著者
原田 和俊 山口 美由紀 島田 眞路
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.123, no.11, pp.2069-2076, 2013-10-20 (Released:2014-10-30)

陥入爪とは爪甲が側爪郭を損傷し,炎症を引き起こした状態である.巻き爪とは遺伝的素因,生活環境などにより,爪甲が過度に彎曲した状態である.陥入爪の治療にはポリ塩化ビニル製チューブで陥入した爪甲を覆う方法や,アクリル樹脂を用いて側爪郭への陥入を除去する治療法などがある.疼痛を伴う巻き爪は,弾性ワイヤーなどを用いて過度の彎曲を矯正することが有効である.陥入爪と巻き爪の対応には,正確な診断を行い,各々の病態を理解し,正しい治療法を選択することが必要である.
著者
原田 靖 菊沢 悠斗
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-03-13

地磁気は宇宙放射線や太陽風が地球表面に侵入することを防いでいる.しかし,地磁気が逆転するとこれらが地表に到達し,その放射線の影響で地球上の生物に絶滅や突然変異などの影響を与えるのではないかと考えられている.本研究ではA Concise Time Scale 2016と, Hounslow et al., 2018 から得られた地磁気逆転数データと Alroy, 2010 及び Rohde and Muller, 2005 を用いた遺伝子レベルの多様性データとの相関を調べることを目的とする.検証の結果,この内 375Ma と 250Ma の大量絶滅イベントと逆転頻度の相関が見られた.さらに Shaviv, 2003 の鉄隕石の宇宙線照射年代との比較をすると,250Ma,375Ma で宇宙線が強くなった時期と生物絶滅から回復した時期が一致し,かつ 375Ma(Alroy,2010), 250Ma (Alroy,2010, GTS2016) の地磁気逆転頻度との同期が見られる.さらに一億年スケールで両者共に移動平均を取ると最小値と極大値,極小値を取る位置が一致していることがわかった.これらのことから地球磁場が弱くなったことにより宇宙線放射線が増え,そのことが生物の遺伝子の変異を促したと解釈できるが,170Maの磁場逆転頻度の極大値の時にはこの現象が起こっていない.地磁気逆転頻度データの問題点として,ジュラ紀後期以降の古地磁気極性データは海洋底地磁気縞模様由来であるのに対して,三畳紀以前は陸上の地層由来であるのでデータに連続性がなく,各研究によってもばらつきがあるため,信憑性が低い.また,遺伝子レベルの多様性は海洋属のデータであり,陸上生物よりも太陽風や宇宙放射線の影響は低いと考えられる.
著者
原田 智也 西山 昭仁 佐竹 健治 古村 孝志
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

