著者
菅原 民枝 大日 康史 具 芳明 川野原 弘和 谷口 清州 岡部 信彦
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.195-198, 2012 (Released:2012-08-05)
参考文献数
7
被引用文献数
6 8

感染症流行の早期探知のための薬局サーベイランスでは,抗インフルエンザウイルス薬,抗ヘルペスウイルス薬,解熱鎮痛剤,総合感冒薬,抗菌薬の薬効分類で処方件数のモニタリングをしている.近年,抗菌薬耐性菌感染症の問題があり,諸外国では使用量が算出されて国際比較が行われているが,日本全国でのモニタリングはなされていない.そこで,薬局サーベイランスによる1年間の処方件数を用いて日本全国での外来診療における使用量を算出する方法について検討した.抗菌薬処方を5分類(ペニシリン系,セフェム系,マクロライド系,キノロン系,その他)し,それぞれの処方件数を算出し,先行研究の投与量の分布を用いて,使用量を算出した.それを抗菌薬標準使用量(Defined Daily Dose: DDD)を人口1000人の1日あたりで示した.期間は,2010年8月~2011年7月処方の12ヶ月分である.抗菌薬処方件数は,12月が最も多く,8月が最も少なく,種類ではマクロライド系が多かった.抗菌薬標準使用量DDDは,全国で10.16であった.都道府県別では,西日本が高い傾向があった.
著者
菅原 民枝 大日 康史 川野原 弘和 谷口 清州 岡部 信彦
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 : 日本伝染病学会機関誌 : the journal of the Japanese Association for Infectious Diseases (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.85, no.1, pp.8-15, 2011-01-20
参考文献数
14
被引用文献数
2 5

【目的】新型インフルエンザ(2009 インフルエンザA(H1N1))対策では,発生時の早期探知,日ごとの流行状況をモニターするリアルタイムサーベイランスが必要である.そこで本研究は調剤薬局の院外処方せんによる薬局サーベイランスを運用し評価する.抗インフルエンザウイルス剤を処方された人数より,対策に必要な推定患者数を算出しその有用性も検討する. 【方法】全国3,959 薬局から自動的に抗インフルエンザウイルス剤データを収集し,インフルエンザ推定患者数を算出した.サーベイランスの評価は,感染症発生動向調査及び感染症法上届出の新型インフルエンザの全数報告との比較とした.推定患者数の比較は,感染症発生動向調査と岐阜県の全数調査に基づいた推定患者数で行う. 【結果】2009 年4 月20 日から新型インフルエンザ対策として薬局サーベイランスを強化し,翌日7 時には協力薬局および自治体対策関係者に情報提供した.2009 年第28 週から2010 年第12 週までの推定患者数は,9,234,289 人であった.発生動向調査との相関係数は0.992 であった.薬局サーベイランスのインフルエンザ推定患者数,感染症発生動向調査と2 倍強の違いがみられ,岐阜県全数調査で調整した発生動向調査の推定患者数は近似していた. 【考察】薬局サーベイランスは,流行の立ち上がり,ピークの見極め,再度の流行への警戒と長期間にわたってのリアルタイムサーベイランスとして実用的であった.発生動向調査と高い相関関係を示しており,先行指標となった.日ごとのデータによる早期探知,報告基準をかえずに自動的にモニタリングすること,常時運用という態勢は有用であると示唆された.インフルエンザ推定患者数は,発生動向調査の推定患者数の過大推計が示唆され,今後の課題点と考えられた.次のパンデミックを含むインフルエンザ対策として利用可能な手段であり,またインフルエンザに限定せず,アシクロビル製剤による水痘や抗生剤の使用状況のモニタリングといった広い応用が期待される.
著者
榊原 弘之 倉本 和正 菊池 英明 中山 弘隆 鉄賀 博己 古川 浩平
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2000, no.658, pp.221-229, 2000

