著者
原田 信之
出版者
日本学校教育学会
雑誌
学校教育研究 (ISSN:09139427)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.36, 2021 (Released:2023-04-18)

アクティブラーニングは,一般に課題の発見と解決に向けて主体的・協働的に学ぶ学習のことを指し,総合的な学習の時間(以下,「総合的な学習」と略す)で実現しようとしてきた授業の質的転換と符合するものであった。このアクティブラーニングは,一方向的で受動的な講義形式が主流だった大学の授業に対し,「学習者中心のパラダイムへの転換をはかるための牽引役として登場し」(松下 2015, 3頁),主に高等学校に普及していった。この時に出された文部科学大臣の諮問文(2014年11月)では,「課題の発見と解決に向けて主体的・協働的に学ぶ学習」と定義されていたことからすると,この時点では,主体的・協働的(対話的)に学ぶ姿(どのように学ぶか)までに留まり,到達点としての「深い学び」(どこまで学ぶのか)までは示されていなかった。
著者
原田 隆史 吉村 紗和子
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.65-72, 2010-05-15 (Released:2010-07-10)
被引用文献数
3 2

オンライン書店のサイトをはじめとして,読者自身が図書の感想などを投稿するオンライン書評サイトが増加してきている。本研究は,このようなオンライン書評の持つ特徴を,新聞書評などと比較することで明らかにするものである。書評中の各文を,評価対象,評価の視点,評価の客観性,評価極性(肯定的か否定的)かという4つの観点から分類し,集計した。その結果,1) 評価対象は「作品に対する評価」がどの書評でも評価組全体の約9割を占め,書評ごとの変化は見られない,2) 評価の視点について,新聞書評では「作家の表現手法」などが全体の48%を占めるのに対し,オンライン書評では「ストーリー」や「場面」がほとんどである,3) 新聞書評では客観的な表現や肯定的な評価がほとんどであるのに対し,オンライン書評では主観的な表現や否定的な評価も多く多様な内容であることが明らかとなった。
著者
西川 稿 土屋 昭彦 高森 頼雪 原田 容治 堀部 俊哉 広津 崇亮
出版者
一般社団法人 日本消化器がん検診学会
雑誌
日本消化器がん検診学会雑誌 (ISSN:18807666)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.237-245, 2021-05-15 (Released:2021-05-17)
参考文献数
6

【背景】がんの早期発見は重要であり,簡便で高精度ながん検査が求められている。広津らによって開発されたNematode-NOSE(以後N-NOSE)は,尿を検体として線虫Caenorhabditis elegans(以後C. elegans)の優れた嗅覚を利用した簡便ながん検査であり,先行研究では95.0%の特異度と95.8%の感度が報告されている。【対象】本研究では消化器系がん74例と非がん30例の尿検体を用いN-NOSEの性能の検証を行った。【結果】N-NOSEインデックスは,がんと非がんで有意差p<0.0001が認められ,ROC解析ではAUC=0.774が示された。がんの感度は81.1%と高く,特異度は70.0%であった。がん種別の感度は食道癌80.0%,胃癌68.8%,大腸癌80.0%,肝細胞癌90.9%,胆道癌100%,膵臓癌80.0%,ステージ別ではIで76.9%,IIで90.9%と早期から高い感度を示し,腫瘍マーカーとの大きな違いが見られた。N-NOSEインデックスと,被験者の年齢,性別,合併症,肝機能,腎機能,尿一般定性には有意な関係性は見られなかった。【結語】これらよりN-NOSEは非侵襲で高感度かつ簡便ながんのリスク検査となり得ることが示唆された。
著者
原田 謙 杉澤 秀博
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.80-96, 2014 (Released:2015-07-04)
参考文献数
41
被引用文献数
1 7