慶長十六年十月二十八日(1611年12月2日)の三陸地震(以下,「慶長三陸地震」)は,地震動による被害の記録は未発見だが,東北地方・北海道の太平洋岸で津波による犠牲者が多数出たと記録されている.この特徴が,1896年明治三陸地震(M8.1)や1933年昭和三陸地震(M8.1)の特徴と似ていることから,慶長地震は,これらと同タイプの地震であったと考えられてきた(羽鳥,1975;相田,1977;渡辺,1998).ところが,2011年東北地方太平洋沖地震(M9.0;以下,「東北地震」)の発生後,慶長三陸地震による津波が,東北地震による津波と同様に広域的に高かったと判断し(例えば,蝦名,2014;岩本,2013),この津波を再現するためには,東北地震と同規模の断層面を持つプレート間地震(Mw8.4〜8.7)(今井・他,2015),あるいは,Mw9.0の津波地震(福原・谷岡,2017)を考える必要があることを,津波シミュレーションに基づき議論している.この判断は,三陸地方や仙台平野に伝わる津波の伝説や伝承を含む歴史記録に基づく津波高や浸水範囲(例えば,羽鳥,1975;都司・他,2011;蝦名・今井,2014)の推定が,東北地震と同等以上であることを主な根拠としている.しかし,津波高や浸水域の推定方法,推定に使われた歴史記録の信頼性について十分な検討が行われたとは言い難く,歴史研究者からも疑問が呈されている(例えば,菅野,2014;佐々木,2014;斎野,2017). そこで本研究では,同時代史料による慶長地震の特徴と東北地震を比較することにより,慶長三陸地震の震源像を考察した. 東北地震の発生時,東京は震度5弱〜5強の強い揺れに長時間見舞われ,本震後24時間以内の有感地震は200回を越えた(気象庁震度データベースによる).さらに,長野県北部でMw6.7,静岡県東部でMw6.4の誘発地震が発生し,被害も出た.よって,慶長三陸地震が東北地震と同規模のプレート間地震であれば,江戸では長時間の強い揺れとそれに伴う大被害,さらに,数日以上にわたる余震・誘発地震による揺れが記録されている可能性がある.実際に,寛政五年一月七日(1793年2月17日)の宮城県沖の地震(M8.0〜8.4)では,江戸で小被害と地震後2日間で約50回の有感地震が記録されている(宇佐美・他,2013). 慶長三陸地震発生時の江戸には,京都の公家の山科言緒と舟橋秀賢が滞在しており,それぞれ,『言緒卿記』に「(廿八日)辰刻大地振,(廿九日)至夜地動」,『慶長日件録』に「(廿八日)午刻地震,(廿九日)丑刻地動」と記している.本震の震度は3程度と推定され,長時間揺れたという記述はない.また,余震によると思われる揺れは,本震翌日の“地動”が1回記録されているのみである.さらに,両日記には,地震翌日に武蔵野見物に行った様子が記されており,有感地震が続発した状況はみられない.『駿府記』によれば,徳川家康は十月廿六日以降に現埼玉県内で何事もなく鷹狩りを挙行している.また,東北地震後のような誘発被害地震の記録もない.したがって,関東において,本震の揺れが弱く,活発な余震活動や誘発地震の記録がない慶長三陸地震が,東北地震と同規模の断層面を持つプレート間地震であったとは考え難い. 斎野(2017)によれば,仙台平野の考古遺跡からは,岩沼市の高大瀬遺跡を除いてこの地震によると考えられる津波堆積物は確認されていない.また,岩手県宮古市の沼の浜,福島県南相馬市の井田川低地においても確認されておらず(Goto et al. 2019; Kusumoto et al. 2018),慶長三陸地震の津波の規模は東北地震より小さかった可能性が高い. 以上より,この地震は,三陸海岸で10m以上の高い津波を発生させたが,東京において本震の揺れが弱く,余震もほぼ感じられなかった明治三陸地震か昭和三陸地震と同タイプの地震であった可能性が高い. なお,後世に成立した史料や成立年不明の史料の中には,慶長三陸地震の5年後の元和二年(1616年)十月廿八日に地震と津波があったことを示す史料が含まれる.例えば,『大槌古館由来記』では「元和二年丙辰年大津波,其日十月廿八日八日市日ニて,朝よりゆり出度々地震仕候,」の記述がある. 元和二年には,七月廿八日に仙台城の石垣・櫓に大被害を与えた大地震が記録されており,(『伊達治家記録』),時刻は異なるが江戸における長時間の地震の揺れの記述もある(『イギリス商館長日記』).商館長日記には,翌日にも江戸で2,3回の地震があったと記述されている.したがって,『大槌古館由来記』のような史料では,慶長三陸地震と元和二年の大地震とが混同されている可能性がある.今後,慶長三陸地震の地震像を考えるに当たり,元和二年の大地震を含めた検討が必要である.
著者
福沢 愛 田中 嵐 原田 和弘 増本 康平
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.93.20055, (Released:2022-03-31)
参考文献数
27

We investigated the relationships between the sense of acceptance by a communication partner and the degree of familiarity with that partner, and the effects of university students’ and older adults’ personalities on the strength of their relationships. The participants played the Settoku Nattoku game, the persuasive game. After each session, the persuader rated their familiarity with the persuaded partner and the degree to which they felt that the partner accepted them. The results of Hierarchical Linear Modeling indicated that familiarity with the partner was positively related to the sense of acceptance in university students. This relationship was stronger among people with typical East Asian psychological tendencies, including high interdependence. Older adults had a higher sense of acceptance than university students, whereas familiarity with the partner was not related to their sense of acceptance. Moreover, the sense of acceptance was higher among older adults who preferred a firm yes or no. These results suggest that Japanese elderly who were free of cultural norms had a high sense of acceptance, regardless of who their communication partners were.
著者
南川 久人 藤原 海 栗本 遼 安田 孝宏 原田 英美子 畑 直樹
出版者
日本実験力学会
雑誌
実験力学 (ISSN:13464930)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.77-83, 2016-04-11 (Released:2016-04-11)
参考文献数
17
被引用文献数
1