本論文では, がけ崩れに寄与する重要要因の抽出を目的として, ラフ集合を用いたデータマイニングを山口県のがけ崩れ発生・非発生データに対して実施する. まず, 地形要因データにおける重要要因を抽出し, 比較的少数の要因によって, 大部分のがけ崩れ発生・非発生を矛盾なく説明できることを示す. さらに, 地形要因と降雨要因を組み合わせたデータへも同様の手法を適用し, 降雨時に警戒対象とすべきがけの選別手法を示した. 本論文により, ラフ集合によるデータマイニングを土砂災害の発生・非発生データの分析に用いることができることが明らかとなった.
著者
栖原 弘和 成相 美紀 可西 泰修 白木 仁
出版者
一般社団法人 日本アスレティックトレーニング学会
雑誌
日本アスレティックトレーニング学会誌 (ISSN:24326623)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.171-180, 2021-04-30 (Released:2021-08-19)
参考文献数
25

本研究の目的は,相撲で伝統的に行われている腰割りのトレーニング効果を明らかにすることとし,股関節可動域,股関節周囲筋筋力,運動能力,動的バランス能力に与える影響に関して,下肢の代表的なエクササイズであるワイドスタンススクワット(WS-SQ)と比較・検討を行った.エクササイズ介入は8週にわたり実施した.また,それぞれの測定をエクササイズ介入に先立ち実施し,4週後および8週後に再度測定を実施した.8週の介入により,股関節外転可動域,内転・伸展筋力,動的バランス能力に変化が認められた.特に股関節内転筋力に関して,腰割りはWS-SQに比べ有意な差が認められたことから,自体重負荷にて股関節周囲筋筋力の向上を目的とした場合,腰割りはWS-SQに比べ有効である可能性が示唆された.
著者
瀬戸 治男 佐藤 勉 米原 弘
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.17, pp.197-204, 1973

An alternative double labeling method which utilizes ^<13>C-^<13>C coupling in structural and biosynthetic studies was applied to the structural elucidation of dihydrolatumcidin. The cmr spectrum of the double labeled and mixed labeled metabolites showing strong ^<13>C-^<13>C coupling gave enough information on carbon sequences and made it possible to determine the total structure of the metabolite. Direct evidence was obtained that acetic acid was incorporated into dihydrolatumcidin without cleavage of the C-C bond of the acetic acid molecule. The detail mechanism of biosynthesis of polyketides, terpenes and steroid can be studied by utilizing ^<13>C-^<13>C coupling.
著者
原田 力 高畑 博樹 北原 弘志
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SANE, 宇宙・航行エレクトロニクス
巻号頁・発行日
vol.95, no.213, pp.51-58, 1995-08-23
被引用文献数
3

技術試験衛星VI型(ETS-VI)は、平成6年8月28日に種子島宇宙センターからH-IIロケットにより打上げられ、トランスファー軌道投入後「きく6号」と名付けられた。きく6号は、2トン級の静止三軸衛星として開発されたが、アポジエンジンの噴射異常により静止軌道に到達することができず長楕円軌道を周回することとなった。きく6号は衛星間通信用の機器を搭載しているが、地上との通信のためのアンテナは静止衛星対応で固定であるため、楕円軌道に置いては通信回線を確立することができないものであったが、搭載コンピュータのソフトウェアを書き換えることにより、楕円軌道上における通信を可能にした。本論文では、楕円軌道上における通信の問題点を明らかにし、それを克服し通信実験を実現するための方法を紹介し、併せて実験の評価結果を報告する。
著者
柴原 弘明 今井 絵理 植松 夏子 木下 早苗 眞野 香 山本 絢子 青山 昌広 西村 大作
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.104-108, 2011