本稿は, パーソナル・ネットワークに対する都市効果を, 階層的に異なる水準で測定された変数を扱うマルチレベル分析を用いて明らかにすることを目的とした. 具体的には, 個人レベルの属性の影響を統制したうえで, 地域レベルの都市度が, 親しい親族・隣人・友人数およびその空間的分布に及ぼす文脈効果を検討した. データは, 東京都, 神奈川県, 埼玉県, 千葉県内の30自治体に居住する25歳以上の男女4,676人から得た.分析の結果, 第1に, 親族総数の地域差は居住者の個人属性の影響を統制すると消失した. しかし都市度は親族関係の空間的分布に影響を及ぼしていた.都市度が高いほど近距離親族数は減少していたのである. 大都市の親族関係は, 規範的ではなく選択的であり, 空間的に分散したネットワークである点が示唆された. 第2に, 都市度が高いほど隣人数は減少していた. 第3に, 友人総数の地域差は居住者の個人属性の影響を統制すると消失した. しかし都市度は友人関係の空間的分布に影響を及ぼしていた. 都市度が高いほど, 中距離友人数が増大していたのである. 都市度は, 都市圏全体に広がる友人資源へのアクセス可能性を高めている点が示唆された.
著者
土手 裕 原田 秀樹 関戸 知雄
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会論文誌 (ISSN:18835856)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.23-29, 2023 (Released:2023-07-24)
参考文献数
9

シリコン系太陽光パネルセルから分離されたカバーガラスと比重分離残渣のコンクリート用細骨材としての環境安全性を評価するために,カバーガラス,比重分離残渣,これらの混合物である廃パネル骨材,廃パネル骨材を用いた利用模擬試料,セメントペースト試料について JIS A 5011-1 による溶出量試験,含有量試験を行なった。比重分離残渣のPb含有量が環境安全品質基準値を 1.5 倍超過したが,廃パネル骨材の Pb 含有量はカバーガラスと比重分離残渣の混合による希釈効果により含有量基準を満足した。カバーガラスの Sb 溶出量が指針値を 1.1 倍超過したが,廃パネル骨材の Sb 溶出量は指針値を満足した。廃パネル骨材が含有量基準 ・溶出量基準を満足したことにより,利用模擬試料も含有量基準・溶出量基準を満足した。よって,今回対象とした廃太陽光パネルセルをコンクリート用細骨材として用いた場合,骨材,利用模擬試料どちらで評価しても環境安全上利用が可能であるといえた。
著者
町野 英弥 肥田 典子 原田 努 柴田 佳太 三邉 武彦 龍 家圭 水上 拓也 山崎 太義 諸星 北人 村山 信浩 竹ノ下 祥子 内田 直樹 倉田 なおみ
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.11, pp.599-608, 2021-11-10 (Released:2022-11-10)
参考文献数
15
被引用文献数
1

Patients with reduced swallowing function have difficulty taking tablets in their original form. In such cases, tablets are crushed (crushing method) and administered through feeding tubes, but this practice may affect efficacy. A simple suspension method (SSM) has been widely used to address issues of administering crushed tablets through feeding tubes. Most of all angiotensin-converting enzyme (ACE) inhibitors are ester prodrugs. When they are suspended with magnesium oxide, ester prodrugs are hydrolyzed, and the active metabolite increases before absorption. In this study, we investigated the effects of SSM and crushing methods on the pharmacokinetics of the ACE inhibitor using temocapril and magnesium oxide. A human clinical trial was conducted to compare the pharmacokinetics of temocapril and magnesium oxide in three groups in six healthy adult men (period 1, tablet group; period 2, SSM group; and period 3, crushing-and-mixed group). The pharmacokinetics of temocaprilat, which is the active metabolite, were examined. The AUC0-24 and Cmax of the SSM group were 89.3% and 86.1% compared with those of the tablet group, whereas those of the crushing-and-mixed group decreased to 73.0% and 78.9%, respectively. In the crushing-and-mixed group, the concentration of temocapril decreased during crushing and long-term storage. Findings in the present study suggest that the crushing method may decrease in AUC0-24 and Cmax and that the expected drug effect may not be achieved. For ester prodrugs, the use of SSM might be considered rather than the crushing method.
著者
原田 善之 田沼 繁夫
出版者
一般社団法人 表面分析研究会
雑誌
Journal of Surface Analysis (ISSN:13411756)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.111-116, 2021 (Released:2022-12-29)
参考文献数
2

Microsoft365における“Word”では,UnicodeやLaTeXによる数式の記述が“数式”挿入から使用可能なった.これによって数式入力は格段に進歩した.しかしながら,数式の美しさはLaTeXと比べて数段に劣っていると言わざるを得ない.そこで,“Word”の数式機能を用いてLaTeXに勝るとも劣らない美しさで数式を記述する方法を紹介する.
著者
佐藤 裕 佐藤 清治 広橋 喜美 伊山 明宏 原岡 誠司 溝口 哲郎 片野 光男 樋高 克彦 原田 貞美 藤原 博 山本 裕士 久次 武晴
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.577-584, 1989-03-25 (Released:2010-01-21)
参考文献数
18
被引用文献数
11

