著者
向田 茂 蒲池 みゆき 尾田 政臣 加藤 隆 吉川 左紀子 赤松 茂 千原 國宏
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.85, no.10, pp.1126-1137, 2002-10-01
参考文献数
12
被引用文献数
34

近年,顔の認知に関する心理学的研究が盛んに行われている.心理実験を行うには実験デザインに応じた実験刺激の作成が必要となるが,これまで実験刺激の生成を目的とした統合的な顔画像合成システムは見当たらなかった.我々は,先行研究で用いられてきた合成顔を容易に作成できるとともに,今後検討されるであろう様々な実験刺激の作成にも柔軟に対応できるよう,心理学研究からの要求を考察し,実験デザインの段階から実験刺激の作成までの一連の作業をサポートする顔画像合成システムの開発を行った.特に,一連の作業の中で,操作者への負担が大きくなる,特徴点の取得作業の負荷を軽減できるよう,採用した操作者補助の機能の有効性を実験により確認した
著者
加藤 正美 中村 耕太郎 田坂 修二
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-I, 通信I-情報通信システム・理論 (ISSN:09151877)
巻号頁・発行日
vol.81, no.11, pp.709-719, 1998-11-25
被引用文献数
7

本論文では, 蓄積されたビデオと音声をインターネットプロトコルを適用してPHSで伝送する場合を考える.PHSによるデータ通信では, データリンクレベルのプロトコルとしてPIAFSが適用され, インターネットアクセス時には, トランスポートプロトコルとしてTCPやUDPを利用できる.このような環境下で複数の連続メディアを伝送すると, 再送による遅延の発生がメディア同期を乱す.しかし, PHSによるインターネットアクセスに関するこれまでの研究では, メディア同期性能の定量的な評価はなされていない.そこで, 筆者らは, モバイル端末とダイアルアップルータ間にPIAFSを, モバイル端末とインターネット上のメディアサーバ間にUDPを適用し, モバイル端末において, 受信したビデオと音声を同期・出力する実験システムを構築した.特に, メディア同期制御方式として, 筆者らの既提案のスライド制御方式を一部拡張して実装し, メディア同期性能の評価実験を行った.同期の平均2乗誤差等のシステム性能の測定結果により, その有効性を示す.
著者
芦田 久 加藤 紀彦 川原 彰人 田中 祐樹 梅川 碧里 山本 憲二
出版者
日本応用糖質科学会
雑誌
Journal of Applied Glycoscience (ISSN:13447882)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.137-143, 2009 (Released:2009-10-15)
参考文献数
48
被引用文献数
1 1

エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ(ENGase)は,糖タンパク質のアスパラギン残基に結合したN-グリカンのコア部分に存在するN,N´-ジアセチルキトビオース構造に作用し,糖鎖を遊離させるエンドグリコシダーゼである.われわれは土壌より単離した糸状菌Mucor hiemalisより高い糖鎖転移活性を有するENGaseであるEndo-Mを見出し,種々の糖鎖化合物の酵素合成に応用してきた.Endo-M遺伝子のホモログが線虫Caenorhabditis elegansのゲノム中に見出されたため,われわれは真核多細胞生物における本酵素の機能を明らかにする目的で線虫eng-1遺伝子の解析に着手した.リコンビナントENG-1を大腸菌で発現させ諸性質を調べたところ,高マンノース型糖鎖によく作用し,Endo-Mと同様に糖鎖転移活性を有することが明らかになった.またENG-1はN末端にシグナル配列を持たず,細胞質に局在することが示唆された.主に哺乳動物細胞を用いた他グループの研究から,細胞質にはN-グリカン由来の遊離糖鎖(free oligosaccharide; FOS)が存在し,ENGaseはFOSの代謝に関わっていることがFOSの構造解析結果から推測されてきた.そこでこれを直接的に証明するために,野生株とeng-1変異株の線虫のFOSをピリジルアミノ化してHPLC等で分析した.予想どおり,野生株では還元末端にGlcNAcを1残基有するFOS-GN1が主成分であったが,eng-1変異株ではFOS-GN2が蓄積していた.FOSは主にミスフォールドした糖タンパク質が小胞体関連分解される過程で生成すると考えられている.ミスフォールド糖タンパク質は小胞体内腔から細胞質へ逆輸送され,そこでペプチド:N-グリカナーゼ(PNGase)により糖鎖が切り出される.線虫のPNGase(PNG-1)は哺乳動物や出芽酵母由来の酵素とは異なり,PNGase活性を担うトランスグルタミナーゼドメイン以外にチオレドキシンドメインを有していた.大腸菌で発現させたリコンビナントPNG-1はPNGase活性以外にタンパク質ジスルフィドレダクターゼ活性を示したことから,線虫PNG-1はユニークな多機能酵素であることが明らかになった.野生型線虫のFOSを詳細に調べたところ,主要な分子種はMan5GlcNAc1であったが,哺乳動物細胞で報告されているM5B´異性体とは異なり,M5A´異性体であった.哺乳動物においては細胞質α-マンノシダーゼがM5B´を生成すると考えられているが,線虫には細胞質α-マンノシダーゼのホモログは見出されなかった.線虫特異的なM5A´の生成に関わるマンノシダーゼを特定するためにRNAi法を用いて種々のマンノシダーゼをノックダウンした線虫のFOSを解析した結果,ゴルジ内腔のα-マンノシダーゼIや,小胞体内腔のα-マンノシダーゼ様タンパク質EDEMが,線虫特異的M5A´の生成に関与していることが示唆された.
著者
和田 俊和 中村 恭之 加藤 丈和
出版者
和歌山大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