Effects of microbubbles on germination and growth in deep flow technique of spinach (Spinacia oleracea) were investigated. In the germination experiment, four experiment plots; (1) underwater germination with microbubble water plot (MB plot), (2) underwater germination with aerated water plot (Aeration plot), (3) underwater germination with water plot (Water plot), (4) germination on wet cotton plot (Control plot), were used. Two hundred individuals were germinated for each plot. Germination rate of MB plot after 7 days was about twice as high as that of Aeration plot and Control plot. In the growth experiment, three experiment plots; (1) tenth solution concentration water with microbubble plot (MB plot), (2) tenth solution concentration water plot (Aeration plot), (3) full solution concentration water plot (Control plot), were used. Twelve individuals were grown for each plot. Leaves weight of MB plot was as much as that of Control plot. In contrast, plant physiological disorders appeared in all plants of Aeration plot. Multi-element determination revealed that K concentration of Aeration plot was lower than that of the others plots. These results indicate that microbubbles contribute to the plants absorbing the nutrient from roots.
著者
宮本 侑斗 原田 明徳 ビクラマシンハ ナヴィンダ キトマル 宮沢 与和 船曳 孝三
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
航空宇宙技術 (ISSN:18840477)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.1-10, 2014 (Released:2014-02-13)
参考文献数
11
被引用文献数
3 7

Fuel efficient flight is demanded due to air traffic increase, environmental concerns and skyrocketing fuel prices. To achieve an effective futuristic air traffic management system, realization of TBO (Trajectory Based Operations) optimized from departure to arrival is aimed in CARATS (Collaborative Actions for Renovation of Air Traffic Systems). In this paper, 4-D trajectory of passenger aircraft is optimized for fuel minimization on the assumption that aircraft is not bounded by any air traffic control constraints. BADA (Base of Aircraft Data) model is adopted for aircraft performance model, and dynamic programming is used to calculate the optimal trajectory. The optimal trajectory is compared with airliner’s flight trajectory by evaluating fuel consumption, flight time and flight range. Examples show that considerable amounts of reduction in fuel consumption could be achieved by trajectory optimization compared to the estimated values of actual flights.
著者
原田道寛 著
出版者
春秋社
巻号頁・発行日
vol.下巻, 1941
著者
川野 徳幸 原田 浩徳 大瀧 慈 佐藤 健一 星 正治 小池 聖一 平林 今日子
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

①セミパラチンスク核実験場近郊住民を対象に、アンケート調査・証言収集調査を実施した。4年間で計597件のアンケートを回収。②朝日新聞・読売新聞実施の被爆実態アンケート調査の結果を援用し、原爆被爆者の「核なき世界」以外の「思い」の一端、「ヒロシマ」というアイデンティティ、被爆体験継承の可能性、を考察した。③被爆証言を用い、経時的に観測されたテキストデータの特徴を、時間を考慮して視覚化する方法を提案した。これは、業績に示すように国際学会において、Best paper Awardを受賞。④オーラルヒストリーを編集し、『チェルノブイリ・旧プリピャチ住民へのインタビュー記録(第二報)』を発行した。
著者
武笠 知幸 河上 洋樹 安川 宏輝 丹澤 朋世 佐藤 可士和 中村 勇吾 山 健太郎 鈴木 朗裕 沢木 和樹 石合 美紀 水田 賢二 清水 優花 高橋 祐規 原田 英聡 谷口 充大 石田 多朗 益子 宗
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究作品集 (ISSN:13418475)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.1_34-1_39, 2022-03-31 (Released:2022-03-19)
参考文献数
12

