著者
井上 智貴 酒向 正春 石原 健
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.188-196, 2009 (Released:2009-06-30)
参考文献数
10
被引用文献数
3 3

【目的】回復期リハビリテーション期に脳卒中を再発し急性期病院へ転院となった症例の特徴を検討する.【対象と方法】対象は2004∼2006年に当院で入院治療した脳卒中1,538例(脳梗塞917例,脳出血621例)で,脳卒中を再発し急性期転院となった20例である.原疾患に基づき分類し,再発病型,治療,病態,発症からの期間,性別を検討した.【結果】再発20例は男性8名,女性12名,平均年齢70.6±14.1歳,平均在院日数49.2±35.3日(4∼111)であった.脳梗塞17例の再発は脳梗塞14例,脳出血3例であり,心原性脳塞栓症11例の再発は9例が塞栓症(PT-INR<1.6:4例;ワーファリン未使用:4例PT-INR1.77:1例),2例が脳出血(抗血小板剤使用:PT-INR1.78±0.45)であった.アテローム血栓性脳梗塞5例の再発は4例がアテローム血栓性脳梗塞であり,1例が高血圧性脳出血であった.ラクナ梗塞1例の再発は高血圧性脳出血であった.一方,脳出血3例の再発は2例が高血圧性脳出血であり,1例がアミロイドアンギオパチィーであった.【考察】回復期リハビリテーション期における脳梗塞と脳出血の再発率はそれぞれ1.7%と0.5%であった.心原性脳塞栓症再発例はPT-INR管理不良が主であり,回復期入院直後に再発する症例もあり,正確な病型診断の上で早期にPT-INR 1.6∼2.6での管理が必要である.一方,脳梗塞からの脳出血再発は抗血小板剤併用に限られ,血圧管理に注意を要する.アテローム血栓性脳梗塞の再発は外科的治療適応症例であり,回復期前の早期外科的治療の必要性が示唆される.脳梗塞からの脳出血例,および脳出血再発例ともに通常の収縮期血圧は130 mmHg以下で,週1回140 mmHgを超える程度であり,脳出血の再発予防には厳密な血圧管理が必要である.
著者
小島 弥生 太田 恵子 菅原 健介
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
性格心理学研究 (ISSN:13453629)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.86-98, 2003-03-27 (Released:2017-07-24)
被引用文献数
5 20

人は自分の自己呈示的行動に対し,他者から何らかの評価を受けることを期待する.その際,期待する評価の方向性に個人差があり,自己呈示方略に影響を与えていると考えられる.本研究では菅原(1986)をふまえ,他者からの肯定的な評価の獲得を目標としやすい「賞賛獲得」と,否定的な評価の回避を目標としやすい「拒否回避」の2つの独立した欲求を想定し,その強さを測定する尺度の作成を試みた.研究1では,賞賛獲得欲求と拒否回避欲求が独立した因子として抽出され,2つの欲求尺度の信頼性,併存的妥当性が検証された.研究2では,賞賛獲得欲求と拒否回避欲求の強さによって他者からの評価的フィードバックへの情緒的反応が異なることが示され,尺度の構成概念妥当性が支持された.研究2の結果から,2つの欲求の概念により,他者からの評価が自己概念とは異なるものであった場合の対処方略についても説明できる可能性が示された.このことから,賞賛獲得欲求・拒否回避欲求の概念が,自己呈示と個人の社会的適応の問題をはじめとする様々な社会的行動を考える上での重要な枠組みを提供し得ることが示唆された.
著者
安藤 美華代 竹内 俊明 山本 玉雄 福島 一成 大原 健士郎
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.35, no.7, pp.593-600, 1995-10-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
12
被引用文献数
1