1985年5月から1987年12月までの3年7ヵ月の間に,6名のシートベルトに起因する鈍的腸管・腸間膜損傷を経験したので報告する. 症例は男性5名,女性1名の計6名で,平均年齢は51.7歳であった.このうち,盲腸破裂と多発小腸穿孔をきたし,すでにshock状態におちいっていたために,回盲部切除を余儀なくされた女性を術後敗血症で失なった以外は全例軽快退院した.また大腸に損傷のあった5例中,遊離穿孔に至っていたのは2例のみで,あとの3例は腸間膜損傷をともなった腸管壁の漿膜筋層断裂にとどまっており,腸管切除をせずに吸収糸にて縫縮,修復するのみで良好な結果を得た. 診断面においては,腹部CT検査が腹腔内遊離ガスと液体貯留をあわせて同定でき,しかもその性状にも言及できる利点があり非常に有用であった. 交通事故の増加とシートベルト着用の義務化にともない,今後シートベルトによる鈍的な腸管・腸間膜損傷が増加するものと考えられる.シートベルトを着用した交通外傷患者の診療に際しては,常にこのことを念頭おくべきことを強調したい.
著者
柴田 清 葛生 伸 黒田 光太郎 小林 志好 小林 信一 塚本 公秀 英 崇夫 原田 昭治
出版者
公益社団法人 日本工学教育協会
雑誌
工学教育 (ISSN:13412167)
巻号頁・発行日
vol.69, no.6, pp.6_48-6_53, 2021 (Released:2021-12-05)
参考文献数
29

Liberal arts education is attracting great interest in term of source of innovation to comprehend social needs and acceptance of technologies. However, the engineering has not been sufficiently included in the conventional liberal arts education, despite of its significance in modern society. To incorporate engineering in the liberal arts education, the following approaches are discussed. Engineers should learn social science and humanities to understand social needs and to enhance communication skills, and acquire generic engineering principle which is common in all engineering field. General public should develop technological literacy to ascertain the possibilities and limits of technology. Public, including engineers, should know nature of engineering to communicate each other, and obtain ability to identify the risk and benefit of technology.
著者
成田 修英 朝日 智生 井上 竜太 田中 彩 原田 浩之
出版者
一般社団法人 日本建築学会
雑誌
日本建築学会技術報告集 (ISSN:13419463)
巻号頁・発行日
vol.29, no.72, pp.707-712, 2023-06-20 (Released:2023-06-20)
参考文献数
16

In this paper, we measured ground vibrations excited by rhythmic actions of large audience at an outdoor concert. This kind of noticeable ground vibration is excited by large audience at least over 1,000. However, our knowledge of this vibration is based on vibration tests excited by several people. So, we carried out this measurement. As a result, the following conclusions are obtained. 1) The vibrational energy can be concentrated in a narrow band even if the vibration is excited by large audience. 2) The effect of audience size reduces the high frequency components of the exciting force.
著者
井上 優 平上 尚吾 佐藤 ゆかり 原田 和宏 香川 幸次郎
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.27, no.5, pp.583-587, 2012 (Released:2012-12-05)
参考文献数
12
被引用文献数
1

〔目的〕脳卒中患者のDynamic gait index(DGI)による二重課題処理能力評価の基準関連妥当性の検証.〔対象〕自力歩行が可能で認知機能に問題のない脳卒中患者17名.〔方法〕DGI,stops walking when talking test(SWWT),二重課題条件下のtimed up and go test,歩行速度,歩幅を評価した.基準関連妥当性は,DGI得点と二重課題条件下の結果との相関分析と,SWWTの結果から対象者を2群に分類し,DGI得点の2群間比較により検証した.〔結果〕DGI得点は二重課題条件下の結果と強い相関を示し,歩行継続群のDGI得点は歩行停止群に比べ有意に高かった.〔結語〕DGIは基準関連妥当性を有し,脳卒中患者の二重課題処理能力の評価に有用である.
著者
藤原 裕美 青木 正則 川口 和幸 工田 昌也 平川 勝洋 原田 康夫
出版者
耳鼻咽喉科臨床学会
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.84, no.9, pp.1267-1272, 1991-09-01 (Released:2011-11-04)
参考文献数
22