UNLIMITED SPACEは2次元のタイポグラフィと3次元でキャプチャされた人体動作、そして大規模オンラインデータを統合したインタラクティブインスタレーション作品である。展示空間に足を踏み入れると、人気の検索ワードから抽出された単語が人体形状に沿って動的に配置され、その様が壁面に投影される。インターネットサービスは我々消費者のニーズを満たすために膨大な量のデータを処理し続けているが、我々が日々の暮らしの中でその存在を意識することは稀である。普段我々が商品やサービスを検索する際、それらの検索クエリがいかにダイナミックにシステムの内部で処理されているかを想像することは難しい。本作品の目的は実世界の消費者と手に取る事の出来ないデータの世界を繋ぐ事である。UNLIMITED SPACEでは、鑑賞者の鏡像をデータで再構成することにより日々の生活がデータに還元されていることを示唆し、消費者とデータの世界が成す無限の広がりを表現した。来場者は自由に展示空間を動き回り、自身の動作と我々のオリジナルフォントで表現されたデータの世界が相互作用する様を体験することが出来る。
著者
原田 まつ子 相良 多喜子 宇和川 小百合 塩入 輝恵 斎藤 禮子 平山 智美 西村 純一 苫米地 孝之助
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.403-411, 1995 (Released:2010-04-30)
参考文献数
24

石川県金沢市内に在住する単身赴任の男性37人を対象に, 健康状態, 栄養素及び食品群別摂取量状況調査, 性格調査 (谷田部・ギルフォード法) を行い, 単身赴任歴3年未満と3年以上, 性格の情緒安定因子と向性因子の性格特性とこれらとの関連を検討し, 次の結果を得た。1) 単身赴任歴の3年未満の者は, 3年以上に比べて“風邪をひきやすい”と回答した者が多く (p<0.05), 関連の度合が大きい。2) 単身赴任歴の3年未満の者は, 3年以上に比べて, 栄養素の摂取量でみると, ビタミンAを除く全ての栄養素が低値であり, 食品群別において, 特に緑黄色野菜の摂取量が少ない (p<0.05)。3) 情緒不安定な者は平均または安定な者に比べ, また, 積極型の者は平均または消極型の者に比べ“風邪をひきやすい”と回答した者が多く, 有意差が認められた (p<0.05)。4) 栄養素及び食品群別摂取量では, 情緒不安定な者は鉄, 野菜類の摂取量が有意に少なく, また, カルシウム, ビタミンC, 豆類も野菜類と同様に, 情緒不安定の者のほうが摂取量が少なかった。一方, 積極型は平均または消極型に比べ, 脂質量が多く, 緑黄色野菜の摂取量は有意に低値で, ビタミンCは少なかった。5) 性格特性の情緒安定因子とは, カルシウム, 鉄, 豆類, 野菜類が, また, 向性因子には脂質, ビタミンC, 乳類, 緑黄色野菜とに関連が認められた。
著者
金築 利旺 原田 真介 桑原 修 岩垂 邦秀 奥 展威 矢野 宏
出版者
一般社団法人 品質工学会
雑誌
品質工学 (ISSN:2189633X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.21-28, 2013-02-01 (Released:2016-10-17)
参考文献数
7

A second experiment in the application of quality engineering to sweet-potato cultivation was carried out. The first experiment took two years: an L18 orthogonal array experiment was carried out in the first year and then a confirmatory experiment was carried out in the following year. In the second experiment, the confirmatory experiment was carried out under conditions prepared in advance so that the orthogonal array experiment and the confirmatory experiment could be carried out simultaneously, which enabled the whole experiment to be finished within one year. The sweet potatoes were evaluated by analysis of variance;calculations were performed to determine interaction effects among months of cultivation, the size of the harvested potatoes, and relevant control factors and noise factors. As a result, it was found that months of cultivation and potato size are closely related. Relationships between months of cultivation and potato size were derived for each control factor level, enabling cultivation conditions to be selected for harvesting sweet potatoes of any desired size.
著者
畠中 俊暉 原田 勇希 草場 実
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
科学教育研究 (ISSN:03864553)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.393-405, 2021 (Released:2022-01-06)
参考文献数
46