In an ealier study we investigated the psychological aspects of fasting therapy with Naikan, using questionnaires, the Rorschach test, and the Baum test. Our results showed that all patients showed some improvement, and that the therapy contributed toward psychological stability. In the present study, we increased the number of subjects, and used standard psychotherapy as the control condition with which to assess the effectiveness of fasting therapy, its suitability for effect, and its adaptability, based on results from CMI, YG, TEG, and the Rorschach test. The subjects were 37 patients hospitalized due to psychosomatic disease and neurosis who had undergone fasting therapy. Fourteen of these cases were followed for half a year. Controls were patients, matched for age, sex and disease, who had been suffering from psychosomatic disease or neurosis and had been given psychotherapy. The effect of fasting therapy was assessed by having the case physician evaluate patients under nine headings (symptoms, mental stability, interpersonal relations, understanding of the disease, attitudes toward work, disposition, cheerfulness, emotional control, and judgment) all measured on a 4-points scale. No patients received a negative assessment, and treatment was judged to be highly effective in 18 cases and somewhat effective in 19 cases. The 5 patients who interrupted therapy were similarly studied. The results showed that the standard psychotherapy group showed some improvement in subjective self esteem, but little change in deep personality structure. In comparison, those who continued with fasting therapy steadily improved in subjective self esteem, emotional control, ego strength, and self image. In those patients showing a marked improvement, there was also some improvement in conflict concerning affective wants. These results suggest that the fasting therapy induces in patients a sense of having been "psychologically reborn" after having undergone an extreme physical state. As we had expected, the effects of fasting therapy gave rise to the following observations : questionnaires are inadequate for revealing changes in deep personality structure, while patients in whom the effect of therapy was less pronounced seemed to have less imagination and empathy, but greater internal tension. Furthermore, although the patients who were unable to complete therapy were good at affective expression and introspection, they also tended to be aggressive and to have anxiety about affection. For that reason, these patients are less well suited to undergo fasting therapy with its many restrictions, accordingly, a more mild form of therapy should be devised for these patients.
著者
千々岩 武陽 伊藤 隆 菅生 昌高 仙田 晶子 大川原 健 海老澤 茂 王子 剛 島田 博文
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.840-846, 2010 (Released:2010-12-24)
参考文献数
15
被引用文献数
1

桂枝加桂湯が奏効した奔豚気病と思われる身体表現性障害の3症例を経験した。第1例は34歳男性。頭痛,動悸,「胸から頭に何かが突きあがってくる感じ」を奔豚気と捉えて桂枝加桂湯を開始したところ,内服1週間後に頭痛,4週間後には動悸や耳鳴りが著明に改善した。第2例は22歳男性,主訴は緊張感,全身倦怠感。下肢の冷え,発作的な頭痛のエピソードを奔豚気と解釈し,桂枝加桂湯を開始したところ,自覚症状と心理テストの大幅な改善を認めた。第3例は75歳女性。自宅のリフォームを契機に激しい頭痛と動悸が出現した。桂枝加桂湯開始により,内服3週間後には症状の消失を認めた。近年,奔豚気病はパニック障害と比較されることが多かったが,身体表現性障害と称される一群の中にも奔豚気病の症例が含まれている可能性がある。頭痛や動悸など身体愁訴の背景に奔豚気病の存在を疑うことが,桂枝加桂湯の処方選択に有用であると考えられた。
著者
梶原 健嗣
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.113-120, 2018

<p>&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;日本の治水計画は,河川整備基本方針で長期的なグランドデザインを定め,河川整備計画で,今後20~30年間の具体的な計画を定める.この中で,核となるのは治水計画の想定洪水=基本高水とそのピーク流量(基本高水流量)である. <BR>&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;この基本高水流量の決定に際し,決定的な影響力を持っているのが貯留関数法という「治水の科学」である.しかし,その算定では過大な流量が導き出される恐れがある.あるいは,治水計画に事業計画が対応せず,「半永久的に未完の治水計画」になる場合もある. <BR>&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;では,そうした河川で水害が起きた際に,河川の管理瑕疵は問われるのか.水害訴訟は,本来は,被害者救済とともに行政の瑕疵・責任を検証しうる制度として期待されたはずである.しかし,初の最高裁判断となった大東水害訴訟判決により,この期待は機能不全となってしまっている.大東基準として確立した法理に照らせば,「過大な基本高水」の下では,河川管理責任はブラックボックス化しかねないのである.</p>
著者
石原 健二
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.139-155, 1971

以下に, 筆者の最近行なった統計的降雪予報の概要を述べよう。この研究は, 北陸地方の除雪に寄与することをねらいとしたものである。
著者
野原 健司
出版者
アクオス研究所
雑誌
水生動物 (ISSN:24348643)
巻号頁・発行日
vol.AA2019, pp.AA2019-10, 2019 (Released:2019-10-13)

