著者
宮代 こずゑ 原田 悦子
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.118-134, 2016-06-01 (Released:2016-12-01)
参考文献数
50

To demonstrate the effects of harmonization between a word’s semantics and its typographies on human language word processing, we conducted a series of priming ex-periments using a word-fragment completion task. In the learning phase of experiment 1, words were presented visually as typography was manipulated to be either har-monized or anti-harmonized with a word’s semantics. The results indicated that the visual processing of a word was facilitated when the semantics of the word were harmo-nized with its typographies, compared with instances where they were anti-harmonized,which was observed as a result of decreased phonetic priming. In experiment 2, it was demonstrated that priming was decreased by harmonized typographies, but this decline was canceled by presented speech sounds compared with the results of experiment 1 although neutral speech sound recordings of words were presented with letters visually presented as words. In experiment 3, the harmonization was manipulated using not only letters but also speech sounds that were manipulated to be harmonized or anti-harmonized. The results showed that the processing of letters was interfered with by those harmonized speech sounds. These results imply that greater processing resources were used for the sensory modality that was manipulated its harmonization.
著者
土手 裕 関戸 知雄 原田 秀樹
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会研究発表会講演集 第33回廃棄物資源循環学会研究発表会
巻号頁・発行日
pp.201, 2022 (Released:2022-11-30)

太陽光パネルから分離されたカバーガラスおよび資源回収残渣の混合物をコンクリート用骨材として利用した場合の環境安全性評価を目的として、溶出試験および含有量試験を行った。エッチングと湿式分離を比べると湿式分離の方がPbの基準値超過の程度が小さいため、エッチングよりも湿式分離の方が優れていると言えた。 廃パネル骨材の原料となる湿式分離残渣のPb含有量が基準値を1.5倍超過した。しかし、廃パネル骨材のPb含有量は、カバーガラスと湿式分離残渣の混合による希釈効果により含有量基準を満足した。廃パネル骨材のPb以外の有害物質含有量も基準を満足した。 廃パネル骨材が含有量基準・溶出量基準を満足したことにより、廃パネル骨材を用いて作成された利用模擬試料も両方の基準を満足した。よって、廃パネルをコンクリート用骨材として用いた場合、骨材、利用模擬試料どちらで評価しても環境安全上再利用が可能であると言えた。
著者
原田 秀樹 酒井 紀行 松山 普一 飯島 正広 白間 英樹
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会研究発表会講演集 第33回廃棄物資源循環学会研究発表会
巻号頁・発行日
pp.195, 2022 (Released:2022-11-30)

太陽光発電システムは、再生可能エネルギーの旗手として2010年以降急速に普及し、さらに最近ではカーボンニュートラル政策が後押しとなり、導入に拍車がかかっている。一方でその保証年数である20年を過ぎる2030年頃から廃棄モジュールが大量発生することに対する懸念が社会問題となっている。それに対し我々はモジュール内の重量比で大部分を占めるガラスに対するマテリアルリサイクルの研究を行った。モジュールはガラスと樹脂および太陽電池セルが密着積層された構造となっており、ガラスを割らずにモジュールから回収する「パネルセパレータ」を開発した。またガラスに付着する樹脂残渣量をリサイクル可能なレベルで抑制し、さらにそれを維持する研究を行った。一方、回収したガラスの組成を分析し、含有する元素の把握とそれらに適合する用途の検討を行い、水平リサイクル用途、リユース用途の開拓を行った。
著者
原田 恭行 大泉 徹
出版者
日本食品科学工学会
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.117-126, 2016 (Released:2016-09-14)

