著者
今村 知子 川原田 史治 杉森 文夫
出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類学雑誌 (ISSN:13485032)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.1-16, 2015-09-30 (Released:2017-09-30)
参考文献数
53

齢既知のハシボソミズナギドリPuffinus tenuirostris 14個体の下顎骨を用い,雛から成鳥まで,成長とともに変化する骨の組織形態を調べ,年齢との関係について考察を行った。「脱灰標本法」により組織標本を作製し,デラフィールドのヘマトキシリンで染色したのち,鏡検した。その結果,成長に伴う組織形態の形成過程が明らかになり,1ヶ月齢から6ヶ月齢までの雛と幼鳥の月齢の識別ならびに亜成鳥と成鳥の判別が可能であることが見出された。齢とともに発達する年輪的な層状構造は1歳以上の3個体すべてにおいて観察されたが,年齢とは一致しなかった。ハシボソミズナギドリの下顎骨における層状構造の形成は,初め外基礎層板において広い範囲に見られるが,年齢を経るとともに,形成と同時に骨内部からハバース系の発達による侵食を受け,実際の年齢よりも本数が少なくなると考えられた。
著者
原田 茜 吉田 俊也 Resco de Dios V. 野口 麻穂子 河原 輝彦
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.90, no.6, pp.397-403, 2008 (Released:2009-01-23)
参考文献数
14
被引用文献数
4 4

北海道北部の森林では, ササ地を森林化させるために掻き起こし施業が広く行われてきた。施業から6∼8年が経過した樹冠下の掻き起こし地を対象に, 9種の高木性樹種を対象として樹高成長量と生存率を調べ, それらに影響する要因(植生間の競争・促進効果)を明らかにした。成長量と生存率が高かったのはキハダとナナカマド, ともに低かったのはアカエゾマツであった。多くの樹種の成長は, 周囲の広葉樹または稚樹以外の下層植生の量から促進効果を受けていた。ただし, シラカンバについては, 施業後3∼5年目の時点では促進効果が認められていたものの, 今回の結果では競争効果に転じていた。一方, 生存率については, 多くの樹種について周囲の針葉樹による負の影響のみが認められた。密度または生存率の低かった多くの樹種に対して, 周囲のシラカンバやササの回復が負の要因として働いていないことから, 多様な樹種の定着を図るうえで, 除伐や下刈りの実行は, 少なくともこの段階では有効ではないと考えられた。
著者
原田 翔平 大村 一郎 附田 正則
出版者
社団法人電気学会
雑誌
電気学会研究会資料. EDD, 電子デバイス研究会
巻号頁・発行日
vol.EDD-15, pp.EDD-15-085, 2015-10

Double gate IGBT is proposed and confirmed significant reduction of turn-off loss with TCAD simulation. Conventional IGBTs have a problem of large turn-off loss with stored carrier in N-base. The proposed structure declines carrier injection during turn-off by dynamic hole injection decrease with the collector side gate control.
著者
田中 啓規 立山 清美 原田 瞬 日垣 一男
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.645-653, 2019-12-15 (Released:2019-12-15)
参考文献数
21

本研究は,自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder;以下,ASD)のある児の箸操作の特徴を明らかにすることを目的とした.ASDのある児18名と定型発達児16名を対象とし,「箸の持ち方」,「箸の操作パターン」,「箸操作時の指の動き」を比較検討した.その結果,ASDのある児の箸操作の特徴として,「箸を開く時の一定しない母指の動き」,「橈側と尺側の分離運動の未熟さ」,「動きが一定しない不安定な指の動きによる箸操作」があることが明らかになった.また,これらの要因としては,手指の分離運動の未熟さ,視覚優位な情報の捉え方,行為機能の障害が影響していることが考えられた.
著者
原田 瞬 立山 清美 日垣 一男 田中 啓規 宮嶋 愛弓
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.165-172, 2017-12-31 (Released:2020-04-20)
参考文献数
16