We investigated genetic population structure and tetrodotoxin (TTX) content of yellowfin toxic goby Yongeichthys criniger in the Japanese coastal area. Two divergent mitochondrial lineages (lineages A and B) were found, and the frequencies were clearly different among Okinawa-Iriomote Island, Amami Oshima Island and northward of Yakushima Island. Genetic heterogeneity among three groups were supported by principal coordinate analysis based on the pairwise FST values. TTX contents were measured in goby samples from Kochi Prefecture (Kashiratsudoi River) and Yakushima Island (Isso Port and Anbo River). TTX contents of skin and muscle tissues of Kashiratsudoi River and Isso Port samples were relatively high, while TTX was not detected in most individuals collected in the Anbo River. Therefore, it is suggested that the TTX contents of this species considerably vary even among geographically close areas and/or seasonally.
著者
江⽊ 盛時 ⼩倉 裕司 ⽮⽥部 智昭 安宅 ⼀晃 井上 茂亮 射場 敏明 垣花 泰之 川崎 達也 久志本 成樹 ⿊⽥ 泰弘 ⼩⾕ 穣治 志⾺ 伸朗 ⾕⼝ 巧 鶴⽥ 良介 ⼟井 研⼈ ⼟井 松幸 中⽥ 孝明 中根 正樹 藤島 清太郎 細川 直登 升⽥ 好樹 松嶋 ⿇⼦ 松⽥ 直之 ⼭川 ⼀⾺ 原 嘉孝 ⼤下 慎⼀郎 ⻘⽊ 善孝 稲⽥ ⿇⾐ 梅村 穣 河合 佑亮 近藤 豊 斎藤 浩輝 櫻⾕ 正明 對東 俊介 武⽥ 親宗 寺⼭ 毅郎 東平 ⽇出夫 橋本 英樹 林⽥ 敬 ⼀⼆三 亨 廣瀬 智也 福⽥ ⿓将 藤井 智⼦ 三浦 慎也 安⽥ 英⼈ 阿部 智⼀ 安藤 幸吉 飯⽥ 有輝 ⽯原 唯史 井⼿ 健太郎 伊藤 健太 伊藤 雄介 稲⽥ 雄 宇都宮 明美 卯野⽊ 健 遠藤 功⼆ ⼤内 玲 尾崎 将之 ⼩野 聡 桂 守弘 川⼝ 敦 川村 雄介 ⼯藤 ⼤介 久保 健児 倉橋 清泰 櫻本 秀明 下⼭ 哲 鈴⽊ 武志 関根 秀介 関野 元裕 ⾼橋 希 ⾼橋 世 ⾼橋 弘 ⽥上 隆 ⽥島 吾郎 巽 博⾂ ⾕ 昌憲 ⼟⾕ ⾶⿃ 堤 悠介 内藤 貴基 ⻑江 正晴 ⻑澤 俊郎 中村 謙介 ⻄村 哲郎 布宮 伸 則末 泰博 橋本 悟 ⻑⾕川 ⼤祐 畠⼭ 淳司 原 直⼰ 東別府 直紀 古島 夏奈 古薗 弘隆 松⽯ 雄⼆朗 松⼭ 匡 峰松 佑輔 宮下 亮⼀ 宮武 祐⼠ 森安 恵実 ⼭⽥ 亨 ⼭⽥ 博之 ⼭元 良 吉⽥ 健史 吉⽥ 悠平 吉村 旬平 四本 ⻯⼀ ⽶倉 寛 和⽥ 剛志 渡邉 栄三 ⻘⽊ 誠 浅井 英樹 安部 隆国 五⼗嵐 豊 井⼝ 直也 ⽯川 雅⺒ ⽯丸 剛 磯川 修太郎 板倉 隆太 今⻑⾕ 尚史 井村 春樹 ⼊野⽥ 崇 上原 健司 ⽣塩 典敬 梅垣 岳志 江川 裕⼦ 榎本 有希 太⽥ 浩平 ⼤地 嘉史 ⼤野 孝則 ⼤邉 寛幸 岡 和幸 岡⽥ 信⻑ 岡⽥ 遥平 岡野 弘 岡本 潤 奥⽥ 拓史 ⼩倉 崇以 ⼩野寺 悠 ⼩⼭ 雄太 ⾙沼 関志 加古 英介 柏浦 正広 加藤 弘美 ⾦⾕ 明浩 ⾦⼦ 唯 ⾦畑 圭太 狩野 謙⼀ 河野 浩幸 菊⾕ 知也 菊地 ⻫ 城⼾ 崇裕 ⽊村 翔 ⼩網 博之 ⼩橋 ⼤輔 ⿑⽊ 巌 堺 正仁 坂本 彩⾹ 佐藤 哲哉 志賀 康浩 下⼾ 学 下⼭ 伸哉 庄古 知久 菅原 陽 杉⽥ 篤紀 鈴⽊ 聡 鈴⽊ 祐⼆ 壽原 朋宏 其⽥ 健司 ⾼⽒ 修平 ⾼島 光平 ⾼橋 ⽣ ⾼橋 洋⼦ ⽵下 淳 ⽥中 裕記 丹保 亜希仁 ⾓⼭ 泰⼀朗 鉄原 健⼀ 徳永 健太郎 富岡 義裕 冨⽥ 健太朗 富永 直樹 豊﨑 光信 豊⽥ 幸樹年 内藤 宏道 永⽥ 功 ⻑⾨ 直 中村 嘉 中森 裕毅 名原 功 奈良場 啓 成⽥ 知⼤ ⻄岡 典宏 ⻄村 朋也 ⻄⼭ 慶 野村 智久 芳賀 ⼤樹 萩原 祥弘 橋本 克彦 旗智 武志 浜崎 俊明 林 拓也 林 実 速⽔ 宏樹 原⼝ 剛 平野 洋平 藤井 遼 藤⽥ 基 藤村 直幸 舩越 拓 堀⼝ 真仁 牧 盾 增永 直久 松村 洋輔 真⼸ 卓也 南 啓介 宮崎 裕也 宮本 和幸 村⽥ 哲平 柳井 真知 ⽮野 隆郎 ⼭⽥ 浩平 ⼭⽥ 直樹 ⼭本 朋納 吉廣 尚⼤ ⽥中 裕 ⻄⽥ 修
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
pp.27S0001, (Released:2020-09-28)
被引用文献数
2