冷風乾燥した塩干品の呈味成分の変化を明らかにするため,マアジを約20℃(冷風乾燥区)または約50℃(熱風乾燥区)で20時間乾燥させ,FAAと核酸関連物質の経時変化を比較した。その結果,熱風乾燥区ではIMPの急激な減少に伴いHxが増加するとともに,苦味を呈するFAAの増加が著しかった。一方,冷風乾燥区ではIMPの減少が小さく,苦味を呈するHxとFAAはあまり増加しなかった。このような呈味成分の差異は乾燥時間の経過とともに顕著となった。一方,両乾燥区における乾燥2時間(水分約68%)の半乾品を焙焼すると,冷風乾燥区では,甘味を呈するアミノ酸が増加する傾向にあったが,熱風乾燥区では,Hx含量が増加し,リジンとヒスチジンが顕著に減少した。さらに,両区を官能評価すると,冷風乾燥区は,甘味が有意に強く,苦味が弱い傾向にあり,総合評価で有意に好ましい結果となった。これらの結果は,塩干品の冷風乾燥の優位性を呈味の面から示唆するものである。
著者
福原 崇之 原田 宗彦
出版者
日本スポーツマネジメント学会
雑誌
スポーツマネジメント研究 (ISSN:18840094)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.3-15, 2014 (Released:2015-03-09)
参考文献数
24
被引用文献数
2 1

The purpose of this study was to examine the relationship between club performance and revenue in Japanese professional football clubs. In Europe, Union of European Football Association (UEFA) decided to introduce financial fair play (FFP) for the purpose of the sound management for all clubs. In Japan, J.LEAGUE decided to introduce the club license system in 2013. In this way, the importance for the management of J.LEAGUE club would increase. This paper examined, the relationship between revenue and club performance in the J.LEAGUE club by making use of analyzing the panel data from 2005 to 2010. As a result, two-way fixed effect model was selected. This implied that there were differences among each club and there were time effects between seasons. From the scale of fixed effect, clubs in metropolis were not always profitable. And we found that club's performance do not significant affect the revenue.
著者
土井 佳代 小島 尚 原田 昌興 堀口 佳哉
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.15-22, 1994-02-10 (Released:2010-02-22)
参考文献数
20
被引用文献数
3 3