This study focused on observations and experiments in science classes to examine the effects of interest in observation and experiments on learning strategies and “knowledge of skills for observations and experiments” (academic achievement index). The hypothesized model was a model with interest as the predictor variable, learning strategies as the mediation variable, and knowledge of skills as the objective variable. The first was to estimate the factor structure of the learning strategies in observations and experiments, and the second was to estimate the “Item Discriminations” and “Item Difficulties” using Item Response Theory in order to clarify the structure of the target variable, “knowledge of skills for observations and experiments”.The results of testing the model showed that there was an indirect effect (β=.266 [.092, .452]) from positive emotion (“strength” of interest) to “knowledge of skills for observations and experiments” mediated by problem-solving strategy. And there was an indirect effect (β=.092 [.037, .192]) from thought deepening-based orientation (“depth” of interest) to “knowledge of skills for observations and experiments” mediated by problem-solving strategy. This result indicates that both the strength and depth of interest in observations and experiments independently contribute to academic achievement in science learning.
著者
吉井 千春 加濃 正人 磯村 毅 国友 史雄 相沢 政明 原田 久 原田 正平 川波 由紀子 城戸 優光
出版者
The University of Occupational and Environmental Health, Japan
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.45-55, 2006-03-01 (Released:2017-04-11)
被引用文献数
33 26

喫煙習慣は心理的依存と身体的依存から成り立っている. 我々は心理的依存の一要素として社会的ニコチン依存という新しい概念を考え出し, それを評価する新しい調査票として「加濃式社会的ニコチン依存度調査票Version 2」(the Kano Test for Social Nicotine Dependence; KTSND)を作成した. KTSNDは10問30点満点からなるが, その有用性を検討するため製薬会社社員に配布し, 344名から有効な回答を得た. 喫煙者(105名), 元喫煙者(88名), 非喫煙者(151名)の各群で, 総合得点は18.4±5.2, 14.2±6.1, 12.1±5.6と3群間でいずれも有意差を認めた. 設問別の検討では10問すべてで喫煙歴による有意差を認めた. さらに喫煙者をニコチンの身体的依存の指標である「1日喫煙本数」および「朝の1本を起床何分後に吸うか」で亜分類し, 総合得点との関連を検討したが, ほとんど差は出なかった. これに対して禁煙のステージによる亜分類では, 全く禁煙の意志がないimmotives(無関心期)で22.4±6.3, precontemplators(前熟考期)が19.0±3.9, contemplators(熟考期)が16.1±3.8, preparers(準備期)が14.5±5.9と, 各群間で有意差を認めた. これらの結果から, KTSNDは喫煙習慣の有無や禁煙のステージをよく反映し, 喫煙の心理的依存を評価する手段として有用な方法と考えられた.
著者
巽 博臣 升田 好樹 今泉 均 吉田 真一郎 坂脇 英志 後藤 京子 原田 敬介 信岡 隆幸 平田 公一
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.28, no.6, pp.1245-1250, 2013 (Released:2013-12-25)
参考文献数
17
被引用文献数
2

【目的】重症患者における早期経腸栄養開始後は便秘・下痢が問題となる。排便量から緩下剤の継続・休止や必要な処置・検査などを決定する排便コントロール基準 (以下、本基準) の効果について検討した。【対象および方法】ICUで経腸栄養を7日以上継続した53症例 (導入前群24例、導入後群29例) を対象とした。「一日排便量≥300g」を下痢、「48時間以上排便がない状態」を便秘と定義し、経腸栄養開始後1週間の排便状況を両群間でレトロスペクティブに比較検討した。【結果】一日排便量の1週間における推移は導入前後で交互作用がみられた。7日間における下痢の頻度は導入前群2.5±0.3日、導入後群2.0±0.3日と有意差はなかったが、便秘の頻度は1.5±0.3日から0.7±0.2日に、便秘または下痢の頻度は4.0±0.3日から2.6±0.3日に有意に減少した。【結語】排便量に従って薬剤投与や浣腸処置の追加を判断できる本基準の導入により、排便量および下痢・便秘の頻度が減少した。本基準の導入により適切な排便コントロールが可能となり、経腸栄養管理を有効かつ安全に実施できると考えられた。
著者
原田 忠四郎
出版者
日本体育大学
雑誌
日本体育大学紀要 (ISSN:02850613)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.87-101, 1973-06-10