日本集中治療医学会と日本救急医学会は,合同の特別委員会を組織し,2016年に発表した日本版敗血症診療ガイドライン(J-SSCG2016)の改訂を行った。本ガイドライン(J-SSCG2020)の目的は,J-SSCG2016と同様に,敗血症・敗血症性ショックの診療において,医療従事者が患者の予後改善のために適切な判断を下す支援を行うことである。改訂に際し,一般臨床家だけでなく多職種医療者にも理解しやすく,かつ質の高いガイドラインとすることによって,広い普及を目指した。J-SSCG2016ではSSCG2016にない新しい領域(ICU-acquiredweakness(ICU-AW)とPost-Intensive Care Syndrome(PICS),体温管理など)を取り上げたが,J-SSCG2020では新たに注目すべき4領域(Patient-and Family-Centered Care,Sepsis Treatment System,神経集中治療,ストレス潰瘍)を追加し,計22 領域とした。重要な117の臨床課題(クリニカルクエスチョン:CQ)をエビデンスの有無にかかわらず抽出した。これらのCQには,日本国内で特に注目されているCQも含まれる。多領域にわたる大規模ガイドラインであることから,委員24名を中心に,多職種(看護師,理学療法士,臨床工学技士,薬剤師)および患者経験者も含めたワーキンググループメンバー,両学会の公募によるシステマティックレビューメンバーによる総勢226名の参加・協力を得た。また,中立的な立場で横断的に活躍するアカデミックガイドライン推進班を2016年版に引き続き組織した。将来への橋渡しとなることを企図して,多くの若手医師をシステマティックレビューチーム・ワーキンググループに登用し,学会や施設の垣根を越えたネットワーク構築も進めた。作成工程においては,質の担保と作業過程の透明化を図るために様々な工夫を行い,パブリックコメント募集は計2回行った。推奨作成にはGRADE方式を取り入れ,修正Delphi法を用いて全委員の投票により推奨を決定した。結果,117CQに対する回答として,79個のGRADEによる推奨,5個のGPS(Good Practice Statement),18個のエキスパートコンセンサス,27個のBQ(Background Question)の解説,および敗血症の定義と診断を示した。新たな試みとして,CQごとに診療フローなど時間軸に沿った視覚的情報を取り入れた。J-SSCG2020は,多職種が関わる国内外の敗血症診療の現場において,ベッドサイドで役立つガイドラインとして広く活用されることが期待される。なお,本ガイドラインは,日本集中治療医学会と日本救急医学会の両機関誌のガイドライン増刊号として同時掲載するものである。
著者
榊原 健一 林 良子 後藤 多嘉緒 河原 英紀 牧 勝弘 齋藤 毅 山川 仁子 天野 成昭 山内 彰人
出版者
北海道医療大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