1%コレステロール添加飼料 (Ch) に乾燥桑葉 (ML) およびその熱水抽出物 (ME) をさらに配合した飼料 (ML・Ch, ME・Ch) をウサギに12~16週間与え, 血清脂質に及ぼす影響について検討した。実験期間中2週間ごとに採血し, 総コレステロール (TC) 等の血清脂質成分を測定し, 実験終了時には剖検および病理組織学的検討を行った。1) Ch食による血清TCの増加は, 10週間で2, 500mg/dlに及んだのに対して, ML・Ch食によるTCの増加は抑制された。とくに2.5%添加したML・Ch群では最大値1, 500mg/dlを示したに過ぎず, 有意に増加が抑制された。FC, PL, TGなどの血清脂質成分も同様の傾向を示した。2) 16週間の摂食後の剖検において, 肝臓の肥大・脂肪沈着はML・Ch群で軽減することが認められた。10%MLのみを添加した飼料を与えた動物は, 通常飼料群との間に差を認めなかった。3) 4週間Ch食で飼育し, 各群のTCが約1, 300mg/dlに増加したのをみてML・Chに切り換えて飼育すると, TCをはじめとする血清脂質成分の増加は抑制された。また, ME・Ch群においても, 増加は抑制された。4) 3) の肝臓病理組織学所見において, 肝細胞の腫大・脂肪沈着等はCh群で顕著であったのに対して, ML・Ch食群とME・Ch食群では微弱傾向を示した。胸部大動脈の病理組織学所見において, Ch群で顕著にみられた血管内膜の肥厚は, ML・Ch群では抑制された。以上の結果より, 桑葉には高コレステロール食により高脂肪血症を呈したウサギの血清脂質増加を抑制し, 脂肪肝を軽減する効果を有することを認めた。また, この効果は桑葉の熱水抽出物でも認めたが, 有効成分は非抽出画分にも存在すると思われる。
著者
李 成喆 島田 裕之 朴 眩泰 李 相侖 吉田 大輔 土井 剛彦 上村 一貴 堤本 広大 阿南 祐也 伊藤 忠 原田 和弘 堀田 亮 裴 成琉 牧迫 飛雄馬 鈴木 隆雄
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0161, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】近年の研究によると,心筋こうそく,脳卒中など突然死を招く重大な病気は腎臓病と関連していることが報告されている。クレアチニンは腎臓病の診断基準の一つであり,血漿Aβ40・42との関連が示されている。また,糖尿病を有する人を対象とした研究ではクレアチンとうつ症状との関連も認められ,うつ症状や認知症の交絡因子として検討する必要性が指摘された。しかし,少人数を対象とした研究や特定の疾病との関係を検討した研究が多半数であり,地域在住の高齢者を対象とした研究は少ない。さらに,認知機能のどの項目と関連しているかについては定かでない。そこで,本研究では地域在住高齢者を対象にクレアチニンが認知機能およびうつ症状とどのように関連しているかを明らかにし,認知機能の低下やうつ症状の予測因子としての可能性を検討した。【方法】本研究の対象者は国立長寿医療研究センターが2011年8月から実施した高齢者健康増進のための大府研究(OSHPE)の参加者である。腎臓病,パーキンソン,アルツハイマー,要介護認定者を除いた65才以上の地域在住高齢者4919名(平均年齢:72±5.5,男性2439名,女性2480名,65歳から97歳)を対象とした。認知機能検査はNational Center for Geriatrics and Gerontology-Functional Assessment Tool(NCGG-FAT)を用いて実施した。解析に用いた項目は,応答変数としてMini-Mental State Examination(MMSE),記憶検査は単語の遅延再生と物語の遅延再認,実行機能として改訂版trail making test_part A・B(TMT),digitsymbol-coding(DSC)を用いた。また,うつ症状はgeriatric depression scale-15項目版(GDS-15)を用いて,6点以上の対象者をうつ症状ありとした。説明変数にはクレアチニン値を3分位に分け,それぞれの関連について一般化線形モデル(GLM)を用いて性別に分析した。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は国立長寿医療研究センターの倫理・利益相反委員会の承認を得た上で,ヘルシンキ宣言を遵守して実施した。対象者には本研究の主旨・目的を説明し,書面にて同意を得た。【結果】男女ともにクレアチニンとMMSEの間には有意な関連が認められた。クレアチニン値が高い群は低い群に比べてMMSEの23点以下への低下リスクが1.4(男性)から1.5(女性)倍高かった。また,男性のみではあるが,GDSとの関連においてはクレアチニン値が高い群は低い群に比べてうつ症状になる可能性が高かった1.6倍(OR:1.62,CI:1.13~2.35)高かった。他の調査項目では男女ともに有意な関連は認められなかった。【考察】これらの結果は,クレアチニン値が高いほど認知機能の低下リスクが高くなる可能性を示唆している。先行研究では,クレアチニン値は血漿Aβ42(Aβ40)との関連が認められているがどの認知機能と関連があるかについては確認できなかった。本研究では先行研究を支持しながら具体的にどの側面と関連しているかについての検証ができた。認知機能の下位尺度との関連は認められず認知機能の総合評価指標(MMSE)との関連が認められた。しかし,クレアチニンとうつ症状においては男性のみで関連が認められたことや横断研究であるため因果関係までは説明できないことに関してはさらなる検討が必要である。【理学療法学研究としての意義】老年期の認知症は発症後の治療が非常に困難であるため,認知機能が低下し始めた中高齢者をいち早く発見することが重要であり,認知機能低下の予測因子の解明が急がれている。本研究ではクレアチニンと認知機能およびうつ症状との関連について検討を行った。理学療法学研究においてうつや認知症の予防は重要である。今回の結果は認知機能の低下やうつ症状の早期診断にクレアチニンが有効である可能性が示唆され,理学療法研究としての意義があると思われる。
著者
小林 北斗 山本 晴彦 原田 陽子
出版者
日本時間学会
雑誌
時間学研究 (ISSN:18820093)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.27-36, 2015 (Released:2017-02-28)