症例は80歳台女性。肺癌の骨転移による疼痛に対し緩和ケアチームに依頼があった。オピオイド,ロキソプロフェンナトリウムに加えて,鎮痛補助薬としてガバペンチン,イフェンプロジル酒石酸塩投与の追加,さらにオピオイドの増量・変更を行なったが,疼痛の著明な改善はなかった。そこで,ガバペンチンをプレガバリンへスイッチしたところ,疼痛の著明な改善がみられた。プレガバリン内服以前は,疼痛が強いときには臥床していることが多かったが,プレガバリン内服以降は疼痛の改善が得られたため,元気に車いすを押して歩行する姿がみられ,日常生活の活動は改善し,笑顔が多くみられるようになった。ガバペンチンからプレガバリンへのスイッチは,癌性疼痛に対する鎮痛補助薬を考慮するにあたり有効な選択肢のひとつである。
著者
今野 佳絵 茆原 弘光 松本 桃代 小笠原 加代子 永井 泰 福岡 秀興 渡邊 浩子 吉池 信男
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 = Maternal health (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.286-293, 2011-07-01
参考文献数
12

【目的】非妊娠時BMI別の推奨体重増加量と新生児の体格との関連,簡易型自記式食事歴法質問票(BDHQ)を用いた栄養素等摂取状況との関連について,妊娠各期を経時的に検討した。【研究方法】対象は基礎疾患のない197名の妊婦。妊娠12,20,32週にBDHQを実施,妊婦健診時に体重測定,分娩後に出生時体重,胎盤重量を測定した。対象者は非妊娠時BMI別にやせ,普通,肥満群の3群に分けた。さらに各群は妊娠推奨体重増加量別に過少,適切,過多群のサブグループに分け,サブグループ間での評価項目の差異を比較検討した。【結果】やせ群において,体重増加量が過少な群は適切または過多に増加した群と比較して,新生児の身長,胎盤重量が小さく,妊娠12週においては栄養素摂取量のn-3系脂肪酸,ナトリウム,亜鉛が少なかった(P<0.05)。【考察】非妊娠時にやせの妊婦が体重増加不良であると,新生児体格が小さくなること,有意に摂取量の少ない栄養素があることが明らかになった。今後は非妊娠時「やせ」の母体や体重増加量不良の妊婦も含めて管理していく必要性が示唆された。
著者
藤枝 幹也 脇口 宏 川久保 敬一 渡辺 誠司 倉繁 隆信 弘井 誠 原 弘
出版者
特定非営利活動法人 日本小児血液・がん学会
雑誌
日本小児血液学会雑誌 (ISSN:09138706)
巻号頁・発行日
vol.6, no.5, pp.499-503, 1992

症例は7歳女児.3歳7ヵ月頃から出血傾向, 血小板減少, 巨核球減少, 赤芽球形態異常とHbF高値などが持続し, 6歳2ヵ月に骨髄芽球の増加がみられ, 骨髄異形成症候群 (MDS, RAEB) と診断された.少量cytosine-arabinoside (Arac-C) 療法で, 貧血と出血傾向の改善, 芽球の減少がみられたが, 約1年後にovert leukemla (FAB分類M2) に急性転化した.多剤耐性で寛解がえられず, 入院9ヵ月目から咳嗽出現し, 胸部レ線像でび慢性の浸潤像と心陰影の拡大が認められた.抗生剤, 抗真菌剤, 強心剤に反応せず死亡した.剖検では, 左肺上葉に空洞形成がみられ, 組織学的にアスペルギローシスの像を呈していた.全肺胞はPAS染色で顆粒状に染まる物質でみたされ, 一部oil redに染まっていた.電顕像でmultilamellated structureが認められアスペルギルス感染に伴う肺胞蛋白症と診断された.
著者
三隅 二不二 篠原 弘章 杉万 俊夫
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.77-98, 1977
被引用文献数
4