本研究では,単一静止画像からの高解像度画像生成法Hallucinationを高精度化する方法について検討を行なった.昨年度はHallucinationによって生じるブロックノイズの除去方式および最近傍探索アルゴリズムの高速化について検討したが,今年度は最近傍探索アルゴリズムの高速化と全く別方式のHallucinationアルゴリズムの開発を行った.前者に関しては,昨年度提案したPrincipal Component Hashing(PCH)を改良し,Adaptive PCH(APCH)を提案した.これは,PCHでは画像データの分布が正規分布に従うものと仮定していたが,一般の分布では,必ずしも効率の良い探索が行えなかった.これを一般分布に対しても効率が良くなるように,累積ヒストグラムとそれを参照した2分探索木を用いたHash関数を導入した.これにより,任意のデータ分布に対してLSHや従来のPCHよりも効率の良い最近傍探索が行えることを示した.後者については,大量の画像集合から構成した部分空聞を利用して,入力画像の一部から残りの部分を推定する写像計算法について検討を行い,通常の部分空間を用いた写像では入力画像の面積が小さくなると多重共線形性の問題が発生することを明らかにした.さらに,その問題を回避するためにマハラノビス距離を最小化する出力を推定するMaximum Mahalanobis-distance Mapping(M3)を提案し,多重共線形性の問題を回避することができることを示した.さらに,これを画素間引きした画像に適用し,低解像度顔画像から高解像度顔画像が生成できることを示した.
著者
加藤常員 小沢 一雅
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.37, no.11, pp.1950-1959, 1996-11-15
被引用文献数
3

分類操作は 大きく階層的分類と非階層的分類に分けられ それぞれに多くの手法(クラスタリング手法)が提案されている. 本論文では 多値の遺伝子表現を採用した遺伝的アルゴリズムに基づく非階層的クラスタリング手法を提案する. 一般にクラスタリング手法は クラスタの評価基準および分類の具体的な手順を定めるものである. 非階層的クラスタリング手法では データを k 個のクラスタに分割する際 分割数 k は与えられるか 手法の一部として決定される. 非階層的クラスタリング手法の主たる戦略として まず仮のクラスタ分割を与え 評価基準がよりましな分割に逐次改良していく方法(分割最適化法)がある. この方法では 初期の分割あるいはクラスタの核といった初期条件が最終の分割結果に根本的な影響を及ぼし ときとして局所最適解(分割)に陥る場合も多い. 一方 遺伝的アルゴリズムは 局所最適解を回避することができる多点探索の特長を持っている. 本研究は 遺伝的アルゴリズムの多点探索能力をいかし ロバストな非階層的クラスタリングの実現をめざすものである. 提案する手法は 優性遺伝をモデルとした新たな遺伝的アルゴリズムによって構成されている. 本手法の特性を確認するため 分割最適化法の代表的な手法である k-means 法に基づく比較実験を行った. 実験では 2変量データ(点配置パターン)を用い 評価基準は平方和分解の原理に基づくクラスタ内平方和の総和を採用した. 実験結果として 在来の手法では数%しか最適な分割を得ることができない対象に対して 本稿で提案する手法によれば 80%に近い割合で最適な分割が得られることを確認した.This paper treats a clustering procedure by using the genetic algorithm. As is well-known, existing clustering procedures are classified into two types; i.e., hierarchical and non-hierarchical types. In this paper, a non-hierarchical clustering procedure based on the genetic algorithm has been presented. We call it GA procedure. Our GA procedure can be characterized by its strong power of the multi-point search. From this, the probability to obtain the optimum solution can be made higher than existing procedures. In our experiment, the GA procedure and a typical existing procedure for the so-called k-means method have been compared in terms of probability to obtain the optimum solution and other related aspects. For three kinds of experimental point patterns, the GA procedure had shown its robustness in searching the optimum solution.
著者
坂東 宏和 福島 貴弘 加藤 直樹 中川 正樹
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.1996-2005, 2002-06-15
被引用文献数
2