現在、小売業や商店街の店舗数は大型スーパーマーケットの存在や後継者不足等の要因で衰退の一途をたどっている。それらに加えて洪水による被害も衰退加速の要因となる場合があり、結果的に多くの店舗で廃業せざるを得ない状況に陥ってしまうこともある。特に、商店街における高齢化は深刻な問題である。そのため、自然災害の被害を受けた店舗への実態を把握し、様々な方面から支援を行うことが大事である。本内容では、現在の商店街における状況把握や今後の防災対策、避難行動へと還元することを目的に、自然災害、特に豪雨によって被害を受けた二つの商店街(2009年台風9号によって8月9日に兵庫県で発生した豪雨の被害を受けた佐用郡佐用町の佐用商店街と、2010年梅雨前線によって7月15日に山口県で発生した豪雨の被害を受けた山陽小野田市厚狭地区の厚狭商店街)についてアンケート調査を実施した。その結果、両商店街において回答の違いが見られ、浸水深の違いが影響していると推察される。また、住民と行政間でコミュニケーションを取り合うことが重要であり、高齢化の進む商店街への対策も併せて考える必要がある。
著者
内田 慶市 吾妻 重二 原田 正俊 篠原 啓方 氷野 善寛
出版者
関西大学東西学術研究所
巻号頁・発行日
pp.1-678, 2017-03-31

本目録は2016年度関西大学教育研究緊急支援経費「東アジア研究オープン・プラットホームの構築に向けて」(内田慶市、吾妻重二、原田正俊、篠原啓方、氷野善寛)の成果の一部である。
著者
谷内 涼馬 原 天音 森岡 真一 松川 佳代 植西 靖士 長谷 宏明 牧野 恭子 原田 俊英
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.339-346, 2022-07-25 (Released:2022-09-07)
参考文献数
20

目的:高齢パーキンソン病(PD)患者の短期集中入院リハビリテーション(集中リハ)開始時の評価から,2週間後の転倒リスク変動を判別する予測モデルを検討すること.方法:対象は当院にて集中リハを実施した65歳以上のPD患者のうち,集中リハ開始時のTUG-cognitiveが転倒リスクカットオフ値である14.7秒以上であった17名(平均年齢76.5±6.1歳)とした.集中リハ開始2週間後のTUG-cognitiveから転倒リスク低下/残存の2群に分類した.低下群と残存群間における各評価項目の比較および,2週間後の転倒リスク残存/低下を従属変数にしてロジスティック回帰分析を行い,転倒リスク変動に影響を及ぼす要因を検討した.結果:ロジスティック回帰分析の結果,最終的に最大歩行速度が転倒リスク変動の予測因子として抽出された.また,ロジスティック関数から転倒リスク残存の発生率を求め,最大歩行速度が0.84 m/秒以下でハイリスクと判定された.結論:集中リハ開始時のTUG-cognitiveと最大歩行速度から,2週間後の転倒リスク変動を判別できる可能性が示唆された.転倒リスクの低下には,最大歩行速度の向上が重要である.
著者
佐藤 優也 原田 研介 酒田 信親 万 偉偉 ラミレス イクシェル
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
vol.84, no.861, pp.17-00546-17-00546, 2018 (Released:2018-05-25)
参考文献数
19
被引用文献数
1