喉頭音源に関連する声質の客観的表記に関し、生理学的、物理学的視点から、音源となる振動体の分類により(i) 声帯発声 ; (ii) 声帯-仮声帯発声; (iii) 声帯-披裂部発声; の3種類の有声音と,無声音である声門乱流雑音発声と分類が可能であり、有声音源に関しては、物理的・音響的特徴から周期的、準周期的、非周期的の3つの振動への分類を提案した。また、声質表現として緊張-弛緩と声門開放時間率との関係を明らかにし、声質の客観的な表現語として適切であることを明らかにした。声門開放時間率の分析方法として、余弦級数包絡の複素wavelet分析に基づく簡易なGCI, GOIの検出方法を考案した。
著者
萩原 健一 鴾田 明子 三輪 昭子 川合 述史 村田 義彦 内田 明彦 中嶋 暉躬
出版者
The Japan Society of Medical Entomology and Zoology
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.77-84, 1991-06-15 (Released:2016-08-26)
被引用文献数
2 3

野外にて採集した9種類の日本産クモの毒腺中の化学成分のうちカテコラミン, ポリアミン等の生物活性アミンに着目し, これらの含有量を定量し比較した。その結果, クモ毒腺はカテコラミン類の含量は低いがポリアミンの含量が高いことが示された。ただし, 刺咬時の痛みが激しいことで知られているカバキコマチグモだけは例外的に, 毒腺にカテコラミン類およびセロトニンが検出され, これらが低分子の発痛物質として作用していると考えられた。毒腺抽出物を逆相高速液体クロマトグラフィー(逆相HPLC)により分離分析したところ, 各クモに固有のクロマトグラムパターンが得られ, クモ毒成分の多様性が示された。さらに, 逆相HPLCで分画した毒成分について, イセエビ歩脚の神経-筋標本を用いて神経伝達阻害作用をもつ物質のスクリーニングをおこなったところ, クサグモ(Agelena)の毒分画中に新たな神経毒を見いだした。
著者
兼本 浩祐 馬屋原 健
出版者
日本失語症学会 (現 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会)
雑誌
失語症研究 (ISSN:02859513)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.230-236, 1993 (Released:2006-06-14)
参考文献数
20

本院にてんかんを主訴として来院し,単純部分発作を示した 563人の患者から失語発作を呈した 42人の患者を対象として選択した。その内訳は,言語理解障害が 24人,言語表出障害が 25人,喚語困難が 5人,錯語が 4人,読字困難が 2人であった。夢様状態(dreamy state)を訴えるてんかん患者群と比較して,失語発作を呈した症例群は,(1) 脳波上前頭部焦点を示す率が高い,(2) 複雑部分発作の合併率が低い, (3) 部分運動発作の随伴率が高く, (4) 複合視覚発作,不安発作の随伴率が低いことが統計的に確認された。この結果から,両群とも脳波上側頭部焦点を示すことが多いが,夢様状態は大脳辺縁系が深く係わっているのに対して,失語発作は新皮質との関わりが深いことを論じた。
著者
桐原 健真
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は、18世紀末から19世紀中葉にかけて「帝国」ということばを用いた日本知識人における自他認識の転回に光をあてることである。「帝国」は古典的な漢語ではなく、18世紀末に蘭学者が、オランダ語keizerrijkから翻訳した新しいことばである。日本知識人の多くは、「帝国」のステータスを、「王国」や「公侯国」といった他のいかなる君主国よりも優越していると考えた。儒学的教養を身につけたこれら知識人は、「皇帝」が他の君主たちよりも優越していることを知っていたので、彼らは、中国古典に見いだせないこの新奇なことばを、たやすく受け容れることができたのである。彼らにとって幸いであったのは、ヨーロッパにおいて刊行された多くの地理書が、「日本は帝国である」と叙述していたことである。翻訳書を含むこれらの書籍おいて、こうした記載を読んだ日本知識人は、日本の優越性と独立性を確信するようになった。日本排外主義が、海外の書籍によって形成されたことは、まことに皮肉であったと言える。
著者
永瀬 和彦 別所 雅章 生田 憲人 漆原 健
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集C編 (ISSN:18848354)
巻号頁・発行日
vol.79, no.806, pp.3432-3441, 2013 (Released:2013-10-25)
参考文献数
3
被引用文献数
2 2