自閉スペクトラム症(ASD)は,社会的コミュニケーションの障害を主症状とし,近年増加傾向にある.ASD 児は,定型発達児よりも高い割合で偏食等の食事に関する問題をもつことが知られている.著者は,臨床で口を開けたまま咀嚼しているケースを多く目にした経験から,ASD 児には口腔機能の未熟さがあり,食べにくいという経験を積み重ねやすいのではないかと考えた.ASD 児の口腔機能については,食事場面の観察評価から,捕食,咀嚼,前歯咬断や嚥下の問題が指摘されている.しかし,定量的な指標を用いた評価や定型発達児と比較検討した報告はなされておらず,ASD 児の口腔機能の実態は十分には明らかになっていない.そこで,本研究の目的は,定型発達児との比較によりASD 児の口腔機能の特徴を明らかにすることとした.ASD 群27 名,定型発達群25 名を対象に,捕食機能,咀嚼機能の定量的な評価を試みた.捕食機能については,定型のスプーンからヨーグルトを捕食した際にスプーンに残ったヨーグルトの量から評価した.咀嚼機能については,定型定量のせんべいを摂取した際の咀嚼回数と,咀嚼中にどの程度口唇閉鎖ができているかを評価した.両群の口腔機能を統計的に比較した結果,ASD群においては,口唇を使ってスプーンから食物を取り込む捕食機能が未熟であった.また,定型定量の食物を食べた際の咀嚼回数が定型発達群よりも有意に多く,咀嚼中の口唇閉鎖が明らかに未熟である児が多かった.ASD 児の食事に関する問題については,ASD 児の感覚の偏りや,行動の特性によるものと考えられてきたが,口腔機能の未熟さという視点を加え,総合的な支援が必要であることが示唆された.
著者
荻原 琢男 井戸田 陽子 木暮 悠美 原田 瞳 河合 妙子 矢野 健太郎 柿沼 千早 宮島 千尋 笠原 文善
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第41回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.P-176, 2014 (Released:2014-08-26)

【目的】アルギン酸(Alginic acid :Alg)は天然の藻類に含まれる多糖類であり,食品添加物や健康食品あるいは医薬品の原料として使用されている.また,そのナトリウム塩(Na-Alg)はストロンチウム(Sr)の体内取り込みを低減させる作用を有することが報告されている.しかしながらNa-Algの服用はナトリウムの過剰摂取に繋がる可能性があるため,Algの他の塩においても同様なSr吸収抑制効果が認められ,さらにSrに対してだけでなくセシウム(Cs)などの他の重金属においても同様な作用が認められれば,Algの有用性はさらに増すものと期待される.そこで本研究ではNa-Algおよびアルギン酸カルシウム(Ca-Alg)による重金属の吸収抑制および排泄促進効果を検討した.【方法】各種濃度のNa-Alg溶液に各種重金属の塩を加え,メンブレンフィルターを用いて遠心分離し,フィルター透過率を算出することによりNa-Algの重金属との吸着作用を検討した.また,ラットに通常飼料(control群)またはNa-AlgあるいはCa-Alg含有飼料を14日間与え,経時的に血漿中SrまたはCs濃度を測定し,その排泄促進効果を検討した.さらに,これらの飼料を14日間与えたラットにSrまたはCsの溶液を経口投与し,経時的に血漿中のSrまたはCs濃度を測定し,吸収抑制効果を検討した.加えて,同様に14日間飼育したラットの生化学検査および病理解剖を行い,各種血中パラメータおよび主要臓器への影響を観察し,安全性を評価した.【結果・考察】in vitroの検討において,Na-Algはその濃度依存的に各種重金属を吸着した.またラットにNa-AlgまたはCa-Alg含有飼料を与えたところ,control群と比較して血中のSr濃度は徐々に低下したが,Csの濃度はCa-Alg投与群でのみ低下した.さらに,SrまたはCs溶液を経口投与したとき,control群と比較してSrのラット血漿中濃度はNa-AlgおよびCa-Algいずれでも低下したが,Csの濃度はCa-Algにおいてのみ低下が認められた.これらのことからCa-AlgにはSrのみならずCsの排泄促進および吸収抑制効果があるものと考えられた.
著者
菊池 城治 雨宮 護 島田 貴仁 齊藤 知範 原田 豊
出版者
日本犯罪社会学会
雑誌
犯罪社会学研究 (ISSN:0386460X)
巻号頁・発行日
no.34, pp.151-163, 2009-10-20