本研究は, 地方官公庁における管理・監督者のリーダーシップに関して, 客観的測定方式を作成し, その妥当性を検討しようとするものである。<BR>まず, 基礎資料として, 地方官公庁の管理・監督者から, 自由記述によって, 彼らの職場における上司としての役割行動についての行動記述を収集した。この基礎資料をもとに質問項目を作成し, 数回にわたる専門家会議を経て, 調査票を作成した。質問項目はすべて, 部下である一般職員が上司のリーダーシップ行動について回答するという, 部下評価の形式をとった。また, 係長と課長のリーダーシップ行動を各々区別して評定するように調査票を作成した。係長のリーダーシップ行動に関する質問項目は49項目であり, 課長のリーダーシップ行動に関する項目は, 係長用49項目に5項目を追加した計54項目である。調査票には, リーダーシップ得点の妥当性を吟味するための資料として, モチベーター・モラール, ハイジーン・モラール, チーム・ワーク, 会合評価, コミュニケーション, メンタル・ハイジーン, 業績規範に関する質問項目40項目 (モラール等項目) を含めた。なお, 調査票の質問項目はすべて, 5段階の評定尺度項目である。<BR>この調査票を用いて, 集合調査方式により調査を実施した。調査対象は, 栃木県, 東京都, 静岡県, 兵庫県, 北九州市, 福岡市, 久留米市, 都城市の自治体に勤務している一般職員967名である。<BR>分析は, 単純集計に引続いて, 因子分析を行なった。因子分析は次の3つに分けて行なった。すなわち, (1) 係長のリーダーシップに関する49項目, (2) 課長のリーダーシップに関する54項目, (3) モラール等項目40項目, に対する因子分析である。因子分析にあたっては, 相関行列の主対角要素に1.00を用いて, 主軸法によって因子を抽出した後, ノーマル・バリマックス法によって因子軸の回転を行なった。<BR>係長のリーダーシップ行動に関する因子分析の結果, 次の4因子が見出された。すなわち, 「集団維持の因子」・「実行計画の因子」・「規律指導の因子」・「自己規律の因子」の4因子である。「集団維持の因子」は, 集団維持のリーダーシップ行動 (M行動) に関する因子であり, 「実行計画の因子」・「規律指導の因子」・「自己規律の因子」の3因子は, 集団目標達成のリーダーシップ行動 (P行動) に関する因子であると考えられた。<BR>課長のリーダーシップ行動に関する因子分析の結果, 次の4因子が見出された。すなわち, 「集団維持の因子」・「企画・調整の因子」・「規律指導および実行計画の因子」・「自己規律の因子」の4因子である。「集団維持の因子」はM行動に関する因子であり, 他の3因子はP行動に関する因子であると考えられた。<BR>係長と課長のリーダーシップ行動に関する因子分析の結果, 産業企業体でみられた「目標達成への圧力の因子」に相当する因子が見出されず, それに代わって, 規律指導あるいは自己規律の因子のような規律に関する因子が見出されたことは, 地方官公庁におけるリーダーシップ行動の特質と考察された。<BR>また, モラール等項目に関する因子分析では, 予め設定した7カテゴリーの妥当性を検証するために8因子解を求めたが, 全般的に, 予め設定した各カテゴリーは, 各因子と1対1の対応をもつことが明らかになった。ただ, メンタル・ハイジーンと業績規範の2カテゴリーは, それぞれ2因子, 3因子構造を有していた。<BR>係長および課長を部下評定によって分類したリーダーシップP-M4類型の効果について分析した。まず, 係長および課長のリーダーシップ・タイプを測定する項目を因子分析の結果に基づいて選定した。係長の場合も, 課長の場合も, P行動測定項目, M行動測定項目をそれぞれ8項目ずつ選定した。<BR>係長のP-M指導類型とモラール等項目得点の関係をみると, 業績規範のカテゴリーを除く各カテゴリーにおいて, PM型が最高点を示し, M型が第2位, P型が第3位, pm型が最下位の平均値を示した。業績規範のカテゴリーにおいては, M型とP型の順位が逆転した。この傾向は, 三隅他 (1970) が産業企業体の第一線監督者において見出したリーダーシップP-M類型効果差の順位と同じである。また, 相関比の2乗の大きさから, コミュニケーション・会合評価の2カテゴリーにおいて, 特にリーダーシップ類型効果差が著しいことが明らかとなり, これは, 行政体における特徴であると考察された。