著者
宗原 弘幸
出版者
北海道大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1993

行動観察、受精生理および遺伝学的手法により、本課題を遂行した。その結果、ヨコスジカジカは産卵後に雄が卵に放精する、非交尾種であることが判明した。しかし、精子の運動活性は海水中よりも体液と等張でNa^+存在下で最も高く、特に卵巣腔液中では極めて長期間活動する。媒精、受精は産卵時に放出される卵巣腔液中であることから、非交尾カジカはすでに交尾への準備が進んでいることが示唆された。また、卵巣腔液中で受精可能な点は体内配偶子会合型の交尾種と相違した。その要因は卵巣腔液中のCa^<++>濃度の違いで、カジカ類では交尾習性の進化の際に、卵巣腔液中のCa^<++>濃度を下げる生理的メカニズムの変化があったことが示唆された。卵巣腔液の役割として精子の貯留や活性保持の他に、ケムシカジカでは交尾の際の精子受け渡しの媒介となることが水槽内観察より明らかになった。本種の交尾行動は、一連の求愛儀式を経た後、雌の生殖口から管が出され、さらにそこからゼリー状卵巣腔液が放出され、そのゼリーの向かって放精されるというもので、精子が絡みついてゼリーの一部が再び雌の卵巣内に収納されることで交尾が完了する。ペニスがないカジカも交尾をするという、本行動観察結果は、カジカ科魚類にはかなり交尾をする種がいることを示唆した。交尾行動は繁殖生態の上で、父性のあいまいさをもたらす。特に雄が卵を守るニジカジカの場合、重要な問題である。そこでDNAフィンガープリントで、保護雄と卵の父性およびいつ交尾した雄が有利かを調べた。その結果、繁殖期の終期では雄と卵には父性がないこと、および最初に交尾した雄は多くの子を残せることが分かった。本研究結果は、卵の保護は雄にとって直接的な利益が無いことが示され、卵保護の進化に父性の信頼性は必ずしも平行しないこと場合があることが分かった。最後に、配偶子会合型、交尾種の地理的出現を調査する準備段階として、アラスカ産のカジカ類の繁殖期を把握する目的で、キナイ半島リサレクション湾の仔稚魚サンプルを調べ、春季に10種のカジカ科魚類が出現することが分かった。
著者
佐藤 祥一郎 園田 和隆 吉村 壮平 宮﨑 雄一 松尾 龍 三浦 克之 今中 雄一 磯部 光章 斎藤 能彦 興梠 貴英 西村 邦宏 安田 聡 小川 久雄 北園 孝成 飯原 弘二 峰松 一夫 日本医療研究開発機構「脳卒中を含む循環器病の診療情報の収集のためのシステムの開発 に関する研究」班
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
pp.10587, (Released:2017-12-12)
参考文献数
57
被引用文献数
3

脳卒中に対する合理的,経済的な疾病対策を行うためには,悉皆性と信頼性を合わせ持つ国家的な脳卒中登録事業が不可欠である.わが国の診療実態に即した脳卒中登録システムに必要な条件を明らかにするため,システマティックレビューを行った.2015 年12 月31 日までに発行された,脳卒中登録研究に関する医学文献を,MEDLINE および医学中央雑誌上で検索し,1533 編の文献から,51 の登録研究(国外38,国内13)を抽出した.レビューの結果から,日本における質の高い脳卒中登録事業に必要な条件として,医療ID 導入による既存大規模データベースとの連携と,それを可能にする法整備,行政による公的事業資金,学会や患者支援団体,企業の支援による安定的な資金確保,情報公開の重要性が挙げられた.
著者
伊藤 敞敏 金 武祚 菅原 弘 戸羽 隆宏
出版者
東北大学
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1991

シアル酸は生化学試薬として、また医薬品製造のための出発原料として、近年需要が急増しているが、その製造のための原料は、ツバメの巣などのごく限られたものとなっており、安価で大量の製造が困難な状況にあった。卵処理工場において卵成分の濾過の際に得られるカラザや卵黄膜の中には、多くのシアル酸が含まれていることに気付いたので、これを原料として工業的規模でシアル酸を製造することを試みた。これらの成分中には、シアル酸として代表的なN-アセチルノイラミン酸が高濃度で含まれているので、これを取り出すことを実験室的規模で検討した。原料を硫酸酸性下で加熱してシアル酸を遊離させ、陰イオン交換樹脂に吸着させたのち、ギ酸で溶出させ、減圧乾固、活性炭処理を行なった結果、湿カラザ試料100gより約50mg,湿卵黄膜試料100gより約175mgのシアル酸を得ることができた。これらの検討をもとに、つぎに大規模工業的製造のための製造テストを行なった。原料としては、カラザおよび卵黄膜部の混合試料800Kgを使用して、実験室的検討で得られた工程に従って処理を行なうことにより精製N-アセチルノイラミン酸を約300g得ることができた。現在試薬として市販されているN-アセチルノイラミン酸の価格は、1g約3万円と非常に高価であるが、卵は世界的に広く分布した食品であり、しかも卵の加工工場で得られるカラザや卵黄膜部は、従来は利用されず廃棄されていた部分である。従って原料は非常に安価であり、シアル酸の含量はかなり高く、かつ分離のための処理工程も比較的簡単であることから、本法によって今後はシアル酸の大量かつ安価な製造が可能となり、シアル酸を用いての研究や医薬品製造が容易になるものと期待される。
著者
栗原 弘
出版者
名古屋文理大学
雑誌
名古屋文理大学紀要 (ISSN:13461982)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.1-11, 2005-03-31