本論文は,表示一体型タブレット上での文字記入枠を用いない枠なし手書き認識方式における誤認識の訂正インタフェース,および,認識結果の表示インタフェースを提案する.枠なしの手書き認識方式は,筆記者に自然で円滑な手書き入力を提供する反面,文字の誤認識は枠あり認識より起こりやすく,文字間の区切り判定でも誤りが発生する危険がある.そこで本論文では,各文字の誤認識訂正方法,文字区切り位置の訂正方法,および,認識結果の表示方法を複数提案し,それらの比較実験について報告する.実験の結果,各文字の誤認識訂正は訂正候補を手書き文字の上にメニュー表示し選択させる方法が適切であること,文字の分割操作は区切りジェスチャ,文字の結合操作は文字が小さく書かれている場合には囲みジェスチャ,文字が大きい場合には接続ジェスチャが適切であることが示された.また,認識結果の表示は,文字が小さいなどの理由により読みにくくなる場合には離れた場所にまとめて表示する方法が,結果と手書き文字が読みにくくならなければ手書き文字の上に認識結果を重ねる方法が適切であることが示された.This paper presents user interfaces for writing-box-free handwriting input on a display-integrated tablet.The writing-box-free handwriting recognition is natural and smooth to input text, but character recognition errors may happen more frequently than the writing-boxed recognition and character segmentation errors may also occur. Therefore, this paper proposes various user interfaces for correcting character recognition and segmentation errors as well as those for displaying recognition results, and then compares them. In consequence of comparative experiments, the followings are suggested: for changing character recognition results, showing recognition candidates above each handwritten character pattern and accepting selection is efficient; for correcting mis-divided character segmentation into one, cutting pen-gesture is superior; for correcting mis-combined character patterns into two or more, encircling pen-gesture is preferred when small characters are written densely, while connecting pen-gesture is effective when large characters are written sparsely; for displaying character recognition results, showing resulting text apart from handwritten patterns is preferred when characters are written small and densely, while overlaying the recognition result on top of each handwritten pattern is preferred when characters are written large and sparsely.
著者
小関 聡美 藤井 陽介 加藤 登 安永 廣作 北上 誠一 新井 健一
出版者
東海大学
雑誌
東海大学紀要. 海洋学部 (ISSN:13487620)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.21-29, 2006-11-30
被引用文献数
2