警察や一般市民の間で,声かけなどのいわゆる不審者遭遇情報は,より重篤な性犯罪などの前兆事案として捉えられているものの,実証的な研究はこれまでなされてきていない.本研究では,犯罪学における近接反復被害の分析手法を応用し,声かけなどの不審者遭遇情報とその後の性犯罪発生との時空間的近接性を検証する.A都道府県警察における3年間の不審者遭遇情報(1,396件)と屋外での性犯罪(599件)の認知データを地理情報システム(GIS)とシミュレーション手法を用いて時空間的に解析したところ,声かけなどの不審者遭遇情報と性犯罪は時間的にも空間的にも近接して発生していることが分かった.具体的には,声かけなどの不審者遭遇情報発生後,少なくとも1ヶ月にわたって発生地点から1kmの範囲において性犯罪の発生件数が有意に高いことが示された.この結果に基づいて,本研究の限界を踏まえつつ,実証データに基づく警察活動への考察を行う.
著者
原田 茂
出版者
教育哲学会
雑誌
教育哲学研究 (ISSN:03873153)
巻号頁・発行日
vol.1965, no.12, pp.15-27, 1965 (Released:2009-09-04)
参考文献数
23

“Nature” is the central concept in the education of the Enlightenment and the task of education is to foster the nature with which man is endowed according as children grow up. Here is seen a strong trust of the nature of man, while Kant, who draws a strict line between the empirical world of phenomena and the transcendental world of ideas, takes a different standpoint from that of the Enlightenment. In Kantian philosophy the pure forms of reason and pure laws of will are enthroned with the result that the task of education is not to develop natural endowments but to discipline them through education and lead them into the transcendental world. Man, a personality provided with reason and autonomous will, is an existence which stands on a completely different level from that on which other animals crawl, and it is incumbent on man to realize this dignity of his personality. On the other hand, however, Kant is strongly influenced by Rousseau as far as his view of education is concerned, and his belief in the goodness of human natnre forms the keynote of his view of education. Moreover, his concept of human liberty and equality are to be clearly traced back to Rousseau. The present writer tries to consider Kant's view of education as the consequence of his philosophy and at the same time in reference to Rousseau.
著者
山田 浩子 原田 利宣 吉本 富士市
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.1-8, 2003-09-30
被引用文献数
1

今日,ゲームやアニメ作品等に登場する2次元(2D)キャラクターが3次元(3D)CG化や立体造形(以下、フィギア)される傾向にある。また,アニメ等の作品自体の人気をも左右するキャラクターデザインは,今後益々重要になると考えた。そこで,本研究ではフィギア,日本人形,およびリカちゃん人形の顔の造形にはどのような相違があり,また人の顔と比較することによりどのように人の顔を抽象化しているかを明らかにすることを目的とした。まず、人や人形の顔の形状を3次元計測し,顔の曲面を構成するキーラインとして顔の特徴点における断面線7箇所を抽出した。次に,それらにおける曲率半径とその変化の仕方の分析結果と,高速フーリエ変換による曲率半径の周波数分析からそれぞれの顔の特徴分析を行った。また,その解析結果を人形の顔作りに応用し,評価を行った。その結果,それぞれの人形の特徴を作り分けることができ,その指針の有用性を確認した。
著者
久住 庄一郎 揚原 祥子 竹内 由紀子 原田 圭
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.363-372, 2018-03

[要約] 中学校や高等学校での音楽活動は,小学校におけるそれより格段に充実してくる。高等学校ともなれば身体的な発達も著しく,運動競技などと同様に,生徒の演奏能力は既に大人顔負けの場合も珍しくはない。ただ,それはほぼ部活動に限定された現象で,それ以外の生徒は小学校時代から音楽的スキルに大きな変化が無いのが実情ではないだろうか。これは個人差こそあれ,他の教科ではあまり考えられないケースであろう。本論文では,その原因を「ソルフェージュ教育の欠落」に見出した4人の教員養成に関わる教員が,様々な観点からその解決策を提言し,音楽的な本質をいかにして学校教育の中に見出していくべきかを論ずる。
著者
對馬 育夫 小越 眞佐司 山下 洋正 原田 一郎
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.23-28, 2013 (Released:2013-01-10)
参考文献数
7
被引用文献数
8 8

