコミからの隠されたメッセージとして伝達され内面化され, 愛する父親や恋人への両価感情を生じ, さらには恋人の要求に流されて性行為を行う自己自身へのマイナス感情を生じているとみなせるものであった。最後の被験者Dの場合には, 友愛が恋愛へと変わり, 破局の危機を修復する手段として性行為が生じる。しかし関係が回復されると, 結婚と性行為に関する信念により再び前段階に押し戻してしまう。強固な規範意識によって進展段階を後戻りしながらも, 恋愛関係が壊れない事例として注目されるものであった。以上の成果を踏まえて, 性の欲求や行動を個人別に構造分析することの意義を検討するとともに, こうした目的にPAC分析を活用できることが明らかにされた。最後に今後の課題として, 男性についても検討するとともに, 恋愛行動の進展段階と対応させたり, 性障害の診断や治療効果測定などへの応用可能性を探っていくことがあげられた。
著者
内藤 隆夫
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.95-106, 2013-02-21

本稿では明治期の佐渡鉱山が製錬部門において導入した, 混汞製錬・搗鉱製錬・沈澱製錬・青化製錬という, 金銀の製錬を主とする4つの新技術を取り上げた。そして, 「貧鉱の大量処理」「コスト意識」「装置工業化」という視点をもとに, 上記の4つの技術の内容, 導入と展開の過程, 意義と限界について考察した。以上を通じて明治期佐渡鉱山の製錬部門における技術導入の特質を解明し, それとともに, 明治後半期が近代佐渡鉱山史において非常に重要な時期だったのではないかという仮説を導き出した。
著者
内藤 淳
出版者
愛知教育大学数学教室
雑誌
イプシロン (ISSN:0289145X)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.15-18, 1988-03
著者
羽岡 健史 森下 由香 内藤 祐貴 大西 新介 奈良 理 高橋 功
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.10, pp.785-791, 2014-10-15 (Released:2015-03-12)
参考文献数
13
被引用文献数
1

肥満細胞の活性化により惹起される種々のアレルギー症状と急性冠症候群(acute coronary syndrome: ACS)の同時発症はKounis症候群と呼ばれている。我々はガベキサートメシル酸塩gabexate mesilate: GM)の投与後にアナフィラキシーと冠攣縮性狭心症を呈した症例を経験したので報告する。症例はアルコール性慢性膵炎と糖尿病の既往のある72歳の女性。心窩部痛を主訴に当院に救急搬送され,慢性膵炎急性増悪と診断された。単純CT撮影後にウリナスタチン50,000単位を投与。次にGM 100mgの投与を開始してから8分後,気分不快,呼吸苦,顔面紅潮,喘鳴が出現した。まもなく意識レベルがJapan coma scale(JCS)100に低下し,ショックを呈したため,アナフィラキシーショックと考え,アドレナリン0.1mgを2回静脈注射した。またアドレナリン投与前から心電図モニター上,ST上昇が見られ,12誘導心電図ではII,III,aVFでST上昇,I,aVL,V1~V4でST低下,心臓超音波検査で左心室下壁の壁運動不良の所見が認められたため,ニトログリセリン(スプレー)を舌下投与した。気管挿管,ヒドロコルチゾンコハク酸エステルナトリウム100mg,クロルフェニラミンマレイン酸塩5mg,ファモチジン10mg投与後に冠動脈造影を実施したところ,冠動脈に有意な狭窄を認めず,冠攣縮性狭心症と診断された。同日,心電図変化は改善し,アナフィラキシー症状も消失し,翌日には抜管した。狭心症の再発はなく,慢性膵炎急性増悪に対する治療のみを行ってから第17病日に自宅退院となった。Kounis症候群はアレルギー反応等の過敏性反応に伴って肥満細胞から放出される炎症メディエータの作用でACSが引き起こされることで生じる病態で,アレルギー反応に対する治療とACSに対する治療を並行して行うことが推奨されている。重篤なアレルギー症状を呈する症例では,ACSの併発も念頭において治療・観察をする必要がある。
著者
内藤 泰
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.264-271, 2001-07-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
38
被引用文献数
2 1

聴皮質の一次聴覚野と聴覚連合野には細胞構築だけでなく, 発達期における髄鞘化においても明らかな差がある.ポジトロン断層法 (PET) で人工内耳を介した語音聴取中の言語習得前失聴者の脳賦活を観察すると, 一次聴覚野はある程度活動するが聴覚連合野の賦活は乏しく, 一次聴覚野の機能は先天的に規定される要素が強く, 聴覚連合野の発達は後天的な言語音聴取に強く依存していることが示唆された.また, 言語習得前失聴の小児でも人工内耳を使い続けることで聴覚連合野に語音認知の神経回路が発達し得るが, その発達は視覚言語の発達と競合する可能性がある.一方, 臨界期をすぎると語音認知の神経回路は長期間, 強固に保持されるが, 加えて, 人工内耳で符号化された語音の認知に際しては, 側頭葉の聴覚連合野だけでなく, ブローカ野や補足運動野の活動も亢進することが明らかになった.
著者
内藤 大河 山川 武 遠藤 広光
出版者
一般社団法人 日本魚類学会
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.139-143, 2017-11-25 (Released:2018-06-19)
参考文献数
12

A single specimen [226 mm in standard length (SL)] of a haemulid fish collected from Iriomote-jima Island, Okinawa Prefecture, Japan, in 2012, was identified as Diagramma melanacrum Johnson and Randall, 2001, characterized by the following combination of characters: third dorsal-fin spine longest; first dorsal-fin spine length 45 % of second dorsal-fin spine length; pelvic-fin length 23.9 % SL; 57 lateral-line scales; and dorsal 3/4 of caudal fin yellow with many dark spots, and pelvic, anal and remainder of caudal fin black when fresh. The species has been recorded previously from the Philippines, Malaysia, Indonesia (Kalimantan and Bali to West Papua), the Timor Sea and Japan (Miyako-jima and Ishigaki-jima Islands, Okinawa). However, because both Japanese records were based on photographs, the Iriomote-jima Island specimen represents the first reliable, specimen-based record of D. melanacrum from Japan, an extension of its known northernmost range. The new standard Japanese name “Hireguro-korodai” is proposed for the species.
著者
清水 盛生 内藤 均 佐原 宏典 Shimizu Morio Naito Hitoshi Sahara Hironori
出版者
航空宇宙技術研究所
雑誌
航空宇宙技術研究所資料 = Technical Memorandum of National Aerospace Laboratory (ISSN:1347460X)
巻号頁・発行日
vol.769, 2003-03

本資料では、当所において1985年頃から実施された太陽熱スラスタの試作研究について述べる。当初はステンレス鋼を材料とした習作スラスタであり、加熱・噴射試験結果も平凡で、比推力500〜600秒級であった。次段階では物質・材料研究機構が日本および米国の特許を有する単結晶モリブデン材を採用して、超小型(外径約6mm)から大型(外径65mm)までの各種サイズのスラスタの試作・太陽集光加熱・推進剤噴射試験を実施した。この材料では推進剤温度2,300K、比推力800秒が期待できる。これが本資料の主要部である。さらに究極の材料として単結晶タングステンを採用して、比推力1,000秒級に対応可能なスラスタを試作して予備実験を実施した。このスラスタはアポジおよびペリジでの噴射が可能な対向型で、この型の試作・実験結果の発表は世界初と思われる。