スケトウダラとパシフィック・ホワィティングの混合肉糊に3% 牛血漿粉末を添加し, 30℃ または50℃ で数時間予備加熱し, さらに90℃ で20 分加熱した. 30℃ で加熱すると, 続く90℃ の加熱によって肉糊は強い坐りゲルを形成するようになり, 二段加熱ゲルの破断強度とゲル剛性は高値に達する. 混合肉中のスケトウダラの割合を増やすと, 破断強度の最大値は比例的に増加するが, ゲル剛性はあまり増加しなかった. 一方, 50℃ で加熱すると肉糊は坐りゲルを形成せず, 全ての二段加熱ゲルの物性は低値に留まった.これらの結果は, 二段加熱ゲルの物性を大きく増強させる牛血漿粉末の機能が, 坐りを伴うゲルと坐りを伴わないゲルに対してでは明らかに異なることを示している.The functional effect of bovine plasma on heat-induced gel formation of the mixture of salt-ground meats from walleye pollack and Pacific whiting surimi was investigated in connection with preheating temperature.The mixture of salt-ground meats was preheated at 30 or 50℃ for several hours in the presence of 3% bovine plasma powder, and subsequently heated at 90℃ for 20 minutes to prepare two-step heated gel.Preheating of the mixture of salt-ground meats with bovine plasma at 30℃ increased the breaking strength and the gel stiffness of two-step heated gel. The maximum values of breaking strength were proportionally increased with rising of the ratio of walleye pollack surimi in the mixture, but those of gel stiffness were not increased. On the other hand, the preheating of the mixture with bovine plasma at 50℃ did not promote gel formation and consequently the breaking strength as well as the gel stiffness of all of two-step heating gels remained lower values.These results indicated that a functional effect of bovine plasma powder on the heat-induced gel formation of salt-ground meats with and without setting was evidently different.
著者
長澤 明範 加藤 一一
出版者
東海大学
雑誌
東海大学紀要. 開発工学部 (ISSN:09177612)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.165-176, 1994-03-30
被引用文献数
3

赤外線サーモグラフィは体表温度分布の受動的検査法で,その医学的意義,安全性から見て極めて理想的な臨床検査法である。医用サーモグラフィでもっとも重要なことは,身体各部の温度分布を正確に比較することである。しかし,従来の面走査方式のサーモカメラではカメラに面した身体の1側面を平面視した熱画像しか撮影されないため,種々の問題があった。とくに臨床応用においては異なる対象面毎に複数の撮影を余儀なくされていた。そこで著者らは身体各面の熱画像を1回の操作で撮影することのできる新たな展開サーモグラフィ法を3種考案した。(1)3面サーモグラフィ(TAT):側面用の赤外反射鏡を用いて身体3側面の熱画像を同時に撮影する方法。(2)多面サーモグラフィ(MAT):身体を回転しながら高速サーモカメラで体表のリアルタイムサーモグラムを撮影,記録し,1回転後任意の対象面の熱画像をマルチ表示するほか,身体全周域の熱分布を回転面の実時間サーモグラム上で観察することのできる方法。(3)パノラミックサーモグラフィ(PT):身体を中心軸の回りに回転しながら,回転軸上の体表面をサーモカメラで線走査して,体表全域までの連続的な熱画像を撮影する方法。展開サーモグラフィ法は次のような利点がある。(1)身体各面の温度分布を同時に記録,観察,分析することができる。(2)身体全域の温度分布を連続的に記録,観察することができ,異常部の検出エラーがない(PT,MAT)。(3)PT法では面走査法に見られる測定対象の周辺部における温度低下の現象を伴なわず,すべての範囲で正確な測定値が得られるため,誤診の危険性がない。(4)PT法では像拡大に伴なって分解能が向上し,精査に利用できる。(5)本法は操作が簡単で,規格的検査ができる。以上のように,本法は従来のサーモグラフィ法の欠点を改善した画期的な技術で,診断学上(とくに癌の診断などに)大きな成果が期待される。
著者
加藤 輝政 小川 清 佐良木昌
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告自然言語処理(NL)
巻号頁・発行日
vol.1997, no.69, pp.65-70, 1997-07-24
被引用文献数
2

英語複文を4パターンに分類した。典型(プロトタイプ)・定型(ステレオタイプ)・従属接続詞を伴わない型(ポテンシャルタイプ)・句形態に従属節構造が潜む型(レイテンタイプ)。この4パターンの複文は、単文結合に還元可能である。分割するのではなく、接続副詞などにより媒介される単文結合に還元する。English complexes are classified into four main types: prototype, stereotype, potential type, and latent type, The conception of clause is herein interpreted in a broad sense and thus the potential and latent types include NEXUS defined by Otto Jespersen. Hypotaxis which means subordination can be reduced to Parataxis with couplers such as conjunctive adverbs, hence the organization of unconnected coordinated sentences, Parataxis, have been developed to subordination expressing complex relationship between main thought and constituent parts thereof.