福島第一原子力発電所事故に伴い飛散した放射性物質が,東北·関東を中心とする多くの下水処理施設において検出されている。本研究では,放射性物質により下水汚泥が高濃度に汚染されるメカニズムを解明するため,関東・東北地方の4箇所の下水処理場を対象に,流入状況の調査および各処理過程における放射性核種分析を行った。さらに,放射性物質を含む下水汚泥の埋立処分のための知見を得るため,下水汚泥焼却灰及び溶融スラグについて,溶出試験を行い,放射性セシウムの溶出特性を調査した。その結果,下水処理場内に流入した放射性物質は主に反応槽内において保持されていること,大部分の放射性物質が浮遊物とともに汚泥側に移行していることが示された。また,溶出試験において,本試験に供した12検体のうち9検体については,溶出液の放射性物質は検出限界値以下であり,残り3検体については,溶出率が0.5-2.7%と極めて小さかった。
著者
入江 彰昭 原田 佐貴 内田 均 竹内 将俊 Teruaki Irie Saki Harada Hitoshi Uchida Masatoshi Takeuchi
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.9-18, 2020-06-29

本研究は,宮城県・岩手県において数百年以上の間,持続的なマネジメントによって維持されてきた屋敷林「居久根(いぐね)」の多面的機能性,特に居久根の植栽構成の工夫と生活文化的価値,防風効果の価値,および鳥類の生息環境としての価値を明らかにした。1)居久根の竹類を除いた樹木構成は針葉樹7割,常緑広葉樹2割,落葉広葉樹1割であった。居久根の北西側に枝葉の細かいスギやアスナロなど常緑針葉樹を多数植栽することで防風効果を高めると同時にこれらの樹種は建築材として活用され,スギ下に植えられたタケ類は防風用として,かつ農業・漁業の道具として活用されていた。潮風に強いヤブツバキやマサキ,湿地帯に適応したハンノキを植栽する工夫がみられた。2)居久根の内外の気象データの解析から,居久根は冬季の季節風を7-9割減速させ,居久根内の母屋に安定した居住環境をもたらしていることを明らかにした。さらに3次元GISとCFD(Computational Fluid Dynamics)による風況解析シミュレーションによって居久根の防風効果と風の流れを可視化することで,減速域が風下側に約100 m以上の距離にまで広がっていることがわかった。3)冬季鳥類の生息環境としての居久根の機能を明らかにするため,水田域内の農地,居久根が含まれる水田域内の農地,丘陵樹林地の異なる3つの環境を対象に調査した。その結果,居久根が含まれる農地で31種が確認され,地点当たりの確認種数は水田域内の農地よりも多く,居久根は樹林内や林縁を好む種の生息場所として機能していた。今日の大災害時代の我が国においてグリーンインフラとしての多面的機能性を有する居久根は,気候変動の緩和と適応や災害に対するレジリエンスをはじめ,屋敷林文化の価値,野生動物の生息場所の提供,故郷の風景の再生や愛郷心に大いに貢献できると考えられる。
著者
原田 信之 Nobuyuki HARADA
雑誌
新見公立短期大学紀要 = The bulletin of Niimi College (ISSN:13453599)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.209-220, 2002-12-25

琉球の歴代王統は,神話時代にあたる天孫氏時代を除外すると,舜天王統以降,英祖王統,察度王統,第一尚氏王統,第ニ尚氏王統と統いた。これらの王統のうち,本橋では察度王統の始祖である察度とその子孫をめぐる伝説を中心として扱った。在位時に多くの業績を残した察度も晩年には権勢におごる心が生じたというが,察度の世子武寧は父の死後即位してから日夜気ままに遊び暮らし,尚思紹・尚巴志父子に滅ぼされたという。琉球の正史には,武寧に関して,隠遁後の足跡も没年も伝わっていないと記してあるが,興味深いことに,宜野湾市我如古地区には,武寧の子をめぐる伝説が伝えられている。土地の伝承では,「武寧王の三男」とされる「我如古大主」が我如古地区にやってきて我如古グスクを築城し,その築城の際のお祝いの踊りが「我如古スンサーミー」であったという。本稿は,新たに採集した□承資料などの検討を通して,察度王統の始祖察度の子孫をめぐる伝説の全体像をまとめ,残存資料の少ない琉球王朝始祖伝説の一側面を考察した。