前橋の「藤直行成家族の葬送・追善仏事・忌日について」に引き続いて,同時代の政治家である藤原道長家族の葬送について分析した.本稿では道長の祖父母の世代から子供の世代までの家族成員の葬送についての基礎的な史実を明らかにすることを重点としている.墓制や追善仏事について別稿を参照のこと.
著者
栗原 弘
出版者
学校法人滝川学園 名古屋文理大学
雑誌
名古屋文理大学紀要 (ISSN:13461982)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.1-11, 2005-03-31 (Released:2019-07-01)

前稿の「藤原行成家族の葬送・追善仏事・忌日について」に引き続いて,同時代の政治家である藤原道長家族の葬送について分析した.本稿では道長の祖父母の世代から子供の世代までの家族成員の葬送についての基礎的な史実を明らかにすることを重点としている.墓制や追善仏事について別稿を参照のこと.
著者
餅原 弘樹 山本 泰大 川村 幸子 木下 寛也 古賀 友之
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.165-170, 2023 (Released:2023-06-19)
参考文献数
8

Mohsペースト(以下,MP)は,悪性腫瘍による皮膚自壊創の症状を緩和させる.MPの使用は患者のQOLを改善させる一方でさまざまな使用障壁が報告され,とくに在宅医療での使用報告は少ない.われわれはガーゼを支持体としてMPを厚さ約1 mmにシート化する工夫により,在宅医療でMP処置を実践している.本報ではその具体例を,訪問診療を受ける乳がん患者への使用を通して報告する.患者の主な症状は滲出液による痒み,臭気,自壊創そのものによる左上腕の動かしにくさであったが,週1回の処置を3回実施した後,いずれの症状も改善した.MPのシート化により,物性変化や正常皮膚への組織障害リスク,処置時間や人員配置といった使用障壁が下がり,MP処置を在宅医療にて開始できた.MPはシート化により,居宅でも初回導入が可能であり,既存の報告と同様に症状を抑える効果が得られる可能性が示唆された.
著者
藤原 弘 岩根 正昭
出版者
Japanese Society of Agricultural, Biological and Environmental Engineers and Scientists
雑誌
生物環境調節 (ISSN:05824087)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.15-18, 1968-08-31 (Released:2010-06-22)
参考文献数
5

著者らは, 動物の加速度の耐久限界を求めるため, 被験動物には, イヌ40頭, ウサギ50羽, モルモット60匹, ラット150匹, ハムスター50匹およびカエル8匹を用いた.加速度の種類は, 頭から足の方向に作用する+Gzと, 足から頭の方向に作用する-Gz, および体軸に直角に作用する横軸のGxの3種である.イヌは+10Gx, ウサギ, モルモットおよびラットは+15Gz, -5Gz, 15Gxおよびカエルは+15Gz, -15Gzである.これらの負荷からそれぞれの動物が全例死亡するまでの時間, 半数例死亡するまでの時間, および全例が生命保続できる安全域時間を検討した.結果はつぎのとおりである.(1) イヌに+10Gzを負荷した場合, 100%死亡する時間は8~11分で, 50%生存には3~5分, 安全域は1分以内である.(2) ウサギに+15Gzを負荷した場合, 100%死亡する時間は7~9分で, 50%生存には5~7分, 安全域は2分以内である.また, -5Gzの場合, 全例死亡10~13分, 50%生存5~7分, 安全域2分以内で, 15Gxの場合は, +Gz, -Gz負荷より延長し, 100%死亡には13~15分, 50%生存には8~11分, 安全域6分以内である.(3) モルモットに+15Gzを負荷した場合, 100%死亡する時間は17~20分, 50%生存には13~15分, 安全域は2分以内である.-5Gzの場合, 100%死亡20~23分, 50%生存には5~8分, 安全域3分以内で, 15Gxの場合, 100%死亡21~25分, 50%生存には9~11分, 安全域6分以内である.(4) ラットに+15Gzを負荷した場合, 100%死亡する時間は14~18分, 50%生存9~11分, 安全域は0.5分である.また, -5Gzの場合, 100%死亡15~20分, 50%生存には1~3分, 安全域0.5分で, 15Gxの場合, 100%死亡する時間21~25分, 50%生存する時間13~15分および安全域5.5~6.5分でモルモットとほぼ同様である.(5) ハムスターに+15Gz, -10Gzおよび15Gxを負荷した場合, ウサギ, モルモット, ラットに比べて耐久時間が著しく延長し, いずれの負荷にも強い.(6) カエルに+15Gz, -15Gzを負荷しても耐性が高く, 1時間負荷においても全例死亡しない.また, カエルは哺乳類に比べて著しく耐久度が高い.
著者
宮原 弘匡
出版者
日本地理教育学会
雑誌
新地理 (ISSN:05598362)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.28-39, 1995-03-25 (Released:2010-04-30)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