A galvanic current may be caused in the oral cavity when two or more dissimilar metallic repair materials are present, and it is well known among dentists that severe pain, called “galvanic pain”, may result. We report two cases of glossitis thought to have been caused by oral galvanism. We measured the galvanic current in patients with glossitis and found significantly larger electric currents in the patients than in controls. We suspect that oral galvanism is the cause of glossitis when the conditions are as follows: 1) Anemia, medications, mechanical stimulation by dental repair, zinc deficiency, etc. have been ruled out; 2) Currents greater than five micro-amperes are demonstrated.
著者
中島 英親 原田 香苗 寺本 憲市郎 武田 浩志 平野 哲也 米満 弘之
出版者
West-Japanese Society of Orthopedics & Traumatology
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.1204-1206, 1998-09-25 (Released:2010-03-16)
参考文献数
2

We performed finger reconstruction by the toe-to-finger transfer on 15 cases. 6 cases were reconstructed for small finger amputation.We utilized a third toe-to-finger transfer for the reconstruction.Informed consent is an important fector.8 case were finger reconstruction for the multiple digits (more than 3 digits), for which we have used a II toe-to-finger transfers were used.5 of these cases had undergone amputation at the metacarpal level.The total active motion of these 5 cases was 40° on average.As for the full range of motion of the thumb, all 5 cases were able to pinch well.Improved finger function was seen, but prostheses is required for ehhancement of cosmesls.
著者
原田 峻
出版者
日本NPO学会
雑誌
ノンプロフィット・レビュー (ISSN:13464116)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.77-87, 2017 (Released:2018-03-15)
参考文献数
17

本稿では,NPO法制定過程における立法運動の組織間連携の要因を分析し,NPO法制定以前は異なる分野や団体形態で活動していた市民団体が,なぜ法制定に向けて連携できたのかを明らかにした.まず,阪神・淡路大震災以前は「先行する社会的紐帯」としての1980年代からの分野内・分野間の連携経験と,アメリカ視察等を通した「理念の共有」が,連携を容易にする要因となっていた.法案が国会で議論されるようになると,争点をめぐって分野間の連携に障壁があり,それぞれが独自の運動を展開したが,争点に妥協ができるまで法案が修正されるとともに,衆議院での法案通過という政治的機会,そして参議院での法案通過を前にした連立政権の解消という危機が存在したときに,大きな連携が形成された.NPO法の制定過程そのものが市民団体間の連携を拡大させる契機となっており,その過程で,各分野が抱いている法人制度への理念の相互理解が図られていったと言える.
著者
原田 晋 吉崎 仁胤 夏秋 優 清水 秀樹 福田 均 永井 宏 池田 哲哉
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.54, no.11, pp.1279-1284, 2005-11-30 (Released:2017-02-10)

【目的】ムカデ刺傷後に全身性の蕁麻疹およびアナフィラキシー症状を呈し, かつムカデ毒のプリックテストが有意な陽性を示した事より, ムカデアレルギーと診断した3症例を経験した.さらに, 過去にムカデアレルギーとハチアレルギーとの関連性について論じた報告が認められたため, これらの症例に対してハチアレルギーに関する検討も加えた.【方法】3症例に対してハチ毒特異的IgEの測定を行い, うち1例ではハチ毒の皮内テストも施行した.またハチアレルギーと診断された別の3症例に対して, ムカデ毒のプリックテストを行った.【結果】ムカデアレルギーの3症例共にハチ毒の特異的IgEが陽性であり, 施行した1例ではハチ毒皮内テストも同様に陽性であった.しかし, ハチアレルギーの3症例ではムカデ毒のプリックテストは全例において陰性であった.【結語】以上より, ハチアレルギー患者のうちのごく一部でムカデアレルギーを包括するといった両者間の関係を疑った.ムカデアレルギーの報告は過去にはきわめて稀であるが, 現実的にはしばしば生じうる現象であると考えられる.また, ムカデアレルギー症例に対しては, 今後ハチアレルギーに関する検討をも加えていく事が必要であると考えた.