To keep on-time performance of commuter trains in mega cities, the skillful brake handling is required for the drivers on the approach of the stations. However, on the course of the training for the newly comer drivers, such skill has been telepathically given by their instructors, and none of theories nor quantitative instructions has been introduced. The authors proposed a method to quantitatively evaluate the brake handling skill on the approach of the stations. Using the newly proposed method, they investigated the data piled up in the event recorder of the EMUs operated the JR West Ohsaka Kanjoh Line, one of the most densely train-operated commuter lines in the JRs. On the investigations, they confirmed that the brake handling skill could be easily and quantitatively evaluated by the method. Then, they applied it to investigate the trains operated on the Tohkaido Main Line between Kyoto, Osaka and Kobe, where the interval of the stations is longer and the scheduled operating speed is higher than the formally investigated line. The results of the study are briefly reported in the paper.
著者
金子 真美 平野 滋 楯谷 一郎 倉智 雅子 城本 修 榊原 健一 伊藤 壽一
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.201-208, 2014 (Released:2014-09-05)
参考文献数
28
被引用文献数
2 3

一般人の音声障害に関する音声治療については多くの報告があり,高いエビデンスレベルのものもある.しかし歌唱者の音声障害に対する音声治療については国内外で報告は少なく,現時点で確立された手技もない.今回われわれは歌唱者の音声障害に対し音声治療を行い,症状に一定の改善を認めた.対象は声帯結節,声帯瘢痕,声帯萎縮,過緊張性発声障害のいずれかと診断され,音声治療を施行した歌唱者9例(男性5例,女性4例,平均年齢53.3歳)である.口腔前部の共鳴を意識した音声治療を施行し,効果をGRBAS,ストロボスコピー,空気力学的検査,音響分析,自覚的評価,フォルマント周波数解析で評価した.治療後,音声の改善は個人差があるものの全例で認められ,MPTやVHI-10,GRBASで有意差が認められた.また,歌唱フォルマントもより強調されるようになった.歌唱者の音声障害に対する音声治療は一定の効果が期待できると考えられた.
著者
中原 健一 島田 史也 宮崎 邦洋 関根 正之 大澤 昇平 大島 眞 松尾 豊
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第32回全国大会(2018)
巻号頁・発行日
pp.1M204, 2018 (Released:2018-07-30)

株式市場における売買審査業務をより効率的かつ合理的に行うために,定量的に見せ玉を検知する手法を提案する.本手法においては,教師ラベルを使用せずに相場操縦行為中に見られる不自然な取引履歴を発見するため,密度比推定による異常検知手法を用いた.東京証券取引所の上場銘柄の中より無作為に選択され,専門家チームによってラベル付けされた118 件の半日単位の一銘柄取引履歴による検証結果によると,見せ玉が疑われる事例の80%は,モデルが予測した異常度順にソートした事例の上位50%に含まれ,実務で使用されている単純な規則によるスクリーニングの結果と比較して更なる精緻化が達成できていることが示された.
著者
田村 元 塩原 健次郎
出版者
一般社団法人 溶接学会
雑誌
溶接学会誌 (ISSN:00214787)
巻号頁・発行日
vol.17, no.5, pp.182-188, 1948 (Released:2009-06-12)
参考文献数
5

鑄鐵瓦斯熔接の際熔着鐵の地をFerriteを多くし,黒鉛を可及的に多く出るものを得る目的で本研究を行つた・第一報にては(Si+Al)が3,4,5,7%なる場合の試驗を行つた結果(1)(Al+Si)=3.0~4.3%が熔接棒を作製し易い.(2)Al2%以上となると熔接操作が難しくなる.(3)(Al+Si)%が増す程黒鉛が多くなり且つ形状は細く一樣となる.(4)Alを加へると機械加工は母材と同樣で困難ではない.(5)母材との「なじみ」は何れも良好である.なることが判つた.