In this paper, we propose a novel two-stage approach on picking an object from randomly stacked pile. We especially consider a situation where it is difficult for a 3D depth sensor to identify the pose of objects such as shinny ones and black ones. For such objects, our method first roughly grasps some of the objects from the pile without using the visual information and roughly place them onto a working table. After some of the objects are placed on a working table, a robot picks one of them by detecting the 2D position of objects placed on a working table by using the 2D RGB image. We performed experiments for several objects with different shape and weight. Through experimental study, we confirmed that a robot can identify the position of one of the objects after the objects are placed on a working table and that one of the objects can be successfully picked up by a robot.
著者
原田 信之 Nobuyuki HARADA 日本文学 The Department of Liberal Arts Niimi College
雑誌
新見公立短期大学紀要 = The bulletin of Niimi College (ISSN:13453599)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.241-254, 2005-12-25

多良間島には、十六世紀に島を統治した土原豊見親春源の父親「ペーンス(平屋西)」が平家の流れをくむヤマト(日本)の人であったという平家伝説がある。また、春源のおじで水納島を統治していたとされる「水納ペーンス」はペーンスの弟で、春源の多良間統一に協力したという伝承がある。南西諸島においては、源氏と平氏をめぐる伝説がそれぞれ存在しているが、通常、沖縄県には平家伝説はほとんどないとされている。日本と多良間との交流は海の道を通じて昔から存在したこと、ペーンスは日本から来た人物であった可能性が高いこと、「ヤマト墓」が存在すること、『遺老説伝』等にみえる「平屋西」という表記の存在(平家を連想する)などが多良間島の平家伝説の発生に重要な役割を果たしてきたと推定される。また、琉球王権北端の奄美と琉球王権南端の先島に平家伝説がある点が注目されるが、その理由の一つとして、奄美も先島も首里と地理的に離れているため琉球王権の影響力が比較的緩やかであったことが関係しているように思われる。
著者
岩本 頌平 兒玉 学 原田 祥宏 加藤 弘一 門永 雅史 伏信 一慶 平井 秀一郎
出版者
一般社団法人 日本画像学会
雑誌
日本画像学会誌 (ISSN:13444425)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.98-104, 2022-04-10 (Released:2022-04-10)
参考文献数
10

インクジェットプリンティングにおけるインクの浸透は画質ならびに乾燥効率に関与することから,浸透挙動の把握は重要である.本研究では,コート層の構造 (コート層の有無と層数と厚さ) による液滴の浸透挙動の解明を目的として,コート層のない紙1種とコート層のある紙3種に対して,X線CT (computed tomography) による非破壊浸透域計測,SEM (scanning electron microscope) 断面観察による紙構造計測,浸透の準2次元数値解析を実施した.臭化カリウムを溶質とする水性インクを用いることで,液滴の浸透域のX線CT測定を可能とし,得られた液滴浸透域と断面SEMにより計測された紙構造を比較した.その結果,コート層の有無,コート層の層数・空隙径・厚さが浸透に影響することが明らかとなり,特にコート層が2層構造をなす場合,表側コート層にのみ液滴が浸透することが明らかとなった.また数値解析の結果,この表側コート層への浸透は,表側コート層の細孔径が裏側コート層の細孔径よりも小さいことが原因であることが示された.
著者
原田 憲一
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.59, no.9, pp.455-465, 2018-09-20 (Released:2018-09-27)
参考文献数
53
被引用文献数
4 7

急性肝炎様の臨床像を呈する自己免疫性肝炎(AIH)は,慢性肝炎AIHからの急性増悪の他,先行する肝障害を伴わない急性発症のAIH(急性肝炎期AIH)も存在する.特に急性肝炎期AIHは自己抗体,高γグロブリン血症等のAIHに特徴的な臨床像を欠いた症例も多く,未だ診断基準は策定されていない.急性肝炎期AIHの組織学的特徴として小葉中心性壊死(CN)がよく知られているが,同様な壊死は薬物性肝障害(DILI)でも見られる所見であり,両者の組織学的鑑別は通常困難である.本稿では,AIHに見られる種々の組織所見について概説し,急性肝炎期の組織所見,DILIとの組織学的異同について紹介する.