The main purpose of this paper is to make clear the spatial distribution of knowledge regarding Tokyo, Hokkaido and all the other prefectures for the study about Mental Maps of Japan. A survey made high school students in Nagano Prefecture answer each name of the prefectures pictured on white map was conducted. It provided with the percentage of “right”, “wrong”, and “no” answers according to the prefectures. Considering each distribution map of those data can be found spatial characteristics about the knowledge of them.The results are summarized as follows:1) The prefectures are located at the ends of the country, for example, Hokkaido, Okinawa prefecture, and so on are known very well. The knowledge of them are fixed or stable.2) The prefectures near Nagano prefecture regarded as familiar places, for example, Niigata prefecture and Gunma prefecture are known very well. But all prefectures near that may not necessarily be known. By way of example Yamanasi prefecture and Gifu prefecture can be found.3) Some prefectures are known well, for example, Tokyo and Osaka, are distributed separately.4) The prefectures are located halfway between above-mentioned prefectures and Nagano prefecture are not known much. Spacial distribution of knowledge of them presents uncontinuous distribution in the form of mosaic.5) The prefectures are dotted on the triangular-graph used three index, the percentage of “right”, “wrong”, and “no” answers are distributed continuously. And the author considers it means the development of knowledge about them.
著者
小嶋 雅代 酒々井 眞澄 鈴木 匡 坡下 真大 早野 順一郎 村上 里奈 山本 美由紀 浅井 清文 浅井 大策 石川 大貴 木村 侑樹 明石 惠子 赤津 裕康 大原 弘隆 川出 義浩 木村 和哲
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.221-235, 2019

<p>背景 : 医療系学生による高齢者家庭訪問実習の初年度の教育効果の検証.</p><p>方法 : 実習に参加した医学部3年生5名, 高齢者5名によるフォーカスグループインタビューを基に自記式調査用紙を作成し, 医学部3年生, 高齢者の全参加者に調査協力を依頼した.</p><p>結果 : 学生84人と高齢者30人が協力に同意した. 学生の74%が「高齢者の暮らしぶりが分かった」と回答し, 高齢者の57%が「良い変化があった」と回答した. 93%の高齢者が本実習に満足だったのに対し, 学生の肯定的な意見は半数であった.</p><p>考察 : 学生が本実習に積極的に取り組むためには, 各自が明確な訪問への目的意識を持てるよう, 入念な事前準備の必要性が示された.</p>
著者
船坂 徳子 吉岡 基 植田 啓一 柳澤 牧央 宮原 弘和 内田 詮三
出版者
The Mammal Society of Japan
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.1-11, 2010-06-30
被引用文献数
1

ミナミバンドウイルカ(ミナミハンドウイルカ)<i>Tursiops aduncus</i>の成熟オス4個体を対象として,日長が大きく異なる冬至,春分,夏至に3時間間隔で24時間の連続採血を行い,血液学的検査7項目(冬至,春分,夏至)および血液生化学的検査17項目(冬至,夏至)の日内変動を調べた.ヘマトクリット(HT),尿素窒素(BUN),尿酸(UA),中性脂肪(TG),ヘモグロビン濃度(HGB),赤血球数(RBC),白血球数(WBC),総コレステロール(T-CHO),アルカリフォスファターゼ(ALP),カリウム(K)に日内リズムが認められ,このうちHT,BUN,UA,TGのリズムは特に明瞭であり(<i>P</i><0.01),HTは18時に低値を示し,BUN,UA,TGはいずれも夕方から夜間にかけて高値を示した.これらの日内リズムの頂点平均時刻は,いずれの季節においても日長とは無関係にほぼ同時刻であったことから,そのリズムは内因性の概日時計に制御されている可能性が示唆された.他の項目の日内変動は,不規則なパルス状(好酸球分画,Eos;アルブミン,Alb;グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ,GOT;グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ,GPT;総ビリルビン,T-Bil:クレアチンフォスフォキナーゼ,CPK;ナトリウム,Na;クロール,Cl),経時的上昇あるいは下降(クレアチニン,Cre;血糖,Glu),ほぼ不変(好中球分画,Neut;リンパ球分画,Lym;総タンパク,TP;乳酸脱水素酵素,LDH)に区別できた.<br>